労務 ニュース3
令和2年10月14日~(最新)令和3年1月6日
令和2年10月14日~(最新)令和3年1月6日
新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の発令対象となる東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県が自宅などで仕事をする「テレワーク」の強化を求めている。各地で従業員の5~6割以上などの目標を設定。昨年春の発令時に職場の「密」回避策として広く実施されながら徐々に後退し、首都圏の通勤電車はなお一部で混雑が続く。
東京商工会議所によると、昨年5~6月の調査では67・3%の企業が実施したが、昨年9~10月には53・1%に。企業から「営業は取引先との細かいすり合わせが必要なため、オンラインは難しい」などの声が出た。
JR東日本によると、山手線の平日朝の利用客数を昨年2月初めと比較すると、昨年4、5月は30~40%ほど。6月中旬からはおおむね60%を超え、70%に達した週もあった。「テレワーク縮小や通学の再開などが考えられる」と説明する。
東京都の目標は「週3日、社員の6割以上」。ホテルをテレワーク用オフィスとして利用する企業への補助金支給などの施策で導入を促す。
神奈川県は県内の事業者に5割実施を目標とするよう要請した。昨年の緊急事態宣言下での実績と同等に設定し、今回も実現可能と見込む。黒岩祐治知事は5日の記者会見で「高すぎる目標ではない。通勤の『密』や職場での感染回避を徹底してほしい」と求めた。
埼玉県の目標も県内企業での導入率5割。関連機器の購入費を最大20万円補助する事業や、導入を検討する企業にアドバイザーとして中小企業診断士らを派遣する事業を既に実施した。大野元裕知事は5日の会見で「心苦しいがご協力をお願いしたい」と呼び掛けた。
千葉県は県内企業の6割を目標とし、県の担当者は「昨年に一時導入しても今は取りやめた企業が多い。改めて徹底を求める」と説明。県には企業側から「適した業務がない」などの相談があり、専門家や国の相談窓口を紹介しているという。
(共同通信社)
厚生労働省は24日、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会に、子育てしやすい企業を表彰する「くるみん認定」について、男性社員の育児休業取得率の基準を現行の7%から10%に引き上げる方針を示した。育休促進策の報告案に盛り込んだ。企業の一層の努力を促したい考えで、認定企業には男性の取得率公表も義務付ける。
子どもの誕生直後に夫が柔軟に休める「男性版産休」などの促進策の一部は、早ければ2022年にも始まる。
くるみん制度は「子育てサポート企業」を認定する仕組みで、育休取得率や残業時間など10項目の基準を満たす必要がある。男性育休の基準は、法律上の育休取得率で見るほか、育児を目的とした独自の休暇制度での取得を合わせた取得率も対象。現行の15%を20%に引き上げる。
引き上げにより、既に認定された企業が新たな基準から漏れるケースが生じるため、現行基準に準じた「トライくるみん(仮称)」を設ける。
くるみんより高い基準が要求される「プラチナくるみん」は、取得率の基準を13%から30%に、独自休暇と合計した基準は30%を50%にそれぞれ引き上げる。
厚労省によると、認定されれば税制優遇が受けられるほか、21年度からは中小企業を対象にした新たな助成金も創設される。
(共同通信社)
高知県土佐市でトマトの生産などを行う「池一菜果園」に勤めていた女性=当時(59)=が上司のパワハラや長時間労働が原因で精神障害を発症し自殺したとして、遺族が同園と社長ら2人に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、高松高裁(神山隆一裁判長)は24日、一審高知地裁判決と同様、計約4960万円の支払いを命じた。
判決によると、女性は生産管理などを担当する統括部長を務めていた2010年に自殺。1カ月で100時間を超える時間外労働に加え、常務取締役だった女性に休暇中に呼び出され、過失がないにもかかわらず、一方的に叱責されるなどの嫌がらせを受けた。
訴訟で同園側は、業務上改善すべき点を指摘しただけで、自殺との因果関係はないなどと主張したが、神山裁判長は「課題点の指摘をしたにすぎないものだったとは到底認められない」と退けた。
遺族は24日「このような判決が出たことを真摯に受け止め、深く反省していただきたい」とのコメントを出した。
(共同通信社)
男性の育児休業取得を巡り、厚生労働省は24日、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会に促進策をまとめた報告案を示し、同日大筋で了承された。産後鬱など妻の負担を減らすため、子どもの誕生から8週間は夫も柔軟に仕事を休めるようにする「男性版産休」を新設。企業に対しては、子どもが生まれる従業員一人一人への育休取得を働き掛けるよう義務付ける。
同省は正式な報告書を基に、来年の通常国会に育児・介護休業法などの改正案を提出。大企業への育休取得率の公表義務化や契約社員ら有期雇用で働く人の取得要件緩和と合わせ、2019年度で7・48%にとどまる男性の育休取得率を30%(25年)まで引き上げたい考えだ。
男性版産休は、妻の出産から8週の間に夫のみが利用できる育休の特例措置。通常の育休は1カ月前申請が原則だが、2週間前までの申請でよく、計4週分を2回まで取れるのが特徴だ。妻の退院時と実家から自宅に戻ってくる時に、夫が2週間ずつ休みを取って付き添うといった使い方が想定されている。通常の育休と同様に雇用保険からの給付金が支給される。
取得の働き掛けは男女双方の従業員が対象で、企業に対し子どもが生まれる前に、政府や社内の育休制度を個別に説明して取得を促す義務を課す。上司による面談やパンフレットの配布など幅広い手段を認める方向だ。育休に関する研修の実施や、相談窓口の設置といった休みやすい職場環境づくりも義務化する。
このほか、原則1回しか取れない育休を、夫婦それぞれが2回に分けて取れる分割制度の導入も決まった。交互に育休を取って子育てに当たることが想定されており、男性版産休と組み合わせれば、夫は最大4回の休みを取ることができる。
与党の一部が求めていた育児休業給付金の増額は財源難のため見送る。
(共同通信社)
厚生労働省の有識者検討会は23日、テレワークでの働き方や労務管理に関する報告書をまとめた。現在の指針は、深夜・休日労働について原則禁止と例示しているのに、一切禁止と誤解されているとして、表現の見直しを提言。休みと仕事時間を厳格に区別する運用を緩め、企業は始業と終業の時間だけを把握すればよいとするなど時間管理の簡略化も求めた。
厚労省は報告書を基に検討を進め、年度内に労務管理指針を改定する。
報告書は、テレワークを細かく管理すると、時間や場所を問わない利点が失われかねないと指摘。出社しても喫煙などで休息を取る人が多いことから、テレワーク中も宅配便の受け取りや子どもの世話での短い「中抜け」を認めるのが適当だとした。テレワークが長時間労働になる可能性があるとの見方も示した。
申告と実際の労働時間が異なっても、企業が知らなかった場合は労働基準法上の責任を問われないことを明確化する。経済界が要望していた。
雇用形態を理由に非正規労働者などがテレワークを選ぶことを拒んだり、テレワークをしたかどうかで人事評価を変えたりすることは、いずれも不適切だと明記した。
テレワークを巡っては新型コロナウイルス感染防止を狙い、導入が急増。指針が実態に合わないとして、政府の成長戦略会議などで見直しを求める声が強まっていた。
(共同通信社)
経団連が22日発表した大手企業の冬の賞与・一時金(ボーナス)の集計によると、平均妥結額は昨年冬に比べ9・02%減の86万5621円だった。新型コロナウイルス感染拡大による企業業績の大幅悪化が響き、減少率はリーマン・ショック後の2009年に記録した15・01%減に次ぐ2番目の大きさだった。
製造業は7・48%減の86万4862円、非製造業は12・94%減の86万8431円。全19業種中、16業種で昨冬を下回り、減少率が最も大きかったのは百貨店などの「商業」で32・81%減の57万7634円。次いで「鉄鋼」が25・01%減の57万736円、「私鉄」が22・6%減の74万2980円となった。
ボーナスが増えたのは「紙・パルプ」と「情報通信」、「電機」の3業種のみだった。
今年夏のボーナス(90万1147円)の減少率は昨夏比で2・17%減にとどまっており、経団連の担当者は「冬の方がコロナの影響が色濃く出た」と指摘。来年の一時金交渉に関しても「今の業績見通しを踏まえると厳しい」との見方を示した。
調査は1959年から実施しており、今回は従業員500人以上の東証1部上場企業のうち集計可能な164社で算出した。
(共同通信社)
経団連は21日、2021年春闘の交渉方針や雇用制度への見解を示す「経営労働政策特別委員会(経労委)報告」の内容を大筋で固めた。前年は慎重な検討が必要と指摘した社員の「副業・兼業」について、推進する姿勢に転じたほか、春闘方針では高収益の企業は基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)も「選択肢」と明記した。
経団連は同日、経労委の会合を開催し議論。経労委報告は来年1月に正式決定し、公表する。
報告は副業・兼業に関し「自律的な働き方を支援することは社員の労働意欲を高め労働生産性の向上につながる」と指摘した。労働時間の把握や管理が困難との課題があったが、今年9月の政府のガイドライン改定で時間管理が容易になったことも容認に転じた背景にある。
新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、都市部の人材が地方で副業・兼業すれば「人口増加など地方経済の強化に資する」との期待も示した。
21年春闘方針では、高収益の企業に対して賃金引き上げを求め、実情に適した形でのベアも選択肢との文言を盛り込んだ。一方で業績悪化の企業は「ベアは困難」とし、「事業継続と雇用維持が最優先」と強調した。
連合がベアを2%程度要求する目標を掲げたことについては「経営側はもとより労働組合からも共感や理解が得られにくい」とけん制した。
賃上げを通じた消費拡大を目指してきた政府などの取り組みはコロナ禍でブレーキがかかるのは必至で、好業績企業の対応が経済下支えの焦点となる。
経団連の中西宏明会長は21日の記者会見で「経済界も(賃上げの)モメンタム(勢い)を意識しており、上げられるところは上げるというのが第一歩だ」と話した。
政府にはテレワークなど柔軟な働き方の定着に向け、働く場所や時間を本人に委ねる新たな労働法制の整備も求めた。
(共同通信社)
2021年度に支給される公的年金額は現在の水準で据え置かれる見通しとなったことが21日、分かった。指標の一つである過去3年分の賃金が横ばいだったため。据え置きは18年度以来、3年ぶり。年金給付の伸びを抑える「マクロ経済スライド」は実施しない。
