グラミン銀行でのインターンシップ (バングラデシュ)

執筆:2013年3月

「JYA(Junior Year Abroad) in Global Studies, University of Sussex」

(サセックス大学 グローバルスタディーズ)

白土 悠平(しらつち ゆうへい)さん


1.自己紹介

日本の大学の学部3年時にサセックス大学のJYAというプログラムを利用して留学しました。イギリスの大学では国際関係学と金融、開発金融の授業を聴講しています。バングラデシュのグラミン銀行をインターンシップに選んだ理由は、開発金融の一種であるマイクロファイナンスに興味を持ち、それについて現地でいかに影響を及ぼしているか知りたいと思ったからと、将来的に開発に関わるキャリアを考えるなら、まず途上国で働くということがどういうことか経験しなければならないなと思ったからです。また、アジア最貧国と言われ、世界有数の人口密度を持つバングラデシュという国がどんなところであるか、という点にも興味を持ちました。


2. フィールドワークまでの流れ

申し込みには大学の教授の推薦書、英文履歴書、インターンの目的についての書類が必要です。なかなかあちらから返事が返ってこないので、少し困りました。選考への条件は、他に特にはありませんでした。インターン中に滞在するホテルなども依頼すればグラミン銀行の方がとってくれます。


3. フィールドワークの概要

僕は3週間プログラムのインターンシップを体験させて頂きました。1週目はグラミン銀行が行っているマイクロファイナンスの方法、グラミン銀行の組織構造などを学び、コーディネーターの方と議論します。大学のゼミのような感じですね。これはグラミン銀行のオフィスで行われます。それが終わると2週目に入り、実際にマイクロクレジットの貸付を行っている村に赴き、5日間ほど滞在します。そこでは、グラミン銀行のブランチオフィスへ行って実際の業務を行っているところを見学してお話を聞いたり、グラミンが提供する各ローンの利用者の家に訪問し、その方のお話を聞かせてもらったりします。もう一つ、グラミン銀行のマイクロファイナンスにはローンの返済がスムーズに行われるように地域ごとに共同体を形成しているのですが、そのミーティングにも参加させてもらいました。その後の最終週は、グラミン銀行が他の会社と共同で行っているソーシャルビジネスについて学ぶために、各会社を訪れて話を聞きに行きました。最後にインターンシップについてのレポートを書いてインターン終了となります。


4. 現地での活動内容

僕が興味を持った内容は、世界中にマイクロファイナンスを行っている機関はたくさんあるものの、「なぜグラミン銀行が2006年にノーベル平和賞を受賞するに至るまで成功を収めたのか」について、でした。問題意識として、「グラミンのマイクロファイナンスのやり方は、バングラデシュのようなある特定の社会に対して効果的であって、他の社会に対してマイクロファイナンスを適用する場合には、やり方を変えなければならないのだろう」という考えを持っていました。そこで、3週間のインターンシップ中は、バングラデシュの社会構造と地形構造に焦点を置き、どのようにこのバングラデシュという社会とマイクロファイナンスの相性が合っていて、他の社会の場合(例えば先進国。日本の貧困地域など)にはうまくいきそうにないのか、また上手くいかせるにはどのような方法をとらなければならないのか、というレポートを書きました。

また、世界中各国から大学生がインターンに来て、一緒にチームを組んでインターンをするので、毎日違う環境から来た学生とディスカッションをするのは非常に楽しく、有意義な環境でした。


5. 体験を通して学んだことや感じたこと

このインターンを通して学んだことは、マイクロファイナンスに関する知識は言うまでもないのですが、その他の点としては、まず発展途上国で働くとはどういうことか、ということです。ダッカは大気汚染のひどい都市で、途中ぜんそくにかかったり、また、水道水もヒ素に汚染されていたりと、かなりストレスのかかる環境でした。インターンの途中に風土病にもかかり、3日間病院に滞在することにもなりました。発展途上国で働いていくにはこれらに耐えうる強靭な肉体とストレス耐性が必要です。

次に、経済発展におけるその国の強い産業の重要性です。ダッカの町には物乞いをする人であふれており、交通渋滞で車が止まるや否や、車の四方八方を、物乞いをする人たちが囲んでくるという状況でした。これだけの人たちを雇用するだけの強い産業がなければこの国の経済発展はなかなか進まないのだろうと感じました。しかしながら、ダッカの街はヨーロッパなどの先進国に比べると非常に活気にあふれていて、これがアジアのパワーなのか、と感じるものがありました。

最後に、整備されていない環境の中で暮らす人々を見ると、いかに自分が日本に生まれて幸運であったか、ということです。人間、今ある環境をついつい当たり前にしがちになることがあると思います。自分を囲んでくれた人々やものたちが当たり前ではないこと、それら、その人達に対する感謝の気持ちを忘れないようにすることの重要性に気づかされました。


6. フィールドワークをめざしている人へ一言

フィールドワークでは、学校で勉強しているだけでは気づけないたくさんの学びがあると思います。みなさんもぜひ飛び出してみてはいかがでしょうか。