大会企画シンポジウム1(公開)

琵琶湖流入河川の瀬切れと回遊魚
-社会-生態システムの視点から掘り下げる-

シンポジウム日程:11月6日(土)13:00-16:00

タイトル:琵琶湖流入河川の瀬切れと回遊魚 -社会-生態システムの視点から掘り下げる-

使用言語:日本語

開催形式:リアルタイムのZOOMウェビナー

このシンポジウムは龍谷大学里山学研究センターと共催し、一般公開予定です(大会に登録しない方は、要事前申し込み)

オーガナイザー(林珠乃・太田真人・三木健、龍谷大学)


企画趣旨


第37回個体群生態学会大会を主催する龍谷大学の瀬田キャンパスがある滋賀県には,日本で最も大きく,また古代湖として440万年の歴史を持つ琵琶湖がある.琵琶湖には117本の一級河川が流入している.これらの琵琶湖流入河川では夏場に毎年,大規模な瀬切れが発生している.瀬切れとは,河川の表流量が減少し,河床が露出して表流水が途切れてしまう状態のことをいう.瀬切れの発生は,河川性動物の生息場所を消滅させ,死亡率の増大を引き起こすばかりか,河川の流水を不連続にし,移動を阻害するなど河川性動物に強い影響を与えることが指摘されている.特に回遊魚にとっては,生活史において重要である移動が阻害される.琵琶湖にはアユやビワマスのように琵琶湖と流入河川とを回遊する魚類も多く,瀬切れの発生は重要な問題となっている.

瀬切れの発生原因は,夏場の降水量の減少や取水堰やダムでの取水量の増大,天井川などの地形の問題等が考えられる.天井川とは,洪水を防ぐための築堤と河川での砂礫の堆積が繰り返されることによって河床が周辺の地域よりも高くなった川のことである.天井川では氾濫が起きやすいため,治水事業等により水位が低く設定される傾向があり,瀬切れが発生の一因となっている.滋賀県は全国の中でも天井川の多い地域である.大きな河川の上流に設置されたダムや農業用水による取水量も,琵琶湖流入河川における瀬切れの原因となっている.

このように河川性動物に影響を与える瀬切れは,人々の暮らしや社会のしくみなど様々な要因を背景に発生している.本シンポジウムでは,瀬切れが回遊魚であるトウヨシノボリとアユに与える影響について生態学的にみた講演を2つと,瀬切れを社会・歴史的,地形・景観的にみた講演を2つ行い,瀬切れ現象を社会-生態システムの視点から読み解く.瀬切れは滋賀県だけでなく全国的にも起きている事象であるため,瀬切れについて考えるうえで,今回のシンポジウムが一つの示唆となることを期待する.


プログラム

*企画の主旨説明


*太田真人(龍谷大学里山学研究センター):トウヨシノボリ当歳魚と瀬切れ

*沢田隼(龍谷大学大学院理工学研究科):瀬切れの原因と影響:アユの各生活史の産卵量に着目して

*秋山道雄(滋賀県立大学環境科学部・里山研):瀬切れを巡る社会的背景

*林珠乃(龍谷大学先端理工学部):天井川の成因としての過去の自然への作用の検討

*総括