政府が21日閣議決定した21年度予算案の編成作業に合わせて試算した。
年金額は、賃金と物価の変動を踏まえて毎年度見直すかどうかを判断する。物価については、今年1~11月の全国消費者物価指数に基づいて計算しており、未公表の12月分が大幅に下落した場合は、年金額は減額となる可能性もある。実際の改定率は来年1月に厚生労働省が公表する。
据え置きだと、21年4月分(受け取りは6月)の年金額は、国民年金は40年間保険料を納め続けた場合、月6万5141円。会社員らが加入する厚生年金は、平均的な給与で40年間勤めた夫と専業主婦の妻という世帯で月22万724円。
マクロ経済スライドは、年金財政を長期的に維持するため賃金と物価の伸びより年金額を低く抑える仕組みで、デフレ下では実施しない。今回は発動せず、22年度以降の景気回復時に繰り越した。
(共同通信社)
政府は18日、企業に所属しない「フリーランス」として働く人向けの保護指針案を大筋でまとめた。企業や仲介業者との契約では下請法や独占禁止法が適用され、一方的な報酬減額や納期変更は違法になると明記。実質的に取引先の下で働く雇用関係にある労働者と判断されれば、最低賃金などの労働関係法令が適用されることも改めて示した。年内に一般からの意見公募手続きを始め、年度内に正式決定する。
フリーランスを巡っては新型コロナウイルス感染拡大の影響で、インターネットを通じた食事宅配サービスの配達員やITエンジニアの副業など新たな働き方が拡大している。政府は7月の成長戦略実行計画で労災保険の対象範囲の拡大や保護ルール作りを決定していた。
指針案はフリーランスは仕事の発注を受けて生活するため、企業などから不利な契約を押しつけられやすいと指摘。契約のトラブルが相次いでおり、未然に防ぐため、双方に仕事の範囲や著作権の扱いといった契約条件を事前に書面で取り決めるよう求めた。
その上で極端に少額な報酬設定や契約後の納期変更、一方的な返品などは独禁法の「優越的な地位の乱用」に該当しうるとした。該当するケースも例示し、取引先の業績悪化による一方的な報酬減額や、運送契約なのに倉庫での仕分け作業まで要求することを挙げた。
労働法令の対象になるかどうかは働き方に応じて個別に判断する。常に相手先から指示を受けるなど実質的に労働基準法や労働組合法で定義する労働者に当たる場合は、最低賃金の補償や団体交渉権といった権利が生じるとした。
指針案は内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省が共同で策定した。
(共同通信社)
厚生労働省は17日までに、雇用関係を維持しながら他社に従業員を出向させる「在籍出向」を推進する新たな助成金制度の概要を公表した。新型コロナウイルス感染拡大で事業を縮小した出向元と受け入れ先の双方を対象に、賃金や教育訓練費の一部を支援することが柱。年度内に助成金の申請を受け付ける方針。
出向の連携先を見つけたり、受け入れのための環境を整備したりするには労力や経費が必要。このため、インセンティブ(動機づけ)を高め、促す狙いがある。
新設する助成金の名称は「産業雇用安定助成金(仮称)」。賃金や教育訓練費、出向に伴い必要となってくる新たな就業規則や機器の整備などにかかる初期経費について、出向元と出向先の両方に助成する。
賃金、教育訓練費用の助成率は、出向元が従業員を解雇していない場合、中小企業が最大10分の9、大企業は最大4分の3。日額の上限額は従業員1人当たり1万2千円。初期経費の助成額は、1人につき定額10万円で、異業種からの受け入れなど、一定の条件を満たす場合は1人当たり5万円を加算する。
企業が支払う休業手当の一部を補助する「雇用調整助成金」にも在籍出向への助成制度があるが、出向先は対象外となっている。政府は、在籍出向を活用した雇用維持に必要な56億円を2020年度第3次補正予算案に計上した。
(共同通信社)
労働組合に加入している人が雇用者全体に占める割合を示す「組織率」は6月末時点で推定17・1%と、11年ぶりに上昇に転じたことが16日、厚生労働省の調査で分かった。過去最低だった前年から0・4ポイント上昇。新型コロナウイルスの影響で雇用者数が前年比94万人減った一方、組合員数は2万8千人増え、1011万5千人となった。
パートタイムで働く組合員は前年から4万2千人増え、137万5千人と過去最多を更新。組合員全体に占める割合も0・4ポイント上がり13・7%となった。
ナショナルセンター(全国中央組織)別では、連合が前年比2万9千人増の689万3千人。全労連は同1万3千人減の51万1千人、全国労働組合連絡協議会(全労協)が同4千人減の9万人。
産業別では「卸売、小売業」や「製造業」で増加。一方、「公務」「教育、学習支援業」などは減少した。
(共同通信社)
建設現場でアスベスト(石綿)を吸い、中皮腫や肺がんなどの健康被害を受けた元労働者や遺族ら約350人が、国と建材メーカーに損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は国の上告を受理しない決定をした。規制を怠った国の責任を認め、原告327人に計約22億8千万円を支払うよう命じた二審東京高裁判決が確定した。14日付。
全国9地裁に千人以上が起こした「建設アスベスト訴訟」で国への賠償命令が確定するのは初めて。二審判決は企業に雇われた労働者だけでなく、「一人親方」と呼ばれる個人事業主も救済対象に加えており、同種訴訟や、今後の補償を巡る議論に影響を与えそうだ。
一方で、メーカー側への請求を退けた二審の判断に対し、第1小法廷は双方の意見を聴く弁論を2月25日に開くと決めた。結論を見直し、救済範囲が広がる可能性がある。決定は裁判官5人全員一致の意見。詳しい理由は示さなかった。
2018年3月の二審東京高裁判決は、医学的知見の集積により、国は1972~73年には作業員が石綿関連疾患にかかる危険性を予見できたと指摘。その上で「遅くとも75年10月には、防じんマスク着用を雇用主に義務付け、現場に警告表示をするべきだった」とし、規制権限を行使しなかった国の対応を違法とした。
国側は一人親方は労働安全衛生法で保護される「労働者」に当たらないと主張した。判決は「建設現場で重要な地位を占めている社会的事実を考慮すれば、保護の対象になる」と判断した。
症状に応じ1人1300万~2500万円の慰謝料を認めたが、安全を確保する責任は主に雇用主にあるとして、国の賠償範囲は3分の1にとどめた。
今回の原告は東京、千葉、埼玉の元労働者らが中心で08年に提訴した。最高裁には他に横浜、京都、大阪、福岡の訴訟も係属している。
(共同通信社)
宅配便大手ヤマト運輸の男性社員=当時(45)=が2016年に自殺したのは長時間労働などが原因だとして、名古屋市に住む男性の妻が労災を認めなかった名古屋北労働基準監督署の処分取り消しを国に求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は16日、請求を認めた。長時間労働と業務中の交通事故による心理的負荷が原因で適応障害を発病したと認めた。
井上泰人裁判長は判決理由で「時間外労働が繁忙期に1カ月130時間を超え、その後も恒常的に長時間労働をしていた」と指摘。会社が交通事故を「相応に重い出来事」として扱っていた点にも言及し、集配センターの従業員2人と、センターの責任者だった男性自身の事故が、心理的プレッシャーとなったと認定した。
判決などによると、男性は1999年にヤマト運輸に入社し、15年9月に名古屋市内の集配センターに異動した。センター長として従業員の人事管理をしながら自ら配送業務も担当していたが、16年4月に愛知県内の林で首つり自殺をした。
妻は同6月、労災補償を求めたが、名古屋北労基署は「業務上の疾病で死亡したとは認められない」として不支給を決めた。
妻は代理人弁護士を通じ「ヤマト運輸は判決を読んで、仕事が原因で夫が亡くなったことを認め謝罪してほしい」とコメント。名古屋北労基署は「判決文を検討した上で対応する」、ヤマト運輸は「訴訟当事者ではないためコメントは差し控える」とした。
(共同通信社)
男性の育児休業取得推進を巡り、厚生労働省は14日の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)分科会で、子どもが生まれる従業員一人一人への育休取得の働き掛けを企業に義務付ける案を示した。上司や会社からの働き掛けがあれば育休を取りやすいとされており、労使ともに大きな反対はなかった。年明けにもまとめる報告書に盛り込まれる見通し。
同省案によると、義務付けの対象は性別を問わず、現在の努力義務を引き上げる形で実施。上司による個別面談での説明や、制度や取得条件をまとめた書面の配布などを想定している。メール配信や社内掲示板への掲載など多様な周知方法を認める方針で、今後厚労省が指針などの形で具体例を示す。
労働側委員が求めていた従業員が実際に取るかどうかまでの確認は、従業員が答えない場合に企業が罰せられる可能性もあるとして導入を見送った。
また新設が決まっている妻の出産に合わせて夫が休めるようにする「男性版産休制度」は、分割の上限回数を4回から2回に変更するなど企業負担に配慮した。
同日開かれた政府の全世代型社会保障検討会議でも菅義偉首相が義務付け方針を指示していた。
(共同通信社)
働き手不足が叫ばれる中、中途採用の方法として社員の持つ人脈を生かして友人や知人を紹介してもらう「リファラル採用」が注目を集めています。社員が自社に向いていると思う人材を誘い、形式張らず会社の「生」の情報を知らせた上で入社してくるため、定着率が高く、採用コストも抑えられるといいます。
リファラルは英語で「紹介、推薦」を意味します。これまでも学校の紹介や推薦による採用はありましたが、リファラル採用では、社内事情をよく知る社員が、自社の気風や文化に合うと感じ、必要とされるスキルを持つ人を勧誘します。面談など通常の選考を経た上で採用の可否を判断しますが、合格の確率は非常に高いようです。入社にこぎつけた人材を紹介した社員には報酬を与える制度を設けている企業もあります。
人材確保が厳しい中小企業やベンチャー企業でこの採用方法が広がり、転職仲介会社が2017年に実施したアンケートでは、中小企業を中心とした501社中、60%以上が取り入れていました。導入の理由(複数回答)は「入社後に定着・活躍しやすいため」が59%と最も多く、「採用コストを下げるため」(56%)と続いています。
求人広告や転職仲介会社は、積極的に職場を変わりたい求職者を対象にしていますが、リファラル採用では転職を考えていない人材にも、社員を通じてアプローチして自社の魅力を訴えることができます。
最近は大手企業でも導入が増えています。急速に変化する経営環境の中、自社に合う多様な人材を獲得したいからです。富士通は18年から本格的に始め、年間20~30人を採用しています。トヨタ自動車でも今年6月から全社的に導入しました。
