11月26日(水)、全校生徒を対象に、酒井響希さんをお招きして、人権講演会を実施しました。酒井さんは全盲のプロドラマーで、2020東京オリンピックでは国旗ベアラー、パラリンピック閉会式ではドラマーとして出演していた現役大学生です。まず、校長先生から「著名な障がい者さん等の伝記では、障がいは苦しいということを前面に出してあったので、そういうものだと思い込んでいました。ですが実際に障がい者の方と接すると、苦しさを感じさせないような素晴らしい方も多いと気づきました。障がい者の中で視覚障がいの方は少なく、盲学校の数も全国的に少ないです。ですが視覚障がいであることを題材にした漫画やドラマが人気を博し、またラジオ番組で全盲の方が全盲の視点でお話をしたりと、どういった障がいなのかが周知されつつあり、またその活き活きとした活躍も目にとまるようになりました。今日お越しいただいた酒井さんは小児がんにより2歳で両目を失い、4歳からドラムを始めました。小学生のうちから各種メディアに出演し、また高校生の頃はスポーツでも活躍し、フロアバレーボールで3年間全て全国優勝しました。そして弁論大会でも全国優勝し、英語検定の準1級も持っています。とても素晴らしい方にお越しいただきました。」とお話があり、酒井さんのお母さんからは「2006年9月生まれの響希は、外で遊ぶのが大好きな、よく走りまわる子でした。1歳半のとき、黒目が緑色に変色しているのを心配し、病院に連れて行くと、網膜芽細胞腫、つまり小児がんであり、命を守るためには両目の摘出が必要だと告げられました。この子が光を失ったらどうやって生きていくのだろうと、すごく不安でした。ギリギリまでためらいましたが手術をする決心をし、両目の摘出を無事に終えて退院し、家に帰ると響希は何もできずパニックになり、泣き止まなくなってしまいました。この子の可能性を奪ってしまったと強く感じ、どうすれば力になれるかを考えました。そして家具の配置を変えたり、家のいろんな場所にクッションを置いたり、できることをとにかくしました。すると、少しずつ外も歩けるようになり、落ち着きを取り戻していきました。あるとき、テレビの音に合わせて家の壁をたたいて、楽しそうにしているのを見て、それならドラムをやらせてみようと、4歳のときにたたかせてみました。ドラムをたたいて、音が鳴った瞬間、顔がとても明るくなり、本当に嬉しそうでした。音の中では自由に居られて、そして音楽は人とつながることのできるツールでもありました。5歳になり、公民館で演奏をさせてもらったこともきっかけになり、自信がつき、それが力になりました。その後、沢山のアーティストさんと共演させてもらい、ひとりのドラマーとして向き合ってもらいました。そして今は大学で、英語の教員免許を取得するために日々勉強しています。できることを少しずつ増やそうと毎日を生きています。ひとと比べすぎず一歩ずつ、諦めず前を向けば道は開けます。新しいことにこれからも挑戦していきます。」とお話しいただきました。
酒井さんが小さかった頃からアーティストの方と共演したときのことをまとめて、メディアを通して発信された時の映像を流し、小学生の頃の酒井さんが「ママ!もう、泣かんといてな!」とステージ上で堂々と告げる声の後、青翔の体育館の舞台で酒井さんがドラムを演奏し始めました。19歳とは思えないほど熟練した演奏で、生徒たちも圧倒されておりました。叩き終わり、相方のプロサーファーの方と前に出て、酒井さんの、スポーツを始め、色々なことに挑戦して、負けず嫌いでなんでも上手くなる人柄や、様々な有名アーティストさんとコラボしていることを聞かせてくださり、また、「パラリンピック閉会式に出場したときに、選手さん達が障がいを持っていてもネガティブにならず、逆にその障がいがあるからこそ何ができるかを考え、いろんなことに挑戦されている姿を見て、自分と同じ目標を持っている人がいるんだ、自分がやっていることは正しかったんだなと再確認できてよかった」と話してくださいました。また、高校2年生の時に大阪府教育委員会主催の人権作文コンクールの最優秀賞を受賞した人権作文を、実際に本番と同じように発表してくださいました。日本の法律に1996年まで存在した優生保護法の話から始まり、互いの個性を尊重し合うことが未来を切り開く近道になる、と締めくくられた作文を、とても力強く、表現豊かに読み上げ、体育館の空気がピリリと緊張感に包まれ、本当に素晴らしい発表でした。
生徒から酒井さんに質問できる時間があり、「義眼ってどういう役割なんですか?」という質問に、「目を摘出すると、そこに空洞ができてしまい、見た目が怖くなってしまうから、というのが一番の役割です。青翔はサイエンスに力を入れている学校と聞きました、将来、目が見えるようになる義眼を作ってくれたら嬉しいなって思っています、頑張ってください」と返答をいただけたり、沢山の質問に答えていただきました。その後、青翔の吹奏楽部と一緒に演奏してくださり、部長からは「オシャレな演奏で素敵でした」と感激の言葉を聞くことができました。部員たちにとって、これからもずっと心に残り続ける素敵な時間になりました。
最後にもう一度、音源を流しながらドラムを叩いてくださり、またアンコールにも応えていただき、大満足の人権講演会となりました。障がいとはなにかを今一度とても深く知ることができる、本当に良い時間でした。何より酒井さんの底抜けの明るさが、障がいに対するイメージすら変えてくれたと思います。この度来てくださいました酒井響希さんをはじめとした皆様、この度は本当にありがとうございました。
(校長先生の掲げている機械は、酒井さんが人権作文を読み上げるのに使っていた点字ディスプレイです)