第13章 質実剛健

人は、戦士だ。

環境に、戦いを挑む。

環境を変えるために、戦う。

何のために、環境を変えるのか。

それは生き延びるため。

まず、生きるために。

環境を大きく変えなくても、生きれるかも知れない。

しかし、さらにより良く生きるために、環境に挑む。

生きていることは、それだけで幸せだが、

さらなる幸せを望むことも、生きること。

より良く生きようとすることも、生きることだ。

それは、生きている証しを得ること。

環境のなすがままになるのではなく、

環境に対応できる自分を、実感すること。

環境を変えれることを、実感すること。

より良く生きようと努力していることを、実感すること。

生きてる証しを得ること。

さらに生きている実感を得ること。

それが、幸せだ。

生きている幸せは、動物の、本能的快感。

より良く生きる幸せは、人の、理性的快感。

生を得たことは、すべてにおいて奇跡。

ならばその生を、満喫することは、

奇跡を手に入れたことに対する、感謝だ。

そのために、人は、より良く生きようとする。

幸せを目指す。

人は、戦士。

環境に、戦いを挑む。

しかし、いきなり環境を変えることはできない。

少しづつ変えていくしかない。

そのためには戦略が必要だ。

目的と手段を、明らかにしなければならない。

そして、自分だけに都合のいい環境に変えてもいけない。

それは、不安定な環境。

やがて誰かに変えられてしまうだろう。

環境の、奪い合いになる。

戦うのは環境に対してであり、人に対してではない。

人は、生きることの戦士。

環境もまた、人を攻撃してくる。

そのためには、鍛錬が必要だ。

戦士は強く、タフでなければならない。

俊敏で、慎重でなくてはならない。

戦士は、戦う装置、

欲望も感情も、心奥深く封じ込めなければならない。

そのためには、四つの観念が必要だ。

愚念、諦念、脱念、悟念

この四つの観念が、戦略の基本となる。

愚念とは、自分が愚かであることを知って、行き過ぎず、

しかし、そのことを過剰に恐れず恥じず、

また後悔し続けない思いを言う。

諦念とは、すべてが自分の思いどおりにならないことを知り、

ものごとに執着し過ぎない思いを言う。

脱念とは、複雑化するものごとをシンプルにするために、

割り切って捨てる、

邪魔となる、人としての欲望、感情から脱する思いを言う。

悟念とは、自然の無常を知り、しかし人がその無常の中で、

必死に環境を変えるべき理由を知り、その道理に従う思いを言う。

人は、戦士だ。

環境に、戦いを挑む。

それは生き延びるために。

環境より、生を守るために。

そして、さらにより良く生きるために。

『哲士は、質実剛健、

果敢に環境に挑み、

秩序を勝ち取る』