2019年度 夏合宿 ドキドキ♡ヒグマ♡パーティー @知床半島 報告書
報告者:柳田
2019年度 夏合宿 ドキドキ♡ヒグマ♡パーティー @知床半島 報告書
報告者:柳田
・日程
8月10日(土)~16日(金)
・アプローチ
仙台 - 函館 - 札幌 - 北見 - 網走(1日目)
網走 - 知床斜里 - ウトロ - 羅臼(2日目)
・コース
羅臼 - ルサフィールドハウス - 相泊 - 観音岩(3日目)
観音岩 - 青沼 - 知床沼(4日目)
知床沼 - 青沼(5日目)
青沼 - 観音岩 - 相泊(6日目)
・メンバー
2年...柳田(PL・医療・無線) 、石川(SL・GPS) 、高橋(SL・装備)
1年...内山(気象)、増田(エッセン)、若山(写真)
8月10日(土)「いざ、北の大地へ」 出発式→函館→札幌→北見→網走
早朝5:30、パンパンに膨らんだザックを背負って部室へ集合。出発式には、29期の田原さん・58期の星さん・4年の北村さんの3人が来て下さり、ウイスキーやふりかけ、鉈、蚊取り線香などをいただいた。大変嬉しかったが、その分、ザックがはち切れそうになった。仙台駅では、周りから奇異の目で見られていた気がする。
個人的に、初の北海道上陸。降りたった瞬間、東北とは質の異なる寒さを感じた。さすがは北海道。札幌では1時間弱の自由時間があり、各々好きなように散策した。北大や札幌駅を中心に歩き回り、中にはmont-bell 札幌赤レンガ テラス店へ行ったメンバーもいた。その後は、バスと電車を使って網走へ。網走駅近くのすき屋で反省会をし、23:00すぎに住宅地の公園にて、就寝。
【特記事項】
・今のところ忘れ物はない。
・北海道、寒い。
駅中で陣取るTUWV一行 @仙台駅
唐辛子ソースの末路 @網走駅
8月11日(日)「ご厚意にあずかる」 網走→知床斜里→ウトロ→羅臼
朝3:40、ウミネコの鳴き声で目が覚める。近隣住民の方々にご迷惑をかけないよう早々に公園を出発。網走駅の待合室でゆっくりしていると、静寂を破る甲高い音が聞こえた。よりにもよって、石川が出発式で頂いた「唐辛子ソース」の瓶を誤って割ってしまったのだ。駅員さんにご迷惑をおかけしたあげく、待合室に唐辛子のにおいが漂うこととなった。
後始末をした後、電車で知床斜里へ。バス乗り場では、ザックを背負った外国の方と歓談。地図を使って知床岬へ行くことを伝えると、ひどく驚かれた。斜里から羅臼へ向かう途中でウトロの知床自然センターに寄り、ロッカーを使わせてもらう。鍵さえなくさなければ、ずっと使用していて良いとのこと。非常に助かった。
羅臼行きのバスからは、知床の大自然が見えた。残念ながら羅臼岳は、頂上付近が雲に覆われていて全貌は見えなかった。羅臼に着くと、まず交番へ行き、登山届けを提出。今年は、ヒグマの出没件数が多いらしく、なんと、ヒグマが飼い犬を襲う事件が頻発しているとのこと。改めて身が引き締まる。その後、セイコーマートを拠点に行動食の買い出しを行っていると、地元の方に話しかけられた。今日中に羅臼温泉野営場まで行くことを伝えると、送迎していただけることに。非常にありがたかった。
「食事処 松尾」にて食い納めをしてから、待ち合わせ場所の「コバヤシ理髪店」へ。店主の小林さんと、散髪に来ていたお兄さんが車でキャンプ場まで送って下さった。さらに、羅臼昆布1枚とアメ、おつまみを頂いた。キャンプ場でテントを設営した後は、天然無料温泉「熊の湯」へ。熱めで非常に良い湯だった。テントで反省会をし、若者の舌に合わなかった差し入れのウイスキーをキャンプ場にいた2人組の方に譲った。19:00すぎに就寝。
【特記事項】
・防寒着を持ってきていないメンバーがいることが判明。
知床自然センターで一枚
道の駅「知床・らうす」にて
8月12日(月)「山の神、現る」 羅臼→ルサフィールドハウス→相泊→観音岩
