MACC@JAWS2023
JAWS2023 MACC研究会 発表タイトル、著者、概要
所属は登壇者の所属のみを記載。
1日目: 2023年9月12日 (火)
MACC研究会(1) 会場A(大雪1)17:50~18:30
17:50 - 18:10
マルチファシリテーションエージェントに向けて
(谷 文,長谷川忍,伊藤孝行 北陸先端科学技術大学院大学)
オンライン合意形成システムにおいて,ファシリテーション支援エージェントの開発が重要である。しかし,既存研究の多くは議論内容のみに着目し,人間ファシリテーターの視点から促進活動のパラダイムを分析した研究は少ない。本研究は,より高度なファシリテーション支援エージェントを開発するために,人間ファシリテーターのファシリテーションモデルを提案する。オンライン合意形成の実データを用いて提案モデルを紹介する。18:10 - 18:30
強化学習による軌跡データを用いた状態フィードバックゲインの推定 ~制御理論の相補的活用に向けて~
(永田健斗,荒井幸代 千葉大学)
従来,ドローン,自動車をはじめプラントなどの制御タスクは, PID制御,ロバスト制御などの制御理論に基づく方法の導入が一般的である.これらの方法は事前に,制御対象となる環境の緻密な数理モデルを必要とする.しかし,近年要請される対象タスクは複雑さを増し,そのモデル化は困難を窮めている.これに対して,モデル不要のデータ駆動型制御法として,強化学習の相補的利用が期待されている.本研究では,対象タスクに強化学習を適用し,得られる方策を用いて,環境の近似モデルを構築し,これを制御系に導入する方法を提案する.
MACC研究会(2) 会場B(大雪2)17:50~18:30
17:50 - 18:10
個人間電力取引のマルチエージェントモデリング:市場形成シミュレーション
(高橋光騎,富田基裕,瀬戸寿之,若杉健一,村上朝之 成蹊大学)
再生可能エネルギーを利用した分散型電源(太陽光発電など)の普及に伴い,電力を個人間で売買するという新しい考え方,すなわち電力の個人間取引(Peer-to-peer (P2P) 取引)に注目が集まっている。ここでは1バンク7フィーダー規模の配電網において,多数の電力生産消費者および電力消費者が自律的な入札の判断を行い,それらを基にシングルプライスオークション方式に則った約定・送受電を行う電力売買市場のモデリングを行った。18:10 - 18:30
個人間電力取引のマルチエージェントモデリング:価格決定プロセスの電力潮流に与える影響
(富田基裕,高橋光騎,瀬戸寿之,若杉健一,村上朝之 成蹊大学)
再生可能エネルギーを利用した分散型電源(太陽光発電など)の普及に伴い,電力を個人間で売買できる,電力の個人間取引(Peer-to-peer (P2P) 取引)に注目が集まっている。我々はマルチエージェントシミュレーションを用いてオークション形式により電力取引が行われる市場を再現した。本研究では各エージェントが入札価格を決定するプロセスに変化を与えた際に,各決定プロセスの違いが電力潮流に与える影響を明らかにする。
MACC研究会(3) 会場C(ラーチ)17:50~18:30
17:50 - 18:10
準最適な軌跡群に基づく最適方策獲得に向けた軌跡ランキング指標の考察
(間庭 卓也,荒井幸代 千葉大学)
近年,エキスパートの行動軌跡を用いて最適な方策を学習する方法に関する研究が注目されているが,実際にはエキスパート不在のタスクは数多く存在し,入手可能な軌跡データは必ずしも最適方策に依らないことが多い.これに対して準最適軌跡群の性能をランキングし,これらの分布に基づいて最適方策を学習するT-REXが提案されている.しかし,ランキングの根拠となる評価指標の妥当性は明らかではない.そこで本研究ではいくつかの指標を導入し,方策の最適性に与える影響を考察する.18:10 - 18:30
形式的なFallacy Detectionについて
(蟻坂竜大 京都大学)
本発表では形式的なFallacy Detectionを行うための枠組みに触れる。通常,NLPでFallacy Detectionを行う際は,「これは典型的なfallacyの型をとっているからfallacyである」というようなアノテーション手法を用いているように考えられるが,厳密に形式的な基準によっての判断とはなっていない。だが,Fallacy判断では文脈の考慮の影響も大きく,fallacyと判断される議論が,ある文脈ではfallacyではない場合もある. 従って,どのように形式的なfallacy判断が可能であるのか,が研究テーマとなる。この問いに関しての有力な答えを本発表内で示す。具体的には,議論グラフで文脈・レファレンスを含む議論の表面的な意図をモデル化し,その表面的な意図と真意を照らし合わすことを可能とするような新規の議論モデルを示す。
MACC研究会(4) 会場A(大雪1)20:00~21:00
20:00 - 20:20
実応用システム構築のためのマルチエージェントフレームワークの高度化
(打矢隆弘,藤田茂,笹井一人,木下哲男 名古屋工業大学)
マルチエージェントシステムを実社会で利用するためのマルチエージェントフレームワークの開発実績・エージェントの多様な性質の実現・実応用システムの開発事例について述べる。20:20 - 20:40
エージェントシミュレーションによる次世代地下物流網の分析
(伊藤花帆,菊地真人,大囿忠親 名古屋工業大学)
