労務ニュース4
令和3年1月18日~(最新)令和4年4月27日
令和3年1月18日~(最新)令和4年4月27日
横浜市の企業で役員付運転手を務めた男性が死亡したのは長時間労働が原因だとして、遺族が運転手派遣会社に計約6200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、横浜地裁は27日、「著しく過重な業務に就かせ、安全配慮義務違反があった」と認め、計約3800万円の支払いを命じた。
派遣会社「セーフティ」(東京)は訴訟で、走行しない待機中は労働時間に含まれないと主張したが、山田真紀裁判長は「待機中も労働から解放されていたとはいえない」と退けた。
判決によると、男性は派遣先企業の役員付として勤務していた2015年10月、待機中の車内で死亡した。当時63歳で、死因は心筋梗塞だった。直前6カ月間の時間外労働は1カ月平均147時間を超え、17年に労災認定された。
判決後、男性の長女は「父は二度と帰ってこない。セーフティは働き方を改善してほしい」と話した。セーフティは「判決を確認しておらず、コメントは差し控える」としている。
(共同通信社)
一定数の障害者雇用を企業などに義務付ける法定雇用率制度を巡り、厚生労働省は27日、精神障害や重度の身体障害、知的障害がある人は、週10時間以上20時間未満の勤務でも算定対象に加えることを決めた。短時間の就労希望者が増えており、働く機会を広げる狙い。今は週20時間以上の勤務が対象となっている。
厚労省が労働政策審議会(厚労相の諮問機関)分科会に方針を示し、大筋で了承された。今秋以降、障害者雇用促進法の改正案を国会に提出する見込み。
週20時間未満の人は0・5人分として算定。短時間勤務で雇用した企業に支払っている「特例給付金」を廃止する。
週20時間未満の人の就労時間が意に沿わない形で短くならないよう、本人の意向を確認する。医師の意見書なども求める。企業に対し、途中で就労時間延長の希望があった場合、できる限り対応する努力義務を課す。
2021年6月時点で法定雇用率(2・3%)を満たす企業は47・0%。企業側から、20時間未満の就労を認めてほしいとの声が上がっていた。
(共同通信社)
弁当店チェーン「ほっともっと」を展開するプレナスが値引きを強制しているなどと主張し、契約更新を拒否された北海道苫小牧市の「ほっともっと苫小牧末広店」の元オーナー佐瀬幸恵さん(61)が、地位確認と慰謝料などを求めた訴訟の判決で、札幌地裁は21日、請求を棄却した。
佐瀬さんは契約更新を拒む十分な理由はなく、契約上の権利の乱用だと訴えたが、中野琢郎裁判長は判決理由で、佐瀬さんが署名した確認書の書面上、契約が2021年9月末で終了し、再契約もしないことで合意していたと判断した。
判決によると、佐瀬さんが20年2月、記者会見を開き、同社が値引きを強制し、不当な利得を得たと主張したことが名誉毀損に当たるとして、プレナス側が21年4月に再契約をしないと通知していた。
佐瀬さんはプレナスから広告宣伝費を過剰負担させられたとして計約160万円の返還を求めた訴訟も札幌地裁に起こしたが、今年1月に請求棄却されている。
(共同通信社)
山口県警光署で2016年に発覚した業務上横領事件を巡り、無関係なのに取り調べを受けて上司から退職を強要されたとして、県警の40代男性警察官が県に500万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、広島高裁は21日、80万円の賠償を命じた一審山口地裁判決を変更し、150万円の賠償を命じた。
一審に続き、当時の県警監察官室の監察官や光署次長による違法な退職勧奨があったと認めた。退職勧奨の手段として、降格や離婚の強要、職務制限、嫌がらせがあったとした。横溝邦彦裁判長は「執拗で組織的に行った違法なもので、悪質性が大きい」と指摘した。
判決によると、別の署員が逮捕された横領事件で16年10月、男性が取り調べられた際、男性の借金や女性問題が判明。これを受け17年2月の事情聴取で、監察官は「辞表を書いて、組織を去ってくれ」と辞職を促した。次長は「『辞めれ』しかない」と迫った。
判決後、広島市内で記者会見を開いた原告側の山本直弁護士は「主張が全面的に認められた」と評価。山口県警監察官室は「判決内容を精査して今後の対応を検討する」とのコメントを出した。
(共同通信社)
社外研修制度を利用した海外留学から帰国後に退職した大成建設の元社員の男性が、同社に留学費用と相殺された未払い賃金などの支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁は20日、元社員の請求を棄却した。その上で会社側の請求に基づき、留学費用の残金約729万円を支払うよう元社員に命じた。
判決によると、元社員は2009年に総合職として入社。社外研修に応募して18年に米国の大学に入学し、20年5月に修士課程を修了した。直後に退職の意向を伝え、翌6月退社した。
会社側は、復職後5年以内に退職する場合、授業料など留学中に貸与した費用を全額返済するとの誓約書があると主張。元社員側は「規定について十分理解していなかった」などと訴えていた。
判決で和田山弘剛裁判官は、復職後5年経過すれば返済を免除するとの規定が不合理とは言えず、元社員も規定の詳細を理解していたと指摘。「会社側には費用の返還請求権がある」と認めた。
(共同通信社)
JR西日本岡山支社の50代男性運転士(病死)が回送列車の出発を1分間遅延させるミスをしたことを理由に、1分間分の賃金など56円が支給されなかったのは不当として、JR西に未払い分や慰謝料など計約220万円を求めた訴訟の判決で、岡山地裁は19日、56円の支払いを命じた。慰謝料の請求は棄却した。
奥野寿則裁判長は、JR西が乗務員らに指示していた業務の内容に反する誤りや遅延があった場合、正規の業務内容へ修正するための行動も「業務の遂行に向けた一連の労務」に当たると判断。男性は自らミスに気付き、直ちに所定の業務内容に修正するべく行動したとして1分間の遅延も労務に当たり、賃金支払いの対象になるとした。
男性が受けた不利益は少額で、賃金が支給されれば回復されるとして慰謝料は認めなかった。
JR西はミスが運行の遅延などにつながった場合、その分を欠勤扱いとし、処分の対象にしてきた運用を3月に見直した。運用の見直しに今回の訴訟は影響していないとしている。JR西は「判決内容を真摯に受け止める」と控訴しない方針。
判決によると、男性は2020年6月、JR岡山駅で回送列車を車庫に入れる業務を指示された際、列車を待つホームを勘違い。当直係長に電話をするなどして直ちに正しいホームに駆け付けたが、乗り継ぎの開始が約2分遅れ列車のホーム出発は約1分遅れた。
JR西は当初、乗り継ぎが遅れた約2分間分の賃金85円を不支給としたが岡山労働基準監督署の是正勧告を受け、出発が遅れた約1分間分を不支給とした。
男性は昨年3月に提訴。JR側は未払い分と遅延損害金のみを支払う内容で和解を提案したが成立しなかった。男性は今年に入って病死した。
(共同通信社)
厚生労働省は4月から、仕事と子育ての両立支援に積極的な企業を認定する「くるみん制度」を拡充し、不妊治療中の社員をサポートする企業向けの新たなマークを作った。社員の治療負担を軽減し、働きやすい環境を整備する狙い。企業は求人情報や商品にマークを使い、こうした姿勢をアピールできる。
愛称は「くるみんプラスマーク」。くるみん認定を受けている企業のうち、不妊治療に使える休暇制度やテレワーク、フレックスタイムといった柔軟な勤務制度を導入するなど、条件を満たせば付与される。
従来のくるみんマークの下にハート形の手が添えられたデザインで、全国から寄せられた81点の作品の中から選ばれた。
くるみん制度は4月から男性社員の育休取得率の基準を引き上げ、新たに「トライくるみん」を追加。現行の「プラチナくるみん」「くるみん」と計3種類の中から、取り組み内容に応じたマークが付与される。厚労省は中小企業などにも取得を呼びかけたい考えだ。
(共同通信社)
経団連と大学側でつくる産学協議会は18日、インターンシップ(就業体験)での評価といった学生の情報を、採用選考で活用できるようにすることで合意した。2024年度卒の学生からの適用を目指す。情報を利用できないとしてきた政府も協議会の要請を受け入れ、従来の方針を見直すことを決めた。大学3年夏のインターンが事実上、就職活動の開始と位置付けられる可能性がある。
インターン情報の活用で企業側は人材確保の選択肢が広がり、学生は自らの適性を見極められる利点がある。一方で就活の前倒しにつながり、大学教育の空洞化が進むことも懸念される。
合意によると、企業が学生の連絡先を含む情報を採用活動で活用できる条件として、学生が参加する期間の半分超を実際の職場での就業体験とし、本来のインターンの趣旨から外れないようにする。社員が学生を指導したり、大学3年以降や大学院の長期休暇中にインターンを実施したりすることなども定めた。
企業側は情報を基に学生へエントリーの案内を送ったり、面接の一部を免除したりできる。協議会は、インターンは採用活動ではないとの立場を変えておらず、採用を希望する学生は改めてエントリーが必要となる。
文部科学と厚生労働、経済産業の3省は「インターンで取得した学生情報は基本的に採用選考に使用できない」と取り決めていたが、政府は18日に関係省庁連絡会議を開き、見直すことを確認した。協議会の合意を反映する方針。協議会は政府の方針変更を経て、今の大学2年生から対象にしたい考えだ。
また協議会は、就業体験を必須とするインターンとは別に、説明会などによる企業・業界のPRを「オープンカンパニー」、職場見学などは「キャリア教育」と分類する。これらの活動で得た学生情報は、採用時には活用できない。
(共同通信社)
従業員のうち一定割合は障害者を雇うよう民間企業などに義務付ける法定雇用率を巡り、厚生労働省は12日、現在は週20時間以上働く障害者を算入している雇用率の対象に、週20時間未満の人も加える方向で検討を始めた。算入対象の範囲を拡大する。労働政策審議会(厚労相の諮問機関)分科会で方針を示した。
精神障害者を中心に短時間勤務を希望する人が増えていることを踏まえた。症状が悪化し長時間働けなくなった人が仕事を続けられるようにする狙いもある。
分科会に出席した委員から反対の意見は出なかった。ただ、下限時間を設けるかどうかや算入方法などで意見が分かれ、今後詳細を詰める。
企業の法定雇用率は現在2・3%で、従業員100人超の場合は達成しないと納付金が課せられる。対象になり得る働く障害者が少ないこともあり、2021年6月時点で雇用率を満たした企業は47・0%にとどまる。
(共同通信社)
労働者が不当解雇された場合、職場復帰ではなく企業が金銭を支払うことで解決する制度を巡り、厚生労働省の有識者検討会が11日開かれた。法的論点を整理した報告書をまとめ、今後、労使代表がメンバーの労働政策審議会で導入の是非を本格的に議論する見通しだ。報告書では訴訟や労働審判で解雇無効が確定した労働者が希望すれば、企業から金銭を受け取ることで労働契約が終わる仕組みを想定している。
解雇の金銭解決制度は政府が2015年に成長戦略に盛り込んだことで議論が始まった。導入に積極的な政府や経済界に対し、労働組合などは「リストラに悪用される」と反発しており、労政審の議論は難航が予想される。
報告書では、使用者に通告された解雇が合理的な理由を欠き無効と認定された労働者を制度の対象とした。金銭解決の申し立ては労働者に限定し、企業からの申し立ては再度の解雇を認めることになるなど現状では容易ではない課題があるとして議論の対象に含めなかった。
労働者に支払われる「労働契約解消金」の算定については給与額や勤務年数、年齢が考慮要件になると提示。予見可能性を高めるために金額に上限や下限を設けることを今後、議論するべきだとした。
訴訟の和解手続きや労働審判の調停など、解雇を不当としながらも職場復帰を望まない労働者が企業から金銭支払いを受けて労働契約を終わらせる仕組みは既にある。ただ、政府は「労働者の選択肢を増やす」として、新たな制度の導入を推進してきた。
17年5月に厚労省の別の有識者検討会が「一定程度の必要性が認められる」との報告書をまとめたが、その後、労政審分科会で労働側委員が「リストラの手段として使われることや解雇の選択肢を増やすことにつながる懸念がある」と導入に反対した。
厚労省はさらに法的な論点を整理するため、18年に法学者らによる検討会を設置、議論が続いていた。
(共同通信社)
東証プライム上場の建築資材メーカー「ニホンフラッシュ」(徳島県小松島市)の本社工場で2018年、新入社員だった男性=当時(19)=が台車の下敷きになり死亡した事故を巡り、遺族が同社に計約9千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、徳島地裁は11日、同社が注意義務を怠ったのが原因と認め、計約7600万円の賠償を命じた。
判決によると、18年4月に入社した男性は同年11月、木製の合板が積み込まれた台車を同僚と移動させていた際、倒れた台車と合板の下敷きになり死亡した。
島戸真裁判長は、台車には男性が引っ張っていた側に合板50枚(重さ約500キロ)が集中して積み込まれていたとして「台車の重心が偏り、安定性が大きく損なわれることは明白だ」と指摘。台車が転倒して死傷事故が発生し得ることは十分に予見できたのに、同社側は移動方法の指導を実施していなかったとして「注意義務違反があった」と判断した。
(共同通信社)
厚生労働省は、大学生らの就職活動が本格化する中、企業関係者のセクハラから学生を守るため対策の強化に乗り出した。新たに、大学に職員を派遣して被害に遭わないための方法や相談先を説明する。具体的な被害事例についても学生向け就活サイトで周知する。厚労省の2020年調査によると学生の4人に1人が被害に遭っており、対策が急務となっている。
新たな対策では、厚労省が、希望する全国の大学や専門学校に職員を派遣またはオンラインで、個室での1対1の面談を避けるなどの被害回避策や、関係法令のポイントを解説する。被害に遭った人から意見を聴き、就活生に周知するほか、行政の相談対応に生かす。
企業への啓発として、学生によるOB・OG訪問時のルール作成など、セクハラ防止策に取り組む企業の事例集を22年度中に厚労省のホームページで公開する。悪質事案を起こした企業への行政指導を徹底する。
就活中のセクハラ被害を巡っては、厚労省は19年に関連指針を改正。企業に、就活やインターンシップ(就業体験)中の学生へのセクハラ防止に努めるよう規定した。
厚労省が20年10月に実施した調査では、学生の25・5%が就活やインターンシップの際にセクハラを受けた経験があると回答。男女ともほぼ同じ割合だった。被害者の24・7%が誰にも相談していなかった。
(共同通信社)
厚生労働省は31日、従業員が専門性を身に付ける学び直しを後押しするため、企業向けの新たな助成制度を創設することを決めた。岸田政権が重視する「人への投資」の一環。従業員に高度なIT訓練を受けさせたり、業務関連分野の大学院に通わせたりした場合、1社あたり年に最大1500万円を支給する。
企業の訓練経費を負担する人材開発支援助成金に「人への投資促進コース」を新設。定額研修サービスや従業員が自発的に大学などで学び直した際の費用など、これまで認められていなかった経費も対象に加える。対面実施を原則としていた訓練は、オンライン研修が可能になる。
このほか、シングルマザー、高齢者ら就職が難しい人の継続雇用を促す助成金も拡充。対象者がデジタル、環境といった成長が期待できる分野の業務に就いた場合は、企業への助成額を現在の1・5倍に引き上げる。
人への投資を巡っては岸田文雄首相が昨年、3年間で4千億円を投じる政策パッケージの策定を表明。厚労省は、2022年度当初予算に1019億円を計上している。
(共同通信社)
岡山県里庄町のラーメン店で働いていた男性(36)が長時間労働や上司の叱責などが原因でうつ病を発症、休職したのに、労災保険の休業補償を不支給とした国の処分は違法として、処分取り消しを求めた訴訟の判決で岡山地裁は30日、業務と発症との因果関係を認め、処分を取り消した。
判決によると、配送業や飲食業を営む会社でトラック運転手だった男性は2015年8月にラーメン店に異動。15年11月~16年4月の時間外労働は月平均で80時間程度だった。体調を崩して16年5月に休職し、うつ病と診断された。笠岡労働基準監督署に休業補償を申請し、同署は16年11月に不支給とした。
時間外労働は発症前2~6カ月の平均で月80時間が「過労死ライン」とされる。田中俊行裁判長は、配送業を希望していた男性がラーメン店に異動となった上、月80時間程度の時間外労働が続いていたと認定。男性の能力とギャップのある業務でミスが続き、上司らに叱責されて自信を失ったことも重なり、うつ病を発症したと認めた。
同署は「判決内容を検討し、今後の対応を検討する」としている。
(共同通信社)
2022年度の雇用保険料率を定めた雇用保険法などの改正法が30日、参院本会議で可決、成立した。現在、保険料率は労使で賃金の計0・9%で、22年4月に0・95%、10月~23年3月は1・35%に上がる。雇用情勢などに応じ、一般会計から雇用保険に臨時に財源投入できるようにする。新型コロナウイルス禍の雇用対策で、保険財政が悪化したことが理由。
職業安定法など関連法をまとめて改正。インターネットで求人情報を紹介する「求人サイト」を法規制の対象とし、22年10月からは運営事業者に対し、厚生労働省への連絡先の届け出を義務付ける。登録した求職者の個人情報保護強化も求め、違反した場合は改善命令を出せるようになる。
雇用保険料率はコロナによる経済の落ち込みを考慮。労働者負担分は22年9月まで現在と同じ0・3%とし、10月~23年3月は0・5%とする。
22年7月からは、労働者が起業目的で退職した場合、失業手当を受け取る権利が残る期間を現在の1年から最大4年に延長。コロナ対応で設けた、雇い止めによる離職者らへの給付日数拡充といった措置も3年間延長し、25年3月までとする。
職業能力開発促進法関連では、現在は全国一律となっている職業訓練内容を、都道府県ごとに設定できるようになる。
(共同通信社)
東京ディズニーランド(TDL、千葉県浦安市)でショーに出演していた女性契約社員(41)が、職場でパワーハラスメントを受けて体調を崩したとして、運営会社「オリエンタルランド」に330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、千葉地裁(内野俊夫裁判長)は29日、88万円の支払いを命じた。
訴状によると、女性は2008年4月に雇用され、着ぐるみを着てショーなどに出ていた。13年ごろから、上司らに「死んでしまえ」などの暴言を吐かれるパワハラを受け、心療内科に通うようになったと主張している。
女性は18年7月に提訴した。女性側によると、オリエンタルランドはパワハラではなかったとして請求棄却を求めていた。
(共同通信社)
勤務していた青果卸売会社の取引先の氏名や電話番号といった連絡先データを、退職時に会社貸与のスマートフォンから自身のスマホに移行させて営業秘密を持ち出したとして、不正競争防止法違反(営業秘密領得)の罪に問われた奈良県の男性被告(52)に津地裁は23日「営業秘密に当たると認めることはできない」として無罪(求刑罰金50万円)を言い渡した。
柴田誠裁判長は判決理由で、顧客情報は「同業者なら特別な困難を伴うことなく容易に入手できるものが大半だ」とした上で、「日々の営業活動の中で個人的な信頼関係を構築し、蓄積してきたものと認められ、被告人自身の人脈と不可分の情報が多分に含まれていた」と指摘。会社が退職後の情報利用を一切許さないことは「職業選択の自由に対する過度の制約になりかねない」と判断した。
判決によると、三重県伊賀市の青果卸売会社で上席営業部長だった2017年1月、奈良県内の携帯電話販売店で、会社から貸与されて私用でも使っていたスマホの全ての電話帳データを自身のスマホに移行させ、同月末に退職した。
小松武士次席検事は「判決内容を精査し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい」とのコメントを出した。
(共同通信社)
今春卒業予定で就職を希望する大学生の2月1日時点の内定率は前年同期比0・2ポイント増の89・7%だったことが18日、文部科学、厚生労働両省の調査で分かった。前年同期からの増加幅が、昨年10月時点の1・4ポイント増、同12月時点の0・8ポイント増より小さくなっており、文科省は、年明け以降の新型コロナウイルス感染拡大による行動制限で就職活動が困難になった可能性があるとしている。
ロシアのウクライナ侵攻で世界経済の先行きが不透明になり、今後、企業の採用活動に悪影響が出る恐れも指摘されている。文科省の担当者は「求人情報の提供といった学生へのサポートを徹底するよう大学に求める」と話した。
調査は国公私立大62校を抽出して実施。男女別は男子88・3%、女子91・4%でいずれも0・2ポイント増。文理別は文系89・1%、理系92・3%で、ともに0・2ポイント増えた。
地域別で増加したのは、関東92・5%(1・7ポイント増)、中部90・8%(2・8ポイント増)、九州87・8%(1・3ポイント増)。他は落ち込み、北海道・東北86・8%(4・1ポイント減)、近畿89・5%(0・2ポイント減)、中国・四国83・3%(4・4ポイント減)となった。
短大は4・2ポイント増の86・9%、専門学校は4・9ポイント増の81・6%で大きく回復。高専は3・0ポイント減の94・1%だった。
(共同通信社)
待遇の不利益変更を巡り、山形大が教職員組合と誠実に団体交渉をしなかったとした山形県労働委員会の不当労働行為の救済命令について、大学が取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(岡村和美裁判長)は18日、「労使合意が成立する見込みがなくても、労働委員会は誠実に交渉するよう命令できる」と判断した。裁判官4人全員一致の結論。
「不利益変更から救済命令まで4年が経過し、団交をやり直しても合意は不可能だ」とし、大学の請求通り命令を取り消した二審判決を破棄、審理を仙台高裁に差し戻した。
第2小法廷は「使用者が誠実に団交に応じるようになれば、労使のコミュニケーションの正常化につながる」と指摘。二審の判断には明らかな法令違反があるとした。その上で、大学側の対応が不当労働行為に当たるかどうか、高裁で改めて審理を尽くすよう求めた。
判決によると、山形大の労使は2013年以降、昇給抑制や賃金引き下げについて団交を重ねたが、大学は15年、組合の同意を得ずに実施した。
県労働委は19年、引き下げ幅の根拠の説明が不十分で交渉態度もかたくなだったとして、労働組合法が禁じる不当労働行為と認定し、救済命令を出した。
(共同通信社)
トヨタ自動車グループの特殊鋼メーカー「愛知製鋼」のセンサー開発を巡る技術情報を漏らしたとして、不正競争防止法違反(営業秘密開示)の罪に問われた同社元専務本蔵義信被告(71)と元社員菊池永喜被告(68)に、名古屋地裁は18日、「情報は一般化されていて、営業秘密とは言えない」として無罪判決を言い渡した。
板津正道裁判長は判決理由で「情報は抽象化、一般化されすぎていて、ありふれた方法を選択して単に組み合わせたものにとどまる。営業秘密を開示したとは言えない」と述べた。
その上で「愛知製鋼は、一般情報ではないと明示して管理するなどの措置を講じていたわけでもない。起訴には無理がある」と結論付けた。求刑は本蔵被告が懲役3年、罰金200万円、菊池被告が懲役2年、罰金100万円だった。
2人は同社に在籍していた2013年4月、岐阜県各務原市の同社工場で、同社の独自技術をホワイトボードに示すなどし大阪市の企業に伝えたとして17年3月に起訴された。
17年6月の初公判で2人は無罪を主張。弁護側は「機械メーカーなら当然持っている技術。競争上優位な地位を占めるような価値もなかった」として営業秘密に当たらないと訴えていた。
情報は、愛知製鋼が世界で初めて開発に成功した磁気センサー「MIセンサ」を製作する装置に関するもの。MIセンサは小型で感度が高いのが特徴で、車の自動運転技術や医療分野での活用が期待されている。
愛知製鋼は「違法行為として判断されず、誠に残念。判決内容をしっかりと理解した上で、今後の対応を検討する」とのコメントを出した。
名古屋地検の金山陽一次席検事は「判決内容を精査し、適切に対応したい」としている。
(共同通信社)
大手商社の伊藤忠商事を解雇された総合職の40代男性が「合理的な理由がない」として雇用関係の確認などを求めた訴訟で、東京地裁は16日、「別の訴訟でのやりとりを直接の契機として解雇を決めており、無効だ」とし、同社に未払い賃金などの支払いを命じる判決を言い渡した。
判決によると、同社は社内窓口への通報を基に2019年10月、男性が若手社員に必要以上の叱責をしたと判断し、厳重注意として反省文の提出を命じた。男性は提出を拒み、逆に上司からパワハラを受けたとして、損害賠償を求める訴訟を地裁に起こした。
男性側はこの訴訟で、反省文提出の命令撤回や解決金の支払いという和解条件を提案したが、同社は受け入れず、20年6月に男性を解雇した。
判決で高部祐未裁判官は、男性が解雇されるほどの勤務不良だったとは言えず、同社は男性が示した和解条件の内容から、改善の見込みがないとして解雇を決めたと認定。「和解協議での提案自体が解雇の合理的な理由になるとは言えず、社会通念上相当とも認められない」と指摘した。
(共同通信社)
厚生労働省は16日、企業などの職場で新型コロナウイルス感染者が確認されても、基本的に同僚らを対象とする濃厚接触者の特定作業は必要ないと都道府県などに事務連絡した。出勤や外出も制限しない。感染者に接触した可能性がある人には、重症化しやすい人に会ったり、大人数での飲食やイベントに参加したりしないよう促している。
濃厚接触者が相次ぎ、社会機能が維持できなくなるのを防ぐのが狙い。「感染対策が不十分」「感染者が多数」といった場合は、従来通りの対応も可能とする。
入院患者がいる病院、高齢者施設、家庭内については濃厚接触者の特定や外出制限を求める。
保育所や小学校などの職場への適用は自治体ごとに判断する。高齢者施設や保育所、幼稚園、小学校に勤務する人が濃厚接触者になった場合は、毎日の検査で陰性を確認できれば業務の継続を可能とする。
また、家族が感染したため自宅待機している人は、抗原検査キットなど日を置いた2回の検査で陰性となれば5日目には解除できるようにする。
(共同通信社)
厚生労働省の労働政策審議会作業部会は16日、バス運転手の過重労働対策として、終業から次の始業までの休息時間(勤務間インターバル)を最低9時間義務付ける案を取りまとめた。現行制度より休息を1時間増やした。労働組合などが求める「11時間以上」は努力義務とした。拘束時間は1日当たり原則13時間まで、最長で15時間とした。タクシー運転手も18日、別の作業部会が同様の内容でまとめる。
厚労省は現在検討中のトラック運転手に関する見直しと併せ、年内をめどに自動車運転手の労働時間基準に関する告示を全面的に改正する方針。大幅な改正は1997年以来となる。
作業部会で厚労省は当初、睡眠を含む勤務間インターバルを最低で11時間とする案を示し、労働者側委員は賛成したが、使用者側が「交通需要に応えられない」と反対。9時間に修正された。国際労働機関(ILO)の勧告など国際基準では11時間とされ、過労死が相次ぐ運転手の労働環境はさらなる改善が求められそうだ。
作業部会の報告案では、現行の告示で8時間以上とされている休息時間を9時間以上と改め「11時間以上与えるよう努めることを基本とする」との文言も盛り込んだ。
バス運転手に関しては月当たりの拘束時間の規定を新設し、年3300時間を超えない範囲で、月281時間までと定めた。1日当たりでは原則として13時間で最長15時間とし、14時間を超える回数を少なくするよう努めることとした。
2019年に施行された働き方改革関連法で、一般労働者の残業時間上限は年720時間となった。自動車運転手は特例として上限を年960時間とする一方、24年3月末まで適用を猶予し、過労対策を講じるよう決められている。
厚労省によると、20年度に過労による脳・心臓疾患で労災認定された自動車運転従事者は58人(うち22人死亡)で、全職種で最多。厳しい労働環境を受け、なり手不足も深刻化している。
(共同通信社)
政府は男女の賃金格差の是正に向け、企業に義務付けられている女性の登用状況に関する情報公表の拡充を検討する。公表の対象に男女の賃金状況を加え、義務化も視野に入れている。岸田文雄首相は国連「国際女性デー」の8日「賃金格差の是正に向けた企業の開示ルールを見直す」とのメッセージを出し、強い決意を示した。
賃金は経済情勢や経営環境により変動しやすく「公表された数字が独り歩きするのではないか」と懸念の声も出ている。
厚生労働省によると、2020年の所定内給与(月額平均)は男性33万8800円に対し、女性は25万1900円。
女性活躍推進法は従業員301人以上の大企業に、管理職の女性割合や男女の平均勤続年数、育休取得率などから最低2項目の公表を義務付けている。ただ、企業に都合の良い項目を選べるため、賃金状況の公表に関しては義務化も検討する。
男女の賃金格差は役職や勤続年数に左右される。これまでも厚労省などで格差を巡る議論はあったものの「企業によって所得の定義が違い、比べにくい」といった慎重な声が強かった。
首相は「成長と分配の好循環」の一環として、女性の賃上げを促したい考え。野田聖子男女共同参画担当相も「諸外国では賃金格差の公表を義務付けている例もある」と、踏み込んだ見直しに意欲を示している。
(共同通信社)
西日本を中心にパンや菓子を広く販売する「リョーユーパン」(福岡県大野城市)の元社長の男性が、創業家の会長にパワハラを受けたなどとして、会社と会長に損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁は1日、人格を否定する発言があったとしてパワハラを認め、支払われなかった役員退職慰労金を含め、会社と会長に1045万円の支払いを命じた。
判決によると、男性は1981年に入社、主に営業畑で勤務し2017年6月、社長に就任。社内会議で会長に「無能だ」「横領するより始末が悪い」などと繰り返し暴言を吐かれ、業務に関し「最悪の状態になったら呪い殺す」とも言われた。男性はうつ病と診断され、19年3月末に退社した。
松葉佐隆之裁判長は、会長の一連の発言は「指導と正当化することはできず、社会通念上許されない」と指摘。また、会長の指示で、取締役会などに諮らず男性の退職慰労金を支給しなかったことは、注意義務に違反していると判断した。
ホームページなどによると、リョーユーパンは1950年、佐賀県唐津市に「唐津糧友製パン」として誕生。業績を拡大し、94年現在の社名となった。従業員は約3400人で、関連会社を含むグループ全体の21年3月期の年商は約423億円。判決に関し「コメントは差し控える」とした。
(共同通信社)
厚生労働省は25日、従業員の休業手当を国が部分的に補填する雇用調整助成金(雇調金)の特例措置を3カ月間延長し、6月末までとする案を労働政策審議会の分科会に示した。新型コロナウイルス対策として、日額上限を最大1万5千円に引き上げている現在の内容を続ける。小学校や保育園などが臨時休校となった場合の保護者向け助成金も6月まで維持。
