ウナギ科 Anguillidae


体は細長い円筒形。体は粘液で覆われ,微小な小判状の鱗があり,皮下に埋没。吻は丸く,下顎はわずかに上顎より突出。鰓孔は半月状で,体側にある。頭部側線管および側線は完全。胸鰭は発達し,団扇状。総脊椎骨数は100~119。


降河回遊性。沖合の海域で孵化した仔魚は,プレレプトケパルス幼生を経てレプトケパルス幼生に変態する。レプトケパルス幼生は海流に乗り,成育場近くの海域で稚魚(シラスウナギ)に変態,接岸する。シラスウナギは神経頭蓋上部から色素胞が発達し,クロコ(色素胞が広がり,筋節に沿う黒色素胞が不明瞭になった状態)を経て黄ウナギ(腹腔内へのグアニン色素沈着が完了した状態)となったのち性分化し,淡水域や汽水域,沿岸域を生育場として成長する。一般的に夜行性で,日中は岩の隙間や泥底などに隠れ,夜間に活動して様々な水生動物を捕食する。成熟が始まると体は銀化し、銀ウナギ(背側が暗褐色,腹側がグアニン色素沈着で金属光沢を呈し,眼の肥大化,胸鰭の伸長と黒化が生じ,消化管壁が薄くなった状態)となる。銀ウナギは餌を食べなくなり,産卵のために海に下る。沖合の特定の海域で産卵し,生涯を終える。


熱帯~温帯,亜寒帯に生息。ウナギ属は16種6亜種が知られ,国内では4種が確認されている。形態の差異から4グループに分類されるが,グループ内での形態による種同定は困難であり,採集地や遺伝子の情報が不可欠となる。近年の分子系統学的解析では,シギウナギ科やノコバウナギ科といった外洋中深層性の種に最も近縁であり,ウナギ類はそのようなグループから派生した魚類であることが示唆されている。


シラスウナギから黄ウナギ・銀ウナギに至るまで,養殖と消費のために世界規模で漁獲され,取引されている。日本は「土用の丑の日」など,伝統的なウナギ食の文化があり,かば焼きが特に有名。日本を含む東アジアは世界的にもウナギの一大消費地であり,国際取引を通じて世界各地に大きな影響を与えている。


近年,世界的にその資源減少が問題となっており,過剰な消費や成育場環境の悪化,海洋環境の変容,河川横断物,外来の寄生虫などの要因が複雑に関係していると考えられている。養殖に使われる種苗は天然のシラスウナギに依存しており,その密漁もたびたび摘発されている。完全養殖による人工種苗の生産は,コスト面などの問題からいまだ実用化に至っていない。


ウナギは文化的・経済的な価値が高く,さらに生態系においても重要な役割を果たしている。ウナギの資源・文化の保全,ひいては生態系全体の保全のためにも,早急な対策が必要である。