朝5:30、小林さんに羅臼バス営業所まで送っていただく。お礼に、差し入れでいただいたウイスキー(2本目)を贈呈した。一旦、小林さんは帰られたが、再び来られて、羅臼昆布とお菓子を頂いた。6:20発のバスでルサフィールドハウスへ。バスは20kmくらい走行したにも関わらず料金は100円。利用者が限られているからだろうか。バスを下りると、真ん前にキタキツネがいた。さらにその後も魚を2匹咥えたキツネが道路を歩く様子が見られ、野生動物の楽園「知床」に来たことを実感。ルサフィールドハウスでは、波が高く、また化石浜でヒグマが停滞しているため、海岸歩きで観音岩から先に進まないように自粛を求めていると告げられた。幸いなことに自分達は、知床半島の尾根上を藪漕ぎで縦走するので、大丈夫であった。なお、藪漕ぎで岬へ行く団体は、年に2団体ほどいるらしい。フードコンテナを借り、記念写真を撮っていただいてから、徒歩で相泊を目指した。
10:30、ルサフィールドハウスを出発。相泊までの道は、結構、車が通っていた。
10:42、子グマに柵越しに遭遇。距離わずか5mほど。緊張が走った。
12:11、相泊に到着。荒れた海を見ながら昼食。
13:00、気合いを入れ、相泊を出発。
13:02、森林の方から突如、体長2mほどのヒグマが現われた。その距離わずか8mほど。非常に危険なシーンであった。みんな落ち着いて後ろにバックし、足早に相泊橋まで避難。ヒグマは、相泊漁港の方へ行き、魚を咥えて森へ帰っていった。その体は、痩せていた。森に食べ物が不足しているのだろう。ヒグマは、想像以上に動きが速く、TVなどで見たとおり、真っ黒であった。
13:15、みんな怖じ気づいていたが、ヒグマがいなくなったことを確かめた後、再出発。必死になってヒグマ除けのために、笛を吹きまくりながら。
14:10-14:20、海岸で一本。
14:30~小雨が降り始める。
14:55-15:10、20mの観音岩をフリーで登った。
観音岩のテント場予定地には、環境省が設置した登山者カウンターがあり、また観音様の石像があちこちにあった。いったい誰がこんなにたくさんの石像を設置したのだろうか。その後、フードコンテナの置き場所を決めて、そこで各自夕食を取った。ラジオ気象通報にて、巨大台風の発生を知る。このままだと北海道にも来そうであった。改めて2年メンツで食糧問題等(*)を吟味したところ、予備日が完全になくなることがわかった。入念にフローチャートを作り、明日に備えた。
夜、テントでの反省会は非常に盛り上がった。恒例の大富豪にて、負けた各々の暴露話が非常に面白かった。話し声が、ヒグマ除けになった気がする。念のため、ラジオをつけっぱなしで寝た(20:00)。最初は、なかなか寝付けなかったが、いつの間にかぐっすり寝ていた。なお23:00頃は強い雨が降っていた模様。
【特記事項】
・石川、そもそも食糧を持ってきていないことが判明(*)
・世界遺産の地に、ゴミがたくさん落ちていて悲しかった。
相泊橋付近で昼食、この後ヒグマに遭遇するとは思いもしなかった。
海岸線を進む。
8月13日(火)「悪天候」 観音岩→青沼→知床沼
4:00、起床。すぐにテントを片付け、フードコンテナ置き場で朝食を食べる(4:40)。この際、久しぶりに太陽を拝むことができた。
5:42、観音岩を出発。ウナキベツ川のトレースに入ると、まず登山者カウンターがあった。久々の人工物に少し安堵する。最初は、急なロープ場。昨日の雨のせいで地面が滑りやすく、危険であった。その後の樹林帯のトレースは事前情報の通り、複数あり、迷いやすくなっていた。
6:41-6:54、ウナキベツ川沿いで一本。その後、3回ほど渡渉しながら進んだ。道中、新しいエゾヒグマやエゾシカの糞をたびたび見た。 やはり、近くに潜んでいるのだなと感じた。なお、途中、「NARUTO」に出てくるようなガレ場を遠目に見た。
7:54-8:07、一本 c360。再出発の際、髙橋が熊撃退スプレーを忘れかける。危なかった。