まん延防止等重点措置、緊急事態宣言が発令された地域で時短営業などに協力した企業と、コロナ禍で売り上げが著しく落ち込んだ企業の雇調金については1万5千円の日額上限、最大10分の10の助成率をそのままとする。これ以外は日額上限は9千円、助成率は最大10分の9。
労働者が直接支給を申請できる休業支援金も6月まで継続。まん延防止等重点措置などの対象地域で働く人の日額上限は1万1千円、それ以外は8265円となる。いずれも7月以降の扱いは5月末までに決める。
(共同通信社)
インターネット関連企業「ストリーム」(東京都港区)の物流センターで働いていた仙台市の40代男性が、1カ月223時間超の時間外労働でうつ病を発症したとして約6887万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は22日、安全配慮義務に違反したと認め、同社に約2425万円の支払いを命じた。ストリームは東証2部上場で、通販サイト「ECカレント」などを運営している。
判決によると、男性は2010年に入社し、さいたま市岩槻区の物流センターに勤務していた13年11月に147時間超、翌12月には223時間超の時間外労働に従事し、14年2月ごろうつ病を発症した。その後退職して労災認定を受けた。
判決理由で小田正二裁判長は「労働時間はICカードで管理され、13年11月には相当程度の心理的負荷があった。クリスマス商戦で出荷が増え、忙しくなることは容易に予想できたが、対策を講じなかった」と責任を認めた。
判決後に記者会見した男性側の梶山孝史弁護士は「会社の安易な責任逃れを許さなかった」と評価し、男性は「荷物が多く、休憩もほとんど取れなかった。判決が、長時間労働で苦しむ人の救いになるよう期待したい」と話した。
ストリームの担当者は「係争中のためコメントできない」としている。
(共同通信社)
急性心筋炎を発症後、2014年に脳出血で死亡した男性調理師=当時(33)=の遺族が、長時間労働による免疫の低下が発症原因だとして勤務先だった店側に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は店側の上告を退ける決定をした。16日付。約8400万円の支払いを命じた一、二審判決が確定した。店は大阪市中央区のフランス料理店で、ミシュランガイドへの掲載実績もある。
判決によると、男性は12年に急性心筋炎と診断され、14年6月に死亡した。午前8時ごろまでに出勤し、翌日午前1~2時ごろまで勤務。週1回の定休日以外の睡眠時間は1日5時間以下で、発症までの約1年間、1カ月の時間外労働が平均250時間だった。
一審大阪地裁は、過労や睡眠不足で体の防御機能が低下し、心筋炎を発症したと指摘。その後も休めなかったことで症状が悪化した可能性があるとして、店側の責任を認めた。二審大阪高裁も支持した。
(共同通信社)
複数の従業員に違法な引き抜き工作をしたとして、デロイトトーマツコンサルティングが競業他社に移籍した元幹部に、計約1億2千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は16日、「社会的相当性を逸脱した背信的な引き抜き行為」とし、約5千万円の支払いを命じた。
判決によると、デロイト社の業務執行社員だった元幹部は2018年に退職した後、現在のEYストラテジー・アンド・コンサルティングに移籍。部下ら複数の従業員もその後EY社に移った。
元幹部側は「移籍の事実を告げただけで、勧誘していない」と主張したが、沢村智子裁判長は、部下らに移籍後の構想を説明し、EY社での勤務条件についても部下らの代わりに同社と交渉するなど、積極的な働き掛けがあったと指摘した。また、内部情報を外部に伝えて批判的な記事の掲載に協力するなどし「一連の行為はデロイト社の事業に悪影響を及ぼすために行われたもので、違法だ」と結論付けた。
判決はデロイト社の引き抜き禁止条項に基づき、損害額を算定。退職金の一部についても返金すべきだとした。
(共同通信社)
建設現場でアスベスト(石綿)を吸い、中皮腫などの病気になった九州4県の元労働者ら53人が、国と建材メーカーに損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)は、メーカーの責任について原告、被告双方の上告を退ける決定をした。9日付。4社に約1億2500万円の賠償を命じた二審福岡高裁判決が確定した。
4社のうち、建物の外装や屋根の建材を製造販売したケイミュー(大阪市)への賠償命令確定は、全国各地で起こされた同種訴訟で初めて。
最高裁は昨年5月の先行訴訟の判決で国の責任を認める一方、屋根などの屋外作業では粉じんの濃度が下がり、危険を認識できなかったとして国とメーカーの責任を否定していた。
最高裁判決後、各地の訴訟で国との和解協議が進み、九州訴訟でも原告52人に総額約3億5600万円を支払うとの和解が昨年12月に成立した。第2小法廷は原告1人の国に対する上告を退け、敗訴が確定した。
神奈川県の元労働者ら64人が国と43社に賠償を求めた第2陣の訴訟についても、第2小法廷(菅野裁判長)は9日付で、メーカーに対する原告側の上告を受理しない決定をした。二審東京高裁判決のうち、3社に計約4億9千万円の賠償を命じた判断が確定した。国との和解協議は継続する。
また、第2小法廷は神奈川2陣訴訟の原告5人と、3社中2社の意見を聞く上告審弁論を3月28日に開くと決めた。建物の解体作業に従事した人らに対する賠償責任を認めた二審の結論を見直す可能性がある。
(共同通信社)
厚生労働省は9日、医療機関のサービスの対価である診療報酬に関し、2022年4月の改定内容を決めた。不妊治療の公的医療保険適用を体外受精などに拡大。不妊治療は高額で保険が利かないことが多く、保険適用でカップルの費用負担を減らし、出産を支援する。政府は少子化対策の目玉の一つに位置付ける。
オミクロン株が広がる新型コロナウイルス禍を踏まえ、医療機関に対応強化を促す。診療所が発熱患者の診察体制を整えたり、病院が重症者対応で経験豊富な看護師を配置したりすれば報酬を上乗せする。オンライン診療は、コロナ対応で特例的に初診を解禁していたが、これを恒久措置とし、初診料を2140円から2510円に増やす。
中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)が9日、答申した。診療報酬は患者が窓口で原則1~3割を負担し、残りを保険料や税金で賄う。
不妊治療に関し、体外受精と顕微授精は子ども1人につき、治療開始時に女性が40歳未満なら6回まで、40歳以上43歳未満は3回までを条件とする。精子を子宮内に注入する人工授精や、男性には年齢制限を設けない。
価格設定(診療報酬)の一例は、人工授精1万8200円、体外受精管理料4万2千円などで、他に関連治療も必要となる。不妊治療は現在、原因検査や排卵誘発剤を使う場合などが保険適用され、他は自己負担だ。
厚労省によると従来、体外受精は1回平均約50万円かかった。保険適用となれば、1カ月の自己負担額に上限を設ける高額療養費制度を使えるようになり、年収約370万~770万円の場合は8万円程度で収まる。
コロナ関連は、診療所が院内感染対策で責任者を置いて手順書を作ると、全ての外来患者1人当たり月1回60円を加算。大病院が行う感染症対策訓練への参加や、発熱患者を受け入れるとホームページで公表することを求める。病院では、経験5年以上の看護師らを集中治療室(ICU)に配置した場合に、入院患者1人当たり1日最大7500円を上乗せする。
(共同通信社)
北海道開発局の非正規職員だった旭川市の女性(34)が、懇親会で上司からセクハラ発言をされ精神的苦痛を受けたなどとして、国に220万円の損害賠償を求めた訴訟で、旭川地裁は8日、セクハラがあったと認定し、国に22万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
剣持亮裁判長は判決理由で、発言の一部を否認する上司の供述は他の同僚の証言と食い違う部分があるが、女性の供述は当初から一貫しており信用できると指摘。上司の発言は「女性の性的な経験について質問し、その反応を見るなどして、性的なからかいの対象とするもの」だと非難した。
一方、セクハラはこの懇親会のときだけで、身体的な接触もなかったことから、賠償額は22万円にとどまるとした。
判決などによると、女性は2017年4月から北海道開発局旭川開発建設部に勤務。同6月に市内の飲食店で開かれた懇親会で、上司の男性から性的な発言でからかわれた。懇親会後にうつ状態と診断され、出勤できないまま退職した。
(共同通信社)
厚生労働省が8日発表した2021年の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)によると、基本給や残業代を合わせた1人当たりの現金給与総額(名目賃金)は月平均で前年比0・3%増の31万9528円と3年ぶりに増えた。新型コロナウイルス感染拡大が影響した20年の反動があったとみられ、19年水準には戻っていない。
物価変動を考慮した実質賃金は横ばいだった。
現金給与総額のうち、基本給など所定内給与は0・3%増の24万5738円だった。残業代など所定外は3・8%増の1万8023円、主にボーナスが当たる特別に払われた給与は0・7%減の5万5767円だった。
働き方改革などが影響し12年から20年まで減り続けていた総実労働時間は0・6%増の136・1時間と9年ぶりに増えた。一般労働者1・1%増に対し、パートタイム労働者0・7%減だった。厚労省の担当者は「勤務時間が比較的短い傾向の宿泊・飲食業のパート労働者が増えた影響ではないか」と分析した。
現金給与総額を雇用形態別に見ると、一般労働者が0・6%増の41万9578円、パートが0・1%増の9万9537円となった。
パートが常用雇用者に占める割合は0・15ポイント上昇の31・28%だった。
21年12月の現金給与総額は前年同月比0・2%減の54万6580円だった。原油高などで消費者物価指数が大きく上昇し、実質賃金が2・2%減と4カ月続けて減った。
(共同通信社)
就職活動中の学生に対するハラスメント(嫌がらせ)に関し、主要企業106社の87%が社内での啓発や面会時のルール作りなど、何らかの防止措置を取っていることが20日、共同通信社のアンケートで分かった。今後取り組む予定とした企業を加えると計92%。採用担当者らが学生に性的な嫌がらせをする「就活セクハラ」被害が特に社会問題化する中で、企業が対応を迫られている現状が浮き彫りとなった。
2020年6月施行の女性活躍・ハラスメント規制法では、大企業にハラスメントの防止対策を義務付け、22年4月からは中小企業にも拡大する。しかし、保護対象は従業員のみで、就活生は努力義務にとどまる。
一方、厚生労働省が20年度に実施した調査によると、就職活動やインターンシップを経験した学生の約4人に1人がセクハラ被害を受けていた。OB訪問の女子学生にわいせつ行為や乱暴を加える逮捕事案も相次ぐ。
アンケートでハラスメント防止措置に「取り組んでいる」または「取り組む予定」としたのは計97社。複数回答で内容を尋ねたところ、最も多かったのは「社内での周知・啓発」で87%。次いで「就活生との面会や連絡ルールを設定」62%、「就労規定などで禁止行為を明記」15%と続いた。
ただ、「相談窓口の設置」は14%にとどまり、「大学など外部機関との連携」はゼロ。防止や抑止には力を入れているものの、問題が起きた場合の被害者対応には課題が残った。
対策の具体的な内容は「ハラスメント対策指針に就職活動中の学生も対象になると明記」(化学)、「面接官やリクルーターへの啓発」(機械)、「全ての採用説明会で就活生に対し、リクルート活動の約束事を説明」(運輸)などが挙げられた。
調査は21年11月中旬~12月上旬に実施した。
(共同通信社)
政府は、新型コロナウイルスワクチンの3回目接種について、企業や大学で行う「職場接種」の開始時期を当初予定の3月から2月下旬へと前倒しした。これを受け、堀内詔子ワクチン接種推進担当相や厚生労働省を含む関係省庁の担当者が20日夜、会議を開き、推進策を協議。堀内氏は「より充実した職場接種を展開していかなくてはならない」と強調した。
新変異株「オミクロン株」の感染が拡大する中、企業などからの実施の申し込みが伸び悩んでいることが背景。感染対策として、できるだけ多くの会場で職場接種を進めたい意向だ。
前倒しは、2回目を打ち終えてからの間隔が64歳以下の住民と同様、7カ月へと1カ月短縮されたことに伴う措置。使用するのは、米モデルナ製のワクチンで、1月17日時点の申し込みは2265会場にとどまる。
1、2回目の際には全国の企業、大学で計4千超の会場が設けられた。最も早く2回完了した人は2021年7月下旬ごろで、今年2月下旬で接種間隔が7カ月となる。
(共同通信社)
2015年、陸上自衛隊西部方面隊の男性陸士長=当時(22)=が自殺したのは教官のパワハラが原因だとして、両親が教官2人と国に約8100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、熊本地裁(中辻雄一朗裁判長)は19日、パワハラが自殺につながったと認め、国に220万円の支払いを命じた。
判決などによると、男性は15年10月1日、当時長崎県佐世保市にあった第5陸曹教育隊に入った。同月7日朝、隊宿舎のトイレで自殺しているのが見つかった。
判決は、教官2人が男性の胸ぐらをつかんだり「殺してやりたい」と発言したりし、男性が強い精神的苦痛を受けたことが推認されると指摘。「違法な指導が一因となって適応障害を発症し、自殺に至った」とし、国は、教育隊に入った学生への安全配慮義務に違反していたと認定した。
職務上の行為で個人の責任は負わないとして、教官2人への請求は棄却。2人が自殺を予測することは困難だったとも言及した。
閉廷後、原告側弁護士は記者会見し「弱い立場の者を追い込めば死んでしまう。それを軽視した判決で、受け入れられない」とする両親のコメントを発表。控訴する考えを示した。西部方面隊は「判決内容を精査中だ」とした。
教官2人は17年、男性への暴行に関し停職の懲戒処分を受けた。男性の自殺は18年8月、公務員の労災に当たる公務災害と認定されている。
(共同通信社)
KLMオランダ航空の契約社員だった30~40代の客室乗務員(CA)の女性3人が、無期契約への転換を認めない会社側の対応は違法だとして、雇用関係の確認などを求めた訴訟の判決で、東京地裁(三木素子裁判長)は17日、請求通り無期雇用を認めた。
判決によると、3人は2014年3月、約2カ月の「訓練契約」を結んでオランダ国内の施設で同社のCAとしての訓練を受けた後、通算5年勤務し、19年5月に雇い止めに遭った。
有期契約を繰り返して通算5年を超えた場合、労働者の申し出があれば無期契約に転換することができ、この訓練が雇用期間に含まれるかどうかが争われた。
判決は、訓練は同社のCAとして乗務するのに必要不可欠で、従事すること自体が業務の一環だと指摘。「訓練期間中も労務提供していたと認めるのが相当だ」とした。
3人が職場復帰を求めて申し立てた労働審判で、東京地裁は19年8月に無期転換を認める判断を示したが、会社側が異議を申し立て、訴訟に移行していた。
(共同通信社)
飲酒運転により懲戒免職となった長野県小諸市の元職員の50代男性が、退職手当約1600万円を支給しなかった市の処分は「裁量権の乱用で違法」として、取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は14日、主張を認め処分を取り消した。昨年6月の一審長野地裁判決を支持し、市側の控訴を棄却した。
判決によると、男性は2018年9月、実家で飲酒した後、約150メートル離れた自宅に車で向かい自転車と接触。道交法違反(酒気帯び運転)罪で略式起訴され、罰金30万円の略式命令を受けた。
退職手当に関する市条例では、懲戒免職の場合、市が行為の内容や程度などを総合考慮し、支給の可否や減額を決められると規定している。
平田豊裁判長は、飲酒運転について「動機や経緯に酌量の余地はない」とする一方、人的被害はなく、事故は軽微であることを考慮すべきだと指摘。退職手当は長期間の勤続報償や、賃金の後払い、生活保障といった性格があり「約33年8カ月の男性の勤続に対する報償などを全て奪ってもやむを得ないとする処分は重すぎる」と判断した。
小諸市は「判決内容を精査し、対応を検討する」とした上で、判決が確定した場合は「全額あるいは一部を支給することになる」としている。
(共同通信社)
厚生労働省は7日、新型コロナウイルス感染への不安から医師の指導の下で妊婦が仕事を休んだ場合、その期間の給与を補償する企業向け休業助成制度について、対象期間を2カ月間延長する方針を決めた。今月末までだったが、今年3月末までとする。新変異株「オミクロン株」などによる感染急拡大を踏まえた。労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会で了承された。
この助成は、医師が休業が必要だと認めた妊婦が取得できる有給休暇制度を導入した企業を対象とする。計20日以上の休暇取得で1人当たり28万5千円を支給する。上限人数は1事業所につき5人。
この有給休暇制度を導入し、実際に5日以上の休暇を取得させた企業に15万円支給する制度も、3月末まで延長する。
(共同通信社)
雇用保険制度について議論する労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の部会は7日、新型コロナウイルス対策で危機的な状況となっている保険財政を立て直すための報告書を取りまとめた。現在は労使で賃金の計0・9%となっている保険料率を2022年4~9月は0・95%、10月~23年3月は1・35%と、段階的に引き上げることを盛り込んだ。
報告書の内容を基に、厚労省は今月召集予定の通常国会に雇用保険法改正案などを提出する。
報告書では、失業手当を受け取り可能な「受給期間」は原則1年だが、労働者が起業目的で退職した場合は最大4年まで延長できるようにする。現在は失業手当の2・5%分となっている国庫負担割合を、雇用情勢や保険の財政状況が悪化した場合には25%に引き上げる。積立金が枯渇した場合など状況に応じて、一般会計から財源を投入できる制度も必要だとした。
(共同通信社)
適応障害と診断され休職した後、回復したのに復職を認められず退職に追い込まれたとして、NECの元子会社「NECディスプレイソリューションズ」(東京)の元社員伊草貴大さん(30)=神奈川県=が職場復帰を求めた訴訟で、横浜地裁は23日、退職を無効とする判決を言い渡した。
判決によると、伊草さんは2015年12月に適応障害と診断され休職。17年8月には回復して復職できたにもかかわらず、同社は医師の意見を踏まえ「意図することが伝わらず、コミュニケーションが成立しない」などとして認めなかった。伊草さんは18年10月、退職した。
真鍋美穂子裁判長は同社が復職を認めなかった理由について「適応障害から生じる症状とは区別されるべきだ」と指摘した上で「休職理由に含まれない理由で雇用契約の終了という法的効果を生じさせ、許されない」と判断した。
同社はシャープに株式譲渡され、2020年11月に「シャープNECディスプレイソリューションズ」に社名を変更。判決を受け、「納得できる内容ではない。今後対応を検討する」とコメントした。
(共同通信社)
後藤茂之厚生労働相は22日、鈴木俊一財務相と2022年度の雇用保険料を巡り折衝し、失業手当などに充てる失業等給付のための料率を、22年10月から労使折半で計0・6%に引き上げると合意した。雇用調整助成金(雇調金)の支給増で、保険財政が悪化したため。新型コロナウイルスの影響を踏まえ、9月までは現在の計0・2%を据え置く。
雇用保険には失業等給付、育児休業給付、雇調金の財源となる雇用保険2事業があり、それぞれ料率を設定する。
育児休業給付の料率は、労使で計0・4%のまま据え置く。企業のみが負担する雇用保険2事業の料率は、22年4月から0・3%から0・35%に上がる。
この結果、労働者が負担する22年度の保険料率は9月までは現在と同じ0・3%で、10月からは0・5%に上がる。現在0・6%の企業負担は、4月から0・65%、10月から0・85%となる。
政府は労使の議論を踏まえ、当初は失業等給付の料率を22年4月から引き上げる予定だったが、22年夏の参院選を前に自民党から慎重論が出て、半年間先送りした経緯がある。
(共同通信社)
厚生労働省の労働政策審議会分科会は22日、建設現場などで働く「一人親方」ら個人事業主をアスベスト(石綿)や放射線などから保護するため、仕事を発注した企業に安全対策を取るよう義務付ける方針案をまとめた。厚労省は2021年度中に省令を改正する方針。5月の建設アスベスト訴訟最高裁判決で、労働者に加え一人親方も保護対象にすべきだとされたことを踏まえた。
厚労省によると、労働安全衛生法は有害物質を扱う企業に排気や警報装置の設置、事故発生時の退避といった安全対策を義務付けている。建設現場などでは、企業に雇われている労働者と個人事業主が入り交じって働いているケースが多いが、こうした対策は労働者のみを対象としていた。
厚労省は一人親方への国の賠償責任も認めた最高裁判決を受け、企業の安全対策の対象に、労働者と同じ現場で働く個人事業主や、事業主と一緒に仕事をする家族も含める。資材搬入などで現場に出入りする人たちも対象とする。
(共同通信社)
居酒屋チェーンで勤務中に、脳内出血し後遺症がある元調理師の男性(62)について、労働基準監督署が「過労死ライン」に満たない残業時間で労災認定していたことが21日、分かった。労基署はいったん申請を退けたが、厚生労働省が9月、過労死ラインに達していなくても不規則勤務などを重視する新しい認定基準の運用を始めたことを受け、判断を覆した。厚労省によると、新基準に基づいて決定が取り消しになり、認定されたのは初めて。
男性の代理人の松丸正弁護士によると、男性は2016年1月、千葉県柏市の「庄や」で勤務中に脳内出血し、救急搬送された。同3月に柏労基署に労災申請したが、残業時間が過労死ラインに達していないとして認められなかった。
男性は労災が認められなかったのを不服として、19年、国に決定の取り消しを求め東京地裁に提訴。その後、柏労基署は新基準に基づいて改めて検討、今年12月に「長期間の過重業務による負荷が認められる」として認定した。柏労基署は男性側に「不規則な深夜勤務などの負荷を総合考慮した」と説明したという。
厚労省は9月、過労死を含む脳・心臓疾患の労災認定基準を2001年以来、20年ぶりに改正。残業時間が発症前2~6カ月の平均で月80時間、直近1カ月間で100時間とされる「過労死ライン」に達しなくても、勤務が不規則など労働時間以外の負荷がある場合は認定しやすくした。
基準改正前も認定に当たっては労働時間以外の負荷要因も評価するとしていたが、実際には労働時間が重んじられる傾向にあった。
(共同通信社)
有期労働契約を繰り返していた専修大非常勤講師の女性が、無期契約への転換を認めない大学の取り扱いは違法だとして起こした地位確認請求訴訟で、東京地裁は16日、請求通り無期雇用を認める判決を言い渡した。
有期契約を繰り返して通算5年を超えた場合、労働者の申し出があれば無期契約に転換することができ、使用者が拒否できないのに対し、研究機関や大学の任期付き研究者は10年とする特例がある。伊藤由紀子裁判長は「原告の職務は学部生へのドイツ語の授業や試験などに限られており、特例の『研究者』には該当しない」と指摘した。
一方で「経済的に不利益を受けた事実はない」として100万円の損害賠償請求は棄却した。
判決によると、女性は30年以上前から専修大でドイツ語講師を務め、毎年契約を更新。2019年、労働契約法に基づき無期転換を申し込んだが、同年12月に拒まれた。
専修大は「コメントは差し控える」としている。
(共同通信社)
立命館大の教授会でのパワハラ発言で教授への昇任が否決され、退職に追い込まれたとして、元准教授の英国人女性ブレーク・ヘイズさんが大学側に7千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、京都地裁は15日、55万円の支払いを命じた。
ヘイズさんが過去に懲戒審査の対象になったことを、男性教授が明らかにしたことがプライバシーの侵害に当たり、違法と判断した。昇任否決は大学側の裁量の範囲内で問題はないとした。
判決によると、2015年11月、国際関係学部の教授会で男性教授が、ヘイズさんが懲戒審査の対象になったことを挙げ「あり得ない行為だ」と述べた。投票の結果、昇任は否決された。実際には懲戒処分には至らなかった。
池田知子裁判長は判決理由で「事実を公表されない法的利益は相応に大きい」と指摘した。大学側はその後、男性教授の発言がパワハラに当たると認め、個別指導をしたが、昇任の再審査はしなかった。
判決後、ヘイズさんは取材に「不適切な発言を認めてくれたのはうれしい。救済や謝罪を求めたい」と話した。立命館大は「判決が届いておらず、コメントできない」としている。
(共同通信社)
政府は15日、2022年4月から始まる不妊治療への公的医療保険適用の骨格を固めた。体外受精などへの適用は、治療開始時に女性が43歳未満であることが条件で、最大6回までと制限を設ける。男性には年齢制限はなく、事実婚のカップルも対象となる。不妊治療は現在、一部を除いて保険が利かない。治療を受ける夫婦の割合が増加する中、経済的な負担軽減につながることが期待される。
体外受精と顕微授精の適用条件は、現行の国の助成制度に合わせ、女性が40歳未満の場合は子ども1人を産むごとに6回まで、40歳以上43歳未満は3回までとする。より初期段階の治療である排卵の時期を指導するタイミング法や、人工授精などには年齢、回数の制限は設けない。
適用外となった治療法も、医療機関の申請があれば保険診療と併用ができる「先進医療」に位置付けるかどうか個別に議論する。
厚生労働省が同日、中央社会保険医療協議会(中医協)に提案し、大筋で了承された。具体的な価格設定は年明けに決める。体外受精や顕微授精に原則1回30万円を給付する国の助成制度は、年度をまたぐ場合を除き22年3月末で終了する。
厚労省によると、日本では約3組に1組の夫婦が不妊を心配したことがあり、実際に検査や治療を受けた夫婦は約5・5組に1組。体外受精や顕微授精で生まれる子どもの割合は、07年は総出生児の1・8%だったが、18年には6・2%に上昇している。
不妊治療は現在、一部を除き保険が適用されない「自由診療」で、国や自治体の助成以外は全額自己負担。保険適用されると原則3割負担で済む。子どもを望むカップルの経済的負担が重く、菅義偉前首相が昨年、少子化対策の一環として保険適用を打ち出した。
(共同通信社)
厚生労働省の労働政策審議会部会は14日、あん摩マッサージ指圧師と鍼灸師を、企業に雇用されていない個人事業主でも労災保険に入れる「特別加入制度」の対象に加える省令案を了承した。来年4月から運用する。
厚労省によると、対象となるのはあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師で、それぞれ国家資格が必要。個人事業主を含め、最大で計約36万人が就業しているとみられ、施術による腰痛や捻挫を訴える人が目立つという。視覚障害者が多く、障害物に気付かず転倒しけがを負うケースなどもある。
労災保険は原則、雇用労働者が対象。ただ、建設業の一人親方など個人事業主向けに特別加入制度があり、自身で保険料を払うと補償を受けられる。今年に入って芸能従事者や自転車配達員、フリーランスのIT人材なども加入が認められた。
(共同通信社)
法人税減税を通じて企業に賃上げを促す税制は、「成長と分配の好循環」による中間層の復活を掲げる岸田政権の看板政策の一環として強化された。給与を増やした企業が法人税から差し引くことのできる「控除率」を大幅に引き上げた上、賃上げ率を高くするなど積極的な企業ほど控除を大きくする仕組みとする。
今回の強化は2023年度までの2年間の措置。政府、与党は「賃上げ税制としては過去最高水準の控除率」とアピールしている。
大企業の場合、これまでは新規雇用者の給与総額が前年度より増えた場合を優遇対象としていたが、22年度からは継続して雇用している既存の従業員の給与総額が増えた場合を対象とする。
賃金を3%以上増やした場合は、雇用者全体の給与総額の増加額の15%を、法人税額から控除できる。賃上げが4%以上の場合は控除率を10%上乗せして25%とする。教育訓練費を2割以上増やした場合は5%の上乗せ措置もあり、すべてを満たせば最大の30%の控除率が適用される。
中小企業は雇用者全体の給与総額を1・5%以上増やした場合、現行通り15%を法人税額から差し引くことができる。2・5%以上増やした場合は15%上乗せして30%になる。教育訓練費を1割以上増やした場合は10%の上乗せ措置もあり、すべてを満たせば最大の40%の控除率となる。
(共同通信社)
再就職のためにITや介護などの技能、知識を習得できる公共職業訓練を巡り、厚生労働省は10日、地域別に独自の訓練コースを設定できるようにする方針案を労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会に示した。産業構造や人口構成など地域の特性に配慮して、地元企業が必要としている人材を育成できるようにするのが狙い。
現状は地域を問わず、ほぼ同じ内容になっている。年内に詳細を詰め、2022年の通常国会に職業能力開発促進法などの改正案を提出する方向で調整している。
厚労省案によると、都道府県ごとに設置している地域訓練協議会を活用する。国や自治体、労使団体、大学、職業紹介事業者などが構成員となり、その地域で働き手が足りない分野や必要となる人材像を把握。その内容を反映し、新しい訓練コースの設定や、既存コースの内容変更などができるようにする。修了者への就職支援や、専門のキャリアコンサルタントの活用も強化する。
公共職業訓練は雇用保険加入者らに、国や都道府県、委託業者が実施する。さまざまな分野の技能を原則として無料で学ぶことができる。
(共同通信社)
京都市のタクシー会社「洛東タクシー」と「ホテルハイヤー」の男性運転手計27人が、歩合給に残業代を含むとする会社の制度により、残業代が不当に未払いになっているとして計約1億900万円の支払いを求めた訴訟の判決で、京都地裁は9日、計約1億500万円を支払うよう命じた。
判決によると、2社の賃金は基本給に加え、営業成績で決まる歩合給の「基準外手当」などで構成される。池田知子裁判長は、雇用契約書などの書面上、「基準外手当が時間外労働の対価との記載はない」と指摘。歩合給は所定勤務時間内の賃金に当たり、残業代は別途支払う必要があると判断した。
会社側は、乗客を探して走る「流し」や休憩場所に向かうための時間は労働時間に当たらないと主張。池田裁判長は、空車のタクシーは途中に客がいたら乗せることになるとして労働時間と認め、残業代の計算に含めた。2015年7月~17年5月までの未払い残業代に、制裁に当たる「付加金」を加え、金額を算出した。
原告側の代理人弁護士は京都市内で記者会見し「タクシー業界でも、きちんと働いた分をもらうことが広がってほしい」と話した。
2社は取材に「担当者が不在でコメントできない」とした。
(共同通信社)