本研究では,現代の物流業界の問題を解決するために,地下空間を利用した次世代物流システムである CITYLOOP を検討している.しかしCITYLOOP の実現には大規模都市開発が必要であり,システムが社会に与えうる影響について容易に検証できない.そのため,CITYLOOP の導入効果を分析するためのシミュレーションを行う.ここでは,エージェントシミュレーション基づくデジタル社会実験による導入効果分析について述べる.20:40 - 21:00
An Extended IBIS-Focused Diverse Facilitation Timeline for Online Discussion
(Sofia Sahab, Jawad Haqbeen, Takayuki Ito Kyoto University)
We propose an IBIS-focused diverse facilitation timeline for online discussions, which involves a step-by-step process of critically facilitating strategic discussions using different conversational agent-based facilitation policies. We have divided the discussion timeline into four phases, with each phase utilizing a different facilitation policy. We conducted a set of preliminary experiments, which show the efficiency of proposed approach.
MACC研究会(5) 会場B(大雪2)20:00~21:00
20:00 - 20:20
A Case Study of the Automated Facilitation Agent Based on LLM
(Yihan Dong, Takayuki Ito Kyoto University)
A discussion experiment and the result of it are shown to illustrate the capability of new-generation facilitation agents to help people reach a consensus during discussion. Large-scale discussion support systems like D-agree and corresponding automated facilitation agents have been studied and implemented to make people discuss online more easily. Meanwhile, with the improvement of the Large Language Model (LLM), the connection with LLM can be considered as well. In this presentation, the following three points are focused on: 1) The settings and prompts used to make LLM generate messages to not only reply to participants passively but also inspire participants to give more opinions; 2) The design of facilitation agents including multiple phases during the discussion to guide participants to the consensus, and 3) The advantages and disadvantages of new facilitation agents using LLM.20:20 - 20:40
サプライチェーンマネジメントにおける過去の取引データを活用した効率的なエージェント戦略の提案
(貞廣篤良,藤田桂英 東京農工大学)
本発表では,国際自動交渉エージェント競技会(ANAC)のサプライチェーンマネジメントリーグ(SCML)に対する新たなエージェント戦略を提案する.提案エージェントのオファー戦略は,過去の取引データを元に在庫量の予測と交渉価格の推定を行い,取引個数を最適化する.これにより,未納入や赤字による倒産やペナルティーを回避し,売れ残りを抑えながら利益を最大化することを目指している.本年度の競技会や過去の参加エージェントとのシミュレーション実験の結果から,提案エージェントの有効性を示す.20:40 - 21:00
現場の事前対策知識を考慮したレジリエントな介護スケジューリングシステムの運用の検討
(佐藤匠,伊藤徹,福田直樹,渡邉博子,廣江晃,東本幸子,高山聖,小川貴代,神成淳司,和田智之 慶應義塾大学)
我々は,介護人材の不足などの課題に対処するために,介護現場におけるスケジューリングやマッチングの最適化にマルチエージェント技術の成果を適用する方法の検討を進めている.現場でのヒアリングより,将来発生する可能性が高いリスケジュールを想定した上で複数のスケジュールを準備しておく必要性が指摘されている.本研究では,現場の事前対策知識を考慮したレジリエントな介護スケジューリングシステムの運用の検討を行う.
