岡山大学薬学部

高度先導的薬剤師養成プログラム

OTC薬局研修(2022年1219日)

ドラッグストアには、解熱鎮痛薬をはじめさまざまなOTC医薬品が販売されています。風邪をひいた時、また頭痛がある時、OTC医薬品はどのように選べばよいのでしょうか。香川県は高松市にあるレデイ薬局今里店様のご協力により、下記のような事例について、売場にて実際にOTC医薬品を選ぶロールプレイを行わせていただきました。このような機会をご提供いただきましたレデイ薬局今里店様、講師をお務めくださった薬剤師の蓬莱 哲也 先生、藤井 佑輔 先生に感謝申し上げます。

(研修

・11歳の男児。微熱(37.5度)があり頭が痛いです。 大人並みの体格なので、成人用のアスピリン配合医薬品を飲ませてもよいでしょうか?

・これから車を運転するので、眠くならない頭痛薬はありますか? など

参加学生の報告書から


3年生

薬学科

レデイ薬局での学外研修では、非常に興味深く、大学での授業でもちょうど取り扱った内容と被るような内容だったので、復習にもなり楽しかったです。NSAIDsに関して、薬理学の授業でちょうど先週習ったばかりだったのでちょうどよい復習にもなり、薬理のテスト勉強にもなったと思います。

私はまだ3年生なので、臨床系の授業などをほとんど受けていないため、実際にOTC医薬品を薬局で選ぶというロールプレイが特に新鮮に感じられ、授業とは違っているため、楽しく取り組むことができました。

授業で習う範囲では、薬物成分一つ一つについて学ぶので、そもそもアセトアミノフェンとイブプロフェンを同時に配合しているようなOTC医薬品があることにも驚きました。ドラッグストアで薬を選ぶときに、今までは何となくCMで見たようなものを選んでいたので、これからは成分を見てから決めようと思いました。

レデイ薬局での研修では、普段授業で学ばないようなことについて知ることができ、また、ロールプレイもできて非常に楽しかったです。


創薬科学科

今回のOTC研修を受けるまでは、薬局やドラックストアで働いておられる薬剤師の方がどのような業務を行っているのかほとんどわからず、正直ドラックストアの商品整理をされているイメージがありました。しかし、研修の中で講義を聞いたり、グループワークやロールプレイを通して実際に体験したりすることによって、患者の方が一番に立ち寄り、気軽に相談できる場所として薬局があり、薬局薬剤師は患者さんに寄り添う大切な存在であることが分かり、良い意味で見る目が変わりました。

また、研修の中で、実際に患者役の方から症状の背景や服用する方について質問して聞き出し、それに合う薬を提案するロールプレイが大変勉強になりました。薬の成分についての知識をもつだけでなく、それを患者さんにとって有益となる情報として提供すること、症状から様々なケースを想像して薬を勧めることが重要ですが、患者さんの症状などは多様であるため難しいと感じました。薬剤師の資格を取得する予定はないですが、今回のロールプレイの題材でもある解熱鎮痛薬の選び方や効用などの知識は、自らの生活で必要となったときに活用しようと思います。


年生(創薬科学科)】

 私は、創薬科学科なので薬剤師免許を取得することはないため、患者さんと直接関わることはないと思い、今回の研修のようないわゆる現場の活動を避けがちでした。しかし、研修の中で蓬莱さんが「薬剤師でも研究者でもそうでなくても薬学部を出た事実は同じである」というようなことをおっしゃいました。私はこの言葉がとても心に残りました。私がどのような目的で創薬科学科に進んだかなど、そのバックグラウンドは説明しない限り他人にはわからないものであり、「薬学部出身」という自覚を持つべきだと感じました。

 研修の中で行った、実際にOTC医薬品を選ぶロールプレイ学習では、初めこそ分からないことが多く難しく感じましたが、徐々に慣れてくると要点などが分かるようになり、選ぶのが少し楽しく感じました。この経験は今後の大きなモチベーションになり、初めからやらない選択をするのではなく、様々なことを経験できるうちに経験するべきだと強く思いました。


【5年生(薬学科)】

実務実習が終わってしばらく経ったので基本的な知識の復習も兼ねて参加をしようと思いましたが、新しく学んだ内容も多く、参加してよかったです。ドラッグストアでの患者応対では、患者さんの情報がゼロの状態からスタートすることになるため、かなりのコミュニケーションスキルが求められると感じました。さらに、似たような症状に用いる薬でも、商品によって様々な特徴があり、根拠をもって患者さんに説明するためにも、薬剤師の頭の中が整理されている必要があると思いました。今はスマートフォンでOTC薬について検索し、メーカーのHP等からある程度信頼できる情報が得られるため、ドラッグストアで薬剤師に相談して買い物をしようとする人は実際はまだ少ないと思いますが、それだけでは解決しきれないところをサポートするのが薬剤師の仕事だと思いました。今回の研修で学んだ内容は、消費者の視点でも大変興味深かったので、今後自分がドラッグストアでOTC医薬品を購入するときにも役に立てたいと思います。


年生(薬学科)】

 今回の研修では、OTC医薬品選択のために必要な知識と技術を学ぶと同時に、薬剤師として実施すべきプライマリケアを学ぶことができました。薬局・病院実習では、得られた情報から医学的に正解とされるエビデンスを探すような、いわゆる「答えのある問い」に答える経験が多い印象でした。しかし今回の研修では、自ら情報を取りに行き、複数の答えの中から総合的に判断する経験をさせていただきました。OTC医薬品販売において薬剤師が果たす役割の理想系を学ぶことができたと思っています。

 OTC医薬品の使用には、医薬品由来のリスクに加えて、隠れた重篤な疾患に気づかないリスクもあることを改めて実例から学ぶこともできました。同時に、様々な医療の知識を持った薬剤師が医薬品選択に介入できれば、安全にOTC医薬品を使用できる環境が整備可能とも考えました。

 また、社会保障や医療従事者の職能拡大、製薬産業などを総合的に考慮すると、セルフメディケーションの拡大が望まれます。特に低コストでリスクマネジメント可能な疾患については、医療用医薬品からOTC医薬品への安全な移行を行っていく必要があります。セルフメディケーション推進のためにも、プライマリケアを担い、患者から信頼される薬剤師を増やしていくことは必須であると考えました。薬剤師がプライマリケアに深くかかわることで、ヘルスケア産業におけるOTC医薬品市場の拡充と医療安全の両立が可能である点に希望が持てました。

 まとめの時間に最後のスライドであった「ゆりかごから墓場まで」を見て、今年の夏ごろ「人の一生を支える横軸に薬剤師を通したい」と考えていたことを思い出しました。今回の研修を踏まえて今後も多くを学び、考えていきたいと思います。