厚生労働省は8日、失業手当を受け取り可能な「受給期間」を、労働者が起業目的で退職した場合、最大4年まで延長できるようにする方針を、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会に示した。原則は1年間。事業に失敗し廃業した場合でも失業手当を受けられるようにし、会社員らが起業しやすい環境を後押しする。
雇用保険法では、失業手当を受け取ることができる期限は離職日の翌日から原則1年間と定められている。その範囲内で、勤続年数や年齢などに応じて具体的な支給日数や金額が決まる。妊娠や出産、病気などの理由で仕事を探せない場合は4年まで延長できる。起業による退職も同様に延長理由に加える方向。
失業手当は再び労働者として働く意欲のある場合に受けられる。このため、廃業後にハローワークへの届け出や就職活動などに取り組む必要がある。起業前に一部を受給していた人でも離職から4年以内ならば残り日数分を持ち越せるようにする。
(共同通信社)
インターネット経由で求人情報を提供するサイトなどを巡り、厚生労働省は8日、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会に規制案を示し、了承された。サイト運営者の届け出制度が柱。個人情報保護違反や、偽情報で人を集めた場合に罰則を科す。職業安定法などの改正案に内容を盛り込み、2022年通常国会にも提出する。22年度中の施行を目指す。
現行法は企業と求職者を直接仲介する場合は規制対象になる。しかし、情報を載せるだけの求人サイトや、さまざまな求人サイトを横断的に検索できるサービスなどは対象外。ネットを使った就職活動が増える中、実際は掲載内容と違う条件だったなどのトラブルが相次ぎ、求職者を守る必要性が指摘されていた。
規制案では、求人サイトなどの運営事業者に、名称や連絡先を厚労省に届け出るよう義務付ける。求職や求人の状況を把握するため、紹介実績や登録者数といった情報を労働局などに定期的に報告するよう求める。
虚偽や誤解を生じさせるような表現による募集を禁じる。給与や福利厚生といった条件は最新の状況を示す。規制に反すると、業務の停止命令など行政処分の対象となる。虚偽情報の掲載や違法な業務募集を実施した場合の罰則を設ける。
(共同通信社)
経団連は6日、会長・副会長会議を開き、2022年春闘の経営側の交渉方針となる「経営労働政策特別委員会(経労委)報告」の骨子案を協議した。岸田文雄首相が期待を表明した3%超の賃金引き上げには一律の対応を見送り、賃上げに関する数字目標も設けない。一方、好業績の企業には基本給を底上げするベースアップ(ベア)を含めた賃上げを促す。
骨子案では、労使協議は「業種横並びや一律的な検討ではなく」、各企業の実情に合わせるべきだと主張。収益が増大した企業は「昇給に加え、ベア実施を含めた『新しい資本主義』の起動にふさわしい賃金引き上げが望まれる」とした。
新型コロナウイルス禍を受け、21年春闘方針では好業績企業でもベアは「選択肢」にとどめた。22年春闘は賃上げに前向きな姿勢を示し、岸田政権が掲げる成長と分配による新しい資本主義に足並みをそろえる表現とした。
経団連の十倉雅和会長は6日の定例会見で、春闘方針について「(コロナ禍で)業績にばらつきがあり、数字(目標)を出すことで乱暴な議論になる」と述べた。
骨子案によると、業績低迷が続く企業に関しては「事業継続と雇用維持が最優先」と指摘。その上で、単年度ではなく複数年度にわたって基本給水準の在り方を検討するよう提案する。
経団連は来年1月に経労委報告を正式決定する。
岸田氏は今年11月下旬の政府会合で、業績がコロナ前の水準を回復した企業に「3%を超える賃上げを期待する」と強調した。労働組合の中央組織である連合は今月2日、定昇とベアを合わせ4%程度の賃上げを目指す方針を決めた。
(共同通信社)
政府は2022年度税制改正の焦点となっている賃上げ税制の強化に関し、企業の法人税額から差し引くことができる控除率を、大企業は最大30%、中小企業は最大40%に引き上げる方向で調整していることが3日、分かった。岸田文雄首相が掲げる「成長と分配の好循環」の実現に向け、減税額を大幅に増やし、企業に積極的な賃上げを促す。
各企業の賃上げの取り組み状況に応じて現在の15%から段階的に引き上げる方向で、最大の控除率が適用される要件など詳細は今後詰める。
現行制度では、大企業の場合、新たに雇用した従業員の給与総額を前年度より2%以上増やした場合、支給額の15%分を法人税から差し引くことができる。中小企業は全雇用者の給与総額が1・5%以上増えた場合、増加額の15%分を控除でき、一定の要件を満たせば25%となる上乗せ措置もある。
大企業に関しては、賃上げしたかどうかを判断する対象を、現在の新規雇用者から継続して雇用している従業員に変更することも検討している。
賃上げにボーナスなどの一時金を入れるかどうかも論点となる。現行では一時金を含めた給与総額が増えれば、法人税を軽減する仕組みとなっており、持続的な賃上げにつながっていないとの批判がある。自民党税制調査会の宮沢洋一会長は「賞与を除いた基本給などが、しっかり上がることが成長につながる」と一時金の除外に意欲を示していた。
自民党は3日、税制調査会を開き、賃上げ税制の強化や住宅ローン減税の見直しなどを議論。9日にもまとめる与党税制改正大綱に具体策を盛り込むため、詰めの協議を急いでいる。
法人税を納める必要がなく、税制優遇が効かない赤字の中小企業には、補助金を活用して賃上げを促す。
(共同通信社)
医師の働き方改革を巡り、厚生労働省の労働政策審議会分科会は30日、勤務医の残業時間の上限を原則年960時間、地域医療を担う医療機関などで、長時間労働を避けられない場合は年1860時間とする省令案を了承した。同省の有識者検討会の中間取りまとめなどを踏まえた案で、同省は労働基準法施行規則の一部改正などを行う。
施行は2024年度から。年1860時間の適用対象には研修医が所属する医療機関なども含まれ、各医療機関は事前に都道府県から指定を受ける必要がある。
政府は今年5月に医療法などを改正。年1860時間の適用対象となる医療機関に、医師の連続勤務の制限や、終業から次の始業までの休息時間を確保する「勤務間インターバル」の措置を取るよう義務付けた。
政府は働き方改革の柱として、19年4月から残業時間の上限を原則として「月45時間、年360時間」、最長でも「月100時間未満、年720時間」などとする規制を導入。医師は5年間、適用を猶予され、規制の在り方を議論してきた。
(共同通信社)
小学生だった長男の病気や母親の介護を理由に転勤に応じなかったことで懲戒解雇とされたのは不当だとして、NECソリューションイノベータ(東京)の元社員が同社に慰謝料100万円の支払いや解雇の無効確認を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は29日、転勤による著しい不利益はないとして請求を棄却した。
中山誠一裁判長は「(転勤命令は)業務の効率化や雇用の維持の観点から必要性があった」と判断。転勤拒否を理由とする懲戒解雇も「命令に応じない事態を放置すれば企業秩序を維持できない」として合理性があると指摘した。
元社員側は、配置転換の際に従業員の家庭事情への配慮を義務付ける育児・介護休業法に違反すると主張。中山裁判長は、転勤先でも長男の病気や母親の介護に対応できるとして退けた。
判決後に記者会見した原告の中正司光幸さん(55)=大阪府岸和田市=は「転勤の際に家庭や本人の事情があれば配慮するべきで不当な判決」と控訴する方針を示した。
判決などによると、持病を抱える母(77)と長男(13)と岸和田市で3人暮らしだった2019年3月、川崎市の事業所への転勤通知を受けたが着任せず、翌4月に懲戒解雇とされた。
親会社のNECは「当社の主張が認められた。妥当な判断だと考えている」とコメントした。
(共同通信社)
厚生労働省が、新型コロナウイルス感染の労働災害について、事業者の労災保険料の負担を軽減する特例措置を設ける方針であることが26日、分かった。現行制度では、労災を多発させた事業者の保険料を増やす仕組みだが、コロナ感染は対策を取っても防ぐことが難しいため、増額の対象から除外する。
厚労省によると、コロナ関連の労災件数が多い医療機関や高齢者施設の負担を軽くするのが狙い。26日午後に開かれる厚労相の諮問機関、労働政策審議会での議論を受け、正式決定する方針。2011年の東日本大震災での労災でも同様の措置が取られており、今回が2回目となる。
労災保険料は事業者の全額負担で、労働者が仕事や通勤の際、けがや病気となった場合に治療費や入院費などを支給する。労災防止の取り組みを進めるため、業種ごとに決められた保険料率を基に、労災事故の件数に応じて最大で40%増減する仕組みになっている。
22年度の保険料率は18~20年度が算定対象期間。コロナ関連の労災が多かった医療機関などは、感染が拡大した20年度の保険料が増える恐れがあった。政府は医療機関などに緊急事態宣言中も事業継続を要請しており、労災件数の増加によってさらなる負担を求めることがないよう特例措置を決めた。
コロナ関連の労災給付件数は今年10月末時点で、1万6150件に上る。20年度の給付件数は6457件で、約20億円が支給された。このうち、医療、介護関係の業種が8割超だった。
コロナ感染による労災を巡っては、厚労省は昨年4月、医療、介護従事者について「感染経路が特定されなくても原則対象となる」との通達を出し、労災認定されやすいようにしている。
(共同通信社)
厚生労働省は25日、労使で賃金の計0・9%を負担している雇用保険の保険料率を、来年度から引き上げる方向で調整に入った。26日に閣議決定する補正予算案では、逼迫する雇用保険財政に2兆円強の一般財源投入が決まっており、労使にも相応の負担を求める必要があると判断した。ただ労使双方が反対しており、今後の審議会で引き上げ率を調整する。
政府内では雇用保険料のうち、失業手当などに使う「失業等給付」分を計0・2%から計0・6%まで引き上げる案が出ている。雇用調整助成金(雇調金)の原資となり企業のみが負担する「雇用保険2事業」は、0・3%から本来の率である0・35%に戻す方向だ。「育児休業給付」は計0・4%を据え置く。
この案に沿った場合の保険料率は現行の計0・9%から計1・35%に上昇する。労働者の負担はうち0・5%で、月収40万円の場合、月額の負担額が1200円から2千円に上がる計算だ。
雇用保険を巡っては、新型コロナウイルス禍で雇調金の支出が急増。昨春からの支給決定額が累計5兆円に迫り、財源がほぼ枯渇している。
(共同通信社)
精神的な不調で通院し、職場で包丁を持ち同僚を脅したとして分限免職処分を受けた元神戸市職員の40代女性が処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁の太田晃詳裁判長は17日、処分を違法とした一審神戸地裁判決を取り消し、女性の請求を棄却した。
今年3月の一審判決は「処分は裁量権の行使を誤っており違法」と判断した。だが太田裁判長は、包丁を持ち出して近寄ったことを「他の職員に強い精神的負荷を与える衝撃的な行為」と指摘し、分限免職処分を「裁量権を逸脱するような不合理なものだったとはいえない」と適法とした。
判決によると、女性は2015年8月、庁舎内で包丁を持ち、同僚に近づいた。女性はパーソナリティー障害で通院し、薬物療法を受けていた。市は女性を分限休職処分にした後、16年3月、治療期間が長く治癒の見込みも立たないなどとして分限免職処分とした。
(共同通信社)
厚生労働省は17日、新型コロナウイルスの感染拡大で小学校などが臨時休校となり、仕事を休まざるを得ない保護者の賃金を補償する助成金の対象期間を来年3月末まで延長する方針を固めた。1月以降は感染拡大地域を除き、支給上限額を段階的に引き下げる。19日に決定する経済対策に盛り込む。
助成金はコロナの感染拡大によって設けられ、当初は今年12月末までが対象だった。
現在、上限は1日当たり1人原則1万3500円だが、雇用調整助成金と同様に、来年1~2月は1万1千円、3月は9千円と段階的に縮小する。緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の対象地域に事業所がある企業で働く保護者には、現行の上限日額1万5千円を維持する。
フリーランス向けの支援金も同様に来年1月以降、支給額を引き下げて継続する。企業を経由せず保護者が直接申請できる仕組みも続ける。
(共同通信社)
岸田政権が分配政策の目玉として掲げる賃上げ税制の強化について、政府、与党が税制優遇の対象からボーナスなどの一時金で賃金が増えた分を外し、定期昇給やベースアップなどで給与水準を引き上げた場合を軸とする検討に入ったことが12日、分かった。一時的な賃金増加だけでなく、基本給などの給与の底上げにつなげたい考えだ。
年末にかけての税制改正議論で具体的な制度設計を詰める。現行の制度は、ボーナスも含めた従業員の給与総額が前年度より増えた場合に、法人税額から支給額の一部を差し引くことで企業の税負担を軽減する。
適用要件は大企業と中小企業で異なり、大企業は新規雇用者の給与総額が前年度より2%以上増えれば支給額の15%分を、中小企業は全雇用者の給与総額が1・5%以上増えれば増加額の15%分を控除できる。
ただ、現行の制度ではボーナスなどで総額を一時的に膨らませた場合も対象となるため、必ずしも持続的な給与の引き上げにつながっていないとの指摘があった。
このため政府、与党は控除率の引き上げとともに、制度の適用基準を変更。ボーナスなどの一時金を除いた給与を引き上げた企業を優遇する形にすることを検討する。
ただ大企業に比べて経営体力の弱い中小企業については、基本給などの引き上げは固定費の増加につながることから、ボーナスを対象外にすることを懸念する声があり、大企業とは要件を変える可能性もある。
(共同通信社)
インターネットの求人サイトなどを巡り、厚生労働省は10日、届け出制の導入や虚偽情報の掲載禁止など運営事業者に新たな規制を設ける案を労働政策審議会の分科会に示した。個人情報の取り扱いも厳格化し、増えている求人サイトの利用者を守るのが狙い。来年の通常国会にも職業安定法などの改正案を提出する。
ただ分科会では、より厳しい規制を求める意見が労働側委員から上がり、今後詳細を詰める。
企業と求職者を直接仲介する場合は、職業安定法の規制を受けるが、求人サイトや求人情報誌は情報を載せるだけであることから法規制が及んでいない。
厚労省は実態把握を進めるため、事業者の名称や所在地、連絡先などを同省に届け出るよう義務付けることを提案。インターネット上では他サイトの求人情報をまとめて検索できるといった新サービスも生まれており、これらも求人サイトと同じく規制の対象に加える考えだ。
また、サイトなどの事業者に対し、求人企業の給与や福利厚生に関しうそや誤解を招く表示を禁じるほか、募集条件を常に最新の内容とするよう求める方針。
(共同通信社)
厚生労働省は10日、企業などで障害者の雇用率を計算する際に精神障害者のみに適用している特例措置を、期限となっている2022年度末以降も続ける方針を明らかにした。勤務時間が週20時間以上30時間未満の場合「0・5人分」と数えるが、精神障害者は採用から3年間は「1人分」とみなす特例がある。職場への定着を進めるには継続が必要と判断した。
同日の労働政策審議会の分科会に提案し、明確な反対意見は出なかった。「採用から3年」との条件をなくす案も示したが、委員から「短時間勤務がずっと続きかねない」との意見が出たため、今後詳細を詰める。
障害者雇用促進法は企業や公的機関に対し、一定割合の障害者を雇うよう義務付けている。企業の場合、現在の法定雇用率は2・3%。精神障害者に関しては、採用後の離職率が高いため、18年度に5年間の特例を設けた。
(共同通信社)
労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の雇用保険部会は10日、新型コロナウイルス禍での「休業支援金・給付金」の対象期間を1カ月延長し、12月末までとするよう求める厚労相諮問への答申を見送った。一部委員が、枯渇する雇用保険の財源確保策が示されなかったことに反発したため。厚労省は既に延長を発表しているが、答申されなければできなくなる。幹部は「なんとか納得してもらい支障が出ないようにしたい」としている。
反発したのは経営側、労働側双方の委員。通常は異論があっても水面下で調整されるため、答申が見送られるのは異例だ。ただ、労使とも12月末までの延長自体に異論はなく、11月末までには認められる可能性が高い。
国はコロナで雇用情勢が悪化する中、従業員への休業手当の大部分を国が企業に代わって支払う「雇用調整助成金」制度を拡充した。財源は主に労使が保険料を負担する雇用保険で、コロナ禍の長期化で昨春からの支給決定額が5兆円に迫り、本年度予算も使い切った。このため委員らが以前から財源確保策を示すよう厚労省に求めていた。
休業支援金は雇調金を補完する形で新設。仕事を休んだ労働者が直接国に休業補償を請求できる。
(共同通信社)
厚生労働省が9日発表した就労条件総合調査によると、企業で働く人が2020年に取得した年次有給休暇(年休)の平均日数は、前年と同じ10・1日だった。平均付与日数が減ったため、平均取得率は0・3ポイント増の56・6%で過去最高となったが、政府が過労死防止大綱で目標に掲げる「25年までに70%以上」とは大きな開きがある。
従業員が千人未満の企業では取得が進んだが、千人以上の企業では前年の63・1%に対し、20年は60・8%とわずかに減少。同省の担当者は「新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が増えて年休を取る必要性が低くなったほか、外出自粛が続いて旅行などに行けなかったためではないか」と分析している。
大綱では、終業から次の始業までに一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル制度」の導入企業を25年に15%以上とする目標も設定しているが、4・6%だった。
給与や福利厚生など、従業員を雇うために必要な企業負担も5年ぶりに調査。8684円減の40万8140円となり、介護や年金の保険料が上がる一方、給与や住宅補助などの経費は減った。
調査は従業員30人以上の民間企業6411社を対象に実施し、4013社から回答を得た。
(共同通信社)
政府は12月から始まる新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種に関しても、企業内の診療所などで行う職場接種を認める方針を固めたことが8日、関係者への取材で分かった。実務を担う地方自治体の負担軽減や、多くの人の接種促進につなげる狙い。
一方、自衛隊が運営する大規模接種センターでは3回目接種は実施しない方向。
11月前半に政府がまとめる新型コロナ対策の「全体像」に盛り込む方向で調整している。堀内詔子ワクチン接種推進担当相は8日、視察先の福島市で「追加接種の態勢などを全体像で明らかにする」と記者団に述べた。
厚生労働省は3回目接種を行う方針をすでに決定。対象者を2回目接種を終えた全ての希望者とする方針だ。12月に医療従事者から始まる見通し。
(共同通信社)
東証1部上場の床材メーカー「東リ」(兵庫県伊丹市)の工場での就業実態が違法な「偽装請負」だったとして、請負会社から解雇された男性5人が地位確認などを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は4日、請求を棄却した一審神戸地裁判決を取り消して偽装請負を認め、直接雇用契約の成立と最大月約27万円の賃金支払いを命じた。
請負契約では発注側が請負会社の社員に直接指揮命令する権限はない。2015年施行の改正労働者派遣法は、違法派遣があった場合には派遣先企業が労働者を直接雇用する意思を示したとみなすと規定している。原告側代理人によると、この規定に基づき、雇用契約の成立を認める司法判断は初めて。
清水響裁判長は判決で東リは請負会社の責任者を通して、具体的な作業手順を指示していたと認定。「請負としての実態がなく、脱法行為であったのは明らか」として、偽装請負を認めた。
その上で、労働者派遣法に基づき、東リは直接雇用契約の申し込みをしたとみなして解雇後の賃金の支払いを命じた。
判決後、大阪市内で会見した原告の一人の藤沢泰弘さん(58)は「非正規労働者が、直接雇用の権利を獲得できる礎になればいい」と話した。
東リは「判決文が届いていないため、回答を差し控える」としている。
判決によると、東リの伊丹工場で建材の製造作業などに従事していた男性5人は、17年3月に請負会社から解雇され、東リに直接雇用を求めていた。
(共同通信社)
男性社員向けに有給の育休制度を導入する動きが広がり始めた。江崎グリコのように取得を義務付ける企業もあり、長期間休むことによる経済的負担を軽減して男性の育児参加を積極的に後押しする。
グリコは生後6カ月までの子どもを持つ社員を対象に、有給扱いで1カ月間の育休取得を義務付ける制度を2020年1月に始めた。17年時点で約4%だった育休取得率は現在100%に。担当者は「育休に対する社員の意識が変わった。子育て中の『気付き』を食品メーカーの仕事に生かしてほしい」と話す。
清水建設も今年10月から、子どもが生後8週間以内の社員に対し、最大4週間の有給休暇を用意。上司が面談で取得を推奨している。これまでも2歳になるまで日数制限なしで休暇を取得できたが、無給だった。
メルカリは子どもが生後8週間になるまで、残業代などを除いた給料を保障した上で休める制度を取り入れている。強制ではないものの、約90%の男性社員が育休を取得する。1歳になるまで保育園費用を月額最大10万円まで補助する制度も試験導入している。
来年10月には改正育児・介護休業法で「出生時育児休業(男性版産休)」が新設され、子どもが生まれてから8週間以内に、夫が計4週分の休みを2回まで分割して取得できるようになる。これを機に、育休普及に向けた企業の側の環境整備が一段と進みそうだ。
(共同通信社)
育休を取得した男性に、育児に関し良い変化があったかどうかを尋ねると88・6%が「良い変化があった」と答えたことが3日、明治安田生命保険の調査で分かった。取得できなかった人は、経済面や職場の雰囲気を理由に挙げた。担当者は「取得促進には育休制度の周知に加え、労働環境を整えることが大切だ」と指摘している。
今年8月、0~6歳の子どもがいる既婚男女にインターネットで調査し、1100人から有効回答を得た。
育休を取得した男性に、育児への関わりの変化を複数回答で聞いたところ「子育ての大変さが分かり、配偶者をもっとフォローしたいと思った」が49・4%で最も多い。
一方、育休を取得したくてもできなかった男性の理由(複数回答)は「給与が減少するなど金銭面で取得しにくかった」が30・0%と最も多く、昨年調査から倍増した。新型コロナウイルス禍が長引いた影響とみられる。「職場を長く離れ、戻る際の雰囲気に不安がある」が12・8%だった。
調査結果を分析した明治安田総合研究所の小玉祐一フェローチーフエコノミストは「職場に迷惑を掛けるとの不安が取得の壁になっている。社会の仕組み自体を変えていく必要がある」と話している。
(共同通信社)
服飾雑貨の製造会社に勤めていた40歳の男性が死亡したのは長時間労働が原因として、遺族が会社側に約7200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は28日、過重労働と死亡との因果関係を認め、会社側に約1100万円の支払いを命じた。
判決によると、男性は東京都墨田区の「エスジー・コーポレーション」で商品管理などを担当していた2015年11月、致死性不整脈で死亡した。労働基準監督署は17年8月、労災と認定した。
金沢秀樹裁判長は「タイムカードなどで従業員の業務時間を十分に管理していなかった」と指摘。パソコンの使用記録などから、男性の残業時間が死亡前の6カ月間で月平均約77~127時間に及んだと算定し「会社側は過重労働を抑制する義務を怠っており、重大な過失が認められる」と判断した。
判決後、遺族らが都内で記者会見し、男性の妻は「毎日遅くまで働き、亡くなる数年前から『疲れた』『辞めたい』などと言っていた」と説明。「夫の無念を晴らすことができた。会社はきちんと責任を取ってほしい」と語った。
会社側は「判決文を受け取っておらず、コメントできない」としている。
(共同通信社)
厚生労働省は子育てしやすい企業を認定する「くるみん認定」を巡り、現在の男性育休に関する基準を引き上げるとともに、中小企業などが認定から漏れないよう「トライくるみん」を創設する案を26日の労働政策審議会分科会に示し、了承された。来年4月から始まる。
大手から中小まで幅広く育休取得を促し、子育て支援に前向きな企業を増やす狙いがある。
男性育休の取得率に対する基準は「くるみん」が現行の7%から10%、より高い水準を満たした企業が得られる「プラチナくるみん」が13%から30%へ、それぞれ引き上げ。新設の「トライくるみん」は現行の「くるみん」と同じ7%にした。
くるみん認定では、行動計画や数値目標などの項目の基準を満たした企業は「子育てサポート企業」として認定を得る。商品広告や求人の際にマークを表示することなどにより、企業姿勢を訴えることが可能。税優遇や助成金も受けられる。
(共同通信社)
厚生労働省は22日、2018年3月に大学を卒業して就職した人のうち3年以内に仕事を辞めた割合は、前年比1・6ポイント減の31・2%だったと発表した。高卒者の場合は前年比2・6ポイント減の36・9%。就職後3年目に新型コロナウイルスが感染拡大したため、一部が転職を控えたとみられる。
新卒で就職して3年目に仕事を辞めた大卒者は、17年3月卒が9・9%だったのに対し、18年3月卒では8・3%と1・6ポイント減少。高卒者でも10・0%から8・1%に1・9ポイント減った。同省の担当者は「20年度はコロナ禍で雇用環境が悪化しており、転職活動を控えたのではないか」と話している。
18年3月大卒者の就職後3年以内の離職率を産業別に見ると、宿泊・飲食サービス業が51・5%と最も高かった。生活関連サービス・娯楽業46・5%、教育・学習支援業45・6%と続いた。
規模別では、従業員千人以上の事業所では24・7%だったが、規模が小さくなるほど離職率が高まり、5人未満の事業所では56・3%だった。
(共同通信社)
厚生労働省は20日、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)分科会を開き、社会人が仕事や転職で必要な技能を学び直す「リカレント教育」に関するガイドライン(指針)を、年度内に策定する方針を示した。新型コロナウイルス感染拡大によるデジタル化進展を重視するなど、労働者に求められる技能の変化や新たな就労環境に対応するのが狙い。
厚労省によると、デジタル分野に対応した人材が企業で不足する一方、働き方が多様化し、企業を渡り歩く労働者も少なくない。コロナ禍の厳しい経営状況で企業の教育研修費は減っており、労働者が自発的に学び直す重要性が増している。
分科会では、必要とされる人材像や技能、効果的な教育訓練方法を議論し、支援策と併せて年内に方向性をまとめる。それに基づき策定する指針では、実現に必要な取り組みや労使の連携策、キャリアコンサルタントの活用方法などを整理する。企業、労働者、国のそれぞれが果たす役割についても考え方を示す見通しだ。
(共同通信社)
飲酒運転して物損事故を起こし、2018年に懲戒免職処分となった元大津市職員の50代男性が、免職と退職金約1620万円不支給の処分取り消しを求めた訴訟の判決で、大津地裁は14日、退職金の不支給処分のみを取り消した。
堀部亮一裁判長は判決理由で、退職金の不支給処分について、人身事故に比べて被害が軽く弁償もされたことや市の退職手当条例の内容から「一部不支給処分の余地も否定できない」との判断を示した。
免職処分に関しては、飲酒直後に車を約5キロ走らせ2件の事故を起こしたことを「危険で悪質」と指摘。人事院の指針や市の基準と照らしても「裁量権の逸脱とは認められない」とし、元職員側の主張を退けた。
判決によると、元職員は大津市総務部の管理職だった18年8月上旬、発泡酒や酎ハイを飲んで車を運転。駐車場で他人の車にぶつかり、自宅へ帰る途中で縁石の反射板を壊した。同年10月、懲戒免職となった。
元職員の代理人弁護士は「主張をある程度認めてもらえた」と述べた。大津市人事課は「判決文の内容を精査し、対応を慎重に検討する」としている。
(共同通信社)
九州保健福祉大(宮崎県延岡市)の薬学部の教授にセクハラを受けたとして、元助手の40代女性が損害賠償を求めた訴訟の判決で、宮崎地裁延岡支部は13日「社会通念上許される限度を超え、人格権を違法に侵害した」として、教授と大学側に計約130万円の支払いを命じた。
判決によると、教授は2016年9月~17年3月、飲み会の席などで女性の体を触ったり、強引にキスしたりした。女性は誰にも相談できない状況が続き、心療内科を受診するようになった。
大淵茂樹裁判長は、指導教授の機嫌を損なえば不利益な扱いを受けると思い、女性は毅然とした態度を取れなかったと指摘。「教授は、女性が自分に好意を持っていると都合よく解釈し、一方的に性的な言動を助長させた。女性の精神的苦痛は重大だ」と述べた。
また、こうした言動が、指導者という優位な立場を背景にしたパワハラに当たるとも判断。業務に密接に関連しているとし、大学の使用者責任も認めた。
女性は判決後に記者会見し「大人だから拒絶できたのではと言われることも多かった。セクハラが認定されたのは大きいと思う」と話した。大学は「判決文が届いておらず、コメントは差し控える」とした。
原告の女性は18年3月、雇用契約を打ち切られている。女性と元助教ら計4人は、不当に雇い止めされたとして、大学側に雇用継続などを求めて係争中。
(共同通信社)
中部電力の三重支店に勤務していた鈴木陽介さん=当時(26)=が自殺したのは、上司の暴言などパワーハラスメントや過重業務が原因として、母親吉田典子さん(59)が、労災を認めなかった津労働基準監督署の処分取り消しを国に求めた訴訟で名古屋地裁は11日、請求を棄却した。母親側は控訴する方針。
井上泰人裁判長は判決理由で、「おまえなんていらない」「こんなんで大卒か」と上司が発言したとする吉田さん側の主張に対し、裏付ける証拠がないと指摘。「上司が日常的に業務指導を逸脱した言動をしたとは認められない」と述べた。
その上で「業務も他の新入社員に比べて過大ではなかった」として、業務と精神障害発症に因果関係はないと判断した。
判決によると、陽介さんは2010年4月に入社。三重支店に配属されたが、精神障害を発症し同10月に自殺した。吉田さんが13年に労災申請したが、津労基署は認定しなかった。
吉田さんは判決後に記者会見し「まだ闘いは続く。一体何があったのか、せめて事実だけは(息子に)明らかにしてあげたい」と話した。
(共同通信社)
経団連は5日、副業・兼業の促進に向け、主要15社の取り組みをまとめた報告書を公表した。労働時間の管理や情報漏えいに対する懸念を背景に、副業の容認企業は22%にとどまるものの、社員の働きがい向上につながる施策と分析。導入が困難な場合は、他部署の仕事を兼ねる「社内副業」も選択肢になり得ると指摘した。
