ツマボシホソハマキは、ハマキガ科ハマキガ亜科ホソハマキガ族の種で、2022年に以下の論文で日本から記録しました(リンクを張っておきます)。
www.jstage.jst.go.jp/article/lepid/73/1/73_13/_article/-char/ja
この種は私が検討する以前にもたびたび採集例があったのですが、詳しく検討されないままでした。
↓例えば、コレのEupoecilia sp.です
www2.chiba-muse.or.jp/www/NATURAL/contents/1520748120937/simple/journalsp_10_5saito.pdf
そこで、斑紋や雌雄交尾器などを検討したところ、中国から記載されたEupoecilia ingens Sun & Li, 2014と同定するのが妥当だろうと判断し、報告しました。
この種は、まだ幼虫の食草がわかっていない(分布や近縁種の食草から、関東以西に自生する林縁に生育する木本植物かなと考えています)など、今後の検討が必要な蛾ですが、近似種と混同される可能性が高いため、まずは多くの人に認識してほしいです。
この種は翅の先に黒い点のあるブドウホソハマキやアカオビホソハマキに似た種…といった感じなのですが、これら3種にはそれぞれ個体変異もあるので、私の経験則でありますが、以下に各種の写真を載せ、それぞれの識別点を解説していこうと思います(正確な同定には、雌雄交尾器の検討が必要な場合があります)。
ブドウホソハマキ
アカオビホソハマキ
ツマボシホソハマキ
・前翅前縁(止まっているときに地面に接する側)の先端部【アカオビホソハマキとその他を識別する際に有用】
ブドウホソハマキ:不明瞭or薄い茶色の点が存在
アカオビホソハマキ:点は存在しない
ツマボシホソハマキ:明瞭な黒点が存在
・前翅中央の帯(中帯)【ブドウホソハマキとその他を識別する際に有用】
ブドウホソハマキ:前縁(止まっているときに地面に接する側)近くは幅広く、そこから後縁(止まっているときに上に近い側)にかけて狭まる、後縁に近い部分が消失することもある
アカオビホソハマキ:中央付近で曲がることはあるがブドウホソハマキのような狭まり方はしない
ツマボシホソハマキ:中央付近で曲がることはあるがブドウホソハマキのような狭まり方はしない
・前翅の地色【他の特徴以上に経験則です。参考程度にしてください】
ブドウホソハマキ:黄みがかった黄土色
アカオビホソハマキ:ブドウホソハマキに比べて暗い
ツマボシホソハマキ:3種中一番淡く、薄い色
これらがわかりやすいものとして挙げられるかなと思います。
今回はツマボシホソハマキとその近似種について解説しましたが、これは沖縄島より北のみに通用するもので、沖縄島以南のものには更なる問題点があります(現在検討と論文化を進めています)。
もしお手元にこれらに似た南西諸島産の個体がいましたら、ご連絡いただけると泣いて喜びます。
(2023. 7. 7 鈴木信也)