第3回勉強会のご案内
★☆★IDDP2020/2021 第3回勉強会★☆★
テーマ:「難民問題を考える―世界の現場から―」
日時:2021年1月9日(土) 11:00-13:40 (GMT), 20:00-22:40 (JST)
会場:オンライン(Zoomを使用致します)
※参加人数に限りがありますので、お早めにお申し込み下さい。
講師:帯刀豊様 上級ドナー関係調整官(UNHCRジュネーブ本部)
講演概要:
世界各地で長引く紛争の影響で、母国から強制移動を強いられる「難民」の数が年々増加しています。今回の勉強会ではそのような「難民問題」に焦点をあて、国連の難民問題を扱う専門機関であるUNHCR(ユーエヌエイチシーアール)ジュネーブ本部から帯刀豊様を講師にお迎えし、世界で起こる難民問題について考えてみたいと思います。
難民問題以外のお話として、帯刀様の今までのご経歴や、国連でのキャリアの始め方、特にUNHCRでのキャリアの積み方など、国際協力の分野や国連で働くことを目標としている学生の皆様にとって、とても興味深く、また将来のキャリアを考える上でとても役立つトピックに関しても、お話し頂く予定となっております。
今回は、通常の「講師と参加者」という勉強会の雰囲気を一新し、帯刀様と参加者の方々の相互間の意見交換を通して、ざっくばらんにお話をする形式とする予定ですので、コーヒーやお菓子などを準備して、難民問題や国連に関することなど、普段聞いてみたくてもなかなか聞けなかったことを気軽に質問し、他の参加者の方とも交流する機会として頂けると嬉しいです。国連職員の方とこういった形で直接お話が出来る機会はあまりないと思いますので、この機会を逃さず、ぜひご参加下さい。
また、今回の勉強会は完全オンライン開催となりますので、イギリス・日本その他世界中からのご参加をお待ちしております!
講師の方と参加者の方々の交流を促進するため、差し支えのない範囲でカメラをオンにしてご参加頂ければ幸いです。
講師紹介:
・帯刀豊様 上級ドナー関係調整官(UNHCRジュネーブ本部)
学生時代に「国境を越える問題」に関心をもつ。1992年一橋大学法学部卒業。東京銀行入社後、外務省経済協力局出向、アジア経済研究所開発スクールを経て、英国・エディンバラ大学にてMaster of Law (法学修士号)、オックスフォード大学にてMaster in Forced Migration(強制移住学修士号)を取得。旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷勤務を経て、2003年にJPOとしてUNHCRインド・ニューデリー事務所にてUNHCRでのキャリアを開始。その後、UNHCRスーダン・ダルフール、イラク、アフガニスタン、タイ・ミャンマー国境の現場にて難民保護官として、特に民軍連携に注力。現在はUNHCRジュネーブ本部にてドナー国等との連携調整業務、及び人道・開発連携の推進に従事している。
参加費:£2(勉強会運営費に充てさせて頂きます。)
言語:日本語
※講演後の12:50 (GMT)/21:50 (JST) より、同じくオンラインで懇親会を開催させて頂きます。講師の方や他参加者と交流する機会となりますので、奮ってご参加ください。懇親会参加人数を把握するため、お申し込み時に参加の可否を伺っておりますが、当日参加も可能です。
事前にEventbriteサイト(https://www.eventbrite.com/e/iddp-3-tickets-134207749993)よりお申し込みをお願いいたします。
★IDDP第3回勉強会レポート(後日更新)★
▼1月9日にIDDP第3回勉強会をzoomにて開催致しました。イギリスの大学院で法学修士号と強制移住学修士号を取得され、UNHCRの現場及びジュネーブ本部での経験豊富な帯刀豊様を講師としてお招きしました。
ご講演は2部構成となっており、第1部ではUNHCRの組織について、第2部では帯刀様のこれまでのキャリアを振り返り、これから国際協力や難民支援の世界でキャリアを積まれたい方に向けた具体的なアドバイスを頂きました。以下に要点のみ記載致します(尚、以下は帯刀様個人の見解です)。
【第1部:UNHCRとその関心対象者】
UNHCRについて
第二次世界大戦後の1950年に設立され、当初は3年間の期限付きマンデートを与えられた組織であった。
設立70周年を迎えたが、年々、組織や予算の規模は拡大しており、これは決して喜ぶべきことではない。