長時間労働の防止対策として、三菱地所は第三者機関のソフトを活用し、副業先での労働時間を把握。東京海上日動火災保険は副業での労働時間は原則30時間までと定め、ライオンも午後10時以降の副業を禁じて翌勤務まで10時間以上を確保するよう求めている。
多くの企業が機密情報の流出や名誉毀損などに懸念が生じた際は副業を制限すると就業規則などに明記しているという。
経団連が昨年実施し、487社が回答した調査では78%が副業を認めていなかった。ただ、副業は多様な人事労務政策の一つで、自社実態に合わせた検討が重要だと説明した。
報告書では、副業の代わりとして社内副業などの事例も紹介した。ディー・エヌ・エーは社員の希望により業務の最大30%を他部署の仕事を兼務できる制度を導入。三菱地所は、業務時間の10%以上を通常業務以外の活動に充てることを必須にした制度を設けている。
(共同通信社)
部下に対する暴行や暴言などパワハラを繰り返し、職場の秩序を乱したとして分限免職処分を受けた山口県長門市消防本部元職員の40代男性が、市に処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、広島高裁は30日、市の控訴を棄却した。一審山口地裁判決に続き男性の請求を認め、市の処分を取り消した。
横溝邦彦裁判長は「パワハラ行為が行われた」と認定。一方で、男性に分限免職処分に相当するような勤務実績不良は認められず「本件処分は重きに失し、違法」と指摘した。また、これまでに市が男性に対し、パワハラ行為を防ぐような指導や研修を具体的に行った事実はないとした。
判決などによると、男性は2017年に複数の部下の職員からパワハラを訴えられ、消防長らの聞き取りに対して行き過ぎた指導があったと認めた。市は「暴行などを繰り返し職場の人間関係を著しく乱した」として処分。市によると男性はその後、暴行罪で罰金の略式命令を受けた。
(共同通信社)
厚生労働省は22日、今年3月に卒業した高校生や大学生の採用内定取り消しが、8月末時点で136人(37事業所)だったと発表した。うち、新型コロナウイルスの影響によるものが124人(25事業所)と9割を超えた。2020年3月卒業の211人(82事業所)に比べて減ったものの、2年連続で100人を上回っており、高止まりの状態が続いている。
内定取り消しは解雇に相当し、客観的で合理的な理由がない場合は無効。これとは別に入社時期を遅らされた人が157人おり、厚労省が新卒者対象のハローワークで相談に応じている。
業種別では卸売・小売業が75人で最も多く、製造業19人、医療・福祉14人と続いた。取り消された136人のうち、99人は他の企業などに就職した。全国のハローワークを通じて集計した。
内定取り消しは、コロナ禍以前は年に数十人で推移。リーマン・ショック後の09年3月卒や東日本大震災後の11年3月卒など災害時や経済危機の際に増える傾向にある。
同省によると、4月入社予定を直前に取り消されることが多いが、入社時期を遅らせた後に取り消す場合もある。内定者の相談で後日判明するケースもあり、状況が落ち着く8月末時点で調査している。
厚労省の担当者は「内定取り消しが減ったからといって雇用環境が良くなったわけではない。コロナ禍は続いており、影響を注視する必要がある」としている。
(共同通信社)
2010年にトヨタ自動車の男性社員=当時(40)=が自殺したのは、過重業務と上司のパワーハラスメントでうつ病を発症したのが原因として、愛知県豊田市に住む男性の妻(50)が、労災を認めなかった豊田労働基準監督署の処分取り消しを国に求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁は16日、請求を棄却した一審判決を取り消し、労災を認めた。
一審判決によると、男性は1990年に入社。08年4月以降、新型プリウスの部品生産ラインの立ち上げなどに従事していたが、09年10月ごろうつ病となり、10年1月に自殺した。妻は労災補償を求めたが、豊田労基署は12年、「業務上の疾病に該当しない」として不支給を決めた。
20年7月の一審名古屋地裁は、男性が発症したうつ病について「業務との因果関係は認められない」として、請求を棄却していた。
(共同通信社)
田村憲久厚生労働相は10日の記者会見で、少子高齢化に伴い、国民年金(基礎年金)の水準が将来大幅に減る見込みであることから、低下幅を抑える制度改革を検討する方針を明らかにした。厚労省は会社員が加入する厚生年金から財源を振り分けることで実現したい考え。
国民年金のみの受給者は2020年3月現在、約695万人。5年に1回行う年金財政検証の次回24年に具体的な財源配分方法を示し、25年に改正法案の提出を目指す。ただ高収入の会社員は将来の年金水準が現行制度に比べ下がることになり、経済界の反発も予想されるため、早めに方針を打ち出したとみられる。
公的年金では、少子高齢化で支え手が減少しても制度を維持するため、物価や賃金が上昇しても支給額を一定期間抑制する「マクロ経済スライド」という仕組みがある。だが物価が上がらないデフレ経済が続いたため、この仕組みが働かず、現在の高齢者の年金水準が想定よりも高止まりした状態になっている。
その分、将来の年金水準の下げ幅が大きくなり、抑制期間も長くなる見通しで、19年の財政検証では国民年金の価値は47年度に現在よりも約3割低下。一方、財政的に豊かな厚生年金は約3%の目減りにとどまり、抑制も25年度に終了する。
低年金で暮らせない人が多数生まれ、厚生年金受給者との格差も広がるため、厚労省は厚生年金の財源を一部、国民年金に振り分け、抑制終了時期も30年代半ばにそろえたい考え。
この場合、例えば共働きで40年間平均の年収が計1790万円を超える会社員夫婦は、現行制度に比べ将来の支給水準が下がる見通し。ただ土台となる基礎年金が底上げされることで、厚生年金受給者を含め中所得層の年金水準は上がるとみられる。
田村氏は会見で「所得の低い方々に手厚い年金に変わり、非常に意味のある改革になる」と強調した。経済界などとの利害調整に時間がかかることに加え、菅内閣の退陣が決まったため、自身の在任中に地ならしに着手したい意図があるとみられる。
(共同通信社)
人事院は15日、国家公務員の労災に当たる公務災害について、過労死を含む脳・心臓疾患に関する公務災害認定の判断指針を改正し、各省庁に通知した。残業時間がいわゆる「過労死ライン」に達していなくても、業務の負荷を総合的に判断して認定することが柱。厚生労働省が、民間を対象とした労災認定基準を20年ぶりに改正したのに合わせた。
自治体の職員に関しても、地方公務員災害補償基金が人事院通知に準拠して運用することになるという。
新指針では、残業時間が発症前の直近1カ月間で100時間、2~6カ月平均で80時間という「過労死ライン」は維持。その上で、この水準に至らなくても、業務の負荷を総合的に判断することを明記した。
負荷の重さを判断する着眼点として、発症前1週間に深夜を含め日常業務以上の継続的な勤務があったかどうかや、終業から次の始業までに一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル」が短いことなどを挙げた。
人事院によると、2010年度以降、一般職の国家公務員が脳・心臓疾患で公務災害と認定されたのは32件。うち亡くなったのは17件だった。
(共同通信社)
2022年に卒業を予定し、就職を希望する高校生に対する企業の採用選考が16日、全国で解禁を迎えた。21年卒は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で準備が整わない状況を踏まえ、例年より1カ月遅れの10月16日が解禁日だった。22年卒は例年の日程に戻った。
高校は学校推薦を受けて企業に応募する方式が主流となっている。採用が早まり、学業に影響する事態を避ける狙いで、文部科学省や厚生労働省、経済団体、全国高等学校長協会の協議により、統一日程を決めている。
最初に応募可能な企業が1人1社に限られることが多い。一定期間を経た上で複数企業への応募ができるようになる。自分に適した企業を選ぶ上での選択肢が狭まり、早期離職を生む温床になっているとの指摘もある。
民間企業などに就職を希望する高校生(7月末時点)は約14万5千人おり、前年同期比10・3%減少した。21年3月卒に続いて減った。コロナ禍で、将来の安定を志向し、進学や公務員志望に切り替える人が増えたとみられる。求人数は2・9%増の約34万6千人。求人倍率は0・30ポイント上昇し2・38倍となった。
(共同通信社)
厚生労働省は14日、過労死を含む脳・心臓疾患の労災認定基準を2001年以来、20年ぶりに改正し、全国の労働局長に通知した。新たな基準では、残業時間がいわゆる「過労死ライン」に達していなくても、勤務が不規則であるなど労働時間以外の負荷がある場合は認定されやすくなる。
これまでの基準では、脳出血や心筋梗塞などの脳・心臓疾患を発症する前の残業時間を重視。残業時間が発症前2~6カ月の平均で月80時間、直近1カ月間で100時間が「過労死ライン」とされ、これらを超えた場合は業務と発症との関連性が強いとみなされ、認定される可能性が高まる。
厚労省は専門家検討会が7月にまとめた基準改正についての提言を受け、過労死ラインの水準自体は維持する一方、過労死ラインに達しなくても、それに近い働き方をしている場合は、労働時間以外の負荷が一定程度あれば認定できるとした。
労働時間以外の負荷として、出張の多い業務や身体的負荷を伴う業務、終業と次の始業までの「勤務間インターバル」が短い勤務などを挙げた。
(共同通信社)
厚生労働省は8日、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会を開き、来年度の雇用保険料率の引き上げに向けた議論を始めた。新型コロナウイルス感染拡大で、休業手当を一部肩代わりする雇用調整助成金の給付決定額が昨春からの累計額で4兆3千億円を超え、雇用保険財政が逼迫しているため。
今後のコロナ禍への対応や国費負担の在り方と併せ年内に結論を出し、来年の通常国会に雇用保険法改正案を提出する。
雇用保険は失業など雇用対策目的で国が運営する保険制度で、保険料率は賃金に応じて決まる。本年度は特例として労働者負担が賃金の0・3%、企業負担が同0・6%となっている。部会では来年度から本来の労働者0・6%、企業0・95%に戻すことや、さらなる引き上げを検討する。
2015年度には雇用保険の積立金が6兆4千億円に達し、コロナ禍前は政府が国費投入を大幅に減らしてきた経緯がある。この日の部会では「家計負担は増しており、今は保険料を上げるべきではない」(労働側委員)「コロナ禍は雇用保険で支えられる範疇を超えている。国の責任で一般会計から支出すべきだ」(経営側委員)と、労使から安易な引き上げをけん制する意見が出た。
雇調金は企業が支払う雇用安定事業として運営。コロナ禍による助成率拡充や要件緩和措置により支給額が増え、積立金から1兆6千億円を借り入れ、一般会計からも1兆1千億円を投入している。だが財源はほぼ枯渇しており、厚労省は、当面は積立金を活用するなどして乗り切る考えだ。
(共同通信社)
森永乳業子会社の洋菓子製造業「シェフォーレ」(千葉県八千代市)の男性社員2人が、ハラスメントに関する内部通報をした後、懲戒や降格の処分を受けたのは不当として、両社などに約1千万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、千葉地裁は8日、シェフォーレに計約200万円の賠償を命じた。森永乳業の責任は認めなかった。
判決によると、2人は2015年2月、内部通報制度を利用して社内のハラスメント問題を告発。その後、減給を伴う降格処分を受けた。1人は他の従業員と隔離された部屋で産業廃棄物の処理や草刈りの業務を担当させられた。
判決で高取真理子裁判長は、降格処分が「(内部告発に対する)制裁や、退職に追い込もうとするなどの不当な目的で発せられた」として人事権や懲戒権の乱用に当たり、無効と判断した。「勤務状態に怠慢があった」などとするシェフォーレ側の主張を退けた。
(共同通信社)
厚生労働省は7日、新型コロナウイルスの感染拡大で学校が臨時休校して子どもの世話をするために、仕事を休まざるを得ない保護者を支援する助成金制度を再開すると発表した。今年3月末に終了していた。個人申請も可能。新学期が始まり、子どもへの感染拡大、それに伴う保護者の休業増が懸念されるための対応。
再開するのは「小学校休業等対応助成金」。小学校や保育園、幼稚園などが休校・休園した保護者への支援が目的で、子どもの世話で特別有給休暇を取得させた企業に支給するほか、企業の同意があれば個人申請も可能とする。
8月1日から12月末までに取得した休暇が対象で、保護者の休業中の賃金分として1日当たり最大1万5千円を支給する見通し。都道府県労働局に助成金の相談窓口も設置する。
7月末までの休暇については、現在実施している「両立支援等助成金」で対応する。企業が申請する必要があるため、保護者や労働団体から見直しの声が上がっていた。
(共同通信社)
厚生労働省が31日公表した2020年の雇用動向調査によると、新型コロナウイルス感染を恐れて働くことを辞めた人や失業した人が増え、9年ぶりに離職者が入職者を上回った。年間の離職者は727万2100人で、入職者は710万3400人。転職者は469万2600人で、入職者の3分の2を占めた。
退職や解雇で仕事を辞めた労働者の割合を示す「離職率」は前年比1・4ポイント減の14・2%だった。就職や転職して仕事に就いた人の割合である「入職率」は2・8ポイント減の13・9%。
入職率と離職率を合計した「延べ労働移動率」は28・1%で、1996年の27・6%以来の低水準となった。雇用の流動性の低下を示している。厚労省の担当者は「新型コロナに伴う雇用情勢の冷え込みで、自己都合退職や転職を控える動きが出ているためではないか」と話している。
産業別に動向を見ると、新型コロナで大きな打撃を受けた生活サービス・娯楽業が2・6ポイント、飲食・宿泊業が0・6ポイントの離職超過にそれぞれ転じた。一方、デジタル化の推進で人手不足が続く情報通信業では5・4ポイントと大幅な入職超過だった。
従業員5人以上の約1万5千事業所を調べ、6割から有効回答を得た。
(共同通信社)
長崎県の非常勤職員だった40代女性が、男性上司のパワハラやセクハラで適応障害になり、休職を余儀なくされたとして、県と上司に損害賠償などを求めた訴訟の判決で、長崎地裁は25日、一部のパワハラを認定し、職務上の行為に責任を負うとして県に33万円の支払いを命じた。
判決によると、女性は2018年4月に採用。業務説明で、メモを取らずに話を聞くよう上司に指示された。同5月、指導が理解できないとして退職の意向を伝えると、上司に「俺に失礼だと思わないのか」と言われた。
天川博義裁判官は、こうした発言が社会通念に反するなどとして違法だと指摘した。セクハラは認めず、適応障害の原因が上司の発言だとする原告側主張も退けた。
女性は判決後の記者会見で「セクハラが認められなかったことは納得いかない。県は体質を改善し、謝罪してほしい」と訴えた。県は「判決内容を精査して対応を検討する」とした。
(共同通信社)
障害者の就労支援施設で働いていた元職員2人が、3年以上休日なしで昼夜働いていたのに残業代などが支払われなかったとして、運営会社に約3470万円の支払いを求めた訴訟の判決で、福岡地裁小倉支部は25日までに、会社側に約2580万円の支払いを命じた。判決は24日付。
藤岡淳裁判長は「時間外労働を余儀なくされていることを認識していたにもかかわらず、割増賃金を全く支払わない対応は悪質だ」と指摘。制裁金に当たる「付加金」約2250万円の支払いも命じた。
判決などによると、元職員2人はそれぞれ2014年11月~18年4月、15年1月~18年10月に勤務。平日の日中は就労支援施設「おしあん」(福岡県行橋市)で業務に従事し、夜間や休日は施設利用者らが共同生活するグループホーム「漢村」(同県苅田町)に泊まり込んで、利用者のトイレや入浴の介助などに当たってきた。
運営会社側は「雇用契約は『おしあん』によるものだ」とし、漢村での寝泊まりは個人的な都合だと主張していたが、藤岡裁判長は「運営会社側の指示だった」と退けた。
(共同通信社)
政府は、障害者の生活上の障壁を取り除く「合理的配慮」を企業などの民間事業者に義務付ける法律の2024年までの施行に向けた議論を始めた。24日に始まる東京パラリンピックを機に「共生社会」実現の機運は高まり、障害者団体は早期施行を求める。一方で、新型コロナウイルス禍で経営に苦しむ事業者からは、費用などの負担が大きいとして慎重な議論を望む声が上がっている。
合理的配慮は、車いす利用者のため段差にスロープを置いたり、聴覚障害者と意思疎通するために筆談をしたりすること。事業者の負担が重すぎない範囲で行う。これまで国や自治体の義務だったが、事業者にも義務付ける改正障害者差別解消法が5月に成立した。24年6月4日までに施行される。
6月の内閣府有識者委員会では、どのような場合に配慮が必要かを例示する基本方針を政府がまず改定し、それに基づき事業者が体制を整備するとのスケジュールが示された。事業者と障害者の双方に対応する相談窓口も設ける方向だ。
障害者団体の委員からは「施行の前倒しが必要」との声が相次いだ。一方、バリアフリー対応で設備の改修や職員の研修が必要になり得る経済界の委員は「業種ごとに直面する課題はさまざま」「飲食業は新型コロナ禍で事業の存続に精いっぱいだ」と強調し、丁寧な議論が必要と訴えた。
内閣府はこれらの意見を踏まえ、関連団体のヒアリングや合理的配慮の事例を集め、秋から議論を本格化させる考えだ。
(共同通信社)
2021年度の地域別最低賃金の改定額が全都道府県で出そろった。中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)は7月、目安額としては過去最大となる時給28円の引き上げを答申。答申を受けて地方審議会で協議した結果、40都道府県で目安額通りの改定となり、山形や島根など7県では目安額を上回る29~32円引き上げた。10月以降順次適用する。
厚労省は13日、人口を加味した全国平均の時給額を公表する。
新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済情勢の悪化の中での各地の大幅引き上げは、時給千円への早期引き上げを目指す菅義偉政権の意向が反映された形だ。
目安額を上回った7県はいずれも、経済情勢などに応じて都道府県をAからDまで分類した場合に、最低賃金が最も低いDランク。人手不足や若年層の流出を防ぐため、コロナ禍でも目安額を超えた引き上げが必要だと判断したとみられる。
引き上げ幅は島根の32円が最も大きく、次いで秋田と大分が30円で、青森、山形、鳥取、佐賀が29円だった。改定後の最高額は東京の1041円で、最低額は高知と沖縄の820円。
地方の審議では、コロナ禍が収まらず厳しい経営環境が続いているとして経営者側は引き上げに強く反対。有識者からなる公益委員と、大幅引き上げを主張する労働者側による賛成多数で引き上げが決まるケースも目立った。
最低賃金を巡っては、労使と公益委員で構成する中央審議会が7月に目安額を答申。それを踏まえ、都道府県ごとに地方審議会を開き、額を決める。
(共同通信社)
高知県立大(高知市)の有期契約職員として働いていた男性(43)が雇い止めに遭ったとして、雇用関係の確認などを求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)は、大学側と男性側双方の上告を受理しない決定をした。いずれも10日付。雇い止めを無効とする一方、雇用継続は認めなかった二審高松高裁判決が確定した。
男性は2013年11月から勤務し、18年3月に雇い止めとなった。同じ会社での勤務が通算5年を超えていれば、無期雇用への転換を申し込める「無期転換ルール」の適用を逃れる意図が大学側にあったとして、18年4月に提訴した。
20年3月の一審高知地裁判決は男性側の請求をほぼ認め「無期転換ルール適用直前の、法を免れるかのような雇い止めは是認できない」と指摘した。一方、今年3月の二審判決は、男性が無期転換を申し込んだのは契約満了後だったと判断し、男性側の主張を一部退けた。
(共同通信社)
政府が組織に所属しないフリーランスで働く人を保護するため、事業者が業務を発注する際の契約ルールを強化することが11日、分かった。報酬額などを記載した書面の交付を義務付ける対象について、資本金1千万円以下の事業者にも拡大する方針だ。報酬未払いを含めトラブルが相次いでおり、早ければ来年の通常国会で関連法案を提出する方向だ。
下請法は、下請けいじめを防ぎ、発注側と受注側の取引適正化を図る法律だ。資本金1千万円超の事業者が一定の業務を委託する場合、個人が相手でも適用される。
契約書などの書面を交付しなければ、事業者は発注後に取引条件を変更しやすくなり、フリーランスが不利益を押しつけられる恐れがある。このため政府は、書面交付の義務化の対象に、資本金1千万円以下の事業者も加えるといった対応が必要だと判断した。
現在、公正取引委員会などがフリーランスの実態を把握するため、アンケートを実施している。この結果を踏まえ、関係省庁が具体化に向け協議を進める。政府内には下請法を改正するか、新法を制定する案がある。
新型コロナウイルスの流行を受け、インターネットを通じた食事宅配サービスの配達員やITエンジニアの副業など、企業に所属しない新たな働き方が広がっている。政府はフリーランスの保護強化を昨年や今年の成長戦略に掲げている。
(共同通信社)
厚生労働省は2日、「労働者協同組合法」の施行日を来年10月1日とする政令案を労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会に示し、認められた。組合員が資金を出し合って運営にも関わる非営利法人を新たに認める。協同で働く形を後押し、人口減少に悩む地方を中心に、障害者福祉など地域課題の解決や就労機会の確保につながる効果が期待されている。
労働者協同組合はワーカーズコープとも呼ばれる。収入だけでなく仕事を通じたやりがいや満足感が目的。NPO法人などよりも簡単な手続きで設立でき、さまざまな事業を担える。
欧米を中心に、市民が地域の問題を解決したり、地場産業を支えたりするために活用されている。日本でも、介護や子育て支援など多様な分野で新たな担い手として注目されている。
超党派による議員立法として昨年の臨時国会で成立した。厚労省は今秋から、運営指針の内容などの議論を始める。
(共同通信社)
大阪市職員でつくる「大阪市役所労働組合」との団体交渉を拒否したことを不当労働行為と認めた大阪府労働委員会の2019年1月の決定を不服とし、大阪市が府労委に取り消しを求めた訴訟で、大阪地裁(中山誠一裁判長)は29日、請求を棄却した。「労組を軽視し、弱体化させる行為で支配介入に当たる」と判断した。
松井一郎市長は取材に「棄却は残念。内容をしっかり見ながら対応を決めたい」と述べた。
市は橋下徹元市長時代の12年、庁舎内の事務所の貸与を取り消すと労組に通知。労組は団交を要請したが、市は拒否してきた。労組は現在、民間ビルに入居している。
訴訟で市側は「庁舎管理は市が主体的に判断すべき事柄」と主張。地方公務員法が「交渉の対象とすることができない」と定める「管理運営事項」に当たるとしていた。
中山裁判長は「団交の議題には、事務所移転による勤務時間帯の変更や有休取得への影響など管理運営事項ではない内容も含まれる」と指摘。市は団交内容を確認せず拒否したと判断した。
労組は、府労委側の補助参加人として訴訟に参加。判決後、井脇和枝執行委員長は市役所で記者会見し「市は判決を真摯に受け止め、直ちに団交に応じてほしい」と訴えた。府労委は「主張が認められたと理解している」とコメントした。
(共同通信社)
同じ職場で通算5年を超え有期雇用で働いた人が対象の「無期転換ルール」が適用された人の約8割が、賃金などの労働条件に変化がなかったことが28日、厚生労働省が事業所と労働者に実施した実態調査で分かった。ルールは転換後の待遇向上を企業に求めていないが、転換前に低賃金だった人は多い。長く安心して働けるよう、企業側に改善の取り組みが求められそうだ。
厚労省は2020年7月に事業所、今年1~2月に労働者を対象とした調査を実施。約5700の事業所と約6700人の労働者から有効回答を得た。
無期転換ルールは非正規労働者の雇用安定を目的に、13年施行の改正労働契約法に盛り込まれた。通算5年を超えて契約更新した有期労働者は、期間の定めのない雇用に転換できる。18年度から運用が始まった。
調査結果によると、18、19年度に無期転換を勤務先に申し込む権利を得た人で実際に行使した割合は27・8%。転換後も賃金などの労働条件に変化がなかった人は78・7%に上り、正社員になった人は9・2%にとどまった。
ルールの適用を逃れようと企業が5年以内に雇い止めする事例が相次いでいるが、調査では、有期労働者の勤続年数上限を設定していない事業所が82・9%となった。一方、設定している14・2%の事業所のうちほとんどが上限は5年以内までと答えた。
有期労働者で、無期転換を「希望する」と答えた人は18・9%。「希望しない」は22・6%、「分からない」は53・6%だった。
希望する理由については「雇用不安がなくなる」が最多。実際に転換した人に意識の変化を聞くと、「より長く働き続けたい」との回答が目立った。希望しない理由は「高齢だから、定年後の再雇用者だから」との答えが最も多かった。
厚労省は今後、調査を基にルール見直しを検討する。担当者は「転換によって賃金改善やキャリアアップを求める人は多い。ルールの周知も必要だ」としている。
(共同通信社)
厚生労働省が雇用保険料引き上げの検討に入ることが28日、分かった。新型コロナウイルス禍で雇用調整助成金の給付決定額が4兆円を超え、財源が逼迫しているため。具体的な保険料率は今後、厚労相の諮問機関である労働政策審議会で議論し、早ければ来年の通常国会に雇用保険法改正案を提出する。
雇用保険は仕事を失っても生活に困らないようにするための事業と、雇用安定や能力開発の事業に大きく分けられる。保険料は労使が支払っており、一部事業には国費も投入されている。審議会では、特例で現在は労働者が賃金の0・3%、企業が0・6%となっている保険料率の引き上げのほか、国費投入の在り方についても議論する。
雇調金は休業手当の一部を補填する制度。コロナ禍を受けて昨年、日額上限を約8300円から1万5千円まで引き上げ、助成率を最大全額まで拡充している。
一方で財源不足は深刻化している。雇調金の原資となる雇用安定資金は2019年度末時点で1兆5410億円だったが、本年度末に864億円まで減るとの試算が出ている。本来失業者向けの事業に充てる積立金から借り入れるなどして対応しているが、こちらも19年度末は約4兆5千億円あった積立金が、本年度末には約1700億円まで減る見通し。
(共同通信社)
政府は21日、新型コロナウイルス禍に伴い、助成率を引き上げていた雇用調整助成金の特例措置を、年末まで延長する方針を固めた。最低賃金の大幅引き上げが10月に見込まれることから、中小企業の負担増に配慮した形。同日午後に開く経済財政諮問会議で示し、年内に追加支援策も検討する。
雇調金は企業が従業員に支払う休業手当の一部を補填(ほてん)する仕組み。政府はコロナ禍で業績が悪化した企業の支援策として、助成の日額上限を約8300円から1万5千円に引き上げた。中小企業向けの助成率も通常の3分の2から、最大10分の9以上の高水準を年末まで維持する。現行の特例は9月末までを期限とし、10月以降は「雇用情勢を踏まえて判断する」としていた。また、時給を一定額以上引き上げる中小企業を対象に給付条件の一部を緩和。最低賃金の引き上げが始まる10月から3カ月間は助成金を出す。
本年度の最低賃金を巡っては、中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)が16日、都道府県の時給を一律28円引き上げるよう求める目安を田村憲久厚労相に答申した。コロナ禍で飲食業や観光業が苦境に立つ現状を踏まえ、経営者側からは大幅増に反発する声が上がっていた。
(共同通信社)
東京地方最低賃金審議会は21日、2021年度の東京都の最低賃金を現行の時給1013円から28円引き上げ、時給1041円とするよう東京労働局長に答申した。中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)は16日、各都道府県で一律28円増とする目安を答申しており、その通りとなった。引き上げ目安28円は過去最大。21日の東京地方審は経営者委員が猛反発し、退席するなどした。
厚労省によると、47都道府県の地方審議会で本年度の答申が出たのは初めて。東京は異議申し立て期間を経て、10月1日から発効する見通し。
21日の東京地方審は賛成多数で答申内容を決めた。経営者委員は新型コロナウイルス禍で飲食、観光業などが苦境にあると強く反発。経営者委員6人のうち3人が採決前に退席し、3人が棄権した。労働者、公益両委員は賛成した。
退席した委員の一人は、退席前に審議会で「強い反対を表すために退席する」と理由を述べた。東京労働局によると、東京地方審での経営者委員の退席は記録が残る11年以降で初めて。採決での反対はこれまでもあった。引き上げ0円だった昨年度は労働者委員の一部が反発して退席した。
(共同通信社)
中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)は16日、2021年度の地域別最低賃金の改定について、都道府県の時給を一律28円引き上げるよう求める目安を田村憲久厚労相に答申した。18人から成る審議会の経営側委員は答申決定の際、採決を求め、経営側4人が反対した。反対少数で答申は決まったが、採決となるのは異例。
今後、都道府県の審議会が本格化するが、同様に経営側の反発は必至で、目安通り引き上がるかどうかは不透明だ。改定額は8月に出そろい、新たな最低賃金は10月ごろから適用される。目安通り引き上げられた場合、時給換算で現行の全国平均902円は930円となる。
16日の審議会では、新型コロナウイルス禍の中で過去最大の引き上げ幅となったことへの不満や、審議の在り方を再検討するよう求める意見が経営側から相次いだ。
田村憲久厚生労働相は同日の記者会見で「残念ながら意見が割れた」としながらも「できるだけ早期に全国加重平均千円を目指しており、賃上げの流れは維持できたと思っている」と述べた。
14日に開かれた審議会の小委員会が目安を示していた。これまで鳥取など7県が最低額の792円だったが、全国で800円を上回ることになった。一方で、最高額の東京との差は依然として221円のままで、地域間格差の課題が残った。
答申は目安額を経済情勢などに応じて都道府県をAからDの四つのランクに分類して提示し、いずれのランクも時給28円増とした。
小委員会の議論では、労働側が大幅な待遇改善を要求したのに対し、経営側は賃上げによって、コロナ禍で打撃を受けている飲食業や宿泊業などの経営が圧迫されるとして現状維持を主張した。
(共同通信社)
厚生労働省は15日、夫が育児休業を取りやすくするために新設する「出生時育児休業(男性版産休)」の施行日を来年10月1日とする案を労働政策審議会(厚労相の諮問機関)分科会に示し、正式に認められた。施行日前に妻が出産した場合でも、育休期間が残っている範囲内で施行後に取得できるとしている。