社員が紹介するため、似たような人ばかりが集まるとの指摘もあります。他の採用方法とバランスを取った人材確保が必要かもしれません。
(共同通信社)
政府の社会保障制度改革の焦点だった、75歳以上の医療費負担増の対象と、中学生以下の子どものいる世帯に支給する児童手当の見直しが10日、同時決着した。医療費負担増の対象は、年金収入のモデルで年間200万円以上とすることで政府、自民、公明両党で合意。児童手当は世帯主の年収が1200万円以上の家庭の子ども61万人分を不支給とする。週明けにも全世代型社会保障検討会議を開いた上で、閣議決定する。
自民党の下村博文、公明党の竹内譲両政調会長、田村憲久厚生労働相らが10日に国会内で協議して決めた。医療費負担増については3年間の激変緩和措置を設け、外来受診に限り、窓口負担が2割になっても1割のときに比べて最大で月3千円の増加に抑える。施行時期は2022年度後半で今後調整。児童手当は22年10月分からとする。いずれも通常国会に関連法案を提出する予定。
菅義偉首相は10日、記者団に「高齢者と若者が互いに支え合うことが大事だ」と語った。
現行の児童手当は、年齢に応じて子ども1人当たり月1万~1万5千円。会社員の夫と専業主婦、子ども2人の家庭では、夫の年収が960万円以上で所得制限の対象となり、特例で子ども1人5千円を支給していた。
22年10月以降は、世帯主の年収が1200万円以上は不支給となるが、960万~1200万円未満は引き続き5千円が支払われる。政府は21~24年度の4年間で新たに14万人分の保育施設を確保する計画で、見直しで浮いた費用を財源に充てる考え。
政府は、所得制限の判定基準を世帯主の年収から「夫婦合算の年収」に改める案も検討したが、与党から「共働き世帯が損をし、女性活躍に反する」との声が強まり見送った。
厚生労働省によると、75歳以上の医療費負担が1割から2割に引き上げられる人は約370万人になる見込み。激変緩和措置は負担増に伴う受診控えが懸念されることから導入する。
(共同通信社)
育児休業後、正社員から契約社員となり、さらに雇い止めされたのはマタニティーハラスメントに当たるとして、女性が勤務先の会社に損害賠償などを求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)は、女性の上告を退ける決定をした。8日付。雇い止めを無効として会社に賠償を命じた一審判決を変更し、女性側の逆転敗訴とした二審東京高裁判決が確定した。
二審判決によると、女性は語学学校運営会社「ジャパンビジネスラボ」(東京)の正社員だった2013年に出産し、14年9月に育休から復帰する際、週3日勤務の契約社員になった。1年後に雇い止めされた。
18年9月の一審東京地裁判決は、雇い止めを無効とした上で、正社員復帰の時期や条件を具体的に説明せず、会社の意向に沿うよう迫ったとして、110万円の支払いを命じた。二審東京高裁は19年11月、女性には、会社がマタハラ企業だとの印象を与えようとした行為があったと指摘。会社との信頼関係を壊しており、雇い止めは合理的理由があると判断した。
その上で、女性が提訴時の記者会見で事実と異なる発言をし、会社の名誉を傷つけたとして逆に55万円の賠償を命じた。
(共同通信社)
防衛大学校(神奈川県横須賀市)で上級生らに暴行やいじめを受けたのは大学側が監督を怠ったためだとして、福岡県に住む元学生の20代男性が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は9日、教官の指導が不適切だったとして大学側の責任を認め、請求を棄却した一審福岡地裁判決を変更、約268万円の支払いを命じた。
防衛大では全員学生寮に住み、同室の上級生が下級生を指導する。増田稔裁判長は、男性の在学当時、学生間指導として、暴力や精神的苦痛を与える行為が一般的に存在していたと指摘。男性が体毛に火を付けられたり、顔を殴られたりした行為に関し教官の安全配慮義務違反を認めた。
また、教官は一部の暴行を予見できたのに、適切な指導をしなかったため防げなかったと判断。男性は理不尽な行為が続くと考え退学を余儀なくされたとした。「学生間指導の実態を把握できておらず、暴力などを防ぐための検討も不十分だった」と、防衛大の取り組みの不備にも言及した。
高裁判決によると、男性は在学中の2013~14年、上級生らに暴行やいじめを受け、体調を崩した。15年3月に退学した。
男性は判決後の記者会見で「防衛大が非を認め、判決を受け入れてくれるよう願っている」と話した。防衛大は「重く受け止める。判決内容を慎重に検討し、適切に対応する」とコメントした。
男性が当時の上級生らに賠償を求めた訴訟は昨年2月、福岡地裁が7人に計95万円の支払いを命じ、確定している。
(共同通信社)
フリーランスで働く人の保護を強化するため、厚生労働省は8日、俳優などの芸能従事者やアニメーターなどのアニメーション制作従事者、柔道整復師として働く個人事業主について、労災保険への加入を認める方針を固めた。現在は建設業の一人親方などが対象の「特別加入制度」を適用。同日開いた労働政策審議会の部会で大筋了承された。今後、省令の改正手続きを経て来年度に導入する。
政府が多様な働き方を推進する中、フリーランスは増加傾向で462万人との試算もある。雇用されていないため、労働関係法令が適用されず、新型コロナウイルスの感染拡大でも十分な収入補填が受けられないなどの課題が表面化。政府は仕事でけがや病気になった場合に補償が得られるよう、労災保険の適用を検討していた。
政府の統計によると、芸能従事者の人口は約21万8千人、柔道整復師は約7万3千人。アニメーターは業界団体の推計で約1万人いるとされる。厚労省は現時点で、このうち計約1万5千人の特別加入を想定している。
労政審の部会ではこれまで、3業種の業界団体を招き実態を確認。仕事が原因とみられる傷病として、芸能従事者がのどのポリープや椎間板損傷、アニメーターは長時間同じ姿勢で作業を繰り返すことでのけんしょう炎、柔道整復師は無理な体勢での施術による腰痛が多いと報告された。
特別加入制度は建設業の一人親方など働き方が労働者に近い個人事業主を対象に、労災保険への加入を任意で認めるもので、2018年度末現在、約190万人が加入。業種ごとの特別加入団体に申し込み、自身で保険料を払えば補償が受けられる。
(共同通信社)
名古屋市交通局のバス運転手山田明さん=当時(37)=が2007年に自殺したのは、過重労働とパワーハラスメントが原因として、山田さんの両親が市に約8700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は7日、「精神障害を発病させるほどの強い心理的負荷が生じると予見できた」として市に約6300万円の支払いを命じた。
井上泰人裁判長は判決理由で「長時間労働の下、約4カ月の間に立て続けに身に覚えのない乗客からの苦情や、車内での転倒事故を巡る指導を受け、精神障害を発病、自殺した」とした。
特に転倒事故では、山田さんが、自身が運転するバスでの事故だったとの自覚がなかったにもかかわらず、市が十分な調査をせず山田さんを事故の運転手として警察に出頭させたと指摘。出頭翌日に自殺を図っており「心理的負荷と自殺との間には因果関係がある」と判断した。
判決によると、山田さんは自殺前の約6カ月間、1カ月当たり平均60時間以上の時間外労働に従事。その間、本人が自覚していない出来事を根拠に配慮のない指導を受け、07年6月、市内の高架下でガソリンを浴びて焼身自殺した。
公務災害認定を求めた別の訴訟は名古屋高裁が16年、自殺と公務の因果関係を認めていた。
(共同通信社)
和歌山南陵高(和歌山県日高川町)の講師だった男性(53)が雇い止めされたのは不当だとして、同校を運営する学校法人南陵学園(静岡県菊川市)に雇用契約の確認などを求めた訴訟の判決で、和歌山地裁は4日、雇い止めは無効だと認め、未払い賃金など計約2千万円の支払いを命じた。
伊丹恭裁判長は、男性が面談に遅刻したことを雇い止めの理由として法人が重視したことについて「合理的な理由を欠き、社会通念上相当とは認められない」とした。
判決によると、南陵高は2016年4月に開校。男性は前年の15年6月に雇用契約を結び、同7月以降、開校準備や野球部への生徒勧誘などの業務に従事した。同12月に菊川市の法人本部で学園長と面談するよう指示されたが、当日遅れて到着。面談を受けることができず、その翌日、16年3月末での雇用打ち切りを言い渡された。
判決後、男性は「自分の考えや世間の常識が正しいと司法が判断した。うれしい」と話した。
法人の代理人弁護士は「判決文を見ていないのでコメントを差し控える」としている。
(共同通信社)
組合員が資金を出し合って運営にも関わる「労働者協同組合」と呼ばれる非営利の法人形態を新たに認める法律が4日、参院本会議で全会一致で可決、成立した。NPO法人などよりも簡単な手続きで設立でき、さまざまな事業を担える利点がある。人口減少に悩む地方を中心に、介護や緑化活動など多様な分野で新たな担い手となることが期待される。
同組合は仕事を通じて収入だけではなく、やりがいや満足感を得ることも目的とする。株式会社とは異なり、一人一人が出資と経営の意思決定、労働の全てに関与することが特徴。組合員は組合と労働契約を結び、全体の5分の4以上が事業に参加することなどが設立の要件となる。
貧困支援やまちづくりといった地域活動を行う場合は任意団体やNPOとして活動することが多いが、法人として契約を結べなかったり設立や維持の手続きが煩雑だったりする問題があり、対策が求められていた。
6月に超党派による議員立法として法案を提出。労働者派遣事業以外の事業を行えるため、後継者がいない中小企業の事業継承への活用も期待される。
(共同通信社)
自動車や電機などの産業別労働組合(産別)でつくる金属労協は3日、2021年春闘で定期昇給分を確保した上で、月3千円以上のベースアップ(ベア)要求を基本とする方針を発表した。「3千円以上」は過去5年の要求と同水準だが、新型コロナウイルスの影響に配慮し「各産別は置かれている状況を踏まえ、具体的な方針を決定する」とも記載。取り組み方に幅を持たせた。
高倉明議長は記者会見で「過去に類を見ないほど経済が厳しく、先行きも不透明だからこそ働く人への投資が必要。金属産業が日本の回復をリードしようという気持ちだ」と強調した。
方針によると、一時金(賞与)は前年までと同様に「年間5カ月分以上」を基本とし、最低でも4カ月分の確保を求めた。非正規労働者も含めた賃金の最低額となる「企業内最低賃金」を重視し、全傘下労組で労使協定締結を目指す。水準は高卒初任給を念頭に「月額17万7千円程度」とした。
(共同通信社)
内閣府の子ども・子育て本部と厚生労働省による検討チームは3日会合を開き、不妊治療と仕事を両立するための支援策をまとめた。特別休暇制度や時差出勤といった働きながら不妊治療を受けられる職場環境を整備した中小企業への助成制度を設けるほか、不妊専門相談センターの相談体制を強化する。
