むかしむかしのおはなしです
まえばしになんにちも、なんにちも雨がふりつづけました
そして、とね川があふれてお城がはんぶん流されてしまいました
すると住んでいたお城がこわれてしまったおとのさまは
かわごえというところにひっこしてしまいました
おとのさまがいなくなり、そのけらいたちもいなくなり
お城にでいりするひとたちでにぎわっていたまえばしは
こわれたお城だけがのこったさみしいまちになってしまいました
おとずれるひとがすくなくなってしまったために、ものがうれなくなり
おみせをひらいていたひとたちはくらしていけなくなってしまいました
それだけではありません
こんどはなんにちも、なんにちも雨がふりませんでした
とね川はひあがり、こめもやさいもすべてのさくもつがかれてかけていました
このままではしゅうかくができなくなって
さくもつをつくっているのうみんまでくらしていけなくなってしまいそうです
まえばしのひとたちはとほうにくれていました
あるよるのことです
とつぜんおおきな音がなりひびきました
そしてそらがひるまのようにあかるくなりました
「かみなりだ!雨がふってくるぞ!」「雨だ!みずだ!」
ひとびとはおおよろこびでそとへとびだしました
ところが空には星がでていて雨などふりそうにありません
よく見るとこわれたお城のあたりが光っています
そしてしばらくするとそのひかりはきえてしまいました
次の朝、まちの人たちはみんなで夜ひかっていたしろあとを見にいきました
するとそこには大きなやぐらのようなものがたっていました (←先端がイチョウの葉の形のロケット)
「なんだぁ、こりゃ?」
「やぐらか?」
「てっぺんがイチョウのはっぱみてぇだぞ」
みんなでしばらくながめていましたが何もおきません
「どうする?」
「なんだかきみがわるいが、ほうっておくんべぇ」
ひとびとはろくにたべていないので何をする気にもならなかったのです
その日、ひとりの旅人がまちにやってきました
みなれないかっこうをしたその旅人たちはとてもつかれはてたようすでした
たべものをわけてくれる家をさがしてまわるのですが
じぶんのたべるものさえろくにないこのまちで
旅人たちにたべものをわける家はありません
日がくれるころ、つかれはてたのか
この旅人はとうとう通りのまんなかでたおれてしまいました
そのようすを見ていたコムネというむすめがいました
コムネは旅人にかけよると、声をかけました
「だいじょうぶですか、しっかりして!」
そして旅人を抱きおこそうとしますが
ちいさくてちからがないコムネにはどうにもなりません
そこで、まわりでみているまちのひとたちにてつだってほしいと声をかけますが
だれもてをかそうとしません
そして通りのひとたちはこういうのです
「コムネ、やめろ。人のことなどかまっていられねぇだんべぇ!」
「じぶんのたべものさえたいへんなのにどうするきだ!」
「でも、このままほうっておけば、この人はしんでしまう」
コムネはさけびますが、だれひとりコムネのいうことにみみをかしません
コムネはめげずに旅人をだきおこそうとします
それをみていたとなりのおじさんがみかねてコムネにてをかしました
ふたりで旅人をコムネのいえにはこびました
コムネはじぶんのいえにあったさいごのひとつかみほどの米で
旅人におかゆをつくってあげました
旅人はやっとのことでたべものをくちにするとあんしんしたようにねむりました
あさ、旅人はめをさましましたが、まだたちあがるだけのげんきがありません
そこでコムネはとなりのおじさんにおねがいしてたべものをわけてもらいました
じつはそのおじさんのいえにとってもさいごの米でした
でもおじさんはいっしょうけんめいなコムネをほうっておけなかったのです
ふたりが、じぶんでたべずに旅人にたべさせてたすけようとしているというはなしがまちにひろまりました
ゆうがたになってコムネがいえのとをあけると
あしもとにほんのすこし米がはいったふくろがおかれていました
よくあさにはふくろがふたつ、やはりコムネのいえのいりぐちにおかれていました
ふたりをみかねたまちのひとがこっそりとおいていたのでした
そんなことがなんにちかつづき、旅人もすっかりげんきをとりもどしました
そしてコムネとおじさんにおれいをいうとかわったかたちのナルコをわたしました
「このナルコをならしながらおどってみてください。きっとよいことがおこります」
そういいのこすと旅人はさっていきました
