「MSc Environmental Economics and Climate Change」London School of Economics and Political Science

(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE) 「環境経済学と気候変動 修士課程」)

加藤 貴義(かとう たかよし)さん

執筆:2013年3月

1. 自己紹介

日本の環境科学の分野で、学士と修士を取得しました。その後、民間シンクタンクで環境ビジネスや気候変動政策に関わる仕事を6年半ほど行って来ました。留学は20歳くらいの頃からの憧れでしたが、なかなかかなわず、30歳に差し掛かるときに、このタイミングでこれまで仕事を通じて学んできたことをもう少し理論的に掘り下げたい、そしてもっと英語も勉強したいと思い、私費留学を決意しました。


2. 所属コースの概要

<強み>

英国内でも数少ない、環境経済学に関する理論を丁寧に学べるコースだと思います。有名なStern Reviewの執筆に携わった面々を始め、環境経済学や政策の分野で世界的に有名な先生が教えてくれます。数学的知識もある程度必要ですが、入学後でもキャッチアップできるレベルだと思います。様々な環境政策について、理論的な背景にとどまらず各国でどのような研究者が、それぞれの政府の政策決定や国際交渉にどのような影響を与えているか等を学ぶ機会も多くあります。

<弱み>

やはり全体のバランスで見れば理論部分が多く、もっと実際のケースについて深く学びたいという人にはあまり向かないかもしれません。また、理論経済や計量経済を学部でしっかりとやった人にはやや簡単すぎる部分もあり、私のように、あまり経済の知識がない人にはかなり難易度が高いという状況になっています。(全くついていけないわけではありませんが)


3. 授業の概要

授業名:環境経済学・資源経済学

内容:環境経済学に関する理論的側面や政策への応用方法、その背景に関する数学的証明方法を学びました。秋学期は各種の環境政策(環境税、規制、排出量取引)の理論的分析方法について、冬学期は各種資源利用に関わる動学的最適化理論等について学びました。秋学期中の小論文では、市場の失敗の概念整理とその環境政策への応用について執筆し、提出しました。

授業名:気候変動と環境政策 (自然科学、経済学、政策科学の視点から)

内容:気候変動に関わる動向及び理論的背景について、自然科学、経済学、政治学等の学際的な視点から検討しました。秋学期の小論文では、欧州の排出量取引制度に関する考察を行い提出しました。

授業名:応用計量経済学

内容:応用レベルの計量経済学についての講義及び実習を受講しました。例えば、基礎的な重回帰分析に始まり、パネルデータ分析、二項ロジスティック分析、多項ロジスティック分析、Instrumental Variableを用いた分析方法ならびに解釈方法等を学びました。毎回宿題があり、講師からフィードバックを得られます。

授業名:環境評価

内容:環境評価及び費用便益分析に関する理論及び応用について学びました。また、3回ある実習においては実際の費用便益分析のケースに関し、その解析方法に関する手法を学びました。

授業名:社会学的リスク管理理論

内容:社会学的見地からのリスク評価及び管理に関する理論的側面を学習します。実際のリスク事例に対する理論の適用に関するディスカッションが毎週実施されます。冬学期の小論文は、リスクガバナンスに関する市民参加の重要性について執筆、提出しました。


4.大学紹介

授業数自体はそれほど多くありませんが、Public LectureやSociety(サークルのようなもの)の活動も活発で、主体的に動けば非常に多くのことを学べる学校だと思います。また、世界各国から様々なバックグラウンドを持った優秀な学生が集まってくるので、彼らとの交流も大変貴重な財産だと思います。


5. その他

大学の寮は各種ありますが、私は落選してしまいました。そこで、「mixb」という、日本人向けの賃貸情報Webサイトを活用し家探しを行いました。幸運にも、Leicester Square駅近くの大変暖かな英国人カップルの家に同居することとなりました。あと、大学の食事処は、昼食の時間は結構どこも混んでいます。


6.留学をめざしている人へ一言

他の多くの人も書いているかとは思いますが、1年〜2年というのは、本当にあっという間です。勉強そのものも重要だと思いますが、学業、就職活動、フィールドワーク/インターンシップ、ネットワーキング、旅行等を含めて、いったい留学期間中にどんなことを達成したいのか、それぞれの活動のデッドラインはいつか、そのための準備はいつ頃から開始すべきか、事前にプランをある程度考え、また適宜そのプランを振り返って見直しをしていくと、より有効に時間を使えるのではないかと思います。