働き方改革に関する助成金を拡充し、不妊治療休暇や家族休暇といった治療に使える休暇制度を設けた企業を助成対象に加える。勤務時間が固定されないフレックスタイムやテレワークなど柔軟な働き方を設けた中小企業には、別の助成制度を設ける。いずれも来年度からの導入を目指す。
このほか不妊治療への理解を深めるため、啓発事業も強化。企業向けのセミナーやシンポジウムを開くほか、国家公務員の環境整備や政府による会員制交流サイト(SNS)の発信も強める。
共同座長を務める坂本哲志少子化対策担当相は会合で「経済団体を通じ大企業から中小企業まで広く企業の協力を呼び掛けたい」と話した。
(共同通信社)
経団連が2021年春闘の交渉方針で、新型コロナウイルス感染拡大を受け企業の多くが業績を悪化させていることから、業種横並びや各社一律賃上げは「現実的ではない」として、慎重姿勢を示すことが2日、分かった。7日の会長・副会長会議での議論を踏まえ、来年1月に決定する経営労働政策特別委員会(経労委)報告に盛り込む。
報告案では、コロナ禍で同業種の間でも収益動向に差が生じる傾向が強まっていると指摘。業績が悪化している企業については、基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)の実施は「困難」とする一方、業績好調を維持している企業では「ベアを行うことも選択肢」と明記した。
連合はすでに、ベアを月給の2%程度要求する方針を決めている。賃上げの流れを継続させる狙いだが、企業では航空や旅行業を中心に、人員削減や冬のボーナスを抑制する動きが相次いでおり、賃金交渉は厳しい展開となりそうだ。
報告案では、業績が悪化した企業は事業継続と雇用維持が最優先の交渉になるため「定期昇給などの実施の可否も含めて検討せざるを得ない場合もあり得る」と指摘した。
20年の春闘方針では「自社の実情に応じて前向きに検討することが基本」と横並びの賃金を否定した上で、ベアについては「選択肢となり得る」としていた。
(共同通信社)
病気やけがで欠勤した場合に公的医療保険などから支払われる傷病手当金について、厚生労働省は2日、会社員らが加入する健康保険で、支給期間を欠勤した期間の通算で最長1年6カ月とする案を社会保障審議会の部会に示し、大筋で了承された。公務員が加入する共済組合などは既にこの仕組みとなっており、“官民格差”を是正する。
傷病手当金は、会社などを連続して3日以上休んだ際、4日目以降の欠勤に対し、1日当たり給料の3分の2相当が支給される。
これまでは、中小企業の社員が入る全国健康保険協会(協会けんぽ)や大企業社員の健康保険組合では、支給開始日から1年6カ月がたつとそれ以降は欠勤しても支給されなくなる仕組みだった。がんの治療などで入退院を繰り返すケースでは、出勤して不支給になる期間があったとしても支給期間は延長されなかったため、見直しを検討していた。
(共同通信社)
雇い止めを巡る労働審判の内容を口外しないよう労働審判委員会に命じられ、精神的苦痛を受けたとして、長崎県大村市の男性(59)が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、口外禁止条項を付けたのは違法と長崎地裁が判断したことが2日、分かった。原告代理人の弁護士が明らかにした。判決は1日付。
原告代理人の中川拓弁護士によると、労働審判での口止めを違法と判断した判決は全国初という。原告男性は2日、長崎県庁で記者会見し「調停で裁判官から『禁止条項は一般的なことだから』と言われた。お世話になった人に報告もできないというのは受け入れられなかった」と話した。
判決で古川大吾裁判長は「将来にわたって口外禁止条項の義務を負い続けることからすれば、原告に過大な負担を強いるものと言わざるを得ない」と指摘。「原告が条項を受容する可能性はなく、相当性を欠いている」として違法性を認定した。一方、労働審判委が口外禁止条項を盛り込んだのは「早期解決の道を探るためで、審判に違法または不当な目的があったとはいえない」として賠償請求は認めなかった。
判決などによると、男性は運転手として運送会社に有期雇用で勤務していた2017年3月、雇い止めにされた。その後、地位確認などを求めて長崎地裁に労働審判を申し立て、労働審判委は口外禁止条項を盛り込むことを条件に、会社側が解決金230万円を支払う調停を打診。男性は拒否したが、同条項入りの審判が言い渡された。
(共同通信社)
出産した人に42万円が支給される出産育児一時金を巡り、厚生労働省は1日、与党議員から要求があった増額を見送る方針を固めた。負担が大きいとされる出産関連費用に関し、さらに細かく分析した上で対処する必要があると判断した。
一時金の額を上回ることを背景に、自民党の議員連盟が少なくとも4万円引き上げを求め、公明党も50万円までの増額を目指している。
出産育児一時金は公的医療保険から拠出するため、健保組合など企業側の合意が欠かせない。出産費用は都市部ほど高い傾向にあるが、食事など出産と直接の関係が薄いサービスが高い場合もある。厚労省は今後、費用の詳細を把握できるよう、調査データの取り方の変更などを検討する。
42万円には、出産事故に備える「産科医療補償制度」の掛け金1万6千円が含まれている。2019年度の公的病院の出産費用は掛け金を除いて平均約44万円。厚労省は掛け金を1万2千円へ下げることを社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の関連部会へ提案。実現すれば実質的な出産費用として利用者が受け取る額は現行より多くなる。
田村憲久厚生労働相は、引き上げは「保険料を負担する国民や企業の理解を得ることが前提だ」としていた。
(共同通信社)
石川県内の印刷会社に勤めていた40代男性がうつ病を発症、自殺したのは労働災害だとして、遺族補償を不支給とした金沢労働基準監督署の処分取り消しを遺族が求めた訴訟の判決で、金沢地裁は30日、自殺は業務に起因すると認め、労基署の不支給処分を取り消した。
山門優裁判長は「男性は製品の不具合に関するクレーム対応や恒常的な長時間労働で、強い心理的負荷を受けた」と指摘。「自殺は業務に起因する」と認定した。
判決によると、2015年3月に納品した製品に不具合が発生。クレーム対応などに当たった男性は時間外労働が月95時間となり、同4月にうつ病を発症、同6月に自殺した。
労基署は同12月に「業務起因性が認められない」として、遺族補償を不支給としていた。
(共同通信社)
育児休業を取得中に社会保険料の支払いが免除される制度を巡り1日の取得でも対象となる問題点について、厚生労働省は26日、見直し案を社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の部会に示し了承された。免除額の多い賞与にかかる保険料は、連続して1カ月を超えて取得した場合だけ免除を認め要件を厳格化。一方、月々の保険料は、月末を含む1日でも取得した場合に免除される抜け穴的なルールが引き続き残る。
育休を取ると、健康保険や厚生年金などの保険料が免除される。現行制度は、月末時点の状況で判断し、取得期間に月末が含まれれば1カ月分の保険料が免除される。このため保険料を浮かす目的で月末1日だけ取るケースもあった。賞与月は、賞与にかかる保険料も免除。厚労省は公平性の観点から見直しを検討していた。
見直しでは、賞与にかかる保険料は、賞与月の月末を含めて1カ月を超えて取得した場合のみ免除。月々の保険料は、月末を含むかどうかにかかわらず、同じ月に2週間以上取得した場合も免除の対象とする。ただ、2週間未満の取得も促す目的で、月末を含んで取る場合の免除も引き続き残す。
部会の委員からは「月末1日だけ取得した場合の不公平感は残る。適正な運用を促進してほしい」との意見が出た。
(共同通信社)
物流会社ハマキョウレックス(浜松市)の彦根支店(滋賀県多賀町)で運転手として働く男性2人が、無期雇用に転換したのに正社員と待遇格差があるのは不当だとして、正社員と同等の地位確認などを求めた訴訟の判決で大阪地裁(中山誠一裁判長)は25日、2人の請求を棄却した。
判決などによると、池田正彦さん(58)ら2人は有期契約社員だったが、2018年10月、無期雇用に転換した。しかし就業規則により無期転換後も「無期パート」とされ、同様の運転業務をする正社員と比べ、手当などで月額計約9万円の差額があった。
判決理由で中山裁判長は、同年に労働組合との団体交渉で、同社が無期転換後に正社員にはできないと回答したことなどから、2人は契約社員の就業規則が適用されると認識していたと指摘。転換後の労働条件が、正社員の就業規則に基づくものになるという合意はなかったと判断した。
(共同通信社)
子どもがいながら育児休業を取得していない労働者のうち29・6%が、希望に反して取得できなかったことが連合の意識調査で分かった。取得できた人の中でも40・1%は希望日数より少なく、本人たちが望む取得がままならない現状が浮かび上がった。
取得できなかった理由としては「仕事の代替要員がいない」が44・4%と最も高かった。「収入が減る」が26・5%、「取得できる雰囲気が職場にない」が22・3%で続いた。
性別ごとに見ると、希望したのに取得できなかったと答えたのは、男性31・6%、女性は24・7%。希望日数より少なかったのは男性が47・8%で女性は38・5%だった。職場の雰囲気や立場の違い、主に女性が育児負担を担っている状況などから、男性の方が休みづらい傾向が強かった。
現在、厚生労働省が検討している男性育休の取得率向上対策に向けては、全回答者のうち34・2%が「研修などを通じた社内通知」が必要と回答。「企業による対象者への育休の説明義務化」は32・3%、「男性の育休取得義務化」は26・5%で、企業や政府に対して、強制的な対応を求める声も多く上がった。
調査は10月、未就学児がいる20~59歳の男女500人ずつ計千人を対象に実施した。
(共同通信社)
徳島大(徳島市)の前薬学部長からパワハラ発言などを受け、うつ病を発症したのに適切な措置を取らなかったとして、同学部の男性准教授が大学に慰謝料など330万円の支払いを求めた訴訟の控訴審判決で、高松高裁(片田信宏裁判長)は25日、請求を棄却した一審徳島地裁判決を変更し、大学に11万円の支払いを命じた。
判決によると、2014年4月14日、研究室の学生の募集人数を巡るやりとりで、当時の薬学部長だった教授が准教授に「あんたは非常識だ」「早くどこかの職を探して、ここを出て行けばいいじゃないですか」など厳しい語調で非難した。
片田裁判長は判決理由で「職務上の地位などを背景に人格と尊厳を侵害する言動で、違法な行為だ」と指摘。国家賠償法上、大学が賠償責任を負うとした。
徳島大は「判決文が届いていないので、現時点で具体的なコメントは差し控える」としている。
(共同通信社)