子どもが生まれる予定の従業員に対する取得働き掛けの方法や、育休を取りやすい環境整備など、来年4月から企業に課される義務の具体的な内容とともに近く意見公募する。
男性版産休は、夫だけに認められた育休の特例措置。妻の出産から8週の間に計4週の休みを2回まで分割して取ることができる。6月に成立した改正育児・介護休業法に盛り込まれた。
厚労省によると、来年10月1日より前に子どもが生まれた場合は、生まれた日を起点として8週以内なら、10月1日以降に男性版産休の取得が可能。その場合の日数は、上限の28日からそれまでに取得した通常の育休日数を差し引いた範囲となる。
(共同通信社)
中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は14日、2021年度の地域別最低賃金の改定について都道府県の時給を一律28円引き上げ、全国平均で930円とする目安をまとめた。02年度に時給で示す現在の方式となって以降で最大幅。都道府県の地方審議会が目安通り上げれば全都道府県で800円を上回る。
新型コロナウイルス禍で目安を示さず、事実上の凍結としていた昨年度から一転、これまでの最高幅27円を超えた。菅政権は秋までに行われる衆院選をにらみ大幅引き上げに積極的で、その意向が反映された形だ。
中央審議会が16日に厚労相に答申し、目安を踏まえ各地の地方審議会が都道府県ごとに協議する。8月ごろに改定額をまとめ、新しい最低賃金は10月ごろに適用される。
労働者と経営者それぞれの代表と有識者でつくる小委員会が14日まとめた報告書によると(1)ワクチン接種が始まるなど昨年度とは前提が異なる(2)産業全体では経済の回復が見られる(3)3%程度引き上げたとしても雇用情勢に大きな影響を与えるとまでは言えない-などとした。経営側委員2人が報告書を決定する際、異例の反対表明をした。
小委員会は、目安額を地域の経済情勢などに応じてA-Dの4ランクに分類して提示し、いずれのランクも28円とした。最高額は東京都の1041円で、最低額は秋田など7県の820円。東京と7県の差は221円のままで、地域間格差の解消は課題として残った。
21年度は約1年半に及ぶコロナの影響を主な争点に、大幅な待遇改善を目指す労働側と打撃を受けた飲食業や宿泊業などの雇用維持の優先を求める経営側の主張が激しく対立。当初は13日の決着が見込まれたが、14日までずれ込んだ。
中央審議会は16年度から4年連続で3%以上、24~27円の目安を示してきた。
(共同通信社)
20~30代の既婚男性で、育児休業を取得しないと答えた人が4割を超えたことが内閣府の調査で分かった。父親が育児のために休みを取りやすくする改正育児・介護休業法が成立したが、取得率を上げるには職場の意識改革が求められる。
調査によると、子どもが生まれた際に育休を取得するかとの質問に対し「取得しない」との回答が42・2%で最多だった。残りは取得する期間について1週間未満が17・1%、1~2週間未満が8・9%、2週間~1カ月未満は5・0%となった。
1カ月以上の育休を取得しない理由は「職場に迷惑を掛けたくないため」が42・3%で最も多く「収入が減少してしまうため」「職場が男性の育休取得を認めない雰囲気であるため」が続いた。
厚生労働省の雇用均等基本調査によると、2019年度の男性の育休取得率は7・48%で過去最高だったものの、低い水準にとどまっている。
(共同通信社)
過労死を含む脳・心臓疾患の労災認定基準の見直しを検討していた厚生労働省の専門家検討会は7日、残業が発症前2~6カ月間で平均月80時間などとする「過労死ライン」に達しなくても、不規則な勤務など、労働時間以外の負荷がある場合は認定できるとの提言をまとめた。過労死ラインは維持する。厚労省は検討会の意見を踏まえ、今秋にも20年ぶりに基準を見直す。
2001年に改正された現行基準でも、認定に当たっては労働時間以外の負荷要因も評価するとしているが、実際には労働時間が重んじられる傾向があり、ここ数年、残業時間が過労死ライン未満のケースは1割程度にとどまる。基準見直しにより、認定の幅が広がると期待される。
検討会がこの日、取りまとめた報告書では、近年の医学的知見を基に残業以外の要因を整理。負荷が重い不規則勤務として、拘束時間の長い勤務、休日がない連続勤務、終業と次の始業までの「勤務間インターバル」が短い勤務などを挙げた。
過労死ラインには達しないが近い働き方の場合、労働時間以外の負荷があれば業務と発症との関連性が強く労災認定できるとし、過去に支給決定された実例も示した。
また、認定対象となる疾病に「重篤な心不全」を追加。これまでは対象疾病の「心停止」に含めて取り扱っていた。
残業の認定基準を月65時間に引き下げるよう求めてきた過労死弁護団全国連絡会議の川人博弁護士は「国際的に月65時間超で長時間労働とされる中、日本だけ高いハードルを維持するのは残念」。
過労死ラインを下回っても認定できると報告書に明記されたことを受け「現場の担当者は基準見直しの趣旨を踏まえ、実態に即した審査をするべきだ」と訴えた。
(共同通信社)
来年春入社の新卒採用で、応募者の選考評価に人工知能(AI)を活用する試みが広がっている。メガバンクをはじめ国内有数の大企業がオンライン面接の内容をAIで分析する実験を新たに始めた。選考の公平性が高まるとの見方の一方、学生からは「採点基準が分かりづらい」といった戸惑いの声も。利用する企業には十分な説明責任が求められる。
「AI選考に関する学生の相談が徐々に増えている」。早稲田大キャリアセンターの担当者は話す。新型コロナウイルスの影響でオンライン面接が浸透し、企業がAIで録画データを分析しやすくなったためだ。
典型的な導入例はこうだ。動画面接ツールに接続すると、質問事項が自動音声で再生され、応募者はスマートフォンの画面に向かって志望理由などを話す。その後、回答内容を「状況適応力」や「チーム志向」といった複数の観点からAIが評価する。
昨年の採用活動でソフトバンクが動画面接の評価にAIを導入。今年は三菱UFJ銀行やみずほ銀行などが実験を開始した。伊藤忠商事や野村証券、トヨタ自動車系の部品会社も今後を見据えてAIシステムを試験導入したという。
有名企業には学生の応募が殺到するため、採用業務の効率化が課題だった。各社は1次面接など選考序盤の評価でAIを部分的に活用し、人事担当者の負担を軽減するのが狙いだ。
AI面接ツール「ハイアービュー」を販売するタレンタ(東京)は「AIを併用することで人事担当者の偏見を回避できる」と自信を示す。
一方、学生の受け止め方は複雑だ。東京都内の男子大学生は「(顔の表情など)どこまで採点されているのかよく分からず気味が悪い」と打ち明ける。明治大の就職キャリア支援センターの担当者は「対人の面接に比べて、学生は選考に落ちた理由を分析しにくい」と指摘した。
AIの信頼性に対する懸念は強い。海外では米アマゾン・コムがAIを使った採用を中止した。過去に採用したエンジニアは男性が多いことをAIが学習し、女性に不利に評価していたことが判明したためだ。
採用にAIを活用する日本企業も判断基準を十分に説明していない場合が多い。AIの倫理問題に詳しい名古屋大大学院の久木田水生准教授は「面接システムの開発・導入企業は判断基準の透明性を高める必要がある」と強調した。
(共同通信社)
高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」を3月末時点で導入していた17事業所のうち6事業所で、在社時間と社外で働いた時間を合計した「健康管理時間」が月300時間以上の長時間労働になった適用者がいたことが30日、厚生労働省の集計で分かった。2019年の導入後、厚労省が高プロ適用者の働く時間の集計を公表するのは初めて。
健康管理時間には休憩時間も含まれるため単純比較はできないが、一般労働者が月300時間働くと、残業が月100時間とされる「過労死ライン」を上回ることになる。労働組合や過労死遺族はかねて高プロが過重労働につながると指摘しており、改めて懸念の声が強まりそうだ。
厚労省によると、3月末時点で高プロを導入しているのは20社21事業所。このうち、労働基準監督署に定期報告があった17事業所について健康管理時間などを集計した。
高プロは金融ディーラーやアナリスト、経営コンサルタントなど五つの業務が対象。1カ月の健康管理時間が最も長い人で「300時間以上400時間未満」だったのはコンサルの4事業所と、アナリストの2事業所だった。適用者の平均で月300時間に達した事業所はなかった。
企業は適用者について、年104日の休日取得や健康確保措置の実施などが義務付けられている。四つの選択肢がある措置のうち「連続2週間の休日確保」を採用したのは9事業所で最多。一方、終業から次の始業まで11時間以上の休息時間を設ける「勤務間インターバル」や深夜勤務制限はゼロだった。
3月末時点で適用者は21事業所の計552人。内訳はコンサルが441人と最多で金融ディーラーが79人、アナリストが27人と続いた。
(共同通信社)
最高裁は25日、裁判所と弁護士事務所などをインターネットでつなぎ、民事訴訟の手続きを進める「ウェブ会議」を、2022年夏までに全国203の地裁支部で順次始めると発表した。既に知財高裁と全国50の地裁本庁に導入している。その後は、他の高裁にも拡大する見通し。
ウェブ会議は非公開の争点整理の手続きと、労働審判に活用する。弁護士や当事者が裁判所に行く代わりに、パソコンなどで裁判官や相手側とやりとりする。日程調整が簡単になり、裁判の長期化が解消できるメリットがある。
最高裁によると、22年2月上旬に島しょ部の8支部で開始し、比較的大規模な73支部は5月下旬に、残る122支部は7月下旬にそれぞれ始めるとしている。
また民事訴訟の準備書面や証拠説明書など、弁護士らがファクスで裁判所に送っている書面について、ネットで提出できるシステムを開発し、22年2月ごろから甲府、大津両地裁で試行運用する。
(共同通信社)
2020年度末時点で国民年金の保険料納付を全額免除または猶予されている人は、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、前年度から26万人増えて過去最多の609万人に上った。将来受け取る年金額のうち、全額免除期間の金額は、全額を納付した場合に比べて半減するが、10年以内に追納すれば本来の額を受け取ることができる。
保険料を免除されるかどうかは前年の収入に基づき判断される。厚生労働省は昨年、新型コロナを踏まえた特例措置を設け、通年でなく直近1カ月の収入が大幅に減少した場合でも、年額に換算し、要件に該当すれば免除されるとした。例えば単身世帯では年間所得57万円以下が全額免除の対象になる。
国民年金には自営業者や学生らが加入。今年3月末までに全額または一部免除、猶予が承認されたのは計約32万件に上った。
一方、20年度の納付率は前年度比2・2ポイント増の71・5%で、9年連続で上昇。全額免除・猶予者らを含めると実質的な納付率は40・7%だった。
(共同通信社)
厚生労働省は25日、裁量労働制が適用される労働者の実態調査結果を公表した。1日の平均労働時間は適用されない労働者より約20分長く、週平均でも2時間以上上回った。制度が必ずしも長時間労働の抑制につながっていない現状が浮き彫りになった。
裁量制を巡っては2018年、安倍晋三首相(当時)が国会で時短効果を強調。だが根拠とした厚労省の調査に不適切なデータが次々と発覚し、政府が適用業種の拡大を断念した。経済界は拡大を求めるが、労働組合などの反発が強まる可能性がある。
調査は19年11~12月に実施し、裁量制適用の有無で分類した計約1万4千の事業所と約8万8千人の労働者から回答を得た。
調査結果によると、制度が適用された労働者の1日の平均労働時間は9時間0分で、適用のない人は8時間39分。週平均では、それぞれ45時間18分と43時間2分だった。
厚労省はデータ問題を受け、18年に専門家検討会を設置、調査方法などを議論してきた。今後新たに有識者検討会を設け、制度の在り方を話し合う。
(共同通信社)
善光寺(長野市)を共同運営する天台宗寺院「大勧進」トップの貫主だった小松玄澄氏が、大勧進を相手取り、貫主の地位確認などを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(石井浩裁判長)は24日、一審長野地裁判決に続き小松氏の請求を棄却した。
判決などによると、小松氏は女性職員に差別的な発言やセクハラをしたなどとして信徒らに罷免を求められ、2017年12月、天台宗に辞任願を提出した。翌18年2月、辞任願を撤回する文書を送付したが、天台宗は認めず、同3月末で解任された。
小松氏側は「辞任願は何者かが偽造したものだ」と主張したが、高裁は一審同様、辞任願は小松氏が自筆で作成したもので有効だと認定。「撤回は信義則に反して許されない」とした。
善光寺は天台宗の大勧進と浄土宗の大本願が共同運営し、大勧進貫主と大本願上人が善光寺の住職を兼ねている。
(共同通信社)
東京都世田谷区立幼稚園で非正規の臨時職員だった女性(49)が解雇の無効などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は24日、幼稚園側が「長期にわたる職務の継続を期待させるような言動をしていた」として、区に慰謝料20万円の支払いを命じた。解雇無効は認めなかった。
判決などによると、女性は2011年から約5年4カ月にわたって事務補助職員として週2、3回勤務。ところが契約文書では奇数月は女性、偶数月は同僚が働いたことになっていた。三木素子裁判長は勤務実態と契約内容が長期間、懸け離れていたとし「社会的非難を免れない」と指摘した。
原告の代理人弁護士は同日記者会見し、区が書類上隔月勤務としたのは、臨時職員として働かせ続けるための「脱法的な方法」だと主張。「判決で『無責任だ』と断罪されたことは評価したい」と話した。
ただ、判決は勤務を続けられるという期待権を侵したことに対する慰謝料しか認めず、原告の女性は「偶数月は何だったのかと思う」と無念さをにじませた。
区は「主張が大部分認められたものと考えている。判決文の内容を精査し、今後の対応を検討する」とのコメントを発表した。
(共同通信社)
厚生労働省は23日、仕事が原因でうつ病などの精神障害を患い、2020年度に労災認定されたのは前年度比99件増の608件だったと発表した。1983年度の統計開始以降、2年連続で最多を更新した。原因別では、昨年、認定基準項目に追加された「パワーハラスメント」が99件で最も多かった。自殺(未遂含む)の認定は前年度比7人減の81人。新型コロナウイルス感染症に関連する認定も7件あった。
パワハラによる労災は近年、社会問題化してきた。パワハラの項目が新設されたことで、改めて、劣悪な職場環境がまん延している実態が浮き彫りになった。パワハラ自殺を巡っては、トヨタ自動車の男性社員=当時(28)=について、今年4月に同社が因果関係を認め遺族側と和解している。
厚労省によると、原因ではパワハラに続き、「悲惨な事故や災害の体験、目撃」83件、「同僚などからの暴行、いじめ・嫌がらせ」71件の順に多かった。
申請は2051件で過去2番目の多さ。うち女性は999件、48・7%を占め、5年前に比べ約10ポイント増えた。業種別にみると申請、認定とも「社会保険・社会福祉・介護事業」が最も多かった。
一方、過重労働が原因の脳・心臓疾患での労災申請は784件と、過去5年間で最も少なかった。認定は194件、うち死亡(過労死)は67人。発症前2~6カ月の残業が月平均80時間などとした「過労死ライン」を盛り込んだ認定基準が反映された02年度以降で、いずれも最少となった。
厚労省の担当者は「働き方改革やコロナ禍を背景に、労働時間が減ったことが影響したのでは」としている。業種別にみると、申請、認定とも「道路貨物運送業」が最多だった。
厚労省は脳・心臓疾患の労災認定基準について、今秋にも20年ぶりに見直す方針。同省の専門家検討会が今月22日、残業が過労死ラインに届かない場合でも、不規則勤務などの有無を踏まえ認定できるとの内容を盛り込んだ報告書案を示した。
(共同通信社)
夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定が憲法に反するかどうかが争われた家事審判の決定で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は23日、「合憲」との判断を示した。2015年12月の判決に続き2度目。裁判官15人のうち11人が賛成し、4人は「違憲」とした。最高裁は、夫婦の姓を巡る制度の在り方は「裁判での憲法違反の審査とは次元が異なる。国会で議論、判断されるべきだ」として、立法府の取り組みを促した。
夫婦に同姓を義務付ける規定は明治時代にでき、戦後も引き継がれてきた。家族の形や価値観が変わっていく中、社会情勢の変化をどう捉えるかが焦点だった。
最高裁は決定理由で「働く女性が増え、選択的夫婦別姓制度の導入に賛成する人の割合が増加するなど、社会の変化や国民の意識の変化を踏まえても、15年の判断を変更すべきだとは認められない」と指摘した。
合憲とした裁判官のうち3人は補足意見で「事情の変化によっては違憲と評価されることもあり得る」と含みを持たせた。
一方、違憲とした検察官出身の三浦守裁判官は「夫婦同姓の仕組みは、明らかに女性に不利益を与えている。別姓の選択肢を設けていないのは婚姻の自由を制約する」とした。弁護士出身の草野耕一裁判官も「選択的制度を導入しないことは個人の尊厳をないがしろにする」と述べた。
女性裁判官2人は違憲と合憲に分かれた。
15年の大法廷判決は、夫婦同姓の仕組みが社会に定着していると認定した。実際には妻が改姓する場合が圧倒的に多く、不利益があると認めたが「旧姓の通称使用によって一定程度緩和できる」とした。当時は裁判官5人が「違憲」だった。
法制審議会は1996年、選択的夫婦別姓制度の導入を含む民法改正を答申したが、自民党の反対で国会に法案は提出されていない。
今回の家事審判を起こしたのは東京都内の事実婚の夫婦3組。別姓での法律婚を希望したが、婚姻届が受理されず、受理を求めて18年に家事審判を申し立てた。家裁、高裁が退け、最高裁も特別抗告を棄却した。
(共同通信社)
厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会が22日開かれ、2021年度の地域別最低賃金を巡る労使間の議論が始まった。新型コロナウイルスの影響が続く中、大幅な引き上げを求める労働者側に対し、使用者側は雇用維持の側面を考えるべきだと反論、意見の隔たりが浮き彫りになった。菅政権が千円への早期引き上げに積極姿勢を示しており、その幅に注目が集まる。今後、双方が具体額を示して7月中旬の答申を目指す。
厚労省によると、労働者側の委員からは、困窮を訴える相談が増えており、セーフティーネットの一環として引き上げが求められるとの主張があった。使用者側の委員からは、厳しい経営状況でも雇用維持に努力している現状を適切に評価してほしいとの声が出た。
審議会後に開かれた小委員会の藤村博之会長(法政大教授)は労使双方に、次回7月1日の会合で目安額についての基本的な考え方を示すよう要請。7月中に少なくとも計3回の小委員会を開き、中央審議会が同月中旬にも取りまとめる見通し。
例年より答申の想定時期が前倒しされており、7月23日に東京五輪の開会式を控えているのを意識したとみられる。その後、都道府県の地方審議会が議論して8月ごろに結論をまとめ、10月ごろに改定される。
現行の最低賃金は全国加重平均で時給902円。最も高いのは東京の1013円で、秋田や鳥取、大分など7県の792円とは221円の差がある。
政府は今年の経済財政運営の指針「骨太方針」で、千円への早期実現を目指すと明記。西村康稔経済再生担当相は22日の記者会見で「最低賃金を含む賃上げの流れを継続していくことが極めて重要だ」と強調した。
(共同通信社)
厚生労働省の専門家検討会は22日、仕事が原因で脳梗塞や、くも膜下出血などの脳・心臓疾患にかかった場合の労災認定基準の見直しに向けた報告書案を示した。残業が発症前1カ月で100時間などとする「過労死ライン」は変更しないが、過労死ラインに近い働き方の人について、不規則な勤務などを判断材料として重視するべきだとした。検討会は来月にも提言をまとめる方針で、厚労省は20年ぶりに基準を見直すことになる。
脳・心臓疾患の労災認定を巡っては、2001年に定められた現行基準では不規則勤務といった長時間労働以外の要素も評価するとしているが、残業が過労死ラインを超えないケースの認定数は少ない。IT化の進展などで働き方が多様化する中、基準を明確化する。認定の幅が広がり労働者保護につながることが期待される。
報告書案では、長時間労働以外に労働者の負荷となる不規則勤務について▽拘束時間の長い業務▽休日のない連続勤務▽就業から次の始業までに一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル」が11時間未満▽深夜、交代制勤務-などを例示。
残業が発症前1カ月で100時間、2~6カ月で平均80時間の過労死ラインに近い場合には、こうした不規則勤務についても発症との関連性を評価するべきだとした。
現行の認定基準では、過労死ラインを満たさない場合も不規則勤務や拘束時間の長い勤務などの負荷を「総合的に評価する」とされている。ただ19年度、過労死ラインを超えない場合の労災認定は23件(うち死亡6人)で、認定件数全体の1割程度にとどまっている。
過労死遺族や弁護士らは、世界保健機関(WHO)と国際労働機関(ILO)が今年、残業が月65時間に及ぶと脳・心臓疾患のリスクが高まるとの調査結果を出したとして、過労死ラインの引き下げを求めているが、報告書案では現行基準を妥当とした。
(共同通信社)
厚生労働省の労働政策審議会部会は18日、飲食店の料理などを自転車で宅配する配達員や、フリーランスで働くIT人材について、企業に雇用されない個人事業主でも労災保険に入れる「特別加入制度」の対象に加える省令案の要綱を了承した。9月から運用が始まる。
厚労省によると、個人事業主の自転車配達員は、業界団体の推計で約9万人。生活様式の多様化や、新型コロナウイルス禍などで宅配事業の需要は拡大しているが、走行中の事故など配達員の労働災害が懸念され、ウーバーイーツや出前館など業界大手でつくる団体が特別加入を要望した。
ITのフリーランスは推計17万~25万人。業界団体は、過重労働による脳・心臓疾患や、ストレスが原因の精神疾患を訴える人が多いと指摘する。
労災保険は原則、雇用労働者が対象。建設業の一人親方など、働き方が労働者に近い人については、特別加入が認められれば自身で保険料を払うことで補償が受けられる。今年4月には、芸能従事者とアニメーション制作従事者、柔道整復師の3業種が追加された。
(共同通信社)
新型コロナウイルス感染拡大を受けて拡充した雇用調整助成金の特例措置を巡り、政府が8月以降も現状のまま維持する方向で検討していることが16日分かった。雇用情勢の悪化への懸念が相次ぎ、支援を続ける必要があると判断したとみられる。自民党の雇用問題調査会(松野博一会長)は同日、特例を8月以降も継続するよう厚生労働省に申し入れた。
企業が従業員に支払う休業手当の一部を補塡する仕組みで、支給決定は3兆7千億円を超えており、財源が課題となっている。自民党は特例維持とともに、一般会計のさらなる活用も含め、十分な財源確保を求めた。
政府はコロナによる雇用悪化を受け、助成の日額上限を約8300円から1万5千円に引き上げ、大企業、中小企業とも助成率を最大10分の10に拡大した。雇用保険財政の逼迫を踏まえて段階的に縮小する方針で、5~7月には原則として日額上限を1万3500円、助成率は大企業が最大4分の3、中小企業が最大10分の9に変更した。
直近3カ月の平均売上高が3割以上減った企業や、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域で時短要請に協力した飲食店などに関しては特例を維持した。
(共同通信社)
建設現場でアスベスト(石綿)を吸って肺がんや中皮腫などの病気になった元労働者や遺族のうち、国などに損害賠償を求める訴訟を起こしていない人を対象とした給付金制度を創設する法律が9日の参院本会議で、全会一致で可決、成立した。健康被害の程度に応じ1人当たり550万~1300万円を支給するのが柱。制度は来年度に運用が始まる見通しで、訴訟原告らの求めていた幅広い被害救済の実現へ向けて大きく前進する。
政府は給付対象者を最大約3万1千人、かかる費用を総額約4千億円と見込み、国費から基金を積む。
同法によると、有症者や療養中の人の給付額は病態に応じて550万、700万、800万、950万、1150万円の5段階。亡くなった人は病状により1200万~1300万円となる。
申請は各地の労働基準監督署などで受け付け、厚生労働省が被害の内容を審査、認定。同省所管で、労働者の未払い賃金立て替え事業を行う独立行政法人「労働者健康安全機構」(川崎市)を通じて支給する。
受給後に症状が悪化した場合、進行後の病態で得られる給付額との差額を申請可能。
建設アスベスト訴訟では5月に最高裁が国の賠償責任を認める初の統一判断を示し、菅義偉首相が原告団・弁護団と面会、謝罪した。政府は原告への和解金支払いや、訴訟外の被害者を救済する給付金制度創設などを盛り込んだ和解内容で原告らと基本合意した。
(共同通信社)
厚生労働省は4日、新型コロナウイルスワクチン接種に関わる医療従事者が接種業務で得た収入を、社会保険制度で扶養と認定されるかどうかの基準となる年収に入れない特例を発表した。資格があり仕事に就いていない潜在的な医療従事者が持つ保険料負担増への懸念を取り払い、活躍を促す狙いがある。
接種業務に就く際に年収が130万円以上と見込まれると、扶養の認定が取り消される可能性がある。扶養を外れると、年金や健康保険の保険料を自己負担する必要があり、基準を超えないように働く人も想定された。勤務先の条件などによっては、基準額は異なる。
特例の対象は、接種業務に従事する医師や歯科医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、救急救命士ら。今年4月から来年2月までの期間に注射や予診、接種後の経過観察などによって得た収入を、扶養認定に算定しない。
一方、医療職の資格を持っていても、接種会場や医療機関での受け付け業務は対象とならない。同様に、資格がなく、受け付け業務に従事する場合も対象外となる。
(共同通信社)
子どもの誕生直後に父親が休みを取りやすくする「出生時育児休業(男性版産休)」を新たに設ける改正育児・介護休業法などが3日、衆院本会議で可決、成立した。企業に対しては、子供が生まれる従業員一人一人への育休取得を働き掛けるよう義務付ける。妻に偏りがちな家事・育児への夫の参加を促すのが狙いで、2019年度に7・48%だった男性の育休取得率を25年に30%まで引き上げたい構えだ。
男性版産休は、子どもが生まれてから8週間以内に計4週分の休みを取れる育休の特例措置。夫のみ利用することができ、2回まで分けて取得できる。育休の申請期限は1カ月前だが、休みやすくするよう2週間前に短縮した。育児休業給付金や社会保険料の免除により、通常の制度と同じく最大で賃金の実質8割が保障される。施行時期は22年10月を想定する。
厚労省によると、産後うつなどが起こりやすい妻の出産直後に休みを取りたいと考える夫は多く、家事や育児に夫が関わる夫婦ほど、2人以上の子供を産む傾向にある。国会の審議では「男性優遇」との指摘も出たが、同省は「夫の育休取得促進は妻の負担を減らし、キャリア継続や少子化対策の手助けにもなる」と説明する。
改正法では、企業の責任も強化。現在、努力義務にとどまる従業員に対する育休制度の周知と意向確認を22年4月からは義務化する。社内研修や相談窓口整備と合わせ、休みを取りやすい環境をつくるのが狙いだ。
このほか、原則子どもが1歳になるまでに1回しか取れない通常の育休を、夫婦それぞれが2回まで分割取得できるようにする。従業員千人超の大企業には、23年4月から社員の育休取得状況の公表も義務づける。
(共同通信社)
政府は2日、国内で新型コロナウイルスワクチンを少なくとも1回接種した人の数が1日時点で1千万人を超えたとの集計結果を公表した。合計1038万人で人口の約8%に相当する。企業による職場接種に関し、厚生労働省は関係省庁向け説明会で、1会場当たりの対象者は、最低千人程度を基本とするとの要件を示した。伊藤忠商事は国内勤務の社員ら約7500人を対象に21日から接種を始めると発表した。
政府は大学キャンパスでの接種に向けて、東北大や広島大など7大学で早期に始められるよう準備を加速。全国で1日100万回の接種体制構築を急いでおり、職場や若年層への接種拡大を目指す。
政府によると、少なくとも1回接種した人の内訳は、医療従事者らが465万人、65歳以上の高齢者らが573万人。2回目も含めた接種回数の総計は1400万回に迫っており、米ブルームバーグ通信の2日時点の集計によると、世界で19位。
医療従事者は、313万人が2回目の接種も終えており、このままのペースが続けばあと10~20日ほどで接種が完了する見通しだ。
また高齢者接種について、総務、厚労両省は「医療従事者確保が前提」との条件付きも含め、98・7%の自治体が7月末までに完了を見込んでいるとの調査結果を発表した。
経済活動の正常化を急ぎたい企業は、新型コロナワクチンの職場接種への準備を本格化させている。日本航空は乗務員らを対象に職場接種を実施する方針。トヨタ自動車も検討を進めている。
厚労省によると、企業や大学が接種を行う場合、医療従事者などを確保して接種計画を作成し、都道府県に申請する手続きが必要になる。
接種体制の構築で課題となっているのは打ち手の確保だ。政府は医師や看護師に加えて歯科医師も投入。資格を持ちながら離職中の潜在看護師や救急救命士ら新たな打ち手の掘り起こしを模索している。ただ接種ルートの拡大で打ち手不足が深刻化する恐れもある。
接種のデータがシステムに反映されるまで時間がかかるため、人数はより多くなっている可能性がある。
(共同通信社)
雇用関係を維持しながら従業員を他社に出向させる「在籍出向」の推進に向けた新たな助成金の利用が5月14日時点で3343人に上ることが2日、厚生労働省の集計で分かった。制度は、新型コロナウイルス禍で悪化した雇用情勢に対応するため、今年2月に創設した。業種によって回復のばらつきがあるため、厚労省は「さらに制度の周知をしていく」としている。
事業者間の雇用マッチングを行う「産業雇用安定センター」の集計によると、昨年度、在籍出向したのは3061人。新制度を利用した在籍出向者数が約3カ月でこの数を超えた形。
厚労省によると、出向元は、感染拡大の打撃を受けた航空を含む運輸業・郵便業1449人が最も多く、製造業778人が続いた。出向先は製造業883人が最多、運輸業・郵便業646人が続いた。航空から貨物トラックなど運送業、好調な分野の製造業に出向するケースが多かった。異業種への出向は全体で約6割だった。
新制度の名称は「産業雇用安定助成金」。賃金や教育訓練費など出向に伴う経費を出向元、出向先の双方に助成する。率は中小企業が最大10分の9、大企業は最大4分の3。日額上限は従業員1人当たり計1万2千円。
