もうすでに3年目になりますが、「GIGAスクール構想」のそもそもはご存じでしょうか。
「GIGA」はデータ容量単位の「ギガバイト」ではありません。「Global and Innovation Gateway for All」=「全ての児童生徒のための世界につながる革新的な扉」の略です。この「革新的な扉」が1人1台端末をはじめとしたICT機器です。そして、日本の全小中学校の児童生徒に1人1台端末を整備することと、日本の全小中学校の高速ネットワーク通信環境の整備することがこの政策の大きな柱です。
2018年、OECDのPISA調査(79カ国・地域が参加)が実施されました。その結果、日本は数学的リテラシーが6位、科学的リテラシーが5位と上位を何とか保ったものの、読解力は15位と過去最低でした。PISA調査の読解力は、①情報を探し出す、②理解する、③評価し、熟考するの3つの能力を測定しています。まさに、情報活用能力なのです。
また、この調査では、日本の子供のICT活用率について、
「遊び」でデジタル機器を使う国No1(調査参加79カ国・地域中)
授業でICTを活用しない国No1(OECD加盟国37カ国中)
コンピュータを使って宿題をしない国No1(調査参加79カ国・地域中)
というあまり喜ばしくない称号を得ました。
この結果を機に、2019年度から5年間で教育の情報化を整備する計画(GIGAスクール構想)でした。しかし、2020年3月に新型コロナウイルス感染症に伴う全国一斉休校措置がとられ、子供の学習保証のため、様々な方面の尽力の末、3年前倒しで整備が完了しました。つまり、「コロナがあったからGIGAがきた」「コロナが終わればICTもほどほどでいい」というものではないのです。
人が生きる時間が長くなっています。「人生100年時代」といわれています。子供たちの生きる未来は、これまでのような「終身雇用」、「経験主義」といった時代ではありません。「マルチステージモデル」といわれ、60歳代で退職ではなく、もっと長く働かなければならない時代といわれています。そこでは、自らキャリア設計をし、道を切り開いていく力が必要です。キャリア設計のために必要な学びに自分で取り組んでいかなければなりません。
つまり、学校を卒業した後も自分で学び続けなければなりません。「何を学ぶか」ではなく「どのように学ぶか」が大切です。そのために、端末をどう使うかではなく、端末が使えることが前提で、自分に合った学び方を身に付けることが求められています。
狩猟採集社会をSociety1.0、農耕社会をSociety2.0、工業社会をSociety3.0、情報社会をSociety4.0として、これからの社会は、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより経済発展と社会的課題の解決を両立する新たな未来社会として「Society5.0」と定義しています。「超スマート社会」とも言われています。
4.0は人間が情報を解析することで価値が生まれる社会であり、5.0はビッグデータをAIが解析しロボットを通して人間にフィードバックされることで新たな価値が産業や社会にもたらされる社会であるという点が、4.0と5.0の違いです。
【兵庫教育大学大学院 永田智子教授の講話より】
「Society5.0が到来する」というふうに書かれている「到来」って書いてあると、何か知らないうちにやってくるんじゃないか、外から自動的にやってくるっていうふうな感じがする。これは、ほっといてくるわけじゃなくて、私たちが作っていかないとこない社会ですよっていうことなんです。
なので、下手すると日本だけが、そういう社会(Society5.0)にならずに、世界から置いていかれるということになっていくので、そういう社会を作り出していける子供たちを育てないといけないというところを、まず前提として考えていかないといけない。
自分たちで社会をつくっていくというポジティブなマインドとともに、スキルというか、知識や技能という、そういったものを育てていく必要があると思う。
近年、世界各国の政府文書でも「VUCA」という言葉が頻繁に使われています。今は、先が見通せず、不確実性が高く、予測不可能な時代だと言われています。
一人一人の児童生徒が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の作り手となることができるようにする。
✔これらの資質・能力を育むためには、新学習指導要領の着実な実施が重要
✔これからの学校教育を支える基盤的なツールとして、ICTの活用が必要不可欠
【参考資料】
よく分かる教育DX 日経BPムック
「GIGAスクール」を超える 髙谷浩樹 東洋館出版社
GIGAスクール構想で進化する学校、取り残される学校 平井聡一郎編 教育開発研究所