育児休業を取得中に社会保険料の支払いが免除される制度を巡り、厚生労働省は25日、新たに2週間以上の取得でも免除を認める方針を固めた。免除額の多い賞与にかかる保険料に関しては、連続して1カ月を超えて取得した場合だけ認める方向に要件を厳しくする。26日に開く社会保障審議会の部会に案を示す。
これまでは月末1日の取得で保険料が免除される“抜け穴”があり、厚労省は公平性の観点から見直しを検討していた。月末に縛られない柔軟な休み方を選べるようにして、男性の育休取得を推進する狙いがある。
育休を取ると、健康保険や厚生年金などの保険料が免除される。現行では、月末時点の状況で判断するため、取得期間に月末が含まれれば1カ月分の保険料が免除される。中には保険料を浮かす目的で、月末を含む短期間だけ取るケースもあった。
これを月末を含むかどうかにかかわらず、同じ月に2週間以上取得すれば、保険料免除を認める。ただ、2週間未満の取得も促す目的で、月末を含んで取る場合の免除も引き続き残す。
男性の育休取得率は、2019年度で7・48%。1カ月未満の取得が、81%(18年度)を占めている。厚労省は労働政策審議会の分科会で取得促進策を議論しており、年末に取りまとめる報告に保険料免除なども合わせて示す方針だ。
(共同通信社)
政府は25日、新型コロナウイルス感染拡大を受け、12月末までの期限となっている雇用調整助成金の特例措置について、来年2月末まで日額上限(1万5千円)や助成率を現行水準のまま維持し延長する方針を固めた。当初は来年1月から段階的な縮小を予定していた。11月に入り国内の感染者が過去最多を更新し、雇用情勢のさらなる悪化を避けるため手厚い支援を続けるべきだと判断した。月内に公表する。
特例を巡っては、新型コロナによる雇用危機に対応するため拡充と期限の延長を繰り返しており、延長は3回目となる。
政府内では少なくとも来年1月末までは特例を全面的に維持し、2月以降は雇用情勢などに応じて判断するとの案や、与党が要望する3月末まで延長する案があった。調整の結果、2月末までの延長が固まった。
雇用調整助成金は休業を余儀なくされた企業が従業員に休業手当を支払う際、国が費用を補う。政府は特例として、日額上限を約8300円から1万5千円に引き上げた。助成率も中小企業で3分の2から最大全額、大企業は2分の1を最大4分の3に大幅拡充した。
特例に伴う支給決定額は20日時点で約2兆2600億円。厚生労働省のサンプル調査によると、緊急事態宣言の外出自粛による影響を受けた理美容などの生活関連サービス業・娯楽業や宿泊・飲食サービス業などで支給額が多かった。
(共同通信社)
トヨタグループの研究機関「豊田中央研究所」(愛知県長久手市)の社員だった女性が同社に解雇の無効を求めた訴訟の差し戻し審で、名古屋地裁は24日、「解雇に合理的な理由があった」として請求を棄却した。名古屋高裁が今年5月、訴訟手続きに違法な点があったとして、請求を棄却した一審名古屋地裁の判決を取り消し、地裁に審理を差し戻していた。
高木博巳裁判官は判決理由で「会社の継続的な指導と段階的な処分にもかかわらず、女性は自己の主張に固執して指示された業務をかたくなに拒み続けた。人間関係を原因とした異動も繰り返していた」と指摘。「解雇は社会通念上相当である」と結論付けた。
判決によると、同社は2017年3月「協調性を欠いている」などとして女性を解雇。女性は理不尽な業務を課され、上司からは暴言を吐かれたと主張し、19年3月、弁護士を立てず本人訴訟で提訴した。
二審判決は、一審では女性が同社側の主張を記した準備書面を受け取ってから3日ほどで、地裁が弁論終結を宣言したため、女性が反論の準備をできなかったと指摘。「女性の正当に訴訟する権利を害したと言わざるを得ず、訴訟手続きに法律違反がある」として、審理を差し戻していた。
女性は「不当解雇だと思っており、控訴する」と話した。
(共同通信社)
2021年度に支給される公的年金額は現在の水準で据え置かれる公算が大きいことが20日、分かった。政府関係者が明らかにした。年金額は物価や賃金の変動に合わせて毎年度改定される。20年の物価は小幅に上昇する見通しだが、賃金の指標は横ばいの見込み。この場合、改定ルールに基づき据え置きとなる。物価が上昇するため、実質的な価値は目減りする。
据え置きだと、21年4月分(受け取りは6月)の年金額は、国民年金は40年間保険料を納め続けた場合、月6万5141円。会社員らが加入する厚生年金は、平均的な給与で40年間勤めた夫と専業主婦の妻という世帯で月22万724円。
21年度の年金改定額は、20年の物価の変動や過去3年間の賃金の動向を勘案して決まる。20日に総務省が発表した今年1~10月の全国消費者物価指数(生鮮食品を含む)を踏まえると、政府関係者は、物価は20年全体で小幅なプラスになるとみている。
また指標となる17~19年度3年間の賃金の変動率は、ゼロもしくは微増になる見込み。物価の伸びが賃金の伸びを上回る場合は、年金額の改定には賃金の変動率を用いる仕組みだ。
公的年金には、年金財政を長期的に維持するため賃金と物価の伸びより年金額を低く抑える「マクロ経済スライド」という仕組みがある。賃金の変動率が微増の場合はこの仕組みが適用されて改定率はゼロになる。
21年度の正式な年金額は来年1月下旬、厚生労働省が発表する。11~12月の物価が大幅に下落し、年間全体でマイナスになった場合は、年金額は減額となる可能性もある。
(共同通信社)
政府は19日、新型コロナウイルス感染拡大を受けた雇用調整助成金の特例措置について、年明け以降も1日当たりの上限額や助成率の水準を維持する方針を固めた。当初は来年1月からの段階的な縮小を予定していたが、11月に入って国内の1日当たりの感染者が過去最多を更新。雇用情勢も回復の兆しが見通せないため、特例縮小を先送りすることにした。
政府は8月、9月末までだった特例を12月末まで延長し、来年1月からは段階的に縮小する方針を発表していた。維持する期限については来年1月末までとする案が政府内にあり、詰めの調整を進めている。
与野党や労使団体が引き上げたままの水準を維持するよう求める一方、政府内では「かえって休業を促すことになる」と段階的な縮小を主張する意見もあった。政府対応が焦点となっていた。
助成金は休業を余儀なくされた企業が従業員に休業手当を支払う際、国が費用を助成する。政府は特例として、日額の上限を約8300円から1万5千円に引き上げた。助成率も中小企業で3分の2から最大全額、大企業では2分の1を最大4分の3に大幅拡充していた。
特例に伴う支給決定額は10月下旬に2兆円を超えた。厚生労働省のサンプル調査によると、制度利用は打撃を受けた業種が中心で、支給額は、製造業や理美容などの生活関連サービス業・娯楽業で多かった。
(共同通信社)
政府は18日、規制改革推進会議の作業部会を開き、新型コロナウイルスを受けて企業などで浸透が進むテレワークを妨げかねない雇用労働分野の対面規制などに関して議論した。経団連の要望に対し、厚生労働省は原則対面を求める医師面談をオンラインでも可能にするほか、健康保険手続きの押印撤廃など要件を緩和する方針を示した。
厚労省は会合で、経団連が求めていた労働分野での規制緩和要望の多くで、見直しに前向きな姿勢を示した。テレワーク推進に向けた新たなガイドライン策定作業も急いでおり、環境整備が進むことでテレワークの拡大に弾みがつきそうだ。
現行の健康保険法の関連法令では、被保険者に関する一部の届け出の際、事業主の押印を求めている。企業によっては1種類の届け出で月に千件以上の押印が必要とされ、担当者が出社を余儀なくされる要因となっていた。厚労省は会合で「年内に省令改正し、押印を不要にする」と回答した。
このほか、危険業務に携わる従業員に対して事業者が実施を義務付けられている「特別教育」のオンライン化についても議論され、厚労省は条件設定を分かりやすく示すことや受講方法の柔軟化を検討すると説明した。
(共同通信社)
来春卒業予定で就職を希望する大学生の10月1日時点の内定率は前年同期比7・0ポイント減の69・8%だったことが17日、文部科学、厚生労働両省の調査で分かった。1996年の調査開始以降、リーマン・ショック後の2009年(10年3月卒)の7・4ポイント減に次ぐ下落幅となった。この時期としては5年ぶりに70%を下回り、新型コロナウイルスの影響が鮮明になった。短大は13・5ポイント減、専修学校も14・9ポイント減といずれも過去最大の落ち込みとなった。
企業には採用人数を抑制したり、内定を取り消したりする動きが出ており、厚労省と文科省は大学生らの卒業から3年以内は新卒扱いで採用するよう企業に求めている。厚労省の担当者は「就職説明会が中止になるなど情報収集や相談の機会が減っており、支援に努めたい」としている。
大学生の内定率は全国の国公私立大62校の4770人を対象に電話や面接で調査した。文理別では、文系が68・7%(7・5ポイント減)で、理系の74・5%(4・8ポイント減)より落ち込みが目立った。
地域別では、北海道・東北が64・2%(10・3ポイント減)、中国・四国59・7%(10・4ポイント減)で10ポイント超の下落。その他の地域も、関東74・4%(6・1ポイント減)、中部67・9%(6・5ポイント減)、近畿71・5%(8・1ポイント減)、九州64・4%(2・5ポイント減)といずれもマイナスだった。
短大の内定率は27・1%、専修学校(専門課程)は45・5%だった。文科省は「資格試験や実習が遅れたほか、専門技能を多く学ぶため志望業種を変更しにくい面もある」と分析している。
厚労省は例年この時期に高校生の9月末時点の内定率も発表しているが、今年は春の一斉休校などで高校生の就職準備が遅れていることを考慮し、政府が採用選考の解禁を1カ月延期。10月16日開始のため、現時点で調査がまとまっていない。
(共同通信社)
連合が2021年春闘で、基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)の目標値を月給の2%程度とする要求を掲げる方針を固めたことが17日、関係者への取材で分かった。10月に公表した春闘方針のたたき台となる基本構想では、新型コロナウイルスの影響が見通せないとして数値を盛り込まなかったが、傘下の産業別労働組合から「明確な数字を掲げるべきだ」との意見が相次いでいた。
要求を「2%程度」とするのは6年連続。連合は不況下の春闘でも従来の水準を掲げることで、近年続いている賃上げの流れの維持を狙う。賃金の低い非正規労働者や中小企業で働く人たちの格差是正にもつながると判断した。
ただ、航空や旅行など業績が著しく悪化している業界では雇用維持にも不安を抱え、冬の一時金(ボーナス)を巡って苦戦する傘下労組は多い。来年1月ごろから本格化する春闘の先行きは不透明だ。
要求案は17日に開かれた三役会で示され、おおむね了承を得た。19日の中央執行委員会で承認され、12月1日の中央委員会で春闘方針が正式決定される見通し
連合関係者によると、要求案では厳しい経済環境でも賃上げを実現することで、感染症対策と経済成長の両立を目指すとした。雇用を維持し、定期昇給分の2%の確保を大前提とした上で、ベアを合わせて計4%程度を要求する。