現在のUNHCR高等弁務官であるフィリッポ・グランディ氏の経歴は特異であり、NGO、UNHCRでのキャリアを経て高等弁務官に就任された。難民支援の現場を知っているということで組織内外でも評判が高い。日本出身の第8代UNHCR高等弁務官の緒方貞子氏の側近としても知られている。
UNHCRの特色として、全職員のおよそ9割がフィールドで働いており、ジェンダーバランスもとても良い組織である。日本人職員に関しては7~8割程が女性である。
近年では活動に必要な資金の半分程度しか集まらない状況が続いており、社会全体として様々なアクターとの協同を模索する必要がある。各国家からの拠出額において、日本は世界5位をキープしているが、近年ではその拠出額が減っている。
UNHCRの関心対象者について
UNHCRの関心対象者(支援対象者)は難民のみならず、庇護申請者、国内避難民、無国籍者、帰還民も含まれている。
現在のUNHCRの関心対象者は7000万人以上に上っており、その半数以上は国内避難民である。
難民の定義は国連の難民の地位に関する条約(1951年)により定められている。
難民条約のみを参照すると、UNHCRのマンデートに国内避難民への支援は含まれないが、トルコで国内避難民の状況を目にした当時の高等弁務官であった緒方貞子氏により、難民条約に縛られて活動する必要はないとして、国内避難民への支援もUNHCRの支援対象となり得ることとされた。
現在、気候変動により強制移動を余儀なくされる人々の数が増えているが、難民条約の難民の定義には、気候変動を理由とした国境を越えた移動は含まれておらず、具体的に誰が保護のマンデートをもつのかについてはっきりとした答えは出されていない。
UNHCRの活動範囲について
緊急支援や人道支援が主な任務であったが、近年では「難民が難民でなくなるような支援」や、難民の自立支援などの比重も高まっており、難民を受け入れる国やコミュニティの役割を重視し、それらに対する支援も強化している。
開発支援の面において世界銀行を始めとした他組織との連携の必要性が高まっている。
開発機関とのパートナーシップや企業などとの関係も強化している。
【第2部:これまでのキャリアとアドバイス】
帯刀様のこれまでのキャリア
学生の頃から「国境を越えた問題」や「多様性」に関心をもたれてきた。
大学卒業後、銀行に勤められ、その後、大学院進学等を経て、JPO制度を利用してUNHCRでのキャリアをスタートされた。「紛争地の現場に近い組織であること」「人を相手に、法・規範を扱うこと」に関心をもち、UNHCRを志望された。
最初の勤務地であるインドを皮切りに、スーダン・ダルフール、イラク、アフガニスタン、タイ・ミャンマー国境などの危険地において難民支援に従事され、現在はそれらの現場経験から得た民軍連携、開発・人道連携のスキルを活かし、UNHCRのジュネーブ本部にて主にアジア太平洋地域のドナー関係を担当されている。最近の関心事項は、開発機関等他機関との連携強化とアジアの底上げである。
振り返り
帯刀様のこれまでの人生におけるモチベーションの変化とその理由について伺った。
帯刀様のこれまでは、その当時にモチベーションを感じてやってきたことそれぞれの点が、あとで振り返って繋がっていたと分かるような人生であった。
これからキャリアを始める若い世代が国連組織等ですぐに上司へのアピールポイントと出来るスキルとして、「ITスキル」が挙げられる。
これら以外にも「ビジネスマインドをもつこと」や「戦略的な語学力の取得」も大切である。
「人生百年時代」と言われる現代社会において、長距離走となるキャリア形成の糧として特に日本人に求められることは、「柔軟さ」「想像力」「失点を恐れない積極性」「健康と仲間」が挙げられる。
自分と異なる関心をもつ友人との交流等を通じて、自分の世界を広げていくことは重要である。
キャリア形成として考えるべきことは、「生涯のテーマ」「生活観」「アプローチ」である。また、「人生百年時代」において先の読めない中、不断の自己変革・投資も大事である。時間を大幅に延長しての質疑応答となりましたが、最後まで多くの皆様にご参加いただきました。一つ一つの質問に丁寧に回答いただいた帯刀様、そして参加してくださった皆様、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。次回の勉強会は、2月13日を予定しておりますので、近日中に詳細を更新いたします。