(共同通信社)
島根県でスーパーマーケットを展開する「ウシオ」(同県出雲市)の社員だった高木教生さん=当時(36)=が2009年に精神障害を発症し、自殺したのは過重な労働が原因として遺族が、遺族補償を不支給とした出雲労働基準監督署の処分取り消しを求めた訴訟の判決で松江地裁(三島恭子裁判長)は31日、自殺と業務との因果関係を認め、処分を取り消した。
判決によると、高木さんは1996年に入社。仕入れや売り上げなどの責任者を酒類と菓子類で掛け持ちしていた09年、誕生日の9月18日に出雲市内の山中で自殺した。遺族は労災保険法に基づき遺族補償を請求したが、労基署は15年1月、自殺と業務との因果関係を否定し不支給とした。
判決は自殺前の2カ月の時間外労働は販売計画書の作成など長時間を要する業務でそれぞれ月120時間を超えていたと認定。業務による心理的負荷は強く、自殺の直前に重度の精神障害となったと結論付けた。
遺族側は上司によるパワハラも自殺の原因と主張。判決は、ひどい嫌がらせがあったとは証拠上認められないと退けた。
判決後の記者会見で高木さんの母栄子さん(74)は「家族の過労自殺が認められず、同じように苦しい状況にある人たちの希望になれば、うれしい」と話した。
島根労働局は「今後の対応は関係機関と協議する」とコメントした。
(共同通信社)
自民党は28日、LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案の今国会提出を見送ると決めた。党内の一部保守派が強く異論を唱えており、28日の総務会では法案の了承手続きを取らず、二階俊博幹事長ら党三役に対応を一任。6月16日が会期末の国会日程が厳しい上、党内が割れた状況が次期衆院選に与える影響を懸念し、法整備を先送りした。与野党実務者協議で法案に合意していた野党は反発した。
党三役の佐藤勉総務会長は総務会後の記者会見で「会期末までに成立させるのは不可能だ」と表明。下村博文政調会長は記者団に「三役で検討し、法案は出さないと決定した」と明らかにした。
法案を巡る与野党協議では、法律の目的と基本理念に「性的指向および性自認を理由とする差別は許されないとの認識の下」との記述を加えた。
これに対し保守派から「差別の範囲が明確でなく、訴訟が多発する社会になりかねない」と批判が噴出。27日までの党特命委員会、政調審議会では長時間審議を経て了承されたが、28日の総務会でも反対意見が上がった。
佐藤氏はこうした状況を踏まえ「国会審議の日程はタイトだ。総務会として方向付けられない」と了承手続きを回避した。
秋までにある衆院選や来月25日告示の東京都議選が迫り、執行部の一人は「党内の混乱が続けば有権者の支持を失う」と指摘。保守票の離反も懸念した。
自民党の対応について、立憲民主党の枝野幸男代表はオンラインの党会合で「東京五輪・パラリンピック主催国として法整備は義務だ」と非難した。共産党の田村智子政策委員長は取材に「差別解消に逆行しており問題だ」と強調した。
法案は多様性を受け入れる寛容な社会を実現するため、自民党の性的指向・性自認に関する特命委員会(稲田朋美委員長)が策定した。今月14日、野党と修正に合意。「性的指向による差別」を禁じる五輪憲章に沿うものとして、五輪前の今国会成立を目指していた。
(共同通信社)
厚生労働省が28日発表した毎月勤労統計調査(確報、従業員5人以上の事業所)によると、2020年度の残業代に当たる月額所定外給与は、1人当たり前年度比13・3%減の1万7028円だった。比較可能な13年度以降で最大の減少幅。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言で、飲食業などを中心に休業や営業短縮を余儀なくされたことが影響した。
所定外給与を業種別に見ると、コロナ禍で苦境に立った宿泊業・飲食サービス業(38・1%減)や生活関連サービス業・娯楽業(36・9%減)の落ち込みが目立つ。製造業も18・8%減だった。
全産業の所定外労働時間(残業時間)は13・9%減の9・0時間。こちらも1991年度以降で最大の減少幅だった。
基本給や残業代を合わせた月間現金給与総額は1・5%減の31万8081円で、8年ぶりに減った。勤務形態別では、一般労働者が1・9%減の41万6570円、パートタイム労働者は0・9%減の9万9083円。
パート労働者が占める割合は0・50ポイント減の31・01%と15年ぶりに減った。雇用情勢が悪化した影響で採用が抑えられた可能性がある。
(共同通信社)
戸籍上は男性だが、性同一性障害で女性として働く経済産業省の50代職員が、職場の女性用トイレの自由な使用など処遇改善を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は27日、使用制限を違法とした一審東京地裁判決を変更し、職員の逆転敗訴とした。職員側は最高裁に上告するとしている。
北沢純一裁判長は一審に続き、性自認に基づいた性別で生活するのは法律上保護された利益としたが、経産省は、他の職員の性的羞恥心や性的不安なども考慮して適切な職場環境を構築する責任を負うと指摘。「使用制限はその責任を果たすための判断であり、裁量を超えるとは言えない」と述べた。
判決によると、職員は入省後、専門医から性同一性障害と診断された。健康上の理由で性別適合手術は受けていない。2010年に同僚への説明会を経て女性の身なりで勤務を開始したが、経産省は「抵抗を感じる同僚がいる」として、本人が勤務するフロアと、上下1階ずつの女性用トイレの使用を認めなかった。
判決は、使用制限について、規範や先例がない中で経産省が検討・調整を経て決め、職員も納得して受け入れたとし「現時点で、制限撤廃を相当とする客観的な変化は認められない」と判断。制限を違法として、国に132万円の支払いを命じた19年12月の一審判決を見直した。
一方、上司が面談で「もう男に戻ってはどうか」と発言した点は一審同様に違法とし、国に11万円の支払いを命じた。
職員は判決後に都内で記者会見し「結論ありき。今更こういう判断を裁判所が出すのかと驚いた」と話した。経産省は「判決の内容を十分に精査し、関係省庁と協議をして適切に対応したい」とのコメントを出した。
(共同通信社)
京都府京丹後市の市立幼稚園に教諭として勤めていた女性(34)が、園長からパワハラを受けたとして、市に対して約1750万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、京都地裁は27日、市のパワハラ調査の一部に違法性を認め、33万円の支払いを命じた。パワハラそのものは認定しなかった。女性側は控訴する方針。
判決によると、女性は2015年4月から、3歳児のクラス担任として勤務。同7月にうつ病と診断された後、休職した。市は女性側の訴えに基づき、パワハラの有無を調査。女性の日記のコピーを園長に渡し、事実関係の確認を指示した。
池田知子裁判長は、女性の心情がつづられた日記を当事者の園長に渡していた点が「プライバシーを侵害する」と判断、違法と認定した。
一方で、園長の指導については「内容や方法に名誉毀損や侮辱的なものはなかった」として、パワハラには当たらないとした。
市は取材に「判決文を確認していないのでコメントできない」と説明。女性の代理人弁護士は「パワハラがなかったと簡単に結論付けるのはおかしい」と話した。
(共同通信社)
過労死や過労自殺の防止策を検討する厚生労働省の協議会が25日開かれ、国の対策の方針をまとめた大綱の改定案をおおむね了承した。新型コロナウイルス禍による影響への対応を盛り込み、終業から次の始業までに休息時間を設ける「勤務間インターバル」の導入企業を2025年までに15%以上とするとの目標を設定した。
政府はパブリックコメント(意見公募)を経て、今年7月ごろの閣議決定を目指す。
協議会では、委員で過労死問題に取り組む川人博弁護士が、時間外労働が月65時間に及ぶと脳・心臓疾患のリスクが高まるとする世界保健機関(WHO)と国際労働機関(ILO)の共同調査を紹介、「大綱にも、この内容を盛り込むべきだ」と提案した。
改定案では、コロナ禍を受けて「感染症への対応や働き方の変化による過労死などの発生を防止する必要がある」と指摘。テレワークや副業・兼業、フリーランスなど多様化する働き方にも触れ、実態を把握する必要性を強調した。
大綱は14年施行の過労死等防止対策推進法に基づき、15年に閣議決定された。3年ごとに見直すことになっており、18年の改定では「勤務間インターバル」の導入企業の割合を20年までに10%以上にするとの目標を盛り込んだ。同年の実績は4・2%と達成できなかったが、今回「25年までに15%以上」との数値を新たに掲げた。
(共同通信社)
過去5年間に勤務先で育児に関する制度を利用しようとした男性の26・2%が、育児休業などを理由にした嫌がらせ「パタニティーハラスメント(パタハラ)」被害の経験があると回答していたことが23日、厚生労働省の調査で分かった。上司による妨害行為が多くみられ、経験者の42・7%が育休の利用を諦めた経験があった。
政府は男性の育休取得を促進するため今国会に育児・介護休業法などの改正案を提出しているが、改めて男性が育児で休みやすい職場の環境づくりの難しさが浮き彫りとなった形だ。
調査は昨年10月、インターネットで実施。自営業や役員、公務員を除いた500人が回答した。
調査によると、過去5年間で1度でもパタハラを受けたのは26・2%。企業規模によって差があり、従業員千人以上だと21・7%だったのに対し、99人以下は31・1%と約10ポイントの開きがあった。
複数回答で誰からハラスメントを受けたかを尋ねたところ、役員以外の上司が66・4%で最多。役員34・4%、同僚23・7%、部下13・0%と続いた。
内容としては、育休制度などを利用させなかったり取るのを邪魔したりする言動のほか、人事考課での不利益な評価やほのめかしなどが目立った。
ハラスメント経験者が、利用を諦めた制度としては育休が42・7%で最も多く、残業や深夜業務の免除・制限34・4%、短時間勤務や始業時間の変更が31・3%に上った。
(共同通信社)
地域医療を担うなど長時間労働がすぐに是正できない医療機関で働く医師への健康確保措置の義務付けや、病院再編への支援恒久化を定めた医療法などの改正法が21日、参院本会議で可決、成立した。新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、都道府県の医療計画に感染症への備えを追加することも盛り込んだ。
政府は医師の働き方改革として、勤務医の残業時間の上限を原則、年960時間とする一方で、長時間労働の改善が容易に見込めない医療機関は例外的に年1860時間まで認める方針。
改正法は、例外措置をとる医療機関には医師の連続勤務の制限や、終業から次の始業までの休息時間を確保する「勤務間インターバル」といった措置を義務付ける。医師以外の医療従事者の業務範囲を広げ、医師の負担軽減も図る。
地域で合意が得られた病院再編への支援恒久化も盛り込んだ。病床を減らした医療機関に、患者を受け入れられないことに伴う減収を一時的に補う補助金制度を明記。人口減少や高齢化に備え、必要な病床数や機能を見直す「地域医療構想」の実現を後押しするのが狙いだ。構想は2025年を目標とする。厚生労働省は19年9月、再編の検討が必要な公立・公的病院名を公表し、各地で20年9月までに結論を出すよう求めてきた。だが新型コロナウイルス感染拡大を受け、20年6月に当時の加藤勝信厚労相が、結論を出す期限の延長を表明。議論の停滞が続いている。
ただ新興感染症に対応するためにも再編が必要だとの政府主張に対し、立憲民主、共産両党は再編が非常時の病床不足を招く不安があるなどとして、20日の参院厚労委員会で改正案に反対した。
都道府県ががんや脳卒中の予防、治療などの対策をまとめる医療計画に感染症への対応を追加。患者を受け入れる医療機関の選定や、一般医療を担う病院との役割分担を定めるよう求める。
(共同通信社)
高知市の社会福祉法人が運営する障害者支援施設「高知ハビリテーリングセンター」のセンター長を務めていた上田真弓さん(54)が、職員へのパワハラを理由に懲戒解雇されたのは不当として、法人に地位確認などを求めた訴訟で高知地裁(藤倉徹也裁判長)は21日、パワハラは認められないとして解雇を無効とし、法人に未払い分の賃金の支払いを命じる判決を言い渡した。
判決によると、法人側が設置した弁護士らによる第三者委員会は2018年8月に調査報告書を作成し、上田さんの複数の職員に対する言動をパワハラと認定した。藤倉裁判長は判決理由で、これらの認定について客観資料に基づく裏付けがないなどと指摘。遅刻した職員に注意したことなどは管理職として当然の指導とした。
上田さんは21日、取材に応じ「解雇は信じられなかった。私がやってきたことがきちんと認められてうれしい」と話した。(共同通信社)
建設現場でアスベスト(石綿)の含まれた建材を扱って粉じんを吸い、肺がんや中皮腫などの病気になった元労働者と遺族が、国と建材メーカーに損害賠償を求めた4件の集団訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は17日、初の統一判断を示し、国の対策は違法だったとして賠償責任を認めた。メーカーも一定の範囲で責任を負うとした。
早期解決を目指す与党のプロジェクトチームは国に対し、被害者1人当たり最大1300万円の和解金を支払うことなどで和解するよう求める案を検討しており、判決は補償枠組みの議論にも影響する。
第1小法廷は判決理由で「国は1975年10月には、建材への表示や建設現場の掲示で石綿の危険性を示し、防じんマスク着用を指導するべきだった」とし、規制権限を行使しなかった点を「著しく合理性を欠く」と述べた。
2008年以降、全国各地で集団訴訟が起こされ、弁護団によると、今年4月時点の原告は計約1200人。4件は審理が先行する東京、横浜、京都、大阪の各訴訟で、二審の結論が分かれた。
第1小法廷は昨年12月以降、4件の訴訟の決定で国やメーカーの上告を退け、一部の賠償命令が確定したが、理由を示していなかった。「一人親方」と呼ばれる個人事業主らに対する国の責任と、メーカーの責任を認めるかどうかが主な争点だった。
(共同通信社)
大企業に続き、来年4月からパワハラ防止対策が義務化される中小企業のうち61%が、自社も対象だと知らないことが15日、民間調査で分かった。女性活躍・ハラスメント規制法による大企業への義務付けから、6月1日で1年。中小企業への対象拡大が迫る中、既に防止措置を講じているのも35%と低迷しており、周知や啓発に課題が残った格好だ。
調査は3月、大同生命保険が全国の中小企業の経営者約1万人を対象に実施。来年4月からの義務化を知っていたのは39%で、規模が小さいほど認知度が低かった。義務化を知る企業の中でも対策実施率は53%で、知らない企業は24%にとどまる。
近年は残業時間の上限規制や、正規と非正規の不合理な待遇差禁止といった労働法制の改正が相次ぎ、労務担当の職員が乏しい中小企業は対応が追いついていない。新型コロナウイルスの影響で、経済団体などが説明会などを開けていないことも影響したとみられる。
対策を講じている中小企業に内容を尋ねたところ(複数回答)、「パワハラの内容と禁止方針の明確化」が68%で最多。「事後の迅速かつ適切な対応」が40%、「厳正対処の方針を就業規則などに規定」が37%だった。
厚生労働省幹部は「古い働き方が残る中小企業の対策は欠かせない。残り10カ月でどこまで周知できるかだ」と話す。
厚労省の昨年10月調査では、過去3年間にパワハラを受けた従業員は31%。うち22%は企業側がパワハラを認めており、回答者はやや異なるものの、4年前から倍増した。会社や加害者の謝罪も約10ポイント上昇。一方、被害者の約10人に1人が退職するなど深刻な被害は続く。
日本は批准していないが、6月には国際労働機関(ILO)のハラスメント禁止条約も発効する予定だ。
(共同通信社)
厚生労働省の労働政策審議会部会が14日開かれ、飲食店の料理などを自転車で宅配する配達員や、フリーランスで働くIT人材について、企業に雇用されない個人事業主でも労災保険に入れる特別加入制度の対象に加える方向で議論がまとまった。次回の部会で正式に了承される見通し。
部会には、ウーバーイーツや出前館など宅配サービス大手でつくる業界団体や、IT人材の支援組織の関係者が出席した。「日本フードデリバリーサービス協会」の担当者は、個人で請け負う自転車配達員は推計約9万人と説明。「走行中にタクシーのドアが突然開き、ぶつかって大けがをした」などの事例を示した。
「ITフリーランス支援機構」は、国内のIT人材総数約160万人のうち、フリーランスは20万人前後で1割強を占めるとし、ストレスや過重労働による精神疾患、脳・心臓疾患、長時間の作業が原因の腰痛や椎間板ヘルニアなどを労働災害に挙げた。
特別加入制度は建設業の一人親方など、働き方が労働者に近い人を対象に労災保険への加入を任意で認めるもので、自身で保険料を払うことで補償が受けられる。芸能従事者、アニメーション制作従事者、柔道整復師の3業種が今年4月に追加され、運用が始まった。
(共同通信社)
日本文化発信を目指す官民ファンド「クールジャパン機構」の元派遣社員の30代女性が、懇親会で男性役員の同伴を強いるくじを引かされ、精神的苦痛を受けたとして損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は13日、一審東京地裁判決に続き、くじをセクハラと認めて機構の元最高投資責任者(CIO)に5万円の支払いを命じた。
判決によると、元CIOは2016年7月、懇親会に参加した女性従業員に「当たり!!ワインディナーwith 監査役」「映画with CIO」などと書いたくじ複数枚を引かせた。
北沢純一裁判長は、女性側がくじ引きを拒否するのは事実上困難だったとし「くじは業務外に長時間にわたる男性役員の同伴を必須条件としており、違法だ」と述べた。
一審判決は、駅のホームで女性の肩に手を回すセクハラ行為をしたとして、別の元幹部にも5万円の賠償を命じたが、高裁は「女性が被害を訴えたのが1年以上後で不自然。目撃していた複数の社員からも、セクハラがあったとの証言はなかった」として取り消した。
(共同通信社)
三星化学工業(東京)の福井工場に勤務していた従業員ら男性4人が、ぼうこうがんを発症したのは化学物質への安全配慮義務を怠ったためだとして、会社側に計約3600万円の損害賠償を求めた訴訟で、福井地裁は11日、慰謝料など計1155万円の支払いを命じた。
判決理由で武宮英子裁判長は、化学物質「オルト-トルイジン」が健康被害をもたらす可能性があることを、会社側は遅くとも2001年には認識できたと指摘。その上で、作業服の着用を従業員に徹底させる義務を怠るなど、会社側に安全配慮義務違反があったと判断した。
判決などによると、4人は福井工場で1980年代後半以降、発がん性が指摘される「オルト-トルイジン」を使い染料や顔料を製造。4人はぼうこうがんと診断され、労災認定された。
判決後、記者会見した原告の1人は「化学会社で働く人が、今後がんを発症しないための警鐘となる判決をもらった」と話した。三星化学工業は「判決内容を確認する」とのコメントを出した。
(共同通信社)
仕事中に新型コロナウイルスに感染したことによる労災補償の認定が、4月23日時点で計5340件に上ることが厚生労働省の集計で10日、分かった。うち医療や福祉関連の従事者が約8割を占めた。申請件数も全体で1万件を超え、今年に入って急増している。
新型コロナ感染による労災認定を巡っては、厚労省が昨年4月、医療、介護従事者について「感染経路が特定されなくても原則対象となる」との通達を出している。ワクチン接種の早期実施に加え、一層の感染防止対策の徹底が求められる。
認定件数を業種別にみると、「医療業」や「社会保険・社会福祉・介護事業」など医療、福祉従事者が4234件で全体の79%。死亡者も5人いた。医療従事者以外は「運輸業、郵便業」が127件、「建設業」が82件、「卸売業、小売業」81件、「宿泊業、飲食サービス業」66件などだった。
労災申請は、昨年3月に最初の1件が出されて以降、増加傾向が続き、今年1月に初めて千件を超え、3月は2768件になった。申請のうち約半数が既に認定された。
一方、労災申請、認定件数とは別に、厚労省が企業などから報告を受けた、従業員の4日以上の休業を伴う労働災害の集計によると、仕事中に新型コロナに感染し、休業したり亡くなったりした人は昨年1年間で6041人に上ることも判明。報告の総数に占める割合は5%だった。
そのうち、2961人が病院などの「医療保健業」で働く人で、特別養護老人ホームなど「社会福祉施設」は1600人だった。厚労省は死者数の業種別の内訳は不明としている。
(共同通信社)
愛知県一宮市の自動車内装部品工場で事故に巻き込まれ、約2年後に精神障害を発症した元従業員の男性(55)が、労災保険の休業補償や療養補償を不支給とした国の処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審で、名古屋高裁は28日、請求を棄却した名古屋地裁判決を変更、事故と発症の因果関係を認め、処分の一部を取り消した。
労災の認定基準では、事故から6カ月以内の発症を対象とすべきとしており、代理人弁護士は「事故から半年以上たった後の精神障害と事故の因果関係を認めた点は画期的だ」と評価した。
判決などによると、男性は2012年10月、業務中に機械に顔を挟まれ、左目をほぼ失明。14年10月ごろには適応障害も発症した。男性は精神障害について労災を申請したが、一宮労働基準監督署は休業補償と療養補償のいずれも不支給とし、地裁はこの決定を不服とした男性の訴えを退けた。
高裁の始関正光裁判長は、事故後に痛みが続いたり視力が低下したりした点に触れ、事故後の状況も適応障害発症につながったと結論付けた。
一方、休業補償の支給を通院日のみに限定した決定については、医師が片目でも就労できたと診断したことから、請求を棄却した地裁判決を支持した。
(共同通信社)
私立鷺森幼稚園(和歌山市)の教諭だった女性(56)が業務中に同僚や上司の教諭から嫌がらせを受け精神障害を発症し、休職を命じられたのに労災保険の休業補償を不支給とした国の処分は違法として取り消しを求めた訴訟の判決で、和歌山地裁は23日、業務と発症との因果関係を認め処分を取り消した。
伊丹恭裁判長は、女性が副主任に早く昇格したことなどから対立した同僚や上司から悪口や嫌みを言われたり、無視されたりしたことで強い心理的負荷があり、精神障害を発症したと認定した。
判決によると、同幼稚園は学校法人本願寺学園が運営。女性は2005年4月から勤務し12年4月に副主任に昇格。その後体調を崩して13年4月、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などと診断され、幼稚園から休職を命じられた。14年7月に和歌山労働基準監督署に休業補償を申請、15年3月に不支給とされた。
和歌山労基署は「関係機関と今後の対応を協議する」としている。
(共同通信社)
内閣府と厚生労働省は22日、不妊治療を含む幅広い目的で使える特別休暇や職場のハラスメント防止など、治療と仕事を両立できる職場環境づくりを日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会の3団体に要請した。出席した三原じゅん子厚労副大臣は「企業にとっても離職防止や人材確保につながる」と述べ、協力を求めた。政府の少子化対策の一環。
オンラインで要請し、経団連に対しても23日に実施。三ツ林裕巳内閣府副大臣は「新型コロナウイルス感染拡大でテレワークの活用は進んだ。仕事と家庭の両立の観点も踏まえて(テレワークを)続けてほしい」と、柔軟な働き方を訴えた。
要請書は、治療に必要な最小限の範囲で休めるよう半日、1時間といった単位での有休取得の容認や、従業員のプライバシーへの配慮、自治体の相談窓口を社内に知らせることなども求めた。
(共同通信社)
愛知県豊橋市役所で勤務していた50代の男性が豊橋市民病院に異動後、精神障害を発病したのは過重な業務が原因だったとして、公務災害を認めなかった地方公務員災害補償基金愛知県支部の処分取り消しを求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は19日、発病と公務との因果関係を認め、処分を取り消した。
判決理由で井上泰人裁判長は、平日は連日深夜まで残業、休日も出勤するほど業務量が多かったと指摘。さらに、病院職員の時間外勤務時間を月80時間以内に修正するという法的に問題がある業務も担当し、大きな心理的負荷があったなどと認定した。
判決によると、男性は1991年に市職員に採用され、2007年に豊橋市民病院に異動。約1200人の病院職員の勤務管理など経験したことのない業務を担当し発病した。公務災害認定を請求したが、認められなかった。
(共同通信社)
2011年に十六銀行(岐阜市)に就職した20代男性がうつ病を発症し自殺したのは、過重な労働と上司のパワハラが原因として、遺族が、遺族補償を不支給とした岐阜労働基準監督署の処分取り消しを求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は19日、「発症と業務に因果関係は認められない」として請求を棄却した。
井上泰人裁判長は判決理由で、男性がひどく怒られた場面を同僚が見たことがないと指摘。上司について「パワハラと評価すべき接し方だったとは認められない」と述べた。
資格試験の勉強時間も業務に含まれ過重だったとの遺族側主張も「銀行から具体的な指示はなかった」などと退けた。
判決などによると、男性は11年4月に入行し、岐阜市内の支店に配属され同年12月に自宅で自殺。遺族が岐阜労働基準監督署に労災保険法に基づく遺族補償を求めたが認められず、不服の審査請求も退けられた。
(共同通信社)
厚生労働省は19日、電子情報でやりとりするお金「デジタルマネー」を使った賃金の支払いを巡り、安全性を担保することを要件とした上で、支払いを可能とする制度の骨子案を労働政策審議会分科会に示した。労働者の合意を前提とする。政府の規制改革推進会議は2021年度中に制度の内容を固めることを目指している。
ただ、分科会ではこれまで安全性への不安の声が相次いでおり、19日の分科会でも厚労省のチェックで十分に安全性が担保されるか懸念する意見が出た。支払いはスマートフォンの決済アプリなどによる方法が想定され、確実に労働者に賃金が支払われる仕組みづくりが求められる。
骨子案では、破綻時の債務保証や不正引き出しがあった際の損失補填があることを要件に、厚労省が決済サービスを提供する資金移動業者を指定する。現金自動預払機(ATM)の利用を可能にし現金で受け取れるようにも求めた。
労働基準法では、賃金の支払い方法として労働者の同意があれば、銀行口座への振り込みなども認められている。決済アプリなどによる支払いを実現するためには、省令改正が必要となる。
(共同通信社)
業績悪化で一時的に余剰となった従業員を、人手が必要な別の会社に出向させる「在籍出向」が2020年度は3061人と、新型コロナウイルス感染拡大前の19年度から2倍以上に増えていることが17日、事業者間のマッチングを行う産業雇用安定センターへの取材で分かった。
コロナ禍で爆発的な失業者の増加を防ぐため、政府は助成金を新設するなど支援策を強化。昨秋、航空業界が家電業界に出向させる取り組みが紹介されたことがきっかけで急増した。
在籍出向は、従業員が元の会社に在籍したまま、出向先とも契約を結んで勤務する仕組み。厚生労働省は、賃金を含めた労働条件は出向元と出向先、労働者で話し合って決めることを推奨。会社が在籍出向を命じるに当たっては、従業員の同意を得るか、賃金や労働条件について労働者の利益に配慮した就業規則を整備することを求めている。
センターによると、19年度は1240人。20年度に入って4~10月は1カ月当たり約70~170人で推移していたが、11月に283人に増え、12月498人、2月503人、3月679人と増加傾向が顕著だ。
具体的にはリゾートホテルからレストラン、食料品小売業から知的障害児入所施設、航空運送業から卸・小売業に在籍出向した事例があった。産業雇用安定センターの担当者は「これまでは同じ業種間が中心だったが、コロナ禍では異業種間が増えている」と分析する。
(共同通信社)
厚生労働省は16日、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会を開き、就職活動などで用いる履歴書の性別欄について男女別の選択肢を設けず、記載を任意とする様式例の案を初めて示した。心と体の性が一致しないトランスジェンダーの人々の要望に応えた。性的少数者に配慮した取り組みで、今後多くの企業で活用することが期待される。
厚労省はこれまで、公正な採用試験の実施に向け、日本規格協会の様式例に基づき男女を選択する履歴書を使うように推奨していた。しかし昨年7月、性差別を助長する恐れがあるとして、トランスジェンダーの当事者を支援する団体が、厚労省と協会に性別欄の削除を要請。これを踏まえて同協会が様式例自体を削除し、厚労省が新たな例を検討していた。
性別欄があることで、トランスジェンダーの人が公表を強いられて苦痛を感じたり、外見と履歴書の性別が異なると指摘されて次の選考に進めなかったりするケースもあるという。
新たな様式例は、性別欄で男女を選択する方式ではなく、任意に記載する。記入しないことも可能だ。また配偶者の有無や扶養家族数などの項目もなくした。ただ、様式例に基づく履歴書を使用する法的な拘束力はなく、使うかどうかは個別企業の判断に委ねる。
今後、各地の労働局や経営者団体を通じて企業に周知を徹底する。
(共同通信社)
男性の育児休業取得を促進する育児・介護休業法と雇用保険法の改正案が16日、参院本会議で可決された。子どもが生まれてから8週の間に、夫が最大計4週分の休みを取れる特例措置「出生時育児休業」(男性版産休)を新設。男女を問わず従業員が育休を取得できるよう、企業による働き掛けを義務付ける。改正案は衆院に送付され、今国会で成立する見通し。
妻の産後鬱防止や家事・育児の負担軽減のため、出産直後に夫が休みを取りやすくする。政府は法改正により、7・48%(2019年度)にとどまる男性の育休取得率を、25年に30%まで引き上げたい考えだ。
参院の審議では、男性だけに特例措置を設けることが男女平等の考えに反するとの指摘や、育休の取得率だけではなく、最低1カ月など取得期間の目標値も設定するよう求める意見が出た。
改正案では22年10月を想定する男性版産休の開始に合わせ、現在は子どもが1歳になるまで夫と妻が原則1回ずつしか取れない育休を、それぞれが2回まで分割取得できるようにする。従業員千人超の大企業には、23年4月から社員の育休取得状況の公表義務も課す。
(共同通信社)
部下に対する暴行などのパワハラを繰り返し、職場の秩序を乱したとして分限免職処分を受けた山口県長門市消防本部の元職員の40代男性が市に処分取り消しを求めた訴訟の判決で、山口地裁は14日、請求を認めて取り消した。
山口格之裁判長は、男性のパワハラ行為は「相当悪質」と認定。一方で消防組織内では、粗暴な行為や言動を黙認する風潮があり「単に個人の性格によるものとは言いがたい」と指摘し、免職は違法と結論付けた。
