国産フリーVST

ttmシリーズ by TTM Works

 このページでは、TTM Worksが開発したVSTを紹介したいと思います。少しずつ内容を充実させていきますのでよろしくお願いします。

 なお、VSTは全て無料でKVRから取得できます(リンク)。

TTM WorksのVSTは、Windows用VST2(32bit/64bit)となっています。

ttmシリーズとは?

 ttmシリーズは、TTM Worksが開発したVST2(32bit/64bit)に対応したプラグインです。記念すべき第一作品は2021年11月にリリースしたttm000(Organ)で、某有名なオルガンの独特で心地良い発音原理を勉強するために作りました。無から作った(非サンプリング)割には中々良い音が出すことができ、海外の方からも好評をいただいています。

 TTM Worksが開発したVSTは、"ttm" + "数字" + "(種類名)"と言うルールで命名されます。例えば、16個のサンプルを組み合わせて任意のドラムキットを作ることができるVSTiは、"ttm001(Drum machine)"になります。

 ttmシリーズは、ファイル容量が小さく負荷も軽いことを特徴としていて、初心者(私のこと)でも使いやすいように機能を厳選しています。そのため、とりあえず無料で音楽を作ってみたい場合には持っていて損はないと思います。ttmシリーズは決して高機能で音が素晴らしいということもなく、Synth1のように"国産最強フリーシンセ!"とは口が裂けても言えませんが、刺さる人には刺さるフリーVSTになっているのではないかと思います。

 では実際にttmシリーズで作成した曲を聴いてみてください。

 先ほど音が素晴らしいということもないとは言いましたが、そこそこの音は出るのです。特に、80~90年代のゲーム音楽が好きで、そのアレンジバージョンで使われていた高価なシンセサイザーに憧れていた方々には刺さるのではないかと思います(私がそうです!)。

 先ほどのデモで使用されているVSTは以下の通りです。

 そのほか、以下のReaperに付属しているプラグインを使用しています。

 それでは、もう一曲お聴きください。

イース2より、MOAT OF BURNEDBLESS

ttm001(Drum machine), ttm012(Synth D), ttm003e(Master E)

 こちらは正真正銘、ttmシリーズだけで作られています如何でしょうか?使ってみたくなりました?

[ttmシリーズ開発秘話]

 私の音楽のルーツは、小学2年生のときにおじいちゃんに買ってもらったファミリーベーシックのMUSIC BOARDでドラクエの音楽の打ち込みや作曲を行ったことにあります。その後、MSXのMML(Music Macro Language)でFM音源+PSGを鳴らしてイースなどゲーム音楽のコピーをするようになり、μSIOSを使用してMIDIの世界に入りました。

 FM音源+PSGからMIDIでハードシンセを扱えるようになったことで音質的には飛躍的な進化を遂げたのですが、「なんか違うな」と思う日が続きました。とある日に、イースなどの作曲でおなじみの古代祐三さんがインタービューで「イースの曲はPC-88で鳴らすことを前提に作曲したので、アレンジをすることで意図とは違うものになる」と言われていたのを目にしてピンと来ました。音楽とは音質が良いだけではだめで、ある意味制限のある中でベストを尽くすと言うスタンスから生まれてくるものもあるんだ、と言うことに気づかされました。ネットで新しいフリーのVSTを探すと言う本末転倒なことをやるより、いっそのこと自分でVSTを作ってそれだけで音楽を作ることを目標にVSTの開発を続けてきました。その結果完成した布陣が、ttm001(Drum machine) + ttm012(Synth D) + ttm001e(Multi E)+ ttm003e(Master E)です。

 ttm001(Drum machine)のプリセットが高音質ではないのも、ttm012(Synth D)が少ないパラメータで音色を作ることができるのもFM音源+PSGで頑張って音楽を作っていたときのように創意工夫で心地良い音楽を作る余地を残すためです。

ttmシリーズの主力プラグイン

 現在のttmシリーズの主力ともいえるプラグインは、先ほどのデモで使われている以下のものになります

 その他もいろいろあるのでぜひKVRのサイトに遊びに行ってみてください。

 それでは、ひとつずつ紹介していきます。

ttm001(Drum machine)

 ttm001(Drum machine)は、16個あるスロットにワンショットWAVEファイルを割り当てることでオリジナルのドラムキットを作ることのできるVSTiです。最大8chのステレオ音声としてパラアウトすることでチャンネルごとに別々のエフェクトをかけることもできます。簡単に試すことができるようにGM配列のプリセットも搭載されています。データ容量が小さいですが、ローファイで味のある音がします。

 それぞれのスロットには、個別にパン、音量、イコライザ、サンプリング周波数/ビット数チェンジャを備えており、簡単な音作りも可能となっています。また、独自の機能としては、連打した際にキー音の間隔に応じてピッチを上げたり下げたりする機能(Pitch-X)を備えています。動作が軽いので16スロットで足りない場合は複数立ち上げてスロットを増やすこともできます。

