問1 化学品メーカにおけるデジタルトランスフォーメーションの推進に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。

(R01秋 ST 午後I 問1)

 A社は,ビューティケア用品やヘルスケア製品の製造・販売を行う化学品メーカである。5年前に,海外の子会社・関連会社を含めたA社グループ全体の業務の効率化及び品質の向上を目的として,シェアードサービスセンタをアジアの新興国に設立した。A社は,グループ各社の業務の異なる手順を標準化して,シェアードサービスセンタへの業務の移管を進めてきた。今般,A社輸出入業務が,シェアードサービスセンタへ移管された。


[A社輸出入業務の現状と課題]

 A社は,最近,アジア市場で売上げを伸ばしていることから,A社輸出入業務における作業量は大きく増えている。さらに,新興国の離職率は日本に比べて高く,業務ノウハウが定着しないことによって,入力ミスや書類の入力待ちの滞留など,A社輸出入業務の品質の低下が懸念されている。そこでA社は,入力ミスのない正確性と書類が滞留しない即時性を向上させるために,ITを活用して,A社輸出入業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することとした。

(1) A社輸出入業務の現状

 A社は,ITの活用によってA社輸出入業務の品質を向上させるに当たり,現状を把握することとした。A社輸出入業務のシステム関連図を,図1に示す。

 A社輸出入業務では,主に貿易システムが利用されている。関連するシステムである受注・購買システム及びインターネットバンキングを連携先として,日次でのデータ交換が行われている。受注・購買システムとのデータ交換は,前日に更新された契約情報を,貿易システムに夜間バッチ処理で取り込む方法で行われている。A社輸出入業務では,信用状による取引を行っている。インターネットバンキングとのデータ交換によって,信用状通知データのダウンロード作業と信用状発行依頼データのアップロード作業を,担当者が1日1回実施している。輸出業務においては,輸出先の信用状通知を確認した後に船積書類を発行することとしており,輸入業務においては,輸入先がA社の信用状通知を確認した後でないと船積書類を受け取ることができない。