自然な最期とは
自然な最期とは
食事は食べられるだけ(無理に食べない)
薬は飲めるだけ(無理に飲まない)
苦痛は取る(もし取れなければ入院してもOK)
救急車は呼ばない(希望する場所で最期を迎える)
最期のことを当院では言います。
自然な最期の過程
まず老化の加速から始まる
今までできたことが徐々にできなくなっていきます。 これはがんや認知症、心不全、老衰など状態によってその速度は変わりますが、おおむね共通した傾向があります。
まず、硬いものが食べられなくなり、食事の量が減っていきます。体力の低下に伴って歩ける距離も短くなります。
もしもの時に伝えておきたいことがある方は、この時期に一度、確認しておく方がよいかもしれません。
医療から卒業する準備に入る
やがて外出がむずかしくなり、家の中でも介助なしには移動が困難になります。お風呂やトイレも人の手助けなしには済ませられなくなります。
この頃には固形物は口にできなくなり、ほとんど水分だけで過ごす毎日が始まります。死期が近づくにつれ、痩せ細っていく様子を見て不安になる御家族も多いのですが、これは誰にも起こる自然な現象です。この段階になると、点滴は血液を薄め、心臓に負担をかけるだけになり、酸素マスクで濃い酸素を吸っても吸いきれなく呼吸の邪魔になることもあります。
穏やかな最期を迎えるには、いかに医療から離れるかが重要になるのです 。
死は昏睡から
体が弱ってくると目を閉じている時間が増え、いつ昏睡に陥ってもおかしくない状態になります。事故などによる突然死でない限り、老衰死も病死も昏睡状態に陥ることから始まります。これは人間が苦痛を感じずに死を迎える準備状態です。
認知症や老衰の場合は昏睡に陥るまでの時間は、硬いものが食べられなくなって衰弱し始めてから数年かかることがめずらしくありませんが、末期のがんなどの場合は、食事が満足に摂れないようになってから1、2ヵ月ほどで昏睡に陥る場合が少なくありません。
最期はあえぎ呼吸になる
死が近づくと、下顎を突き出し、口をパクパクと開け閉めして、あえぐように息をする「あえぎ呼吸(下顎呼吸)」が始まります。
家族や身近な人に死を目前にした衰弱や昏睡、まして下顎呼吸が始まれば、周囲は取り乱し、少しでも苦しみを軽減させたいと延命治療を選択してしまいがちですが、御本人は苦痛を感じていないことが多いので、医療スタッフに相談してみてください。
また苦痛は感じず、体で反応できないものの、耳は最期まで聞こえているという説があります。最期まで御本人に話しかけてあげてください。
豆知識【人生の終わりに重要であると考えられること】
アメリカでの調査ですが、医師も患者さんも重要だと思われていることは、痛みがないこと、病状を理解していること、死に対する心構えができていることでした。一方で患者さんが重要だと思われていたことは、人生が完成したと思えること、意識がはっきりとしていること、家族の負担にならないこと、他人の役に立つことでした。
【出典】
KE Steinhauser, NA Christakis, EC Clipp, M McNeilly, L McIntyre, JA Tulsky:Factors considered important at the end of life by patients, family, physicians, and other care providers. JAMA 284(19), 2476-82, 2000.