OBS (Open Broadcaster Software) はビデオ録画と生放送を行うことができる無料でオープンソースのソフトウェアです.国内外で動画作成・配信に広く利用されています.
公式ウェブサイト: OBS Project
公式ウェブサイトから,自分の使用しているOSに合わせてインストーラーをダウンロードします.ダウンロードしたファイルを開いてインストールします.
インストール時に「自動構成ウィザード」について聞かれますが,「はい」を選んで大丈夫です.「いいえ」を選んでも,いつでも実行できます.
参考:
Windows: OBS Studioのインストール方法 (外部サイト)
Mac: 【Mac】OBS Studioのダウンロード&インストール (外部サイト)
機能を拡張するプラグインも多くありますが,特にインストールせずとも基本的な講義動画の作成・配信は十分可能です.
映像と音声を撮る場合,大まかに言って以下の手順を踏みます.
設定する
オーディオ機器の確認をする.
カメラの確認をする.
録画する.
より詳細には以下の通りです.あらかじめマイクやカメラはPCに接続しておきましょう.
自動構成ウィザードを実行する.
自動であなたのパソコンの環境をチェックし,パソコンに合わせた設定を選んでくれます.1分以内に終わるでしょう.自動構成ウィザードはいつでもやり直すことができます.
使用情報は用途に応じて選んでください.
「配信のために最適化し,録画は二次的なものとする」 … ストリーミング用
「録画のために最適化し,配信はしない」 … オンデマンド用
映像設定はそのままでかまいません.
最後に「設定の適用」を押します.
オーディオ機器の設定をする.
マイク,スピーカーやヘッドホンをOBSが認識しているか確認します.
意図しないデバイスが使われていた場合 (デバイスが複数利用できる場合など),「設定 (Preferences...)」→「音声」から手動で選び直します.
マイクに向かってしゃべったとき,画面下の「音声ミキサー」の緑黄赤部分が反応するか確認してください.
もし反応がなければ,マイクが正しく認識されていません.設定やマイクの接続を確認してください.
もし小さい音しか発していないのに赤色になる場合,マイクの音量が大きすぎる状態にあります.緑黄赤のすぐ下にある,ボリュームをコントロールするスライダーを左側にドラッグして,音量を下げてください.
カメラの設定をする.
映像機器の設定をします.
「ソース」 (画面下左から2番目) → 「追加 (+)」 → 「映像キャプチャデバイス」→「OK」→「デバイス」のプルダウンから使いたいカメラを選び,「OK」.
録画・配信の設定を確認する.
撮った動画をどうするか,を選びます.この手順はスキップしてもかまいません.
「設定」 → 「出力」,を確認します.
撮った動画の保存先 … 「設定」 → 「出力」→「録画」→「録画ファイルのパス」を確認します.CドライブがSSD,など保存先の容量が少ない場合は,変更することが望ましいです.
動画ファイルの種類 … 「設定」 → 「出力」→「録画」→「録画フォーマット」.デフォルトはmkvファイルになっています.
動画ファイルのファイル名 … 「設定」 → 「詳細設定」→「録画」→「ファイル名書式設定」を確認.デフォルトは「年月日 時間.mkv」です.
ストリーミングを行う場合は,「設定」 → 「配信」から,配信したいプラットフォームを選んでください.デフォルトはTwichになっています.各プラットフォームでストリームキーを発行し,それをOBSに貼り付けます.
録画・配信する.
画面右下「コントロール」から,「録画開始」 (オンデマンド用) または「配信開始」(ストリーミング用) を選びます.
「録画終了」や「配信終了」をクリックすると止まります.
参考:
OBS Studio Quickstart (外部サイト)
OBSを使うと,講義動画にいろいろなものを写すことができます.たとえば,
PowerPointなどのスライドショー画面
カメラで写した自身の映像
テレビ番組のようなテロップ (文字)
パソコンやタブレットの画面
ブラウザ
画像
キャプチャーボード (ハンディカムやスマホの画面などを写したい場合)
などです.
写すものを設定するには,画面下の「ソース」を設定します.(+)ボタンをクリックして,写したいものの種類を選びます.消したい場合は(-)ボタンをクリックしましょう.設定は細々といじることができますが,基本的にはデフォルトのままで問題ありません.