MACC研究会(6) 会場C(ラーチ)20:00~21:00
20:00 - 20:20
時間差分を考慮したヒューリスティックな自動交渉エージェント戦略
(小林裕二,藤田桂英 東京農工大学)
国際自動交渉エージェント競技会(ANAC)は様々なルール下で各自が作成した自動交渉エージェントにより獲得したスコアを競う競技会である.本発表では,二者間交渉問題を対象としたリーグにおいて,時間差分を考慮したBiddingおよびAcceptance戦略を提案し,合意形成率を向上させることを目指した.競技会の結果,提案したエージェントは高いスコアを獲得し,ファイナリストに選出された.20:20 - 20:40
自動交渉問題へのDecisionTransformerの導入
(大野優太,荒井幸代 千葉大学)
本研究は,目的,選好順序,効用などが異なる複数の意思決定主体間の合意形成を支援する自動交渉エージェント設計問題に対して,DecisionTransformerを導入する方法を提案する.交渉問題は,相互の意思決定案の時系列データから構成される.Transformerは,過去から現在に至る意思決定の因果関係を明示的に表現することが可能であることから,従来の動的計画法を基本とする深層強化学習における逐次表現よりも,効率よく最適な合意案への収束が期待できる.20:40 - 21:00
マルチエージェント議論
(蟻坂竜大 京都大学)
数理議論学ではマルチエージェント議論といえば,従来は二人以下の議論を主に扱っていた.しかし,concurrencyやグループ形成などのテーマは三人以上で本格的に考察が必要になり,二人以下と三人以上では複雑さがかなり異なる.本発表では,concurrency・グループ形成・虚偽・信用について,三人以上のマルチエージェント議論研究の方向性を示す.
- 2日目: 2023年9月13日 (水)(会場:大雪)
MACC研究会(7) 会場A(大雪1)10:10~11:30
10:10 - 10:30
合意形成のための大規模言語モデル
(丁 世堯,伊藤 孝行 京都大学)
最近, 大規模言語モデル(LLM)は, 人間の意見を理解し, 人間らしいテキストを生成するという優れた能力により, 多様な意見から合意案をLLMで生成することが期待されている. ただし, 手書きの意見や専門家による評価などのデータに依存するため, 合意案を生成するLLMの開発は通常煩雑である. 本論文では, 人間によるアノテーションデータに頼らず, LLM自体が生成したデータを使用し, 合意案を自動的に生成するLLMの開発を目指すSelf-Agreementというフレームワークを提案した. 結果として, Self-Agreementによって開発されたLLMは, 合意形成のタスクにおいてGPT-3のパラメータの1/25だけで同等の性能を達成した.10:30 - 10:50
Contract Net Protocolを用いた工場内AGVシステムの解析
(加藤 大望,矢田 昇平,倉橋 節也 筑波大学)
Automated Guided Vehicle(AGV)を用いたジョブショップ型生産システムが検討されている.本研究ではMulti-Agent SystemとContract Net Protocol(CNP)を用いることで,AGVの空間干渉のモデリングを行い,交通流量の解析を行った.検討したモデルは,製造装置をタスク管理者,AGVを契約者として扱い,動的に契約交渉を行うとし,加えて,工場内における渋滞の時系列情報を利用することで周囲環境に合わせて意思決定を行うとした.検討の結果,AGVの空間干渉のみを考慮したモデルでは,AGVの車間距離が広い条件等で渋滞が生じる可能性が高いが,CNPと時系列情報を用いるモデルでは,より広範な条件においても渋滞を緩和できる可能性があることを見出した.10:50 - 11:10
スパースなデータによる模倣学習と逆強化学習の性能比較
(蓑島康太,荒井幸代 千葉大学)
制御対象のモデル化が難しいタスク制御問題に対して,モデル不要の強化学習が注目されているが,その報酬設計の負担が強化学習導入のボトルネックとなっている.これに対してエキスパートデータを用いた模倣学習や逆強化学習が注目されている.模倣学習は計算量も比較的小さく,データセットが十分であれば,高い性能を示すが,データセット数に依存することが予想される.一方,逆強化学習は,エキスパートの報酬関数を学習するため,データセット数の多寡に対する頑健性が期待できる.そこで,本発表ではベンチマーク問題を用いて,両手法におけるデータセット数の影響を検証する.11:10 - 11:30
