SMASH23 Winter Symposium
MACC研究会アブストラクト
MACC
(9) 避難者の視界が避難行動に与える影響のエージェントモデルによる分析
鶴島彰(セコム)
避難研究では、避難者の視界の問題にこれまで注意が払われてこなかった。東日本大震災で撮影された避難映像の分析により、出口からの距離に応じて人々の避難行動が変わることが分かった。避難意思決定モデルによりこの行動の再現を試みたところ、二つのモデルパラメータが特に有意であることが分かった。これらはどちらもエージェントの視界を規定するもので、距離が長く狭い角度の視界を設定した時にのみこの様な行動の再現が可能である事が分かった。
(10) 整凸関数におけるL拡張可能性
横山健,木村慧,横尾真(九大)
整凸関数は,M凸関数やL凸関数などを含む離散凸解析における基本的な関数クラスである. L拡張可能性は,NP困難である様々な離散最適化問題に対して,近似アルゴリズムや高速な厳密解法などを開発する際に有用であることが知られている.本論文では,整凸関数のL拡張可能性について調べることを目的とする.具体的には,まず,半整数格子点上で整凸関数と同様の性質を持つ関数,半整凸関数を新たに定義する.そして,整凸関数が半整凸関数に緩和できる条件や,半整凸関数がL凸性を満たす条件を調べる.さらに,これらを利用することで,整凸関数がL拡張可能であるための条件を明らかにする.
(11) 一次元線分上の施設配置メカニズムの戦略的操作不可能性の緩和
吉田健人,木村慧,横尾真(九大)
メカニズムデザインにおいて,エージェントの正直な申告が最適となる戦略的操作不可能性は重要な概念の1つである.本発表では,一次元線分おける施設配置メカニズムの戦略的操作不可能性の緩和を行う.公平性,効率などの重要な性質の間でトレードオフがある.効率で優れている中央値メカニズムや,公平性で優れている中点メカニズム,効率と公平性をある程度満たすNashメカニズムに対してこれらのメカニズムがいかに戦略的操作不可能であるかの解析を行う.
(12) レジリエントな介護マッチングシステムの検討
佐藤匠 (慶大/理研),伊藤徹 (理研),福田直樹 (静大),渡邉博子 (理研),廣江晃 (こうほうえん),東本幸子,高山聖 (気づきデータ解析研究所),小川貴代 (理研),神成淳司 (慶大),和田智之 (理研)
日本における高齢化の進行に伴い,介護離職の増加も指摘されており,介護者の都合への柔軟な対応などが重要になることが想定される.これまでの著者らが構築を進めてきた介護士と被介護者の介護マッチング機構を介護現場に導入するには,日々の介護におけるスケジュールの変更に対応可能なレジリエントなマッチングの実現が一つの課題となる.本研究では,レジリエントな介護マッチングを実現可能なシステムの検討について述べる.
(13) 情報伝播を伴う施設配置ゲームのための耐戦略的メカニズム
安東稜人,東藤大樹,横尾真(九大)
施設配置ゲームは,近年のアルゴリズム的ゲーム理論に関する理論の発展の中で,最もよく議論されたモデルの一つである.なかでも,中位投票者メカニズムは,社会全体の厚生を最大化する耐戦略的な意思決定メカニズムとして知られている.一方,情報伝播を伴うメカニズム設計は,マーケットデザイン理論の新たなパラダイムとして知られている.本研究では施設配置ゲームのためのメカニズム設計において,情報伝播の影響を分析する.まず,特定のクラスの耐戦略的なメカニズムに関する不可能性定理を示したあと,耐戦略性を満足するメカニズムを2つ提案し,その特性を詳細に分析する.