 見た目とは裏腹に機能はマジメに作りこんであります。

*詳細はこちらからどうぞ。→ttm001(Drum machine)の取説

[Tips]

1.デフォルトキットの差し替え

 presetフォルダにあるpreset.binを任意のパットデータで上書きすることで起動時にデフォルトで読み込まれるキットを任意のものに変更することができます。

2.追加のドラムキット

 KVRのサイトの中段辺り("Additional drum kits:"の下のリンク)からダウンロードできます。少しずつ増やしていきたいと思います。

ttm012(Synth D)

 ttm012(Synth D)は、5種類の波形パターンから1つを選んでパラメータで調整することで任意の音を作り出すこのとできるデジタルシンセサイザーです。生成した波形は、右下の波形ウィンドウで確認することができるので、慣れてくると波形を見ながら音の調整が素早くできるようになります。さらに、作った波形をPD音源に近い原理でリアルタイムにへ変化させることで少ないパラメータで様々な音を表現できます。

 エフェクタ類も、EQ、コーラス、エコーが備わっているので、これだけで曲を完成させることができます。

 これも見た目以上にちゃんとした音が作りこめるようになっています。つまみやスライダーの形状が統一されているのでエディットもしやすいと思います。チップチューン的な音も得意です。PC-88の音を再現しても面白いかもしれません。

*詳細はこちらからどうぞ。→ttm012(Synth D)の取説

[Tips]

.アナログシンセっぽい音の出し方

 LFOの周波数(Freq.)を1以下にしてピッチ(Pitch)をマイナスの値にします。TypeはSinが良いでしょう。すると、ゆっくり音程が変化するのでアナログシンセの不安定な感じが再現できます。

Subでミックスされる波形

 SubのMixつまみを左に回すと"L###"、右に回すと"M###"と表示されます。"L###"の場合は、LFOで選択された波形がメイン波形(Wave Formで設定された波形)にミックスされます。"M###"の場合は、Modulationで設定された波形がミックスされます。ModulationのTimesとXはWave FormのTypeでSinが選択されたときのParam.1とParam.2に相当します。つまり、2オシレータのシンセサイザとしても使える仕掛けになっています。

 ちなみに。"L000"の場合はメイン波形がミックスされます。Tuneで音程を変えておけば、いわゆるデチューン効果が得られます。

独自のモジュレーション機構

 メイン波形のTypeのSinはFM音源で言うところの2オペレータと同じ原理で変調することで波形を作り出しています。Sin-Nは3オペレータです。Modulation用の波形は2オペレータです。メイン波形は、PD音源と同じ原理でModukation波形によって変調を受けます。そのときの変調量の最大値はLevelで決まります。更に時間ごとの変調量はFilterのエンベロープで変化します。これも少ないパラメータでダイナミックに音を変える工夫の一つです。これ以上はヒミツです。

ttm013e(Multi E) 開発中

 ttm013e(Multi E)は、21種類のエフェクタから最大8個まで同時に使用できるマルチエフェクタです。3種類のルーティングモードを持っており、1台で音作りを完成させることができます。

 現在リリースに向けて開発中です。

*詳細はこちらからどうぞ。→ttm013e(Master E)の取説

ttm003e(Master E)

 ttm003e(Master E)は、主にマスタートラックに刺して音の最終調整を行うためのVSTです。もちろん、個々のトラックに刺して使うことも可能です。イコライザもカットオフ周波数を変更できる3バンドタイプとなっており、簡易的なマスタリングとしては十分に使えます。

 Normalモードの場合は、左右の音をそれぞれ調整することができます。M/S(Mid/Side)モードにすると、中央と左右に分けて音の調整をすることができます。

 それと、ビットレートとサンプリング周波数を変更する機能も付いているのでローファイ化することもできます。

*詳細はこちらからどうぞ。→ttm003e(Master E)の取説

[Tips]

1.M/S処理で任意のエフェクトを掛ける方法

 Modeでto M/Sを選択すると、中央と左右に分離した音を出力することができます。分離した中央と左右をそれぞれ別のトラックにモノラル出力し、それぞれに任意のエフェクトを掛けた後、今度はModeのfrom M/Sで元のステレオ音声に戻すことができます。普通にエフェクトを掛けただけでは出せない不思議な定位感得ることができます。

コンプレッサとして使う

 マスタートラックに刺して最終的な音圧調整を行うのであれば、Autoを最大の100とすることでコンプレッサの効果を最大限に利かせることができます。注意点としては、発音が100[ms]遅れるようになります(そのため最終段でしか使えない)。また、5Hz以下の低音には効果はありません。

 この状態でそれぞれのチャンネルのGainを上げていくと音が破綻することなく自然に音量の最大化が可能です。さらに、Comp.の数字を大きくしていくとコンプレッション効果が大きくなりますが、やりすぎると耳に優しくない音になるので程々にしてください。