UNESCO バンコクオフィスの教育政策課にてインターン

執筆:2013年3月

勤め先:国連教育科学文化機関(UNESCO)バンコクオフィスの教育政策課にてインターン

出身校:

「MA in International Education and Development, University of Sussex」

(サセックス大学 国際開発と教育 修士課程) 卒業

上野 明菜(うえの あきな)さん

1.自己紹介

京都外国語大学、英米語学科在学中に豪州クィーンズランド大学に交換留学(1年間)し、在シンガポール日本国大使館にて在外公館派遣員として勤務(2年間)しました。卒業後、私立高校で4年間英語教員として勤務したのち、英国サセックス大学、開発教育学修士コースへ留学しました。途上国の教員政策、教育の質、日本と英国の教育援助アプローチをテーマに研究し、今後はメコン地域で活動したいと考え、その中でも内戦の結果多くの教師を失い、教育分野における人材不足が顕著なカンボジアを研究国にしています。修士号取得後、国連教育科学文化機関(UNESCO)バンコクオフィスの教育政策課にて3カ月間インターンに従事しました。主にASEAN諸国の教育政策に関わるリサーチ、レポート執筆を担当しました。


2.所属していたコース概要

秋学期(10月~12月)

・Debates in International Education and Development (理論)

・Perspectives on Education Policy and Practice for Development (実践)

・Academic Skills for International Education and Development (論文執筆のためのスキル)

春学期 (1月~3月、以下5科目から2科目を選択)

・Education Planning and Governance for Development

(国際機関やNGOの役割、政策評価等)

・Gender, Inclusion and Educational Development

(ジェンダー、女子教育、障がいを持つ児童に対する教育等)

・Quality Education: Learning, Pedagogies and Assessment for Development

(教科書、カリキュラム、試験、言語と教育等)

・Teacher Education for Development

(教員教育カリキュラム、教員指導法等)

・Global Governance of Education and Conflict

(復興・平和構築と教育等)

夏学期 (4月~6月)

・Research Methods in International Education and Development (研究手法)

・Academic Skills for International Education and Development

全ての授業(Academic Skillは2時間)は毎回1テーマ、1コマ3時間(休憩15分)の授業で、教授によって授業スタイルは違いますが、グループで議論を求められる機会が多いです。秋学期と春学期の間の1か月のクリスマス休暇明けに5000字のエッセイを2本、春学期と夏学期の間の1か月のイースター休暇明けにも5000字のエッセイを2本、そして6月初旬に修士論文の3000字の概要を提出し、9月初旬に15000字の修士論文を提出します。授業時間数は1週間に計8時間と少なく感じますが、Key Reading(授業までに絶対に読むべき本や論文)の量がとても多いので、毎日のほとんどがリーディングで時間が過ぎます。例えば、少ない週で1科目あたり約70ページ、多い時には1科目あたり約200ページにもなりました。

最初の2か月で開発教育学の理論と実践の基礎を固めるというイメージです。アカデミックスキルのクラスは、ノートの取り方、プレゼンテーションの仕方や論文構成から計画まで実際に役立つスキルの習得を目指します。特に英語が母国語でない生徒にはとてもありがたい授業でした。

注)2012年度から授業名やコース内容が改定されています。詳しくは以下参照下さい。

http://www.sussex.ac.uk/study/pg/2013/taught/1991/27390#tabs-2


3.就職までの流れ

大学院卒業後のインターンは理想でしたが日々の課題に立ち向かうのが精いっぱいで漠然としか考えていませんでした。 しかし、課題論文執筆中にユネスコの文献・データを扱うことが多く、東南アジア諸国の教育政策に関われる機関といえばUNESCOのバンコクオフィスしかない!とインターンの機会が無いか情報収集し始めました。その後、IDDPや同じ大学院で国際機関に勤めている日本人の方々と知り合う機会があり、国際機関のインターンは応募のルールがあって無いようなもので、世界中の学生は募集中でなくとも自分をアピールする活動をしていると聞きました。そこで、その後「どうしてもあなたのユニットでインターンがしたい」という内容のメールを2回送りましたが返事は無く、やはりこれが国際機関かと思っていると、インターン募集がHP上で発表され、今回こそはという思いで応募しました。8月中旬頃に履歴書とカバーレター(日本でいう志望動機書)を送付、その後英語による電話インタビュー(10分間)による質疑応答がありました。内容は、①教育政策課が担当している5つの分野のうち興味のある分野は?②何が出来るか ③どれくらいやる気があるか、でした。8月末に正式に決定、9月初旬に帰国し、10月中旬からインターンを開始しました。


4.在学中にしておいてよかったこと、またやっておけばよかったこと

[実行してよかったこと]

・人脈の形成:自ら連絡をとり、出向いて様々な開発分野で活躍する人に会いに行って話を聞きました。特に日本人であれば、日系と外資で働く事の違いを教えてもらえる事が多く、キャリア形成のヒントになりました。だめもとで連絡した結果、非常に親身に話をしてくれた方、その後も相談に乗ってくれる方もいました。学生という立場だからこそ、急にメールや手紙を送り、あなたに会って話が聞きたい!という大胆なアプローチができるのだとも思います。IDDPは人脈形成に大きく貢献した活動だと言えます。

・英語版履歴書の研究

どのフォーマットが読みやすいか、どの様な表現方法が目に留まるか等をコースメイト達と自らのCVを持ち寄って意見交換しました。また、大学のキャリアセンターのカウンセリング制度も利用しました。

[実行しておけばよかったこと]

・ITスキルの向上:Excel、Word、PowerPointで表、図、グラフ、プレゼンテーションを作成できるかというのは非常に大事な要素だと感じました。過去に様々な人種と接した経験から、自分を含め、日本人はこの分野を苦手とする人が多いと思います。しかし、国際機関ではできて当たり前でした。

・志望分野の就職マーケットのリサーチ

開発教育の需要やニーズはどの国・地域にあるか、自分の経歴ではどこで活躍できそうか、専門家になりたいのか、公と民のどちらが自分には合っているか3年、5年、10年先は何をしていたいか等徹底的に考えることで、在学中から積極的に就職活動ができると思います。


5.今後のキャリアプラン、将来の夢など

現在就職活動中なのでまだ卒業後初めの一歩はどの様に踏み出せるかわかりませんが、今後3~5年は途上国のフィールドで開発教育の仕事全般に広く関わり、それ以降は政策に関わる仕事をするのが目標です。専門にしたい分野は教員政策で、開発教育分野でも特に教員を取り巻く問題に注目することの必要性を世界に主張し続けていきたいです。援助の圧倒的なニーズはアフリカ・中東地域にありますが、今後ますます成長が見込まれる東南アジアのメコン地域の教育政策に関わる仕事をするのが目標です。30代で研究したい新たなテーマを見つけたら、40歳頃までに博士課程に進むことも検討中です。


6.これから留学する 学生、在学中の学生に一言

ただ留学するのではなく、留学の先を考えて戦略的に行動してみて下さい。自分は何に価値を感じるのか、将来何をしたいのか、そしてそれはなぜかを考えることで自然と行動に反映されると思います。