コムネはナルコをてにするとかるくふってみました
カチャカチャといいおとがします
おもわずクスっとわらってしまいました
おじさんもナルコをならしてみました
カチャカチャ
やはりおもわずフっとわらってしまいました
そのようすをのぞきみしていたまちのひともつられてフフっとわらってしまいました
でもそれだけで、なにもおこりませんでした
そのよるのことです
おおきな音がよぞらになりひびきました
そしていっしゅん、そらがひるまのようにあかるくなりました
おどろいてそとにとびだしたまちのひとたちがめにしたのは
てんたかくだんだんちいさくきえていく火の玉でした
火の玉がみえなくなったそのときです
ポツリポツリと雨がふりだしました
そして雨はだんだんつよくふってきます
「雨だー!雨がふってきたぞー!」
だれかがおおきなこえでさけびました
すると次々に喜びのこえがあがります
「雨だー!」「雨だー!」
まちのひとたちはそとにとびだしてびしょぬれになって
こおどりしながらさけびました
するとだれかがいいました
「おーい!しろあとにあったおおきなやぐらがなくなっているぞー!」
まちのみんながしろあとへいってみると
あのてっぺんがいちょうの葉のかたちをしたやぐらが
あとかたもなくなっているのです
「いったいあのやぐらはなんだったんだんべぇ?」
するとコムネのとなりのおじさんがいいました
「おれがもらったこのナルコは、あのやぐらのかっことそっくりだ」
「ほんとうだ、イチョウの葉っぱのかたちをしている」
「あの旅人はいったい…」
「しかしあんなでっかいやぐらがでたりきえたり???まるで神かくしだな」
「神かくし?…じゃぁあの旅人は神様ってこと?」
コムネはみんなにいいました
「このナルコをならしながらおどるといいことがあるっていわれたんだけど…」
雨はみっかみばんふりつづけ田や畑はうるおいました
川にも水がながれはじめ、まちのみんなにもえがおがもどりました
まちのみんなはコムネのはなしどおりにナルコをならしておどることにしました
そして雨のふりつづけていたみっかかんに
コムネとおじさんが旅人からもらったナルコとそっくりのナルコをおそろいでつくりました
そして雨があがったよっかめのひ
まちのわかいしゅうがしろあとにあつまってナルコをならしながら踊りをおどったのです
それをながめていたとしよりたちはむかしまちがにぎわっていたころをおもいだしていました
「お城があって、おとのさまがいたころは、こうやってみんなでおどったもんだなぁ」
「あのころはにぎやかだったからなぁ」
そのはなしをきいていたコムネはおもいつきました
「そうだ!みんなでお城をなおそう!お城をなおしてお殿様をよびもどそうよ!」
「でも、とてもそんなよゆうはねぇだんべえ」
「お城をなおすのはお殿様のしごとだんべぇ、俺たちがなおすもんじゃねぇよ」
「そんなこといっていたら、このまちもみんなもだめになっちゃう。あの旅人はきっとそれをいいたかったのよ」
「じゃ、それが神のおつげってことか?」
そのときおどっていたわかいしゅうはみんなでこえをそろえて
「そうだんべえ、そうだんべえ」
といいました。ふしぎとぴったりといきがあいました。
コムネが「それ!もういっかい!」というと
わかいしゅうは「そうだんべえ、そうだんべえ」とこたえます
またぴったりといきがあって、なんだかたのしくなってきました。
そしてわかいしゅうも、としよりもみんなでいっしょにこえをあわせます
「そうだんべえ、そうだんべえ」
そのひからお城をなおすこうじがはじまりました
まちのみんなは、ちからをあわせていっしょうけんめいはたらきました
やがていぜんたっていたお城よりずっとりっぱなお城ができあがりました
また、まちのなかのちょうどあの旅人がたおれたあたりに
イチョウのかたちのナルコをまつった神社をつくりました
そしてお殿様にもどってきてほしいとおねがいをしました
するとこのまちのひとたちのねついがつたわり
お殿様がもどってくることになりました
まちのひとびとはイチョウのかたちをしたナルコをならしながらおどってむかえました
もちろん「そうだんべえ、そうだんべえ」とかけごえをかけながら
まえばしのまちはまたもとのにぎやかさをとりもどしましたとさ
というお話なのですが、誰か絵本か紙芝居にしてくれませんか?
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