8:15-8:22、青沼に到着。噂に聞いていたとおり、青く透き通った綺麗な湖であった。しばし遊ぶ。ここから先は、ポロモイ台地へと続く尾根へ取り付く。尾根は片側が切れ落ちており、危険であった。
9:11-9:35、一本兼昼食。尾根を登り切ったら、カルスト台地のような場所にでた。
10:30-10:45、一本、c830。ここから先は、ハイマツの藪だった。最初は、切り開きのトレースらしきものがあったが、徐々になくなり、完全につっこんで行くことになった、事前情報の通り、ハイマツは堅く、ザックに枝が引っかかったりして進みにくかった。途中から、霧が立ちこめ、強い風も吹く中、小雨が断続的に降る。
11:15、c850。
11:55、c870。
12:22、c882。なかなか思い通りに進めず、沼も遠く感じた。なお、雨で体が濡れ、さらに強い風のせいで防寒着を着ていても結構寒かった。誰かが低体温症になる可能性を考慮しつつ、注意深く進んだ。
14:00、前方が急に進むのを止め、なにやら話していた。最後尾からはハイマツのせいで前がどうなっているのかわからないため、藪を漕いで前方へ。どうも若山の様子がおかしい。体の震え、過呼吸などの症状から、低体温症になっていると判断。急いでエマージェンシーシートをかぶせ、ぬれている服を脱がせて長袖の暖かいTシャツに着替えさせた。強い風のせいで、エマージェンシーシートだけでは、保温効果がないと判断し、ブルーシートを活用することに。みんなで若山を取り囲むように押しくらまんじゅうをし、その上に雨風をしのぐブルーシートをかぶせた。行動食の羊羹を食べさせ、声をかけ続けた。その結果、回復させることに成功した。早い段階で気づけて良かった。
15:26、さすがにハイマツの藪の中でそのまま夜を迎えるわけにはいかなかったので、回復した若山の歩荷を減らし、知床沼を目指した。ハイマツの空中戦を繰り広げる中、一回転して巨大な穴に落ちる。体が一時的に麻痺して動けなくなり、死ぬかと思った。
16:05、ついに知床沼に到着。霧のせいで、全貌がはっきりせず、広大な海が目の前にあるかのように思われた。足早にテント場指定地へ行き、テントを立て、暖を取った。夜ご飯のミートソース丼で体力を回復させ、早めに休むことにした。なお、今後も悪天候が予想されること、食糧忘れで停滞ができないことを考え、明日ポロモイ岳を目指すのを辞め、エスケープをする決断をした。
19:56、石川が騒ぐ。何事かと思い、テントの外を見ると、空が晴れており、月明かりに照らされた知床沼および知床の山々を見ることができた。風も静まっており、幻想的な景色だった。
21:20、就寝。もちろん、ラジオは付けっぱなしであった。
ヒグマの痕跡があちこち見られる樹林帯
片方が切れ落ちている尾根上を行く。
背丈を超えるハイマツの中を進む。左奥に知床沼が見える。
寒すぎて幽霊になったメンバー @知床沼
8月14日(水)「最高の天気」 知床沼→青沼
4:20起床。寒すぎてすぐ動けなかった。テントから顔を出すと、知床岳方面が綺麗に見えた。朝は、カルボナーラ丼。食べたら、そそくさとテントを片付け、外でしばらく各自荷物整理をしたり、写真を撮ったりした。天気は最高に良く、気持ちよかった。ちょっと遊びすぎたかも知れない。
8:00に出発。ザックを背負ったとき、ザックの腰ベルトがなくなっていることに気づく。どうやら、藪に持っていかれたようだ。しょうがなく、肩だけでザックを背負って進む。すぐに帰る必要はなかったため、私の希望で地形図上に書かれている岩を目指す。50分後に巨岩に到達。登って周りを見渡すとそこは、昨日とは一変した素晴らしい景色が広がっていた。半島の両岸を見ることができ、また、ポロモイ岳の山頂と思わしきものも見えた。国後島もはっきりと見えた。知床沼の全貌も現になり、昨日、海のように見えた沼は、小さく感じられた。「来て良かった。」そう思えた瞬間であった。(8:50-9:20)。