複数のソースがあるとき,重ね順を変える際は,「∧」「∨」ボタンを使います.
Macの場合,はじめにセキュリティの設定を行う必要もあります.「システム環境設定」→「セキュリティとプライバシー」→「プライバシー」で,「画面収録」や「入力監視」や「アクセシビリティ」でOBS.appを許可しておきます.
シーンは録画中にも自由に操作することができます.とはいえ,録画前に必要なものはあらかじめ準備しておくことをおすすめします.
PowerPointなどのスライドショー画面
(+) → 「 ウィンドウキャプチャ」
PowerPointはあらかじめウィンドウ表示にしておくことをおすすめします.PowerPointで「スライドショー」→「スライドショーの設定」→「出席者として閲覧する(ウィンドウ表示)」にチェック.
Keynoteについては後述します.PDFファイルなども同様にウィンドウキャプチャしてください.
カメラで写した自身の映像
(+) → 「映像キャプチャデバイス」→「デバイス」で適切なカメラを選びます.
テレビ番組のようなテロップ (文字)
(+) → 「テキスト (FreeType 2)」を選び,「テキスト」欄に表示したい文字を入力します.
文字化けする場合,フォントを変えてください(たとえば和文のフォント(Hiraginoなど)).
少し下にスクロールすると,色や背景色の設定ができます.
文字をスクロールさせることもできますが,無駄な動きは学生の集中力を削ぐのでおすすめしません.
パソコンやタブレットの画面
(+) → 「画面キャプチャ」で,写したいディスプレイを選択.
ブラウザ
(+) → 「ブラウザ」
画像
(+) → 「画像」 (または「画像スライドショー」)
キャプチャーボード
(+) → 「ビデオキャプチャーデバイス」
追加したシーンは,マウスで自在に配置やサイズを変更することができます.
Keynoteのスライドショーを写す場合
KeynoteをHTMLファイルとしてエクスポートし,HTMLファイルをOBSでキャプチャーする,というやり方が平易です.
まず,スライドをHTMLファイルに変換します:
「ファイル」 → 「書き出す」 → 「HTML...」→「次へ」→保存先・フォルダ名を適当に決める.
保存したフォルダに「index.html」というファイルができます.これをブラウザ (Safari, Chrome, Firefoxなど) で開きます.
OBS Studioで,「ソース」→「(+)」→「ブラウザ」,からindex.htmlを開いているブラウザを選びます.
ソースに関するFAQ
ウィンドウキャプチャしたいが「ウィンドウ」に何も表示されない(Mac).
Macのセキュリティ設定を見直してください.「システム環境設定」→「セキュリティとプライバシー」→「プライバシー」で,「画面収録」でOBS.appを許可しておきます.必要に応じてOBSを再起動します.
画面下の配置がおかしくなった.
「表示」→「ドック」→「UIをリセット」
ソースのサイズが大きすぎて操作できない.
大きさを変えたい部分をクリックして赤枠にし,赤枠部分をドラッグして小さくしてください.
大きすぎる場合,変えたい部分を右クリックし,「プレビュースケーリング」を変更してみてください.
操作できなくなった.
ソース名の右端にある鍵マークをクリックしてください.
ソースが表示されなくなった.
ソース名の右にある目のようなアイコンをクリックしてください.
ソースの順番を「∧」で上に移動させてください.
「シーン」を設定することで,様々な画面配置をシームレスに利用することができます.
たとえば,
普段は「PowerPoint + カメラの映像」を使うが,ときどき「カメラの映像」だけを全画面表示したような絵面や,「ブラウザ」だけを全画面表示したような絵面がほしい.
「シーン」を複数設定しておくことでこうした希望を叶えることができます.
シーンは画面左下にあります.適宜追加して,シーンごとに画面配置を設定しましょう.シーンの名前は何でもよく,自分がわかりやすいもの (たとえば「PowerPoint, Camera 01」など)
録画中に,あらかじめシーンをクリックして選ぶことでシーン間を移動することができます.
他のシーンで使っているソースを追加したい場合,ソースを追加する際に「既存を追加」を選ぶと楽です.
シーン間を移動するときのエフェクトは,画面右下の「トランジション」で制御します.