判決によると、男性は2017年7月ごろ、複数の部下の職員からパワハラを訴えられ、消防長らの聞き取りを受けた際、行き過ぎた指導があったと認めた。市は8月に「暴行や誹謗中傷を繰り返し職場の人間関係を著しく乱した」と処分。男性は「悪ふざけや指導の延長で、悪質ではない」と18年10月に提訴した。
江原達也市長は「主張が認められず誠に遺憾。今後の対応を検討する」とのコメントを出した。
(共同通信社)
厚生労働省は13日、新型コロナウイルスワクチンの集団接種に必要な人材確保のため、自治体が設ける接種会場への看護師派遣を来年2月末まで特例的に認める方針を決めた。現在はへき地を除き、医療機関への看護師派遣を原則禁止している。この日開かれた労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の部会に規制緩和案を示し、了承された。早ければ月内に労働者派遣法の省令を改正する。
今月12日には65歳以上の高齢者へのワクチン接種が始まり、ゴールデンウイーク明けから全国各地で本格化する見通し。一般向けの接種も7月以降に予定され、各自治体は医師や看護師の確保を急いでいる。
学校の体育館や公民館などを活用した集団接種会場は、臨時の「医療機関」として位置付けられる。へき地は医療従事者の確保が難しいため、今年4月に看護師の派遣が解禁されたが、それ以外の地域は認めておらず、現状では自治体が看護師を直接雇用する必要がある。このため全国知事会などが緩和を要望していた。
規制緩和案では、へき地以外でもワクチン接種会場に限り、来年2月28日まで看護師や准看護師の派遣を認めることにした。条件として、自治体でワクチン接種方法などの事前研修を実施するよう求めている。
この日の部会では、企業側の委員が「迅速なワクチン接種は喫緊の課題であり妥当だ。事前研修などで各会場の安全確保に取り組んでほしい」と述べた。労働者側の委員は「今回はあくまで期間を区切って認めるものだ。本来は直接雇用するべきで、なし崩し的に派遣を広げることがあってはならない」と指摘した。
(共同通信社)
職場で大声を出して秩序を乱したことを理由に徳島市が男性職員を停職1カ月の懲戒処分としたのは不当として男性が市に処分取り消しを求めた訴訟があり、請求を認めて処分を取り消した徳島地裁判決が確定したことが9日分かった。敗訴した市が期限までに控訴しなかったと発表した。判決は3月24日付。
市によると、男性は上司との人事面談の際、来庁者に聞こえる大声を出したとして2019年1月に停職1カ月の処分を受けた。判決は、懲戒処分には合理性があるとする一方、人事院の処分指針に照らすと減給や戒告が相当として「停職は著しく重い」と判断した。
市は「停職中の給与を支払うなど必要な手続きを行う。適正な人事管理に努める」としている。
(共同通信社)
政府は5日、規制改革推進会議の作業部会を開き、スマートフォンの決済アプリなどを使った賃金のデジタル支払いについて議論した。賃金の支払いを所管する厚生労働省は2021年度中に制度の内容を固めることを目指し、議論を加速させる方針を明らかにした。
賃金支払いは現在、現金のほか銀行口座、証券総合口座への振り込みが認められている。政府はデジタルマネーでの支払い解禁に向け、当初20年度中に制度設計を固める意向だったが、安全対策などの課題もあり、調整がずれ込んでいた。
5日の作業部会で厚労省は、デジタル支払いを議論する審議会の次回分科会で、具体的な制度案を提示すると説明した。
関係団体への意見聴取では、IT企業などで構成するフィンテック協会が銀行の現金自動預払機(ATM)から引き出す必要がなく、利便性が向上すると強調した。
一方、連合は決済サービスを提供する資金移動業者が経営破綻した場合、利用者への払い戻しに時間がかかると指摘。不正利用時の補償が事業者任せで「利用者保護の観点から十分でない」と懸念を示した。
(共同通信社)
長崎市内に住む日本郵便の契約社員4人が、待遇に正社員と不当な格差があるとして、同社に差額分の手当などの支払いを求めた訴訟が、長崎地裁(天川博義裁判長)で和解したことが2日、分かった。3月30日付。原告側によると、待遇改善を求め、154人が昨年2月に日本郵便を相手取って全国7地裁に起こした集団訴訟の一つで、和解は初めて。
日本郵便の待遇格差を巡っては、昨年10月の最高裁判決が、不合理な格差だとして、契約社員にも扶養手当や有給の病気休暇などを認めるべきだと判断。原告側によると、和解はこの判断に沿って同社が手当分を支給する内容という。
原告代理人弁護士は「社が契約社員の待遇改善を表明したことは、今後の格差是正によい影響を及ぼす可能性がある」と話した。日本郵便は「最高裁判決を踏まえて対応し、和解に至った」とコメントした。
原告側によると、長崎訴訟の和解で、日本郵便は原告4人に扶養手当や年末年始勤務手当などに当たる解決金計約130万円を支払う。また、和解条項には、同社が「期間雇用社員の待遇改善に真摯に努める」との文章も盛り込まれた。
(共同通信社)
高知県立大(高知市)に有期契約職員として勤務していた男性が2018年3月に雇い止めされたのは不当だとして、雇用関係の確認などを求めた訴訟の控訴審判決で、高松高裁(神山隆一裁判長)は2日、一審高知地裁判決に続き「雇い止めは無効」と判断した。
一方で雇用の継続を認めた一審判決を変更。雇用契約期間を雇い止めから1年間に限って認め、この1年間分のみ未払い賃金の支払いを命じた。
判決によると、男性は遠隔テレビ会議などを使ったプロジェクトのシステム構築や運用を担当する技術職員として、13年11月から県立大に勤務。採用時に大学側から19年3月まで雇用すると伝えられたが、18年3月に雇い止めとなった。
同じ企業などでの勤務が5年を超えれば無期雇用への変更を申請できる改正労働契約法の「無期転換ルール」が18年4月から適用され、男性側は「無期雇用に変更できていた」「雇い止めは転換ルールから逃れる意図だった」と主張していた。
神山裁判長は「雇い止めは合理的な理由を欠き無効」と指摘。一方で契約期間はプロジェクトが終了する19年3月までとし、無期転換を申し込む権利を行使する意思を期間内に示さなかったとして男性側の主張を退けた。ルールから逃れる意図があったかどうかの判断は示さなかった。
県立大は「無期転換の申し込み権を行使したと認めなかったことは評価できる。判決文を精査し今後の対応を検討する」とコメントした。
(共同通信社)
政府は30日、4月に大学3年生となる2023年3月卒業予定の学生向け採用活動ルールを定め、経済団体などに要請文を出した。新型コロナウイルス感染防止のため増えつつあるインターネットを使ったオンライン説明会や面接への配慮事項を初めて盛り込んだ。
具体的には、企業がオンライン面接などを実施する際、ズームやスカイプといった使用ツールを事前に明示するよう要請。通信環境が不安定だったり高速回線が用意できなかったりする学生に対しては、改めて別の機会に対面で実施するなどの代替措置も求めている。
このほか、卒業後3年以内の既卒者は新卒と同様に扱うことや、社員による学生へのセクハラ防止の徹底も要請。説明会などの広報活動は3月、選考活動は6月、内定は10月以降とする現行日程の順守も申し入れた。
要請文は内閣官房、文部科学省、厚生労働省、経済産業省の連名で、対象は経済団体や業界団体など1265団体。
(共同通信社)
2017年10月、東京電力福島第1原発構内で倒れた後に死亡した福島県いわき市の自動車整備士猪狩忠昭さん=当時(57)=の遺族が長時間労働を放置したなどとして、元勤務先や東電などに計約4300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福島地裁いわき支部は30日、元勤務先側に約2480万円の支払いを命じた。東電への請求は棄却した。
遺族は東電の救急医療態勢が不十分だったと主張していたが、名島亨卓裁判長は「厚生労働省が制定したガイドラインの水準を満たしていた」と判断。東電が記者会見で死亡と作業との因果関係を否定したことで受けた精神的苦痛についても「東電は当時の見解を述べているにすぎない。遺族が不快になったとしても社会通念上の限度を超えない」と退けた。
いわき労働基準監督署は18年10月、長時間労働による過労死だったとして労災認定。名島裁判長は「一家の支柱が過重労働によって死に至った」として、慰謝料を認定した。
(共同通信社)
日本通運川崎支店の契約社員だった男性(40)が、無期契約に転換できる雇用期間の前日に雇い止めされたとして、従業員としての地位確認や賃金支払いを求めた訴訟の判決で、横浜地裁川崎支部(飯塚宏裁判長)は30日「契約更新を期待する合理的な理由は認められない」として請求を棄却した。
改正労働契約法(2013年4月施行)により、有期雇用で5年を超えれば無期雇用に変更できる「無期転換ルール」が18年4月にスタート。男性側は13年7月に採用された際の契約書に「5年を超えない」との条項はあったが、「失業の恐れから同意するしかなく、自由な意思に基づかない」などと主張していた。
飯塚裁判長は判決理由で「契約当初から更新上限が明確に示され、男性が内容を十分に認識していた」と指摘。契約締結時に会社の担当者に説明を求めたり、締結後に異議を述べたりしておらず、「自由意思を阻害していない」と退けた。
男性の代理人を務める川岸卓哉弁護士は閉廷後「極めて不当な判決」として、控訴する方針を明らかにした。
判決後、男性は東京都内で記者会見し、「雇用契約の時に専門的な知識を持っている人がどれだけいるのか。納得いかない」と話した。
判決によると、男性は日通川崎支店で1年契約の事務員として採用。4回更新したが、18年6月30日で打ち切られた。
(共同通信社)
厚生労働省の元職員の男性(33)が2017年にうつ病を発症したのは、当時の上司から職場で「つぶしてもいいの?」といった暴言を繰り返し受けるパワーハラスメントが原因だったとして、今月2日に公務員の労災に当たる「公務災害」と認定されたことが26日、分かった。男性が取材に明らかにした。上司は職場で被害相談に乗る「パワハラ相談員」だったという。
厚労省は「個別の案件については答えられない」としている。男性によると、厚労省側から上司を近く懲戒処分する見通しを伝えられたという。
男性は17年4月、厚労省の総合的な政策決定や評価を担う「政策統括官」に異動。直後から上司の男性室長補佐の暴言や無視などが始まった。男性は同月下旬に不安障害やうつ病を発症し、その後も勤務を続けたが、症状が悪化して18年12月に休職。20年3月に退職した。
男性は当時、外部通報窓口や産業医にも相談し「パワハラに当たる可能性が高い」と言われたが、省内の担当課は対応に後ろ向きだったと指摘。残業時間が月120時間を超えるなど、長時間労働も常態化していたといい「民間企業を指導する立場の厚労省がパワハラや過重労働を放置するのは許されない」と訴えた。
(共同通信社)
新型コロナウイルス感染症の影響で業績が悪化した企業の社会保険料負担を巡り、特例を利用して年金や医療などの保険料納付を猶予された総額は、今年1月時点で少なくとも9千億円に上ることが25日分かった。コロナ収束が見通せない中、厳しい経営が続く企業の現状が年金や医療保険財政にも表れた形だ。健保組合の解散や、保険料負担が原因で企業が倒産する可能性もある。
医療や年金などの社会保険料は、個人に加え企業にも支払い義務がある。政府は2020年2月納付分から、通常の猶予制度で求められる延滞金や担保を不要として1年間猶予する特例を設けた。新型コロナの影響で収入が20%以上減った企業が対象だ。この特例は、21年1月納付分までで終了した。
厚生労働省によると、1月末時点で厚生年金保険料を約6300億円、大企業の従業員らが入る健康保険組合の健康保険料と介護保険料を約430億円、中小企業向けの協会けんぽで健康、介護保険料を約2300億円猶予した。合計で約9千億円となる。
猶予された保険料は、いずれ支払う必要がある。大企業の健保では、収支改善のため保険料率の引き上げや、解散に踏み切る可能性もある。
健保関係者は「コロナの影響は今後も続くだろう。当面は健保の積立金を取り崩すとしても、21年度末には解散を考える組合も出てくるのではないか」と話している。
一方、自営業の人などが個人で加入する国民健康保険と75歳以上が加入する後期高齢者医療制度は、保険料を減額、免除する特例を設けている。20年4月~21年1月分で加入者の保険料計約700億円を減免した。
(共同通信社)
厚生労働省は25日、テレワークを導入する際の注意点をまとめた新たなガイドライン(指針)を全国の労働局に通知した。人事評価に関しては、出勤者だけを高評価したり、在宅勤務中に時間外のメールを見ないといった理由で低評価したりするのは不適切と明示。新入社員や転職直後の社員は業務に不慣れなため、コミュニケーションが取れるよう配慮を求めた。
新型コロナウイルス感染拡大でテレワークが普及したため、全面的に改定した。指針に罰則はないが、労働基準法や労働安全衛生法などの規定に即して整理しており、守らない場合は違法となる可能性がある。
指針では対象の従業員や業務について、非正規労働者だけテレワークから除外するといった雇用形態による区別を禁止。出勤者にだけ仕事を多く割り振るなど業務の偏りにも注意を促した。
また管理職と従業員の勤務場所が異なるため、労働時間の把握はパソコンの起動時間や従業員の自己申告といった簡易な手法でも良いとした。
在宅勤務では仕事と私生活が曖昧になりがちで、長時間労働も懸念される。そのため職場からの連絡ルールや時間外に働ける業務範囲を、事前に労使で取り決めておくことも推奨している。
(共同通信社)
過労死や過労自殺の防止策について検討する厚生労働省の協議会が24日開かれ、国が進める対策方針をまとめた「過労死防止対策大綱」の改定に向けた素案が示された。新型コロナウイルス禍を巡り「感染症への対応や働き方の変化による過労死などの発生を防止する必要がある」と明記。テレワークや副業・兼業、フリーランスなど働き方の多様化を受け実態把握を進める必要性を強調した。
改定素案では、コロナ禍で広がるテレワークについて、労働時間などの状況を把握するとしたほか、テレワークやウェブ会議を利用した際のハラスメントにも留意する必要があるとした。
フリーランスへの対応では、ハラスメントや発注者との契約トラブルがあった場合に相談できる窓口の整備を図る方針。
また、音楽や映画、演劇などの芸術・芸能分野について「長時間労働の実態が指摘されている」とし、労働実態の調査研究の対象業種に追加する考えを打ち出した。
現行の大綱で「週60時間以上働いている人の割合を2020年までに5%以下」とされている数値目標は、パートやアルバイトも含めるとおおむね達成されたため、正社員に対象を絞り「週60時間以上の割合を25年までに5%以下」とした。厚労省によると、20年の実績は9%。
大綱は14年施行の「過労死等防止対策推進法」に基づき15年に閣議決定され、3年ごとに見直すことになっている。18年の改定では、終業から次の始業までに休息時間を設ける「勤務間インターバル」の導入企業の割合を20年までに10%以上にするとの目標が盛り込まれたが達成できていない。
(共同通信社)
全国農業協同組合連合会(JA全農)グループの飼料生産会社「科学飼料研究所」に勤務していた嘱託社員ら15人が、一般職正社員と同じ業務内容なのに手当や賞与を支給されないのは違法だとして、同社に約1億4千万円の賠償を求めた訴訟の判決で、神戸地裁姫路支部は22日、住宅手当など一部の不支給を違法と認定し、原告のうち3人に対する計約190万円の賠償を命じた。
15人は兵庫県たつの市の龍野工場で嘱託社員のほか、年俸制正社員、無期転換社員として勤務。浅井隆彦裁判長は判決理由で、住宅手当や家族手当について「生活費を補助する趣旨のものだ。生活費の増加は嘱託社員と一般職正社員で変わらず、全く支給しないのは不合理だ」として、嘱託社員としての勤務実績がある原告3人に対してのみ支払いを命じた。年俸制正社員などほかの12人については「雇用契約上の地位が異なり、同一労働同一賃金を定めた規定が見当たらない」などとして認めなかった。
一方、賞与については「一般職正社員と嘱託社員は職務に一定の相違があり、嘱託社員に賞与を支給しないのは不合理には当たらない」などと判断し、15人とも請求を退けた。
賞与や住宅手当などの支払いを求めた原告の男性(64)は、判決後の記者会見で「全く納得できない判決だ」と話した。原告側は控訴する方針。
(共同通信社)
東京都の私立鶴川高校が雇い止めをしたのは、教職員組合を排除することが目的で不当だとして、元講師で組合員だった50代女性が、運営する学校法人「明泉学園」(東京)に地位確認などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は19日、女性側の主張を認め、雇い止めは違法とした。未払い賃金や慰謝料など約1120万円の賠償を命じた。
判決によると、女性は有期の労働契約で1991年から勤務。単年契約を更新し続け、2018年4月に無期転換となる予定だったが、高校側は直前の同3月末で契約を終了するとした。
佐久間健吉裁判長は、女性が執行役員を約20年間務めたことから「雇い止めは、組合の中心的構成員である原告を嫌悪し、無期転換権を行使する前に高校から排除するためだった」と認定した。
判決後、女性は「無期転換直前の雇い止めは、教育現場にあるまじき行為。職場に戻りたい」とのコメントを出した。学園は「担当者がおらず回答は控える」としている。
(共同通信社)
ソニーの40代男性社員が2018年、駐在先のアラブ首長国連邦(UAE)で突然死したのは長時間労働が原因として、三田労働基準監督署(東京)が労災認定していたことが15日、分かった。遺族代理人の尾林芳匡弁護士らが都内で記者会見し明らかにした。認定は今年2月26日付。
尾林弁護士は会見で「国内では労働時間の把握が企業の義務になっているが駐在は裁量労働のような形で、残業の記録が残っていなかった」と指摘。「海外赴任中の過労死事案は相当数発生していると考えられ、警鐘を鳴らすものだ」と強調した。
ソニーは取材に「亡くなった社員に対し、心からご冥福を祈る。認定を真摯に受け止め、社員の健康管理に一層努める」と回答した。
尾林弁護士によると、男性は07年入社。15年11月に同国のドバイへ赴任し、カメラやビデオ機器の販売業務を担当した。多忙で長時間労働を強いられ、18年1月、日本出張から戻った約10日後、心臓性突然死のため45歳で亡くなった。
三田労基署は、発症前3カ月間の時間外労働が月平均79時間53分だったと認定。過労死ラインとされる「月80時間」におおむね該当すると評価したという。
会見に出席した男性の妻は「過労死が世界的に有名な会社でも起きていることを知ってもらい、二度と同じ事がないよう願う」とのコメントを読み上げた。
(共同通信社)
2011年に福岡県の20代の男性会社員が自殺したのは、勤務先でのパワハラや長時間労働が原因だとして、遺族が労災と認めなかった福岡中央労働基準監督署の処分取り消しを国に求めた訴訟の判決で、福岡地裁(小野寺優子裁判長)が、上司のパワハラや長時間労働が原因の労災と認め、処分を取り消していたことが15日、分かった。
12日付判決によると、男性は09年4月に福岡県の建設会社に入社。上司の部長から「腹黒い」「偽善的な笑顔」などと人格を否定するような発言を受けた。自殺直前の11年2~3月の1カ月間の残業は109時間で、労災認定基準の100時間を超えていた。男性は11年3月、自動車内で練炭自殺した。
判決は「長時間労働や上司のいじめが原因でうつ病を発症し、自殺した」と指摘。業務が原因と結論付けた。
(共同通信社)
精神的な不調で通院し、職場で包丁を持ち同僚を脅したとして分限免職処分を受けた元神戸市職員の40代女性が処分の取り消しを求めた訴訟の判決で、神戸地裁は11日、「心身の状態が改善し、職務遂行が可能となる見込みがなかったとまではいえない」として処分を取り消した。
判決によると、女性は2015年8月、庁舎内で包丁を持ち、同僚に近づいた。女性は当時、パーソナリティー障害で通院し、薬物療法を受けていた。市は女性を分限休職処分にした後、16年3月に「治療期間が長く、治癒の見込みも立たない。今後の職務遂行に支障がある」として分限免職処分にした。
泉薫裁判長は判決理由で「治療を継続し、精神的負担の少ない職務に従事すれば、問題行動に及ぶ可能性を抑えられる見込みは十分あった」と指摘。「処分は裁量権の行使を誤っており、違法だ」と判断した。
市側は「衝動的な行為が再発する可能性が完全に消失したとはいえない」と主張していた。神戸市人事課は「控訴も含め、今後の対応を検討する」としている。
(共同通信社)
政府は9日、障害がある人の移動や意思疎通を無理のない範囲で支援する「合理的配慮」を提供するよう、企業に義務付ける障害者差別解消法改正案を閣議決定した。施行日は法律の公布から3年を超えない日とし、現時点では未定。今国会での成立を目指す。
合理的配慮は、車いすを使う人の通行のため段差にスロープを設けたり、人が介助したりすること。聴覚障害者と筆談で会話するなどの対応も当てはまり、費用負担が過度にならない範囲で行う。現行法は、配慮の義務付けは国や自治体にとどまり、企業は努力を求められるだけだった。
障害者団体は改正案の早期の施行を要望。企業は負担増を懸念して慎重姿勢だった。内閣府は、施行まで一定の準備期間を確保することにした。
坂本哲志1億総活躍担当相は9日の記者会見で、合理的配慮の義務付けについて「特に中小企業から『いろいろな対応をできるのか』という心配の声もある」と述べ、先進事例の収集や、自治体からの周知に取り組むとした。
(共同通信社)
新型コロナウイルス感染拡大で臨時休校した際の保護者の休業補償を巡り、厚生労働省は4日、企業を通している申請方法を、従業員本人が直接請求できるように改める方針を固めた。手続きの煩雑さなどから企業が申請しない事例が相次ぎ、従業員に助成金が届かない事態が相次いだため。新たな制度の詳細を詰め、近く公表する。
この制度は、2020年3月の一斉休校を受けて創設した「小学校休業等対応助成金」。20年2月27日以降、子どもの世話をするための特別休暇を設けた企業に対し、従業員の休業中の賃金分として1日当たり最大1万5千円を支給している。
確保した約1700億円の予算のうち3割程度しか使われておらず、制度の使いにくさが原因だとして与野党が運用の改善を求めていた。
個人で働くフリーランス向けにも同様の制度があり、そちらは政府への直接申請が原則。雇われているかどうかで支給方法が異なり、公平さを欠くとの声も出ていた。
一方、厚労省は4月1日からは日数にかかわらず、支給額を1人当たり定額5万円、最大で10人分までにすると決定。コロナによる休校が落ち着いたことから、4月以降はベビーシッターやフレックスタイムといった両立支援策を導入する企業にも対象を広げる。
(共同通信社)
厚生労働省は4日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークを取り入れる企業を対象にした新たな指針案を労働政策審議会(厚労相の諮問機関)分科会に示した。非正規労働者だけテレワークを認めないなど雇用形態の差を理由とした区別を禁止。長時間労働対策として、休日や時間外に働ける範囲を事前に労使で取り決めるよう推奨した。
月内にも全国の労働局に通知する。テレワークの普及を受け、同省が指針の改定を進めていた。
指針案はテレワークを「『新しい生活様式』に対応した働き方」と明記。原則として労働者の合意が必要で、新入社員や転職したばかりの従業員は業務に不慣れなため、配慮が必要と定めた。
出勤とテレワークの間で仕事量や人事評価に差をつけることを禁止。業務に使うパソコンなどの物品や通信費は、従業員の負担が過度にならないよう、就業規則で扱いを規定するよう求めた。
テレワークは柔軟に働くことができる利点を持つが、長時間労働を招きやすい側面もある。パソコンの起動時間や従業員の自己申告といった簡易な労働時間把握を企業に認めたが、職場からの連絡ルールや社内システムにつながる時間を決めておくなどの対策を促した。
テレワークに関しても、企業は労災防止対策を取る必要がある。上司が部下に対し、画面越しに部屋を見せるよう求める事態も起きており、ハラスメント対策の徹底も盛り込んだ。
(共同通信社)
育休から復帰する直前に解雇されたのはマタニティーハラスメントだとして、神奈川県内の保育士の30代女性が、保育園を運営する同県伊勢原市の社会福祉法人「緑友会」に雇用関係の確認と損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は4日、解雇は無効とし、慰謝料30万円と未払い賃金の支払いを命じた一審東京地裁判決を支持し、原告、被告双方の控訴を棄却した。
後藤博裁判長は一審同様、解雇に客観的・合理的な理由がなく、権利の乱用で無効と指摘。「妊娠中や出産後1年を経過しない女性労働者の解雇を原則禁止する男女雇用機会均等法にも違反している」と述べた。
判決によると、女性は2017年に第1子を出産。18年に復職を希望したが、解雇された。
判決後に記者会見した女性は「出産後も仕事を続けようと思ったが、受け入れてもらえず、子どもの保育所入所も取り消されて苦しい思いをした。思いが認められて安心した」と話した。
緑友会は「判決を見ていないので、コメントは差し控える」とした。
(共同通信社)
昭和大藤が丘病院(横浜市青葉区)の看護師だった女性(61)が、上司の看護師長からパワハラを受け病気になったとして、大学に約2千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は3日、看護師長の威圧的な言動と発症との因果関係を認め、約600万円の支払いを命じた。
判決によると、女性は2015年3月、通勤中の電車内で急病人を救護し、出勤が遅れた。電話で別の上司に伝えていたが、看護師長から「責任者の私に連絡しなさい」と怒鳴られた。女性はその後、胸の痛みを訴えて倒れ、心臓疾患と診断された。心的外傷後ストレス障害(PTSD)も発症した。
中吉徹郎裁判長は「看護師長は事情を聴かず威圧的に叱責し、非常に大きな心理的負荷を与えた。業務上必要な範囲を逸脱し、極めて不適切だ」と指摘した。看護師長の言動を放置した大学には、安全配慮義務違反があるとした。
判決は、看護師長が女性に対し、やむを得ない理由以外では、有給休暇の取得を認めていなかったことも認定し「休暇制度の趣旨を無視する対応で、精神的負荷を与えた」とした。
昭和大は「判決内容を精査中だ」としている。
(共同通信社)
休業手当の一部を補填する雇用調整助成金について、2月に緊急事態宣言の解除が決まった7府県では、時短要請に協力した大企業飲食店など向けの特例措置が適用されるのは、3月末までとなる。特例の対象期間は宣言解除の翌月末までで首都圏では4月末と異なるため、申請を予定している企業は注意が必要だ。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、雇用調整助成金は特例として、上限額を1万5千円、中小企業では助成率を最大100%としている。さらに1月の宣言再発令に伴い営業時間の短縮や休業に協力した場合は、大企業であっても対象地域にある飲食店や劇場、映画館などについて助成率を最大100%に引き上げた。
ただ、直近の売り上げが30%以上減った場合は、大企業でも業種にかかわらず助成率を最大100%としており、こちらは宣言地域に該当しなくても活用できる。厚生労働省は、制度の仕組みを紹介したパンフレットをホームページで公表しており、利用を呼び掛けている。
(共同通信社)
大企業に対する社外取締役の設置義務化や、取締役の報酬決定方法を透明化する規定を盛り込んだ改正会社法が1日、施行された。企業統治の強化につなげ、投資家の企業に対する信頼を向上させるのが狙い。
社外取締役の義務化では、取締役会による経営の監督に外部の視点を持ち込む。上場企業は既にほぼ導入済みだが、法律で明示し、社外取締役による業務の監督が保証されているとのメッセージを内外に発信する。企業にとっては社外取締役の質を向上させることなどが課題となる。
取締役の報酬に関しては、定款や株主総会で個人ごとの内容を決めない場合、取締役会がどのような方針に沿って決定するのか定め、概要を開示するよう義務化。これまで個別の取締役の報酬については決定方法が不透明だとの批判があった。
野村資本市場研究所の西山賢吾主任研究員は、社外取締役には「外部の視点から適切に意見を出せる人材が求められている」と指摘。報酬決定の透明化では「報酬と業績を連動させる仕組みの採用が進み、企業競争力の強化が期待される」とした。
改正法ではこのほか、役員への賠償請求訴訟に関し、会社が賠償金を補償するための規定なども設けられた。役員が経営上のリスクを積極的に取れるよう後押しする。
簡素な手続きで株主総会資料をインターネットで提供できるようにする規定は2022年に施行予定となっている。
(共同通信社)
名古屋南郵便局(名古屋市)で配達に出ようとした際、トラックに荷物を積み込む昇降機付近を通行中、動きだした昇降機に足を取られて転倒しけがをしたとして、元女性従業員(65)が日本郵便に約4200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は26日、約1400万円の支払いを命じた。
前田早紀子裁判官は判決理由で、同局の職員は局内から駐車場に最短ルートで出る際、昇降機付近を通ることがあったと指摘。「会社は昇降機を使うトラックがある場合、職員が通行しないよう事故を防ぐ義務があった」と判断した。
一方で、女性も同局に長年勤務し、昇降機が動くと危険なことを認識していたとして、損害の認定額を半分にした。
判決によると、女性は2017年12月、同局の発着場で上昇した昇降機に足を取られて転倒。脊髄損傷や頭部打撲のけがを負い、労災認定された。名古屋南労働基準監督署は18年3月、同局に対し、場内に労働者が使う安全な通路がなかったとして是正勧告した。
日本郵便は「判決文が届いておらず、コメントは差し控える」とした。
(共同通信社)
厚生労働省は26日、休業手当を受け取れなかった労働者向けの休業支援金・給付金について、新たに支給対象となった大企業非正規労働者の一部の受け付けを同日から始めると発表した。郵送か厚生労働省のホームページからオンラインで申請できる。
休業支援金は昨夏に新設され、労働者が直接申請できる仕組み。日額上限1万1千円で、賃金の8割を原則として補償する。従来は中小企業の労働者のみが対象だったが、政府は2月に入り大企業のシフト制や日雇い、登録型派遣で働く人も新たに加えると表明していた。
大企業の非正規労働者は昨年4~6月は賃金の6割を、緊急事態宣言が再発令後の1月8日以降には8割をそれぞれ支給する。緊急事態宣言が出ていない地域も含めた全国が対象。
さらに自治体が独自に飲食店などに時短要請を出した昨秋以降も業種を問わず8割を補償する。対象期間は北海道の昨年11月7日以降など、該当する19都道府県ごとに異なる。
(共同通信社)
政府は26日、男性の育児休業取得促進策を盛り込んだ育児・介護休業法と雇用保険法の改正案を閣議決定した。子どもの誕生から8週の間は夫が柔軟に育休を取れる制度「出生時育児休業」(男性版産休)を新設し、企業に対しては従業員への育休取得の働き掛けを義務付ける。妻の家事・育児の負担軽減や産後鬱防止のために、夫婦がそろって休みやすい環境を整備するのが狙い。
