岡山大学薬学部

高度先導的薬剤師養成プログラム

山田養蜂場研修(2023年9月5日)

健康サポートを含め、地域住民の生活全般に貢献する薬剤師を育成するためには、健康食品や化粧品等に関する正しい知識が必要です。しかしながら、大学では十分に教えられる状況にはありません。また学生には、医薬品に限らず、機能性食品や化粧品の研究・開発も魅力的な職業であることを学び、興味を持ってもらえればとも思います。山田養蜂場は、岡山県は鏡野町にてサプリメント等の健康食品や化粧品等について、研究・商品開発をされている企業です。当日は、商品開発の経緯(着想)、開発での苦労話、安全性評価、品質管理をどのように実施されているか、研究・開発のストーリーについて伺うとともに、社内見学・体験学習させていただきました。この場を借りて、このような機会をいただいた山田養蜂場様に心からお礼申し上げます。

参加学生の報告書から


薬学科2年)

今回の研修は、研究開発から販売まで幅広いことを教わることが出来て、とても収穫の多い1日だった。昔から医薬品の研究開発に携わりたいと考えてきたため、正直、健康食品やサプリメントにやや懐疑的な視点を向けがちだった。研修を受けることでそれを払拭することができ、将来の選択肢が広がった気がする。

失礼ながら、あまり山田養蜂場のことを知らずに研修に臨んだのだが、まず驚いた点は、創業当時から「電話での通信販売をメインとして販売している」という点である。ネット通販やAIチャットを用いた応対が主流となってきている中、電話での販売がメインであることが意外だった。効率を重視すれば他媒体の方が良いであろうが、実際のお客様のご相談・ご要望を取り入れるにあたっては、電話が最適なのであろう。電話なら、病院や薬局に行って相談するよりも手間がかからないうえに、相談する心理的なハードルが低い。利益や効率を第一に考えるのではなく、お客様一人ひとりの健康を第一に考えているからこそ、この形を取っておられるのだと思う。

研修の終盤に、カウンセリング応対について学んだ。医薬品・食品との飲み合わせを考慮した上で商品を勧めるため、お客様が安心して購入できるシステムだと感じた。同時に、このカウンセリング応対は、薬剤師の業務に似ているように思った。薬剤師は処方された薬が本当に適切なのか、患者さんの生活や対象でない疾患を考慮して判断する必要があるからだ。電話応対で専門知識をなるべくわかりやすく説明する工夫など、通ずる点があり興味深かった。最近はお客様が専門知識を持つようになってきているということだったが、それは必ずしも正しいものとは限らない。より高度な応対が求められ、薬剤師の業務に近くなってきているのではないだろうか。今後機会があれば、山田養蜂場で薬剤師がどのようなことをしているのかを具体的に知りたい。

最後になりましたが、このような貴重な機会を設け、研修を開催してくださった山田養蜂場の皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。


薬学科年)

午前中の会社案内では一日に来る注文の電話が4000本ぐらい来ることに驚きました。電話対応を示すランプだけでなく、後対応を表すランプがある理由がはじめは分からなかったのですが、毎回同じ人が対応するわけでないから営業所止めなどの要望に応えるためにあと対応が重要だという話を伺い、納得しそしてすごいと思いました。このお話の中で山田養蜂場さんが製造販売している商品は300種類以上あるときき、あとで通信販売されているものを見ると、青汁シェイカーやサプリメントケースのような商品もありました。これらの商品はロイヤルゼリーと同様にお客様の要望から生まれた商品なのか、さらに、このような商品の開発も本社で行っているのかが気になりました。また、山田養蜂場さんが健康食品や化粧品の製造販売にとどまらず、ミツバチ文庫やミツバチの一枚絵コンクールのような活動をしていることは知っていました。実際、自分が通っていた小学校にはミツバチ文庫の図書がありました。しかし、その活動の目的は知りませんでした。特に、絵については一般の方にもハチの体の構造などをもっと知ってほしいという願いが込められていることに驚きました。ミツバチの絵の中には福岡県から寄せられたものもあり、活動が全国に知られていることにも驚きました。

特に印象に残ったのは、打錠体験です。掛ける圧力が高ければ高いほど硬度が高くなるのかと思っていたのですが、目盛りが10の者が最も硬度が高いことに驚きました。錠剤の色の濃さだけでなくツヤまで変わることが、実際に体験したからこそ知ることができてよかったです。特に、油圧の数字が5から10になったときは硬度が3倍以上になったこと、また30と12.5のとき硬度の差が4しかなかったことが意外でした。