MASにおけるエージェントへの大規模言語モデルに基づく意思決定機構の導入
(加藤 新,服部 宏充,吉添 衛 立命館大学)
大規模言語モデルと連携動作可能なエージェントを構築し,マルチエージェントシミュレーションに適用する試みが注目を集めている。人間の行動を模様するためのアプローチとして,一種の集合知である大規模言語モデルを活用し,エージェントに尤もらしい行動特性,および周辺環境に応じた意思決定を実現する方法が考えられる。本研究では,大規模言語モデルとの連携による会話を経て意思決定が可能なエージェントを組み込み,その挙動の妥当性と,処理性能に関する検証を行う。
MACC研究会(8) 会場B(大雪2)10:10~11:30
10:10 - 10:30
Exploring Public Sentiments Facilitated with and without Conversational AI: A Case Study of Russia and Ukraine
(Jawad Haqbeen, Sofia Sahab, Irina Kuznetcova, Takayuki Ito Kyoto University)
Fair facilitation is vital for civic purposes. Using agent facilitation, this work aims to study the impact of these agents on facilitating online conversation concerning Russian invasion of Ukraine for social good. We conducted a set of social experiments while compared AI agent intervention among Russian and Ukrainian. A positive sentiments are found with AI facilitation, which is consistent with existing literature.10:30 - 10:50
両面市場型データ流通プラットフォームにおける再販のシミュレーションモデルの検討
(松島裕康,早矢仕晃章,坂地泰紀,清水たくみ,深見嘉明 滋賀大学)
本研究では,再販可能な財を扱うデータ流通市場を想定した取引エージェントのモデリングについて検討する.Nanbaの被験者実験では理論では説明できない興味深い現象が観測されたが,被験者実験の制約上,ユーザ数や扱う財の種類,取引期間の長期化などは十分に議論できていない.再販を伴う両面市場型データ流通プラットフォームについて,マルチエージェントシミュレーションを適用した結果から考察する.10:50 - 11:10
共創するエージェント:逆ベイズ推論に基づくエージェント行動モデル
(笹井一人 茨城大学)
社会的要請は共同・協働から共創へと深化しつつある。マルチエージェントシステムにおける共創を実現するためには、どのような要素が必要なのだろうか。本発表では、即興性やヒューリスティクス、柔軟性といったマルチエージェント間の協調について、創造性を含む形で実現するためのアプローチについて議論する。特に、環境との多様な関係を生み出す逆ベイズ推論モデルについて概説し、本テーマへの応用可能性を考える。11:10 - 11:30
実測データに基づく歩行者シミュレーションを用いた大規模人流データセットの検討
(武田芽依,大西正輝 筑波大学)
特定のイベントや施設での避難誘導は,ゲートや非常口などを制御することで安全かつ迅速な避難を実現できる.しかし都市などの広域避難の場合,都市全体の複雑性により最適な制御方法の探索が困難である.我々は,様々なシナリオによるシミュレーション結果を元に,歩行者の動きの変化と都市の特性を理解するためのデータセットの構築を検討している.本データセットをエージェントシミュレーションや機械学習,人工知能など様々な研究において活用するには,どのような要件が必要であるかを議論したい.