第1章 行雲流水
人は、憐れで、愚かで、残酷で、あさましい。
小賢しい知恵を振りかざして、自己を正当化する。
屈辱を異常に恐れ、そして手のひらを返したように、媚びる。
強いものに媚びる。
利用できるものに媚びる。
好きなものに媚びる。
愛するものに媚びる。
媚びることは、礼儀ではない。
媚びることは、ものごとを円滑には進めない。
媚びることは事実をごまかし、ものごとを誤らせる。
そして、媚びた分だけ、弱いものをいたぶる。
あざけり、毛嫌いし、軽蔑する。
これらが、群れで生きる人の、自然の流れか。
そうだとしたら、人はあまりに痛ましい。
人が、憐れで、愚かで、残酷で、あさましいのは自然だ。
しかし人は、それが恥ずかしいと思う。
それも、自然の流れだ。
人は、プライドを持っている。
プライドは、人が大きな道理を守ろうとする意志。
なぜ、人は道理を守ろうとするのか。
それが大きな自然の流れだからだ。
『哲士は、行雲流水、
何事にも執着せず、
大きな自然の流れに従う』