はじめに
ここでは、スペクトルを初めて手にした方が、実際にデータを読んで、構造の確認、未知化合物の構造推定に役立てることができるようになることを目標にしています。
機器分析による構造解析の教科書はたくさんありますが、まず最初に、もっとも基本的な事柄を有機化学の教科書で学ぶのが良いでしょう。大学の学部で使うような厚めのものなら機器分析の章に、EI-MS、1H-NMR、13C-NMRについて書かれています。このページを書くにあたって私は、マクマリー「有機化学」の構造決定の章を参考にしました。有機化学の教科書を読んでから機器分析の教科書(たとえばSilversteinら「有機化合物のスペクトルによる構造決定法 第5版」東京化学同人)を読むと理解しやすいと思います。また、Silversteinに収録されている数値データが不足の場合、データ集として E.プレシュら「有機化合物スペクトルデータ集」講談社サイエンティフィクが一冊あると実際にスペクトルを解析する際に役立ちます。
多くの教科書では、スペクトルを掲載していても数値テーブルを載せてはいません。ここでは、行数が多くなってしまいますがテーブルも掲載しました。データを発表する際にはテーブルからケミカルシフトとカップリング定数を読みとって表にまとめる作業が必要ですが、そのやり方についても説明を加えました。
スペクトル解析は、「習うより慣れろ」です。本文には例題、演習を盛り込んでありますので、実際に手と頭を動かしてやってみてください。
MS,IR,NMR総合
改訂版"MS,IR,NMRスペクトルを使って構造を推定するポイント(R2.4.28版)
質量分析(MS)
くわしいスライド
MS概要
分子量の決定、各種イオン化法
いろいろな質量分析計~質量分離の方法
いろいろな質量分析計~クロマトグラフ質量分析計
スペクトルの見方~測定条件・ヘッダの見方
精密質量測定・同位体パターンと分子式推定
核磁気共鳴(NMR)
NMR概要
NMRの基本原理
1H-NMRスペクトルの見方
13C-NMRスペクトルの見方
二次元NMRとは?(linalool)
応用編
二次元NMR法によるシグナルの帰属(thymol)
演習(ferulic acidの帰属)
二糖のNMR解析(sucrose) オリゴ糖のNMR解析の基礎としてシュークロースの帰属、糖残基の結合位置の決定を行います。
未知化合物の構造推定(carvone)と立体化学の考察(NOESY,NOE差スペクトル)
演習-1
演習-2
配糖体の構造解析(naringin)アグリコンの構造推定、糖の結合位置決定を行います。