男性の育休取得率は2019年度は7・48%にとどまる。政府は25年に30%まで引き上げる目標を掲げており、法改正で後押ししたい考えだ。男性版産休の制度スタートは22年10月を想定。企業への取得働き掛けの義務付けは22年4月。
田村憲久厚生労働相は記者会見で「男性にしっかり育休を取ってもらうためには、環境整備が非常に重要だ。その責任は各企業にある」と強調。出産直後の女性は不安が大きいため、その時期に男性が育休を取る意義は大きいと述べた。
このほか、男性版産休の開始に合わせて現在は子どもが1歳になるまで原則1回しかとれない育休を、夫婦それぞれが2回まで分割取得できるようにする。従業員千人超の大企業には、23年4月から社員の育休取得状況の公表義務を課す。
男性版産休は夫のみが利用できる育休制度の特例措置。2週間前までに申請すれば取得でき、計4週分の休みを2回まで分けて取れる。期間中は雇用保険からの給付金が通常の育休と同じ賃金の67%分給付される。
企業は子どもが生まれる従業員に対し取得を働き掛けなければならない。社内や国の育休制度を個別に説明して取得を促す。上司による面談やパンフレットの配布などを想定。社員研修や相談窓口の設置といった、休みやすい職場環境づくりも企業の義務とする。
(共同通信社)
政府が今国会提出を目指す障害者差別解消法改正案の全容が24日、分かった。障害者の移動や意思疎通をできる範囲で支援する「合理的配慮」の提供を企業に義務化。法律の公布日から3年を超えない日に施行するとした。3月上旬に閣議決定し、今国会での成立を図る。
合理的配慮は、車いすの人が段差のある場所を移動する際にスロープを設けたり、聴覚障害者との意思疎通で筆談を使ったりする対応を取ること。費用や人手が負担になり過ぎない範囲で行う。2016年施行の同法では、国や自治体に配慮を義務付けたが、企業は努力義務にとどまっていた。
改正案の取りまとめを巡っては、障害者団体が早期の施行を要望。新たな対応が求められ負担になりかねない企業側は、慎重姿勢を示していた。内閣府は法成立後、業界ごとの指針を見直すなど環境整備に一定期間が必要と判断。改正法の公布日から「3年を超えない範囲内において政令で定める日」に施行することとした。施行日は現時点では未定。
改正案はこのほか、差別解消に向けた施策が促進されるよう、国と自治体に対し相互連携の責務を追加した。行政が差別に関する相談に応じる人材を育成し、確保することも明確化した。
(共同通信社)
トヨタ自動車の期間従業員だった三重県の男性(53)が、トヨタ自動車労働組合を脱退して別の労組に加入したことを理由に、雇用契約の更新を拒否されたのは不当として、希望していた雇用期間の賃金や慰謝料計約300万円の支払いを同社に求めた訴訟の判決で、名古屋地裁岡崎支部は24日、請求を棄却した。
藤野美子裁判官は判決理由で「トヨタはトヨタ労組を脱退しても、他の労組に加入したとの通知があった場合、解雇の対象にしていない」とした上で、加入先の労組が男性加入の事実を期間内に書面で同社に告知していなかったと指摘。「雇い止めは解雇権の乱用に当たらない」と判断した。
判決などによると、男性は2015年9月に期間従業員となり、入社半年後からは6カ月の契約を4回更新。18年3月にトヨタ労組を脱退すると、同月末に契約期間満了で退職した。トヨタとトヨタ労組は、同労組への加入を雇用条件とする「ユニオン・ショップ協定」を結んでいる。
(共同通信社)
建設現場でアスベスト(石綿)を吸い健康被害を受けた大阪府や兵庫県などの元労働者と遺族が国と建材メーカー22社に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は国とメーカー、原告の上告を退ける決定をした。22日付。二審大阪高裁判決のうち、31人について国と7社に計約3億2800万円の支払いを命じた部分が確定した。
全国9地裁に千人以上が提訴した建設アスベスト訴訟で、国の敗訴確定は東京、京都に続き3例目。京都、大阪もメーカー責任を広く認めた。
一審大阪地裁は国に約9740万円の賠償を命じた。2018年9月の二審判決は、建材への警告表示を怠ったメーカー8社の責任を新たに認定し、国との関係で「一人親方」と呼ばれる個人事業主らも救済対象に加え、計約3億3900万円の支払いを命じた。
確定した東京、京都訴訟は、安全確保の責任は主に雇用主らにあるとして、国の賠償範囲を損害額の3分の1にとどめた。大阪訴訟の二審判決は「石綿含有建材の普及は国の住宅政策に起因した」と指摘し、1991年までに製造を禁止しなかったのは違法だとして、国が責任を負う範囲を2分の1に引き上げた。
第1小法廷は併せて、屋外作業に従事して亡くなった男性の遺族5人に対する積水化学工業(大阪)の賠償責任を認めた部分について、同社の上告を受理し、4月19日に上告審弁論を開くと決めた。結論を見直す可能性がある。
(共同通信社)
厚生労働省は17日、雇用関係を維持しつつ他社に従業員を出向させる「在籍出向」の促進に向け、労使団体などで構成する全国協議会を初めて開催し、各地で推進する方針で一致した。
全国協議会には、連合や経団連、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会の担当者らがオンラインで参加。新型コロナウイルス感染拡大による雇用情勢の悪化に対し、さまざまな出向者に対応できるよう、受け入れ先の掘り起こしが課題だとする意見が出た。労働条件が悪化する懸念があり、自治体と連携して改善することが必要との指摘もあった。
今後、都道府県ごとに労使団体や金融機関などで構成する地域協議会を設置する。雇用情勢を分析し、出向元と受け入れ先の開拓方法や好事例を共有するなどして地域の取り組みを促す。
政府は雇用対策として、休業手当の一部を補塡する雇用調整助成金を拡大するなどしてきた。ただ休業の長期化で労働者の勤労意欲が低下するとの指摘もあり、在籍出向の支援に注力している
(共同通信社)
政府は12日、新型コロナウイルスの影響で経営が厳しい企業と感染が拡大している地域の飲食業などを対象に、雇用調整助成金の特例水準を6月末まで維持する方針を決めた。現行の特例水準を一律適用するのは4月末までとし、5月以降は感染拡大や企業経営の状況で差をつける。
雇用調整助成金は休業手当の一部を国が補填する制度。コロナ禍の雇用情勢悪化に対応するため、特例として上限を1万5千円、助成率を最大100%に引き上げた。現行の特例は直近3カ月の売り上げが30%以上減った全国の事業所や、新型コロナ対応で新設する「まん延防止等重点措置」の対象地域の飲食店などで維持。その他の企業は上限額を1万3500円、助成率を最大90%に引き下げる。
政府は1月、緊急事態宣言が全国で解除された月の翌々月から、原則として特例を段階的に縮減する方針を発表。経営が厳しい企業などについては手厚い支援を続けるとしていた。
厚生労働省によると、新型コロナに関連する解雇や雇い止めは、見込みを含めて10日時点で8万7千人を超えた。助成金の支給決定額は、5日時点で約2兆7千億円超。財源となっている雇用保険財政が逼迫している。
(共同通信社)
政府は12日、休業手当を受け取れなかった労働者向けの休業支援金・給付金を巡り、新たに対象とした大企業の非正規労働者の一部に関し、昨年4~6月分の休業について賃金の6割を支給することを決めた。自治体が独自に飲食店などに休業や時短要請を出した昨秋と、緊急事態宣言を再発令後の1月8日以降には8割を支給する。
田村憲久厚生労働相は12日の会見で「(賃金の算定を)コロナが広がる前と比較することを検討している」と述べた。
またワクチン接種体制の確保などで計10万人規模の雇用創出が見込まれるとし、ハローワークに専用の窓口を設置して求職者への情報提供を手厚くする。無料の職業訓練と月10万円の手当を受け取れる要件を月収12万円以下に緩和する。
政府は新型コロナウイルス感染拡大に伴う雇用情勢の悪化に対応するため、昨夏に休業支援金の制度を新設。労働者が直接申請する仕組みで、日額上限1万1千円で賃金の8割を原則、補償している。昨春分を6割としたのは、段階的に引き上げてきた雇用調整助成金の助成率とのバランスに配慮したとしている。
今年に入り、大企業のシフト制や日雇い、登録型派遣で働く人たちについては1月8日以降を対象とすることにした。ただ与野党から「対象期間を広げるべきだ」との指摘があり、遡及適用の期間を政府内で検討していた。
(共同通信社)
政府、与党は10日、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、休業手当を受け取れなかった労働者向けの休業支援金・給付金を巡り、新たに対象とした大企業非正規労働者の一部に関し、対象期間の始点を昨春までさかのぼる検討に入った。現行では緊急事態宣言再発令後の1月8日以降が対象。
昨年4月の緊急事態宣言や、昨秋以降の自治体による飲食店などへの時短要請を踏まえ、地域の事情に応じ具体策の調整を進める。昨春からの全期間を対象とせず、期間を区切り適用する可能性がある。休業支援金には、企業が本来出すべきお金を、政府が安易に負担する流れを助長するとの指摘もある。
政府は雇用情勢の悪化に対し、休業手当を補塡する雇用調整助成金の活用を軸に企業の対応を促し、そのために上限額引き上げなどを進めてきた。自民、公明の両党は、地域の事情を考慮した見直しを進めるよう要求し、政府内では、昨秋からの分に適用する案が浮上していた。
政府は感染拡大に伴う雇用情勢の悪化に対応するため、昨年6月に休業支援金の制度を新設。労働者が直接申請し、日額上限1万1千円で賃金の8割を補償する。
自民党の雇用問題調査会(松野博一会長)は10日、休業支援金の拡充などを盛り込んだ政策提言を田村憲久厚生労働相に出した。公明党も同様の提言をした。
両党の提言では雇用調整助成金の助成水準とのバランスを十分に踏まえるよう求めた。
(共同通信社)
政府は8日、休業手当を受け取れなかった労働者向けの休業支援金・給付金を巡り、新たに対象とした大企業の非正規労働者の一部に関する対象期間を拡大する方向で検討に入った。今は、緊急事態宣言再発令後の1月8日以降の休業を対象としている。自治体が飲食店の休業や時短要請を出した昨秋からの分に適用する案が浮上している。
厚生労働省は新型コロナウイルス感染拡大に伴う雇用情勢の悪化に対応するため、2020年6月に休業支援金の制度を新設。労働者が直接申請し、日額上限1万1千円で賃金の8割を補償する。
政府は2月5日、既に対象だった中小企業の労働者に加え、大企業も、1月8日以降に休業したシフト制や日雇いなどで働く人を対象にすると発表した。ただ野党などは「対象期間が限られ過ぎる」と批判していた。
20年11月ごろから、感染拡大の防止を狙い、飲食店の休業や時短を要請する自治体が相次いでいた。政府はこれを念頭に、対象地域や期間の具体的な検討を進める。
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政府は3日、中小企業の労働者向けの休業支援金・給付金の対象に、大企業を加える方向で検討に入った。西村康稔経済再生担当相は同日の参院内閣委員会で、同支援金・給付金を念頭に「至急に検討してできる限り早くお示しする」と述べた。立憲民主党の塩村文夏氏への答弁。対象などの詳細を調整している。
新型コロナウイルス感染拡大による雇用情勢の悪化で、非正規が休業手当を受け取れないケースが続発した。同支援金・給付金は休業手当を受け取れない労働者が直接申請するが、大企業は対象外となっていた。菅義偉首相は2日の記者会見で、大企業の非正規へのきめ細かい支援を検討する考えを示していた。
西村氏は、休業手当を不支給とする大企業が相次いでいることを踏まえ「大企業はちゃんと休業手当を出して雇用調整助成金で対応していただきたい」と強調。今回の支援拡充について「田村憲久厚生労働相も認識している」と話した。
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政府は2日、医師の働き方改革に絡み、長時間労働が避けられない医師の健康確保措置を医療機関に義務付ける医療法改正案を閣議決定した。新型コロナウイルス禍を踏まえ、都道府県の医療計画に感染症対策を加えることも盛り込んだ。政府は今国会での成立を目指す。
医師の働き方改革を巡って政府は、勤務医一般の残業時間の上限を年960時間とする一方、長時間労働がすぐには軽減できない地域医療を担う医療機関などでは年1860時間まで認める方針。
改正案では、残業が年1860時間までの場合、医師の連続勤務制限や、終業から次の始業までの休息時間を確保する「勤務間インターバル」などの健康確保措置を医療機関に義務付ける。
また、がんや脳卒中の予防、治療などに関して都道府県が定期的に作成している医療計画に感染症への対応を追加。患者を受け入れる医療機関の選定や、一般医療を担う病院との役割分担を定めるよう求める内容になっている。
医師の働き方改革を巡っては、昨年12月、厚生労働省の有識者検討会が、年1860時間の上限を適用する医療機関は事前に労働時間短縮に向けた計画策定をした上で、都道府県から指定を受けることを要件とするといった内容の中間とりまとめを了承している。
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新型コロナウイルス感染拡大による非正規労働者への休業手当の支払いを巡り、正社員にしか支払わない場合は、同一労働同一賃金の規定に違反する恐れがあるとして厚生労働省が手当の支給を求める通知を大企業に送っていたことが31日分かった。非正規労働者には支給されないケースが相次いでおり、こうした“雇用格差”に警鐘を鳴らした形だ。
関係者によると、通知は昨年11月に厚労省から全国の労働局に出され、その後、少なくとも25の大企業に送付された。
通知は、休業手当が受け取れない中小企業の労働者を対象にした休業支援金・給付金を巡って、大企業の労働者から申請があった場合、制度対象外の大企業に自主的な支払いを促すため送付している。
制度を創設した昨年夏以降、正社員には支払っているが非正規には支払わない大企業があるとの訴えが続発した。非正規からの相談に取り組む労働組合から強い指導を望む声が相次ぎ、今回の通知を作成した。
通知は「正規雇用労働者に対してのみ休業手当を支払い、非正規雇用労働者に対して休業手当を支払わない」ケースは、「昨年4月から施行されている(不合理な待遇格差を禁止した)同一労働同一賃金の規定に違反する恐れがある」と明記。「支払いについて検討ください」と求めた。
大企業でも雇用調整助成金の特例の活用が可能だと強調。シフト制の労働者に休業手当を支払った場合も助成金の対象となることを指摘した。ただ、これまでのところ支払いに応じた企業はないといい、実効性の確保に課題がある。
東京都内の労働組合によると、ある大手飲食チェーンでは昨年の緊急事態宣言で店舗が休業となり正社員に休業手当を支払ったが、アルバイトには支払わなかった。会社側は「(バイトには)補償する必要がない」と説明したという。同様のケースは大手ホテルなどさまざまな業種で起きている。
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新型コロナウイルス対策を強化するコロナ特別措置法と感染症法の改正案は29日午後、衆院本会議で審議入りした。菅義偉首相は「事業者や個人の権利に十分配慮しつつ罰則規定を設けるなど、対策の実効性を高めるために必要な見直しを盛り込んだ」と強調。野党は入院拒否者への罰則を定めた感染症法改正案を巡り、厚生労働省専門部会の慎重論を「無視」する形で提出した検討過程を問題視する。
前科とならない行政罰の過料を科す是非も焦点。与野党が事前に修正合意し、改正案は2月3日に成立する見通しだ。
西村康稔経済再生担当相が改正案の趣旨説明で「国民生活や経済への影響が最小となるよう、必要な法制を整えることが喫緊の課題だ」と述べた。自民党の中山展宏氏は、感染収束後としていた法改正に関する方針を転換した経緯の説明を求める。
与野党による事前の修正協議で、コロナ特措法改正案は営業時間短縮命令を拒んだ事業者に、緊急事態宣言下で30万円以下、宣言の前段階となる「まん延防止等重点措置」下で20万円以下にそれぞれ過料を引き下げた。
感染症法改正案では刑事罰を外し、入院拒否者に対し50万円以下、疫学調査拒否者には30万円以下の過料を科すとした。
改正案を議論した15日の専門部会では、罰則導入への慎重、反対意見が多数を占めていたことが判明。立憲民主党の長妻昭氏は「1年以下の懲役か100万円以下の罰金」を明記した法案を提出した政府対応を追及する。
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事業用自動車事故調査委員会は29日、横浜市の国道で2018年、路線バスが乗用車に追突し、乗客らが死傷した事故の調査報告書を公表した。運転手の失神が原因で、運転手は勤務時間外に意識消失を経験していたことを会社に申告していなかった。再発防止のため既往症の申告や事業者側の把握の徹底を求めた。
報告書によると、事故は18年10月28日午後9時15分ごろ発生。神奈川中央交通の路線バスが高架橋の支柱に接触しながら進み、信号待ちで停止していた乗用車に追突した。乗客の高校生1人が死亡、別の乗客や運転手ら6人が重軽傷を負った。
運転手は脳に一時的に血流が行かないことで起こる「反射性失神」が起きていた可能性が高い。原因は不明。2~3年前の勤務外に意識を消失した経験があったが、短時間で回復したため会社に報告していなかった。
報告書は運転に支障を及ぼす既往症は必ず会社に申告し、体調に異変を感じた場合は車両停止を最優先するよう指摘。事業者側も意識消失や体調異変が重大事故につながる危険性の指導を徹底するよう求めた。
横浜地裁は20年6月、運転手に禁錮3年、執行猶予5年の判決を言い渡した。
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厚生労働省は29日、2020年10月末時点の外国人労働者が前年比4・0%増の172万4328人だったと発表した。前年と比べて6万5524人増え、07年に届け出が義務化されて以降、過去最多を更新した。
増加率は大きく鈍化した。新型コロナウイルスの感染拡大で雇用情勢が悪化し、解雇や雇い止めが続発した影響とみられる。技能実習生は4・8%増の40万2356人。
外国人労働者数を国籍別に見ると、ベトナムが44万3998人で全体の25・7%を占め、中国(41万9431人、24・3%)を抜いて首位になった。フィリピン(18万4750人、10・7%)が続いた。
都道府県別では、東京が49万6954人で最も多い。愛知17万5114人、大阪11万7596人の順だった。都市部に集中している傾向がある。
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休業手当が支払われない労働者に賃金の8割を補償する「休業支援金・給付金」を巡り、厚生労働省は28日、1月末となっている昨年4~9月分の申請期限を延長する方針を固めた。3月末までを軸に調整している。
休業支援金は、新型コロナウイルス感染拡大で勤務先の指示を受けて休業した中小企業の労働者が対象となる。日額の上限は1万1千円で、短時間勤務の労働者も含まれる。郵送かオンラインで申請できる。
厚労省は昨年10月、支給される対象を明確にした新たな指針を公表した。指針を踏まえ、準備に時間を要した人の申請期限を1月末としていた。野党からは延長を求める声が上がっていた。
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厚生労働省の労働政策審議会分科会が28日開かれ、電子情報でやりとりするお金「デジタルマネー」を使った賃金の支払いに関して議論した。支払い解禁を目指す政府は、銀行以外で送金業務のできる資金移動業者が開設したスマートフォンの決済アプリによる入金を想定しているが、分科会の委員からは、セキュリティーに対する不安の声が上がった。
分科会では厚労省の担当者が、昨年9月に発覚した電子マネー決済サービス「ドコモ口座」を悪用した不正引き出し事件を紹介、金融庁の対応も説明した。委員からは「資金移動業者を利用した際に考えられるお金の流れのリスクを示してほしい」「銀行と同等の補償や安全の仕組みが必要だ」などの意見が出た。
政府はデジタルマネーによる賃金支払い解禁を成長戦略の一環として掲げ、厚労省が検討を進めている。キャッシュレス決済を利用する人や、銀行口座開設が難しいケースの多い外国人労働者の需要が見込まれる一方、業者が破綻した場合に賃金が保全されるかどうかや、振り込まれた金の現金化が課題。
労働基準法によると、賃金は通貨で払うのが原則。支払い方法として現金のほか、労働者の同意があれば銀行振り込みなども認められている。デジタルマネーによる支払いを実現するためには、省令改正が必要となる。
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交通事故で障害を負った後に復職を認めなかったのは不当だとして、神戸市の40代男性が電子部品大手の日東電工(大阪市)に雇用の継続などを求めた訴訟の判決で、大阪地裁(中山誠一裁判長)は27日、会社側の対応に違法性はないとして請求を棄却した。
判決によると、男性は1999年に入社。広島県尾道市の事業所で生産設備の技術開発をしていたが、2014年5月に勤務時間外のバイク事故で首の骨や頸髄を損傷、下半身の完全まひなどの後遺障害が出たため車いす生活になった。16年8月に復職を希望し、在宅勤務の相談も申し出たが認められず、17年2月に休職期間満了による退職扱いとされた。
判決理由で中山裁判長は、同社の就業規則上、復職の際は以前と同程度の業務を求めるが、車いすの使用で従来出入りしていた作業室での業務が困難であることなどから、男性を退職扱いとした会社側の判断は違法ではないとした。
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アカデミックハラスメントを理由に受けた停職6週の処分は不当として、愛知教育大(愛知県刈谷市)の林剛一教授(60)が、大学に処分の無効確認や慰謝料を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は27日「手続きに重大な違反がある」として処分を無効とし、停職中の賃金計約85万円を支払うよう大学に命じた。
井上泰人裁判長は判決理由で「懲戒処分の手続きとして、大学の就業規則などに定められた教授会の審議を経なかった」と指摘した。
教授は違法な処分で精神的苦痛を被ったとして慰謝料300万円も請求していたが、井上裁判長は「大学が処分理由とした行為はアカハラに該当するか、教育指導として適切さを欠く」として退けた。
判決によると、教授は2017年5月~18年5月、声楽の授業で発音を間違った学生に罰金100円を要求したり、強く怒鳴ったりしたとして、19年2月に停職処分を受けた。
教授は「大学の対応が一方的だったため提訴した。学生をひどく叱った点は反省している」と話した。大学は「判決の詳細が分からず現時点ではコメントできない」とした。
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男性の育児休業取得促進を巡り、厚生労働省は27日、子どもの誕生から8週の間に夫が柔軟に休みを取れるよう新設する「男性版産休」を取得した際の給付額を、通常の育休と同様に賃金の67%とする方針を決めた。与党の一部には給付額引き上げを求める声もあったが、国際的に水準が高く、新型コロナウイルス対策で雇用保険の財政が厳しいため見送る。
同日開かれた二つの労働政策審議会(厚労相の諮問機関)分科会が、通常国会に提出される育児・介護休業法の改正案とともに了承した。制度の正式名称は「出生時育児休業」と決まり、期間中の社会保険料免除と合わせれば、手取り月収の実質8割が保障される。出生時育休と通常の育休の取得期間は通算し、最初の半年は賃金の67%、以降は50%が支給される。
改正案では、出生時育休は2週間前までの申請で最大4週分の休みを2回まで分けて取れるとした。通常の育休も分割取得が可能となる。公布日から1年6カ月以内に施行し、今国会で成立した場合は2022年10月の開始を想定している。
企業に対する従業員への育休取得働きかけや相談窓口の環境整備といった義務付けは、22年4月から開始する。
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井関農機(松山市)グループ2社の契約社員計5人が、正社員との待遇格差是正を求めた2件の訴訟で、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)は、5人と会社側双方の上告を退ける決定をした。19日付。賞与を除く各種手当の不支給は違法だと認め、総額約300万円の支払いを命じた二審高松高裁判決が確定した。
一、二審はいずれも、普段の業務内容に違いはなく、住宅手当や、年齢に応じて支給する物価手当を、契約社員というだけで払わないのは労働契約法が禁じる不合理な格差に当たるとしていた。
一方、正社員への賞与支給は「有為な人材を獲得し定着を図る目的で、合理性がある」と指摘。年2回、契約社員に5万~10万円の「寸志」を払っていることも踏まえ、格差が違法とは認めなかった。
判決によると、5人は30~50代の男性で、それぞれ、同じ敷地内にある「井関松山ファクトリー」と「井関松山製造所」で2007~08年から有期労働契約を繰り返し、労働契約法の規定に基づき18~19年に無期雇用に転換した。
18年4月の一審松山地裁判決は一部の支払いを認め、19年7月の二審判決も支持した。
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政府は19日、休業手当の一部が補塡される雇用調整助成金の上限額引き上げや助成率拡充に関する特例措置を再び延長する方向で最終調整に入った。2月末が期限で段階的に縮減する予定だったが、少なくとも3月末までは延長する方向で検討している。新型コロナウイルス感染拡大が続き、11都府県で緊急事態宣言が発令されている事態を踏まえた。月内に方針を示す見通し。延長は4回目となる。
今回の緊急事態宣言が延長された場合などには、特例措置の期限をさらに延長することも検討している。
政府は特例措置で日額上限を約8300円から1万5千円に上げ、助成率を最大で中小企業が全額、大企業が4分の3まで大幅拡充した。今回の緊急事態宣言の対象地域では、営業時間の短縮要請に協力した飲食業などの大企業も最大全額を助成すると決めた。
助成金の利用者が急増し、支給決定額は2020年末時点で2兆5千億円超。財源の雇用保険財政は逼迫している。
特例措置の再延長を巡っては、加藤勝信官房長官が6日の記者会見で「しかるべきタイミングで延長の結論を出す必要がある」と述べ、再延長を検討する考えを示していた。
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経団連は19日、2021年春闘で経営側の指針となる「経営労働政策特別委員会(経労委)報告」を発表した。新型コロナウイルス禍で経営環境は悪化しており、業種横並びや各社一律の賃金引き上げは「現実的ではない」と指摘。業績が振るわない企業は、基本給を底上げするベースアップ(ベア)は「困難」とした。一方、好業績の企業はベアも「選択肢」と明記し、自社の状況に適した対応を求めた。
業績内容に応じて賃金交渉の方針を書き分けたのは今回が初めて。感染症拡大を機に企業でテレワークなど柔軟な働き方の導入が相次いだことを踏まえ、働き方改革を加速する必要性も訴えた。
多くの企業で業績が落ち込む中、連合が2%程度のベアを目標に掲げたことには「経営側はもとより労働組合からも理解が得られにくい」とけん制した。14年以降続いた賃上げの流れにブレーキがかかるのは必至で、経済を下支えできるかどうかは好業績企業の対応が焦点となる。
指針を取りまとめた経団連の大橋徹二副会長は記者会見で「賃上げの勢いを維持していこうとの経営者の思いはぶれていない」としたが、コロナで打撃を受けた企業は「企業存続と雇用維持がまず大事だ」と話した。指針には、業績悪化の企業は賞与・一時金(ボーナス)も「支給の水準や可否を慎重に検討せざるを得ない」と明記した。
テレワークについては「コロナ時代の新しい働き方の重要な選択肢」と位置付ける一方、「推進自体が目的化してはならない」と指摘した。柔軟な働き方の定着に向けては「硬直的な労働時間法制を見直すべきだ」とも強調。裁量労働制の対象業務の拡大に加え、職種や業種を限定せず、働く場所や時間の選択を委ねる新たな労働法制の整備を政府に要望した。
職務を明確にし成果重視で処遇する欧米流の「ジョブ型」雇用がテレワークに適しているとも記した。年功型賃金など日本型雇用と組み合わせ、各社が最適な制度をつくるよう促した。
主要企業の労使が意見を交わす「労使フォーラム」が26日に開かれ、春闘は事実上始まる。
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長崎市の保育園に勤務し、2017年に自殺した女性保育士=当時(44)=の遺族が、業務が原因だとして園側に損害賠償を求めた訴訟の判決で、長崎地裁は19日、業務のストレスでうつ病を発症して自殺したと認め、約3500万円の支払いを命じた。
判決によると、女性は1993年から勤務。17年6月に失踪し、同年7月に自殺しているのが見つかった。18年5月に労災と認定された。
天川博義裁判長は、女性は業務上のトラブルによるストレスが原因で、16年5月ごろにはうつ病を発症していたと指摘。その後複数の同僚が辞めるなどしたため負担が増え、症状が悪化して自殺したと判断した。
また、園は女性の体調悪化を認識できたのに、負担を減らす手だてが不十分だったとして、安全配慮義務に違反していたと述べた。
遺族は弁護士を通じ「主張が認められほっとしている」とコメントした。園を運営する社会福祉法人むつみ福祉会は「判決に目を通していないので、コメントできない」としている。
(共同通信社)
労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の分科会は18日、男性の育児休業取得の促進策をまとめた報告書を正式決定した。子どもが生まれてから8週の間に夫が休みを取りやすくする新たな制度を創設。子どもが生まれる社員一人一人に育休取得を働き掛けるよう企業に義務付ける。
厚労省は同日開会した通常国会に育児・介護休業法や雇用保険法の改正案を提出予定。企業の働き掛け義務化は2022年度から実施し、新たな制度は労務管理のシステム整備に時間がかかるため、準備期間を設ける。
報告書は男性の育休取得率が1割に満たず、期間も8割が1カ月未満という現状を問題視。妻の産休期間に合わせた新制度を設け、2週間前までに申請すれば、最大4週分の休みを2回までに分けて取れるようにすることを求めた。
このほか現在は子どもが1歳になるまでに夫婦が原則1回ずつしか取れない育休を、それぞれ2回に分けて取れる分割制度の導入や、大企業の取得率の公表義務化、契約社員ら有期雇用で働く人の育休取得要件緩和も盛り込んだ。
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