ホワイトボード・板書したい.
いくつかの選択肢があります.
カメラで実物のホワイトボードを直接写して撮る.映像キャプチャデバイスをソースに追加すればよい.
ホワイトボードアプリ (Microsoft Whiteboardなど) やお絵かきアプリ (MS Paint, Adobe Illustratorなど) の画面をウィンドウキャプチャする.
iPad (SideCarやDuet Displayでミラーリングしておく) の画面をキャプチャする.
ブラウザでホワイトボード (たとえばGoogle Jamboard, Microsoft Whiteboard)を利用する.ブラウザをソースに追加すればよい.
音声を改善したい.
OBSにはノイズを減らしたり,一定以上大きい音を小さくしたりする機能を付け加えることができます.廉価なマイクでも,ノイズを減らし音量を大きくすることで,聞きやすい音を撮ることができることがあります.
音声ミキサーのギアマークをクリックし,フィルタを選びます.画面左下の(+)を押して,「ノイズ抑制」,「ノイズゲート」,「リミッター」を追加しておくとよいです.
音量を上げたい場合,「ゲイン」のフィルタを追加して音量を上げることができます.ただし上げすぎる(音声ミキサーが赤になる)と音が割れ聞こえづらくなりますので注意.
音量のばらつきを抑え,一定にしたい場合は「コンプレッサー」のフィルタを追加します.コンプレッサーは大きすぎる音を抑えて,全体の音量を底上げするもの,というイメージです.「閾値」を変えて,コンプレッサーが聞き始める音量を調整します.
「ノイズ抑制」フィルターで,環境音など小さい音を削ることができます.
最近のアップデートで「RNNoise (より高品質)」が登場しました.筆者(大城)の環境では,小さい音を削りすぎているように感じるので,従来の「Speex」のほうが好みです.
「ノイズゲート」も同様ですが,閉鎖閾値・開放閾値が大きすぎると,自分の声まで途切れ途切れになる恐れがあります.閾値はやや小さめに設定しておくことをオススメします.
ノイズ抑制,コンプレッサー,ノイズゲート,ゲイン,リミッター,のような順番にします (お好みで変えてください).
フィルタの設定をするときは,ヘッドホンやイヤホンを接続した上で,「オーディオの詳細プロパティ」→「音声モニター」を「モニターのみ(出力はミュート)」または「モニターと出力」にし,自分の音を確認してください.確認が終わったら音声モニターは元通り「モニターオフ」にしておきましょう.
いいマイクを手に入れましょう.
マイクは全方位の音をまんべんなく拾っているわけでなく,特定の方向のみの音を拾っています(指向性と言います).マイクと口の距離や角度を調整し,マイクの性能を活かすようにしてください.
音声は赤に引っかからないぐらいが望ましいです.(普通に話して-10dB~-6dBぐらいが目安)
頻繁に赤になる場合,音量を下げる・リミッターやコンプレッサーを加えるようにしてください.
クロマキー合成したい
データダイエットのために、動画の容量を圧縮したい場合は、次のように画質・音質の設定を検討してください。
設定 (画面右下のコントロールや、ファイル(F)→設定(S)) → 映像 → 出力 (スケーリング) 解像度、を小さくする。
たとえば「1920x1080」やそれに近い数値になっている場合、大きすぎます。もっと下げても実用上問題ありません。ここを下げればファイルサイズが激減します。
設定 → 出力 → 出力モードを「詳細」 → 音声タブ → トラック1の音声ビットレートを下げる (たとえば96--128kbps程度)。
音楽を流すわけではないので、ビットレートはある程度犠牲にしても問題ありません。ただしたいしてファイルサイズは減りません。
NVIDIAのいいグラボを積んでいる場合,出力→エンコーダを「NVIDIA NVENC H264 (new)」にしてみましょう.筆者(大城)はQuadro P2000でレート制御をCQPかCBRにしています.
Macの場合,ソフトウェアエンコーダーをハードウェアエンコーダーに変更できるならしてみましょう.
自動アップデートができない.「avutil-56.dll is still in use」などと表示されて途中で止まる.
筆者(大城)の場合,Microsoft Teamsが起動しているときに生じます.Teamsをいったん終了してください.