電話対応についてのお話では、驚いたことがさまざまありました。例えば、電話対応が中心になるため、そのための研修が用意されていることや、商品説明では認知症になる人の割合など具体的な数字を用いて話していること、飲み合わせがあまりよくなくても、商品を購入するかどうかの決定権はお客様にあるため、商品の購入を避けるように言えないことなどです。飲み合わせに関するデータベースだけでなく商品の原材料などがまとめられているものを作るというすぐにお客様の質問などに答えるための工夫に感心しました。しかし、会社設立して間もないころは特に飲み合わせの問題はどのように情報を得て答えていたのだろうかということが気になりました。また、今回紹介していただいた電話対応はかなり長い時間お話をしていたが、商品の注文だけ出来たらそれでいいというお客様はいないのだろうか、その場合どう対応するのか、例えばお客様が服用している薬があるのかなどを聴く工夫があるのかということも気になりました。



薬学科4年)

山田養蜂場の見学をさせていただき、僕にとって将来を考えるとても良い機会になりました。僕自身が山田養蜂場の見学に申し込んだきっかけとしては、薬学科ながら薬剤師として働くよりも漠然とではありますが企業で働くのも楽しそうだなと考えており、企業についても理解を深めたい、製薬企業に焦点を当てていたが健康食品や化粧品などを扱っている企業ではどのような実態なのかが知りたくて応募いたしました。

まず驚いたこととしては、山田養蜂場において研究から開発、生産、出荷まですべて山田養蜂場にて行っているということで、今回の見学を通じて様々な職種を見ることができました。

研究の部門に関しては、それぞれの研究成果や取り組みに関して聞けたことであまりつかめていなかった企業の研究のテーマについて知れましたし、実際の研究棟を見ることで最先端の機器や高額な機器が様々置いてあることにも大学の研究室との差を感じられましたが、一方で免疫染色やPCRなど大学の研究室の知識が研究職において生きるのだなと感じられたのは研究職が身近に感じられた要因でもありました。

続いて開発職に関しては、錠剤の打錠体験が特に印象的で、打錠の強さによって錠剤の見た目や性質が変わるというのは実際に体験したことで知れたことでした。話を聞くだけでなく、実際に体験ができたことで本来の職業としてやることとは別だとは思いますが、楽しさを感じられました。

次に品質管理の部門では品質管理部門の職種の実態というものを知らなかったので、実際に行っていることを見て化学実験のようなことを実際に行っているのだということを知れました。品質管理の行っている頻度について、ロットごとと仰っておられたので、莫大な労力で品質を安全で安定的なものに保っているのだなと感じられました。

最後にテレマーケティング業務に関して実践を交えて行いました。実践ではお題にたしてすぐに飲み合わせに関して思いつくものではないので、改めて飲み合わせデータベースのすばらしさを体感でき、さらにお客さんに適切な説明を瞬時に行うということの難しさを感じることができました。研修により、このあたりができるようになるのはなかなか時間がかかるように感じましたし、適切な研修が行われないとできないことだろうなと感じられました。



創薬科学科年)

今回の山田養蜂場での研修では、健康食品や化粧品、食品と多岐にわたる製品の製造段階に携わっておられる従業員の方々のお話を聞いたり、実際に見学をしながら体験したりすることで、製品原料から商品開発が行われ、お客様に商品を届けるまでの過程を学ぶことができました。今回の研修を通して、「創業の精神」と言われる企業理念が全ての社員の方々の研究開発、商品販売のベースとして確立されていると感じました。具体的には、「家族に食べさせたい」と思える添加物のない安全安心な商品の開発や、品質管理部における徹底した全数検査を行っているなど企業としての利益だけでなく、商品の先にいるお客様一人ひとりのことを考えているのが分かり、素晴らしいと思いました。また、研修の中で実際にワークを行った電話応対においても、お客様の相談を聞いて商品を提案するだけでなく、生活習慣に関するアドバイスやお客様の悩みに対する情報提供を行うなど、お客様に電話をかけて良かったと思っていただけるような工夫が施されていると感じました。また、研修の中で研究分野の方々のお話が印象的でした。薬と食品の相互作用問題については講義で学習した内容だったため、興味深く聞きました。実際に企業においても重視されている課題であることを知り学んだことが社会で取り扱われていることを目の当たりにすることができて少し嬉しく感じました。300種類もの商品を扱う企業にとっては、データベース化して正しく一貫した情報をお客様に提供できるようにするという解決法は画期的であり、ゆくゆくはAI化も…という話を聞いて楽しみになりました。また、はちみつに含まれる抗菌成分や鎮咳成分の探索や機能性評価、ローヤルゼリーを使った幹細胞化粧品の開発など、はちみつの成分には無限の可能性があること、企業での研究職の方が日々どのようなことを行っているのかを知ることができ非常に勉強になりました。