(共同通信社)
経団連は16日、8月から10月にかけて実施した企業の本社機能移転に関する調査結果を公表した。新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークの導入が広がる中、本社機能の全部または一部を東京から既に移転したり、移転を検討したりしているとの回答は計22・6%で、2015年の7・5%から上昇した。
回答の内訳は「移転を実施中」が3・9%、「検討中」が7・8%、「検討する可能性がある」が10・9%。移転検討の際に考慮する点を項目ごとに聞くと、「交通や通信などの事業環境」が74・2%に上り、「事業の維持・拡大につながる取引先やパートナーなど」が69・4%と続いた。
一方、検討しない企業に理由を複数回答で聞くと「現時点の拠点で機能・利便性に支障がない」が85・1%と最も高く、「取引先・官公庁などが東京に集中している」が27・7%だった。
(共同通信社)
厚生労働省は16日、テレワークを導入している企業のうち、59・1%が時間外労働を認めているとのアンケート結果を公表した。同省の指針では、長時間勤務を防ぐため深夜・休日労働と合わせて原則禁止と例示しているが、出社した人とのバランスなどの理由で多くが実施していた。
深夜労働は41・3%、休日労働は44・9%の企業がそれぞれ認めていた。同省は指針の見直し作業を進めており、例示は別の表現に改める方針。
調査結果によると、裁量労働制などを除いてテレワークを認めている企業のうち、時間外労働を認めているのは59・1%で、認めていないのは23・1%だった。
理由は「オフィス勤務者にも認めているから」が74・5%と最も多く、次いで「その時間帯でないと行えない業務がある」が25・6%で続いた。
従業員も残業規制には否定的で、時間外労働を「可能であってほしい」「どちらかといえば可能であってほしい」が計54・3%。「原則禁止にしてほしい」「どちらかといえば原則禁止してほしい」は計19・6%にとどまった。
調査は8~10月に実施。企業3788社とその従業員4184人から回答があった。
(共同通信社)
厚生労働省が13日発表した毎月勤労統計の2020年夏季賞与の集計結果によると、1人当たりの平均賞与(従業員5人以上の事業所)は、昨夏に比べて0・5%増の38万3431円で、2年ぶりのプラスとなった。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた飲食サービス業で減った一方、人手不足が深刻な医療・福祉などで上昇した。
支給した事業所の割合が昨夏は67・9%だったが、今夏は65・3%に減った。担当者は「昨夏に平均額より低い賞与を支給していた事業所の多くが、今夏は支払わなかった。結果として平均額が上がった」と分析する。
産業別では、緊急事態宣言による自粛要請の打撃を受けた飲食サービスが11・8%減だった。運輸業・郵便業が7・7%減、製造業が4・6%減だった。
金融業・保険業は4・6%増、医療・福祉は3・1%増となり全体を押し上げた。
集計結果は、今月6日に毎月勤労統計(9月分)と一緒に公表する予定だったが、勤労統計に集計ミスがあり、賞与の公表は延期されていた。
(共同通信社)
国士舘大(東京)で同僚教員の研究不正を通報した元教授の男性2人が、大学側に「不当な通報」と判断され、違法な懲戒処分を受けたとして、処分無効を求めた訴訟の判決で、東京地裁は12日、元教授側の主張を認め、いずれの処分も無効とした。
判決によると、元教授らは2017年、教員が既に他の学術誌などに発表している論文を「二重投稿している」と大学内の担当機関に通報した。提出した書面に「本人が(不正を)認めた」などと記載したが、大学側は「教員が不正を認めた事実はなく、虚偽の報告をした」とし、2人を戒告処分とした。
判決で伊藤由紀子裁判長は「既に出版された論文と本質的に同じ内容の原稿を、オリジナルとして少なくとも3本発表した」と指摘し、二重投稿が疑われる行為があったと認定。元教授らの提出書面の内容は真実であった可能性が高く、処分は違法だと結論付けた。
(共同通信社)
育児休業の在り方について議論している労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の分科会が12日開かれ、厚労省は、現在は原則子ども1人につき1回だけとなっている育休を、2回に分けて取れるようにする案を示した。夫婦が交互に休めるようにするのが狙いで、妻の出産直後に夫が休みやすくする「男性版産休制度」の創設と合わせ、男性が育児しやすい環境を整備する。
今後詳細を詰めて年末にまとめる報告に内容が盛り込まれる見通し。
現行制度では、夫が出産後8週間までに取った場合に限って2回目を取得できる。今回厚労省が示した案では、これとは別に子どもが2歳になるまでは、夫婦がそれぞれ分割して取得できるようにする。休みを取り合うことで夫の育児時間を確保できるほか、妻の職場復帰の負担を減らす効果も見込まれる。分割した場合、1回の休みは数カ月程度を想定している。
一方、男性版産休制度については、女性の産休と同様に出産後8週間以内に、計4週間分を分割して休めるようにする考えを示したが、期間中の就業や申請期限を巡って異論が噴出。企業による従業員への制度周知の義務付けも、罰則への警戒や事務手続きの煩雑さから経営側委員が反発し意見はまとまらなかった。
(共同通信社)
政府は、企業が従業員に支払う休業手当の一部を国が補填する「雇用調整助成金」の上限を引き上げた特例措置を来年1月以降も継続する。2020年度第3次補正予算案に必要な財源を盛り込む方針。新型コロナウイルス感染拡大による雇用への影響を考慮した特例措置の期限は12月末までだったが、収束がなかなか見通せない中、支援の全面的な縮小は時期尚早と判断した。
ただ、引き上げた助成率や上限額をそのまま維持するのか、段階的に引き下げるのかについては政府・与党内で意見が分かれている。直近の雇用情勢も踏まえ、11月中に結論を出す。
助成金は休業を余儀なくされた企業に対し、国が休業手当に要した費用を支援する仕組み。感染拡大を受け、政府は特例措置として日額上限をそれまでの約8300円から1万5千円に引き上げた。助成率も中小企業で3分の2を最大全額、大企業では2分の1を最大4分の3に大幅拡充していた。
当初、手続きが煩雑で申請が低迷していたが、簡素化が進み利用が急増。特例に伴う支給決定額は、10月末時点で2兆円を超えた。
厚生労働省は8月、9月末だった特例措置の期限を年末までに延長するとともに、来年1月からは特例を段階的に縮小する方針を発表した。田村憲久厚労相は11月4日の会見で「段階的に通常制度に戻していく方針は変わっていない」と強調したが、与野党からは年度末までの全面維持を求める声が相次いでいる。
(共同通信社)
厚生労働省は9日、国民年金や厚生年金に上乗せして運用する企業年金を巡り、将来受け取りが可能な年金額が運用実績で変わる「確定拠出年金」の掛け金の上限を月2万7500円から5万5千円に引き上げる方針を固めた。企業が年金額を保証する「確定給付年金」と併用する場合が対象となる。併用者は400万人おり、企業の9割は掛け金を増やせる見込みだ。
運用できるお金を増やし、会社員の老後に向けた資産形成を支援する狙いがある。与党税制調査会で議論し、2022年度以降の導入を目指す。
現状では、企業が確定拠出型だけを実施している場合の掛け金の上限は月5万5千円と定められている。一方、確定給付型と併用している場合は、拠出型に関する上限が半額の2万7500円に抑えられている。
しかし実際は、確定給付型の加入者1人当たり掛け金の平均水準は、約1万3千円にとどまっているという。このため確定拠出型と合計しても5万5千円には達していないケースが多く、併用していない場合と比べ不公平だと指摘されていた。
今回の方針では、確定給付型と併用の場合でも、合計で5万5千円までなら、確定拠出型の分の上限が2万7500円を超えることを認める。
すでに合計で5万5千円を超えている一部の企業に関しては、加入者への不利益な変更にならないよう、当面は上限超えを容認する。
(共同通信社)
田村憲久厚生労働相は6日の参院予算委員会で、雇用調整助成金に関し、事業を縮小した企業が人材を必要としている他社に従業員を出向させた場合について「(助成率アップなどを)検討しないといけない」と述べ、助成を拡充する方向で調整していることを明らかにした。公明党の石川博崇氏への答弁。
助成金は休業手当を企業が従業員に支払う場合、国が一定割合を給付する仕組み。新型コロナウイルス対策の特例として助成額の日額上限を約8300円から1万5千円に引き上げた。助成率は中小が3分の2を最大10分の10に、大企業は2分の1から最大4分の3に拡充した。
現在は一定の条件を満たせば出向でも助成金を活用できるが、上限額や助成率では特例が適用されていない。出向に関する助成を拡充することで柔軟な労働移動につながる効果が期待できる。年明けからの適用を視野に入れる。
厚労省は失業者が急増するなどしない限り、年明けから休業者への特例を段階的に縮小する方針を示している。来年1月以降、助成率を最大10分の9に引き下げる案などが検討されているという。
(共同通信社)
厚生労働省は3日までに、国民年金保険料の支払いにICカード(電子マネー)やスマートフォンのQRコード決済を使えるようにする検討を始めた。現在は現金以外に口座振替やクレジットカード払いなども可能だが、若い世代を中心に普及する支払い方法を追加し、納付率を上げる狙い。2021年度以降の導入を目指す。
国民年金は国内に住む20歳以上60歳未満の全員に加入が義務付けられている。19年度の国民年金保険料の納付率は8年連続で増加し、69・3%。年齢層別では55~59歳の77・7%に対し、25~29歳は57・1%と、若いほど低い傾向にある。
保険料の徴収を担う日本年金機構は、納付率について「24年度までに70%台前半にする」との目標を掲げており、徴収の徹底が課題だ。
厚労省は多くの若者が利用するQRコード決済の導入に向け、事業者と調整を進めており、担当者は「支払いのチャンネルを増やすことは、納付率アップと、利便性の向上につながる」と話す。
(共同通信社)
横浜市の相鉄ホールディングス(HD)から相鉄バスに出向していたバス運転手らが、相鉄バスへの転籍を拒否したことに伴い、HD側から不当な措置を受けたとして、損害賠償などを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は運転手らの上告を退ける決定をした。10月29日付。請求を棄却した一、二審判決が確定した。
一、二審判決によると、相鉄HDは2014年、コスト削減のため、運転手らに相鉄バスへの転籍を提案した。拒否すると、出向を解除し清掃などの業務を命じた。
運転手側は定年までの出向が約束されていたと主張したが、一審横浜地裁は18年4月の判決で「労使協約に出向継続の記載はない」として請求を棄却。出向解除の無効確認も退けた。二審東京高裁も支持した。