その後は、強い直射日光を浴びながらのハイマツの藪漕ぎ。まずは、ハイマツ帯を抜けることに集中した。今日は、暑かった。また、昨日と違い、周りの景色がはっきり見えるため、ハイマツを漕ぐのは大変だったが、楽しかった。
10:35-10:46、一本。途中、眼鏡のフレームをハイマツの藪に折られる。無理矢理ハイマツをかき分けたのが悪かったようだ。幸い、スペアを持ってきていたので、何とかなったが悔しい。
11:28-11:48、一本、c866にて。最後は、せっかくの機会なのでトップを務めた。行きに通ったトレースからずれていたのを修正しつつ、道無きハイマツ地帯を進み、一発でトレース上に復帰することに成功した。改めて、地図読みの力がかなりついていることを実感。快感だった。
12:30-13:00、一本&昼食、カルスト台地っぽいところにて。藪を抜ければ、後は、トレースを下るだけだと意気揚々に皆進んだ。しかし、トレースは行きとは一変して、わかりにくく、何度か先頭が誤ったトレースを進んでは、引き返すことを繰り返した。
13:50-14:01、一本、皆の顔に疲れが見られた。このままだと今日中に相泊まで戻るのは、難しいと判断。青沼で一泊することに。15:00、青沼のほとりでエッセンをし、中華丼を食す。また、グラノーラ&スキムミルクをデザートとして食す。最高だった。また、後から岬を目指して来る慶應ワンゲル(KWV)一行が見つけてくれるかもしれないと思い、青沼のほとりに、木の枝でTUWVの文字を作っておいた。もちろん、夜は大富豪で盛り上がった。
巨岩の上にて、写真を取り合った場面
地平線に見えるのは国後島
8月15日(木)「帰還」 青沼→観音岩→相泊
4:00起床。朝ご飯は、とろろ丼。
6:00、青沼を背景に写真を撮ってから、出発。
7:01-7:13、一本、c60にて。
7:28-7:38、観音岩。ここでアブと蚊を初めて見る。
8:11-8:19、海岸で一本。
9:03、無事、相泊へ帰還。
歩いてルサフィールドハウスを目指す(4km)。道中は、足が痛かった。また、藪漕ぎ中はあまり感じなかったザックの腰ベルトがないことによる肩への負担が、顕著に表れ、つらかった。途中の自販機でジュースをみんなに奢った。ルサフィールドハウスで、フードコンテナを返却。遭遇したヒグマの情報を伝え、しばし歓談。知床沼では、たまに泳いでいるヒグマや、ハイマツの実を食べるヒグマがいるとの話を聞き、驚いた。
その後は、岩見橋からバスで羅臼の営業所まで戻った。バス営業所から徒歩でキャンプ場へ。テントを立てた後、「熊の湯」へ体を休めに行った。すると、何やら、重装備の一行がいたので、もしかしたらと思い、声を掛けてみたところ、事前の情報共有でお世話になったKWV一行であった。この際、自分達がエスケープしたこと、現地の情報を伝え、彼らに知床岬到達の夢を託した。テントでは、残った食糧の分配と夏合宿全体の反省会を行った。増田が奢ってくれたビールが身に染みた。
8月16日(金)「解散」
6:00くらいに起床し、キャンプ場を後にした。羅臼町の方へ行き、私以外はザックを送る手続きをしてから、町内観光へ。はじめに、お世話になった理髪店へ行き、お礼と報告をした。石川も来て、小林さんご夫婦に髪を切ってもらう。羅臼昆布とヒグマの写真を頂き、さらにバス営業所まで送っていただいて、お別れをした。何から何までお世話になりました。ウトロ行きのバスに乗り、知床自然センターへ。ロッカーの荷物を回収し、正式に解散した。
多くのメンバーは、解散から程なくして帰仙。私は、ヒッチハイクをしつつ道内を巡り、26日に帰仙。結局、その後も知床は雨天が続いていたことから、食糧不足で停滞できなかったことなどを考慮したエスケープの判断は正しかったと思う。不可抗力とはいえ、正直、夏合宿を成功に導けなかったのは申し訳なかった。自分の力不足を痛感する一方で、多くの学びがあった。次こそは、藪を抜けた先に見える絶景を拝んでみたい。いつの日か、再訪問の機会があることを願う。
無事、相泊へ帰還、記念に一枚
枝でTUWVの足跡を残した。 @青沼