当事務所ではプログラム著作物に関する著作権登録の支援を行います
著作権は著作物の創作と同時に何らの手続きも必要なくに自動的に発生します
しかし、その著作物がいつ誰によって創作されたかを後から証明することには困難を伴います
日本では著作権の登録制度があり、登録することにより上記証明を容易にすることができます
また、著作権が二重に譲渡されたとき、先に登録しなければ他の譲受人に対抗することができません
著作権登録
日本の著作権法は以下の4つの著作権登録制度を設けています
第一発行年月日の登録(公表した著作物に限られる)
登録にかかる日に最初の発行又は公表があつたものと推定される
事実上、著作物の著作権者を明らかにすることを目的に利用されている
創作年月日の登録(登録は創作から6ヶ月以内)
プログラム著作物のみに適用される制度
公表されないものが多いので、創作年月日を登録できるようにした
当該著作物の創作年月日と著作者が公示される
実名の登録
無名やペンネームによる著作物の著作権の存続期間は公表後70年となっている
実名登録により著作者と紐付けがなされ、存続期間は著作者の死後70年となる
著作権の(権利の変動にかかる)登録
著作権に関する権利の変動(譲渡、質権設定等)を登録するもの
著作権の登録は、権利の変動に関する第三者への対抗要件
第一公表年月日や創作年月日を登録することによる効果
著作権侵害を立証するためには、以下を証明することが必要です
①対象の著作物の著作権を有すること(著作権者が創作したこと)
②侵害している著作物が著作権を有する著作物と同一であること
登録のメリットは①の証明を容易にする効果
著作権法14条は、原作品を公衆に提供する際に氏名等が通常の方法により表示されている者を著作者と推定するとしていますが、プログラム著作物は公衆に提供されないものも数多く存在します
上記年月日を登録することにより、登録日にその著作物が存在していたことの証明を容易にすることが可能となります
著作権登録でもう一つ重要なのが権利の変動に関する登録(著作権の登録)です
譲渡された著作権は、譲渡人以外の第三者への権利の行使には登録が必要です
上図の事例
Aは金融業者のCから融資を受ける際に自己が所有する著作権を担保にした
資金繰りが苦しくなったAは所有する著作権をBに売却した
Aはさらに資金繰りが困難になりCへの返済ができなくなった
このときCはBが所有する著作権を担保として回収可能でしょうか?
著作権登録の効果
質権の登録(著作権の登録)がなければ担保にしたのは融資契約はAC間の契約なのでBには及びません
質権の登録があれば融資の当事者以外の者に譲渡された著作権にも質権が及びます
著作権に質権が設定されているかどうかは大問題ですが、譲受人は登録原簿により確認が可能です
この事例では、Cは踏んだり蹴ったりの憂き目を見る可能性があります
Aは、6月1日に翻訳プログラムの著作権をCに100万円で売却した
その後、Bから200万円で買いたいとの申出があったので、Aは7月1日にBにも200万円で売却した
Bはこの翻訳ソフトを販売したが、先に著作権を取得したCはBに販売中止を請求できるでしょうか?
著作権登録の効果
AC間の譲渡契約について見るとBは第三者なので、登録がなければCはBに対して差止等の請求はできません
逆に、Bが著作権登録をすれば先に譲渡を受けていたCが差止を受ける立場に追い込まれます
(補足)
これは、著作権が無体物であることが理由ではなく、不動産登記の法理がそのまま適用されたものです
この場合、先に登録した方が対抗要件を具備することとなり、「先に譲渡を受けた」という主張は通用しません
プログラム著作物の特殊性
一般的な著作物(絵画や小説)の場合、著作権を譲渡することは少ないのですが、プログラムの場合、開発業者等に委託して開発が行われることが多く、この場合プログラムの著作権は委託先で発生することになります
そのため、委託契約では開発したプログラムの著作権を委託元に譲渡するのが一般的ですが、開発業者が第三者に二重譲渡した場合が問題となります
このような場合、登録がなければ、第二譲受人から差止請求や損害賠償請求を受ける可能性もあります
なお、第一譲渡から第二譲渡までの期間の制限はないので、委託元は移転の登録をしないかぎり著作権が切れるまで不安定な状態におかれることになります