(共同通信社)
厚生労働省が30日発表した就労条件総合調査によると、企業で働く人が2019年に取った年次有給休暇(年休)の平均日数は前年比0・7日増の1人当たり10・1日と過去最多を更新した。付与された日数に対する平均取得率も3・9ポイント増の56・3%と過去最高となった。昨年4月、改正労働基準法の施行で始まった取得の義務付けが後押しした。
ただ、政府は20年までに平均取得率を70%にする目標を掲げているが、達成は厳しい状況だ。同省の担当者は「働き方改革の相談などを通じて、企業に取得を呼びかけたい」としている。
規模別では、会社の規模が大きいほど取得日数は多い傾向にあった。従業員千人以上の企業では11・9日だったが、30~99人の企業は8・7日と約3日少ない。年休を除いた休日の総数でも120・1日と109・6日で10日以上の差があり、働き方改革が進む大企業と人手不足に悩む中小企業の待遇差が表れた格好だ。
また、仕事が終わってから次の仕事が始まるまでに一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル制度」を導入済みの企業は前年比0・5ポイント増の4・2%で、導入を予定もしくは検討していると答えた企業は15・9%にとどまった。
調査は、従業員30人以上の民間企業を対象に実施。4191社から回答を得て集計した。
(共同通信社)
政府は29日、就職活動日程に関する関係省庁連絡会議を開き、2023年に卒業する学生の就活ルールについて、広報活動を3月以降、採用選考活動を6月以降、内定を10月以降とする現行日程を維持することを決めた。学生の混乱や中小企業の負担増を避ける狙いで、24年卒業予定の学生に関しても現行の日程を維持する方向を確認した。
新型コロナウイルスによる経済活動の停滞で、企業業績への影響が顕著になりつつある。政府は新卒採用の極端な手控えによる「就職氷河期世代」を生まないよう、必要に応じて企業側に要請していく方針だ。
経団連に代わって政府がルール設定するのは今年で3年目となる。
経団連と大学でつくる協議会などは、現在主流である「新卒一括採用」に加え、事前に職務内容を明確に定める「ジョブ型雇用」を念頭に置いた採用を含めて、学生が多様な働き方を選べる採用形態に移行することを求めている。25年卒以降の採用ルールについては、こうした議論や今後の経済情勢などを見極めた上で検討するとした。
(共同通信社)
厚生労働省は28日、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の医療保険部会を開き、育児休業を取得する際に社会保険料が免除される要件を見直す考えを示した。月末1日の取得で1カ月分の支払いを免除される「抜け穴」があり、部会の出席者から「公平性の観点から見直しが必要だ」との意見が相次いだ。
厚労省は年末までに見直しの詳細を決める方針。月末に縛られない柔軟な取得が促され、男性の育休取得が進む効果も期待する。
育休を取得すると、健康保険法に基づき、健康保険や厚生年金などの社会保険料が免除される。企業と本人負担分の双方が対象のため、企業側の負担軽減にもつながる。2018年度の免除は、大企業中心の健保組合と中小の全国健康保険協会(協会けんぽ)の合計で約1千億円だった。
育休中は休業前賃金の67%の給付金が払われる。さらに社会保険料を免除し、手取りが実質的に休業前の8割となるよう制度が作られている。
現行は、例えば10月初旬に2週間の育休を取得しても社会保険料免除にならないが、10月31日だけ取得した場合、10月1カ月分が免除される。厚労省によると、月単位で保険料を集め、月末時点の被保険者の状況を見て判断するため、こうした運用になるという。
厚労省は労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会で男性の育休取得促進策を議論している。男性の取得は1カ月未満が81%に上る。月末を含まなくても手取り増につながる社会保険料が免除される方向となれば、短期の取得が多い男性でも、育休に前向きな人が増える可能性がある。
(共同通信社)
定年後再雇用された名古屋自動車学校の元社員の男性2人が、同じ仕事なのに賃金を不当に減額されたとして、同校に定年時の賃金との差額を支払うよう求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は28日、「定年時の額の60%を下回る部分は違法」とし、退職した65歳までの、この部分に当たる計約625万円の賠償を命じた。
井上泰人裁判長は判決理由で「業務内容や責任の程度に違いがないのに、賃金総額が定年時の60%前後となり、若年の正職員の額も下回った。労働者の生活保障の観点からも看過しがたい水準だ」と指摘した。
その上で「基本給を定年時の60%とし、これを下回る基本給や賞与などの減額分は、無期雇用者と有期雇用者との差別を禁じた労働契約法に反する」と結論付けた。
判決によると、2人は教習指導員として2013~14年に60歳を迎え定年後、主任の役職が外れたほかは職務内容が同じまま有期雇用の嘱託職員として勤務した。
学校は「責任者が不在でコメントできない」としている。
(共同通信社)
愛知県農業総合試験場(同県長久手市)の男性職員=当時(49)=が熱中症で死亡したのは、県が職場の安全に配慮する義務を怠ったためとして、男性の母親が県に約7500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は26日、「熱中症の発症は予見できなかった」として請求を棄却した。
判決によると、男性は試験場でキクの研究などに従事。2015年8月、キクの水やりを終えて帰宅した後に虚血性心疾患の疑いで死亡した。地方公務員災害補償基金愛知県支部は17年5月、公務災害と認定した。
井上泰人裁判長は判決理由で「死亡当日は気温が29~32度の環境下で、肉体的負荷が少なくない業務に従事しており、作業と死亡との因果関係は認められる」と指摘。一方で「試験場では熱中症予防に関し、具体的に労働衛生教育をしていた」などとして、県の安全配慮義務違反はなかったと結論付けた。
愛知県の大村秀章知事は「裁判所の判決で、そのように受け止めている」とのコメントを出した。
(共同通信社)
中京大(名古屋市)の総合政策学部長だった羅一慶元教授(53)が不当に懲戒解雇されたとして、大学を運営する学校法人梅村学園に地位確認などを求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は26日、「処分は解雇権の乱用」と判断して解雇を無効とし、未払い賃金約5300万円の支払いを命じた。慰謝料の請求は棄却した。
判決によると、学園は、羅氏が13年8月から1年間の韓国・延世大での在外研究期間中、半年間無断でハワイ大に滞在したほか、学生の個人情報が入ったパソコンを紛失したり入学試験を欠勤したりしたとして、16年7月に解雇した。
井上泰人裁判長は判決理由で「ハワイ大での研究活動については計画の変更手続きを怠り、学園の規律違反とは言えるが、研究費や給与を不正に取得したとは評価できない」と指摘。
パソコンの紛失は懲戒理由に該当せず、入試日の欠勤も業務に著しい支障が生じていないとして、「原告は何らかの懲戒を受ける立場にあったが、解雇されるほど深刻なものとは言えない」と結論付けた。
羅氏は「4年以上研究と教育から離れており、早く大学に戻りたい。社会にとっても有意義な判決だと感じている」、梅村学園は「判決文が届いておらず、コメントは差し控える」とした。
(共同通信社)
政府が23日に開く新型コロナウイルス感染症対策分科会で、年末年始の休暇の延長を提言することが分かった。来年1月4日の月曜日を仕事始めとする企業が多いとみられ、帰省や旅行、初詣などによる人出増を分散するため、11日の成人の日まで休みを延ばすよう働き掛ける。
年末年始は帰省による高齢者との接触機会や、団体での飲食が増えることが予想される。インフルエンザの同時流行も懸念されており、23日の分科会では年末年始の過ごし方に関する注意点を取りまとめ、国民に広く呼び掛ける見通しだ。
集団感染の抑制への取り組みや、イベント制限の緩和に向けた実証実験などについても議論する。プロ野球の試合で観客の3密(密閉、密集、密接)回避などを促す技術の実証実験を横浜スタジアムに加えて東京ドームでも実施する予定だ。
新型コロナ対策を厚生労働省に助言する専門家組織は22日、全国の新たな感染者数はほぼ横ばいだった状況から微増傾向になってきているとの分析結果をまとめており、分科会でも改めて感染状況を分析する。感染が首都圏から地方に広がっていることが全国の感染者が減らない要因となっており、対応を協議する。
分科会はお盆休みの際にも提言を出し、大人数での会食などを回避するほか、感染リスクが高い場所に行った人は帰省を慎重に判断するよう求めていた。
(共同通信社)
栃木県日光市などに路線を持つ東武バス日光に勤務する男性運転手が、乗客への対応を巡って退職を迫られたなどとして、会社や上司に損害賠償を求めた訴訟の判決で、宇都宮地裁は21日、慰謝料など約66万円の支払いを命じた。
判決理由で国原徳太郎裁判官は、上司らが男性運転手に「もう二度とバスには乗せない」などと発言したことは、違法な退職勧奨に当たると判断。「自由な意思決定を促す行為として許される範囲を逸脱している」と指摘した。
判決によると、男性は日光市内の路線バスの運転手として勤務していた19年7月に乗客の不正乗車を指摘した際の対応を上司らに「不適切な接客態度だった」などと注意された上で退職を迫られ、うつ状態と診断されていた。
(共同通信社)
2009年に会社員の男性=当時(49)=が自殺したのは、仕事上の激しいストレスでうつ病になったのが原因だとして、妻が遺族補償を支給しなかった三田労働基準監督署の処分取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は21日、請求を棄却した一審東京地裁判決を覆し、労災と認め、処分を取り消した。遺族側が逆転勝訴した。
判決によると、男性はNEC(東京)に正社員として勤務。芸術文化支援活動を長年担当していたが、考え方の違いから上司とトラブルになり、09年1月ごろ、うつ病を発症した。4月に未経験のIT関連業務の担当となり、達成困難なノルマを課されたことで、5月ごろ再発し、7月に自殺した。
川神裕裁判長は「変更後の業務内容と男性の能力・経験との間に大きなギャップがあり、容易には対応できなかった」と指摘。うつ病の発症・悪化は、業務上の心理的負荷が原因だと認めた。
(共同通信社)
厚生労働省は20日、2020年春卒業の大学生や高校生への採用内定取り消しが、9月末時点で79事業所、201人だったと発表した。8月末より27人増え、19年春卒を対象とした調査の6倍弱に拡大。多くが新型コロナウイルス感染拡大に伴う取り消しとみられ、コロナ禍の雇用への影響が改めて裏付けられた。
