SMASH22 SUMMER Symposium
MACC研究会アブストラクト
MACC(1)
(9) 金融市場での売買符号時系列の長期記憶性とそのミクロモデルの検証
佐藤優輝,金澤輝代士(筑波大学)
金融市場では長期記憶性をはじめとする多くの非自明な統計則が観測されており、そのミクロな起源に関心が集まっている。そのような非自明な統計則の起源を説明する上で、エージェントベースモデルは有力な研究手法である。本発表では、金融市場における非自明な統計則の一つである売買符号時系列の長期記憶性に着目する。特にこの現象を説明する理論モデルであるLillo-Mike-Farmerモデルの有効性をシミュレーション分析とデータ解析の2つの観点から評価した報告をする。
(10) 車輪グラフにおける施設配置のためのメカニズムデザイン
小副川貢司,東藤大樹,横尾真(九州大学)
本研究では,車輪グラフ上に1つの施設を配置する問題を扱う.グラフに位置するエージェントの選好が単峰的選好の場合,エージェントは施設がより近くに配置されることを望み,単溝的選好の場合はより遠くに配置されることを望む.本研究では,エージェントの選好が単峰的選好と単溝的選好のそれぞれの場合において,車輪グラフ上で架空名義操作不可能性とパレート効率性を同時に満足する施設配置メカニズムの存在性を検証する.
(11) クラウドソーシングを用いたタスク割り当ての最適化メカニズムの介護分野への応用に向けた検討
佐藤匠 (慶應義塾大学/理化学研究所),伊藤徹 (理化学研究所),福田直樹 (静岡大学),渡邉博子 (理化学研究所),廣江晃 (こうほうえん),東本幸子 (気づきデータ解析研究所),高山聖 (気づきデータ解析研究所),小川貴代 (理化学研究所),神成淳司 (慶應義塾大学),和田智之 (理化学研究所)
クラウドソーシングを用いたタスク割り当ての最適化メカニズムを実世界のタスク割り当てに適用する場合,タスク割り当てを実世界で管理する組織等の判断により,その割り当てを拒絶される場合が考えられる.本研究では,クラウドソーシング技術を介護分野に応用する際に,介護負担を考慮しながらも,現場においてマッチング結果が拒否された場合にも適切に動く仕組みの実現を目指す.
(12) サプライチェーンマネージメントにおける過去の交渉結家と提案の順序によるリスクを考慮した交渉戦略
宮島龍冴,藤田桂英(東京農工大学)
本発表では,ANAC2022 SCML OneShot Trackに参加した自動交渉エージェントの戦略を提案する.本エージェントは,提案するオファーおよび受け入れるオファーを決定する際に,過去に合意した契約や相手の提案,受け入れの可否などの,過去の交渉結果を考慮している.また,交渉ラウンドが上限に到達するまでの提案の順序を考慮し,無駄な損失を極力減らすリスク管理を行う.
MACC(2)
(13) テキストマイニングを用いた帝国議会議事速記録の分析可能性の検証
山下倫央,横山想一郎,川村秀憲,伊藤孝行(北海道大学)
本研究では,明治から昭和時代までの近代語の言語変化形成過程を解明するために,全57年分の帝国議会議事速記録を取り上げて,その分析を試みる.本発表では,分析の前段としての帝国議会議事速記録のテキスト化に関して,国立国会図書館から2022年4月に公開された光学文字認識プログラム NDLOCR を用いて,既に文書画像データ化された帝国議会議事速記録のテキスト化をおこない,その認識精度を検証する.次に,帝国議会秘密会議事速記録の一部テキスト化されているデータに対して,特徴的な単語の出現頻度・共起頻度といった基礎的な指標を算出し,知見抽出の可能性を検証する.
(14) GANを用いた人工市場シミュレーションの定量的評価に向けて
平野正徳,和泉潔(東京大学)
社会シミュレーションは,社会問題の解決のための有用な手法である.一方で,その妥当性の評価は難しい.多くの場合,定性的な評価を行うことで,シミュレーションが現実を反映していることを確認するが,定性的評価は曖昧性やシミュレーション間での比較の困難性の問題がある.そこで,本研究では,人工市場シミュレーションに着目し,実際の取引データを用いて作成した敵対的生成ネットワーク(GAN)を用いて,シミュレーションの定量的評価を通じたシミュレーションパラメータ評価に取り組む.
(15) ANAC SCML OneShot Track における市場の変化に適応可能な自動交渉戦略
荒川亮太,藤田桂英(東京農工大学)
本発表では,自動交渉エージェントの競技会 ANAC における2層サプライチェーンネットワークに着目したSCML OneShot Trackのための交渉戦略を提案する.この戦略では,直前のラウンドにおける交渉結果や平均取引価格を考慮して目標取引価格を増減させることにより,エージェントを市場の環境に適応させて利益を最大化することを目指す.提案した交渉戦略は,2022年に開催された同リーグの決勝戦で4位を獲得した.
(16) 学習エージェントを用いた交渉エージェントのための自動交渉モデルの設計
中塚雄太,福田直樹(静岡大学)
本研究では,マルチエージェントシステムの研究対象である自動交渉を対象とする. 本アプローチでは,多人数2者間交渉におけるデファクトスタンダードであるSAOPと呼ばれる交渉プロトコルに代替するプロトコルを,GAを用いて探索し,有用性を検証することを可能とするために,そのプロトコルを用いた自動交渉モデルの設計を目指す. 本代替プロトコルでは,SAOPと比較し,社会余剰および合意回数の増加,交渉時間の減少などの実現を目指す.
MACC(3)
(17) Association between smartphone usage and daily mood in international students
Bappi Md Azmol Hossain, Taiga Murata, and Jinhyuk Kim (Shizuoka University)
International students often face a lack of social interaction in new environments, which may make them feel isolated and accelerate their smartphone dependency. Although excessive smartphone usage may impact their mental and physical health, prior studies used self-reported retrospective questionnaires which did not provide detailed information on smartphone usage and health status. Thus, this study aimed to investigate the associations between smartphone usage and objectively assessed daily moods, sleep, and physical activity. Twenty international students provided automatically measured screen time of total smartphone usage and four different categories of app usage (i.e., communication, entertainment, social network, and utility/others) over 10 days. They also answered a questionnaire consisting of 17 mood items using ecological momentary assessment 3 times/day. Sleep and physical activity data were collected passively by a wrist accelerometer. Multilevel modeling was applied to test the associations of smartphone usage with daily mood, sleep, and physical activity. Longer total screen time was associated with higher loneliness and depression. Longer use of communication and entertainment apps was related to higher depression. Longer social network app was associated with shorter sleep duration. Longer use of entertainment apps was associated with less physical activity. This study provides detailed information for intervention strategies aiming to improve health status by managing daily smartphone usage.
(18)パスインテグレーションに基づいた群ロボットの探索と経路生成
美濃邉大樹,高野諒,園田耕平(立命館大学)
小型ロボット群を使用した採餌タスクにおいて,従来手法では,ロボットが巣から隊列を組み,経路を生成しながら探索する手法が提案されていた.本研究では,生物学の分野で動物がそれまでの行動から巣までの直線経路を推定するパスインテグレーションに着想を得て,探索した後に経路を生成する手法を提案する.提案手法はシミュレーション実験により,従来手法より短時間で広範囲の探索が可能となることが示された.
(19)サプライチェーンマネジメントのための売れ残りの減少を目的としたエージェント戦略
小森一輝,藤田桂英 (東京農工大学)
国際自動交渉エージェント競技会では,サプライチェーンマネジメントリーグ(SCML)が開催されている.SCMLのためのエージェントM5は,SCML2021のエージェントM4に変更を加えたものである.M4には,取引量に応じた価格調整,安定した資金管理,M4同士での競合の回避といった機能がある.M5は,販売価格の調整をM4よりも弱気にすることで売れ残りを減らす.実験やSCML2022の結果からM5の有効性を示す.
MACC(4)
(27) エージェントシステム試作プラットフォームMiLogの事例からみる環境進化にスケーラブルな長期的実装に関する一考察
福田直樹(静岡大学)
本発表では,開発後20年以上にわたって使用可能となっているエージェントシステム試作プラットフォームMiLogの実装事例をもとに,時間経過に伴ってこの20年以上の間に起きた演算速度やネットワーク帯域性能の環境進化に対してどのようにスケールできたかという観点から,ソフトウェアの長期的な運用を目指した実装手法に関する一考察について述べる.