厚労省が全国のハローワークを通じて取りまとめた。内定取り消しは解雇に相当し、客観的で合理的な理由がないと無効になる。就職活動を支援する窓口「新卒応援ハローワーク」で相談に応じてもらえる。
厚労省によると、201人の内訳は高校生42人、大学生159人だった。業種別に見ると卸売・小売業が65人で最多。生活関連サービス・娯楽業42人、宿泊・飲食サービス業20人と続いた。
コロナ禍の影響などにより入社時期が遅れた学生は8月末から81人増え、1291人になった。
(共同通信社)
厚生労働省は19日、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会を開き、与党の一部で浮上していた男性育休の取得義務付けについて議論した。反対意見が相次ぐ一方、賛成意見はなく、導入が見送られる公算が大きくなった。
会合では経営者側委員が「仕事と家庭の両立支援は、一律に義務化すべきものではない」と改めて主張。有給休暇や社内休暇制度を含めれば、約3~6割の男性が妻の出産後に休みを取っているとして、現行制度の活用と周知に力を入れるべきだと強調した。
労働者側委員からは、育休は義務として押し付けるものではなく、労働者の権利だとして「現在も労働者が希望すれば企業は休業を認めないといけない。周知を強めれば希望しやすくなる」との意見が出た。
会合では出産直後に夫が育児休業を取りやすくする「男性版産休」の創設についても議論した。
(共同通信社)
顧客が従業員に威圧的な言動や理不尽な要求を突きつける「カスタマーハラスメント」(カスハラ)を巡り、厚生労働省は18日、来年度に企業向けの対応マニュアルを策定する方針を決めた。従業員が精神疾患を発症するなど深刻な被害も起きており、国が標準的な考え方や現場対応策を示す必要があると判断した。来年度概算要求に1700万円を計上し、対処方法や被害者ケアも周知する。
カスハラは客や取引先が加える暴言や長時間の抗議、土下座など過剰な要求といった迷惑行為。客としての立場を利用するため、同じ職場の人間関係を念頭に置いたパワハラやセクハラのような対策は立てにくく、苦情との線引きも難しい。
今年6月に施行された女性活躍・ハラスメント規制法の指針は、雇用主にカスハラのマニュアルの策定や研修を求めている。しかし中小企業を中心に「抽象的で分かりにくい」と、具体的な基準や対応方法を求める声が強かった。
労働政策研究・研修機構の調査によると「クレーム対応窓口を一元化」「会話の録音・録画」「非通知や公衆電話からの着信拒否」といった自衛策を取っている企業も多い。
マニュアルは、こうした企業や労働組合の取り組みを参考に作成。実際にあったカスハラ事例も収集し、接客での注意点や苦情処理の方法、従業員が被害を受けた場合の企業対応をまとめる予定だ。厚労省のホームページで公開するほか、パンフレットとして労働局や労組にも配布する。
(共同通信社)
厚生労働省は16日、障害者の就労支援強化に向けた中間報告を労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会に示した。新型コロナウイルス感染症が拡大する中、働く障害者がテレワークをしやすい環境づくりの重要性を指摘した。今後は労使や障害当事者らを交えて詳細を検討する。
働く障害者の特性によって通勤に困難さを感じていたり、対人関係が苦手だったりする人もいる。そうした課題を解決する方法としてテレワークに注目が集まる。
ただ障害者が働く現場では、通勤した上で対面の支援を基本とするケースが少なくない。中間報告では在宅就労でのテレワークを想定した支援策を検討することが必要だと強調した。
厚労省は昨年7月、幹部職員らで構成するプロジェクトチームを設置。障害者就労の課題や強化策を議論し当事者団体の聞き取りなどをしてきた。
(共同通信社)
来春卒業予定で就職を希望する高校生に対する企業の採用選考が16日、全国で解禁された。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休校で就活準備に支障が出たことを踏まえ、政府は解禁を当初予定より1カ月ずらしていた。業種によっては求人数が大きく減少、就活には厳しさも予想される。
高校生は学校推薦で企業に応募するのが一般的で、採用の早期化を防ぐため、政府が経済団体や全国高等学校長協会と協議の上、選考日程を統一している。
今年は当初、出願書類の提出を9月5日、選考を同16日に解禁することにしていたが、それぞれ1カ月ずらした。多くの都道府県では最初に受ける企業が1人1社に限定され、半月~1カ月半後から複数企業に応募できる。
高校生の求人数はコロナ禍で状況が悪化している。厚生労働省によると、7月末時点の高校新卒者への求人数は前年同期比24・3%減の約33万6千人。宿泊業・飲食サービス業や生活関連サービス業・娯楽業などで落ち込みが目立っている。
(共同通信社)
日本郵便(東京)の契約社員に各種手当や休暇が付与されないのは、正社員との不合理な格差を禁じた法律に反するかどうかが争われた3件の訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は15日、扶養手当や年末年始勤務手当などを支払わないのは不合理だと判断した。
契約社員ら計12人が2014年、正社員と休暇や手当で格差があるのは旧労働契約法20条(現パートタイム・有期雇用労働法8条)に反するとして東京、大阪、佐賀の3地裁に提訴。高裁段階の結論が分かれていた。
今月13日に賞与を求めた大学の元アルバイト職員と退職金を求めた駅売店の元契約社員が最高裁で敗訴しており、非正規の待遇格差を巡る司法判断が相次いで示された。
12人は東京、千葉、愛知、大阪、兵庫、広島、佐賀の郵便局で集配業務などに従事。うち2人は既に退職した。
(共同通信社)
菅義偉首相は15日、政権発足後初めてとなる全世代型社会保障検討会議で「(妻が)出産直後の時期に、男性が育児休業を取得しやすくする制度の導入を図る」と表明した。不妊治療の保険適用拡大は、年末に工程を明らかにするとした。
この日は、少子化対策がテーマ。年末にまとめる最終報告に向け、政府、与党内の議論を加速させる。痛みを求める75歳以上の医療費の窓口負担引き上げが焦点になっており、子育て支援策を充実させ若い世代へのアピールとする狙いだ。
男性の育休取得率は上昇傾向にあるものの昨年度で7%余り。女性の83%に比べると低調だ。
会議では、男性の育休取得促進策として、夫が妻の出産直後に休みやすくする「男性版産休制度」の創設も協議。厚生労働省で、産後うつや体調不良で妻の負担が大きくなる出産直後に、夫が育休を取りやすくなる具体的な制度づくりに着手している。現在は努力義務にとどまっている従業員への育休制度の説明を企業に義務付けることも検討している。来年の通常国会に育児・介護休業法などの改正案を提出する構えだ。
不妊治療の保険適用拡大までの間は、現行の助成制度を大幅に拡充する。不妊治療は現在、公的医療保険の適用となるのは一部に限られる。厚労省は2021年度から体外受精と顕微授精を対象とした助成制度を拡充し、22年度の診療報酬改定に合わせて保険適用の対象となる治療を拡大する考えだ。この日の議論では、出席した有識者から22年度よりも前倒しして実施するよう求める意見も出た。
そのほか、菅首相が「終止符を打つ」としている待機児童問題の解消に向け、年末に新たに必要となる保育サービスの整備計画を定めるとした。
(共同通信社)
連合が15日、2021年春闘の基本構想を発表した。従業員の基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)の目標値は盛り込まなかった。新型コロナウイルスの影響で経済の見通しが立たない中、連合内でもベアを示すことに慎重論があり、議論がまとまらなかった。神津里季生会長は記者会見で「ベアを求めながら、これから数字を決めていく。賃上げの流れを継続していきたい」と強調した。
春闘方針のたたき台となる基本構想は15日の中央執行委員会で承認された。今後、11月の中央討論集会を経て、12月1日の中央委員会で春闘方針を正式決定する。
基本構想は雇用の確保が大前提と指摘。企業規模や雇用形態による格差を是正するため、企業内の最低賃金は時給1100円以上を必須目標とし、勤続17年(35歳相当)で時給1700円、月給28万500円を目指す昇給制度を要求するとの20年春闘で掲げた方針は引き続き堅持していく予定。
新型コロナ感染防止につながるテレワークに関しては、長時間労働の防止策や費用負担のルールを労使で協議することを求めた。非正規雇用で働く人たちの退職給付制度の整備も盛り込んだ。
神津会長は「新型コロナの問題が経済や雇用に重くのしかかり、影響を受けている職場もある。全体の底上げに取り組まなくてはならない」と訴えている。
20年春闘ではベアを5年連続の2%程度とし、定期昇給分を合わせた賃上げ率で4%程度の要求を掲げた。交渉が本格化した4月以降、新型コロナによる経済状況の悪化の影響を受け難航。連合の集計によると、ベアと定昇を合わせた賃上げ率は1・90%で、14年春闘以降で最低水準だった。
(共同通信社)
新型コロナウイルスの感染拡大によって業績が悪化し、企業が健康保険と介護保険の保険料支払いを猶予された額は、8月時点で計約1286億円に上ることが14日、厚生労働省の集計で分かった。緊急事態宣言が解除された6月以降も猶予額は減っておらず、経営状況が上向いていないことがうかがえる。
健康保険と介護保険の保険料は労使で負担する。政府は新型コロナ禍の特例として、収入が一定期間20%以上減った企業に対し、支払いを1年間猶予している。
3~8月の支払い分を猶予されたのは、大企業中心の健康保険組合で計235億9千万円(123組合)、中小企業の従業員が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)では1050億3千万円だった。
(共同通信社)
2013年に札幌市の病院で勤務していた男性看護師=当時(34)=が自殺したのは業務で吃音を治すよう指導され、試用期間を延長されたことなどが原因だとして、遺族が遺族補償不支給などとした札幌東労働基準監督署の処分取り消しを求めた訴訟の判決で、札幌地裁は14日、労災と認め、処分を取り消した。
武部知子裁判長は判決理由で、男性は試用期間の延長など心理的負荷がかかる出来事が重なり精神障害を発症したと認めた一方、病院側の指導は吃音の改善の強制や人格否定を伴うものとは言えず、通常の範囲内とした。
判決によると、男性は13年4月、同病院で3カ月の試用期間付きで勤務を始めたが、同年6月に病院側から試用期間の1カ月延長を告げられた。男性は適応障害を発症し、同年7月に自殺した。
遺族側は15年、補償給付などを請求したが、労基署は男性の精神障害の発症は、業務による心理的負荷が主な原因とは認められないとして、不支給処分とした。
(共同通信社)