問2 飲料メーカの合併に伴う物流業務の見直しに関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。

(H29秋 ST 午後I 問2)

 F社は,飲料メーカである。今回,健康飲料メーカのG社を買収して商品力を高め,物流業務を見直して物流コストを削減し,競争力を強化することにした。物流業務の見直しは,二段階で行う計画である。第一段階で物流業務及びシステムの統合を行い,第二段階で物流センタの見直しを行う。合併に伴い,F社単独に比べて,商品の種類は約2倍になり,出荷数量は約50%増加する。


[F社の概要]

 お茶,コーヒーなどの飲料を製造,販売している。製造工場は,東西と中部に,計3か所ある。販売,在庫管理,輸送・配送の業務と物流センタの運営は,自社で行っている。それぞれの業務は,自社開発の物流管理システムで管理している。


[G社の概要]

 健康飲料を中心に製造,販売している。製造工場は,東西に,計2か所ある。販売の業務は自社で行い,在庫管理,輸送・配送の業務と物流センタの運営は,物流会社に委託している。販売の業務は,ソフトウェアパッケージを導入して管理している。現在,G社は,委託先の物流会社に,商品の物流センタへの入荷予定情報と顧客への出荷情報を通知している。


[F社の物流センタの運用]

(1) 物流センタの配置と機能

 F社の物流センタには,エリアセンタ,地域センタ,拠点センタの3種類がある。全国を八つのエリアに分け,エリアごとにエリアセンタを設置している。エリアセンタでは,工場から輸送される全ての商品を在庫し,配下の地域センタが在庫する商品を補充している。地域センタは,エリアセンタの配下に複数箇所,設置されている。地域センタは一部の商品を在庫し,エリアセンタから到着する商品を仕分けして拠点センタへの輸送と顧客への配送を行っている。地域センタの在庫スペースには余裕がある。拠点センタは,地域センタの配下に複数箇所,設置されている。拠点センタは商品を在庫せずに,地域センタから到着した商品を仕分けして顧客へ配送している。

 エリアセンタでは,作業者数は時間帯ごとに決めているので,工場から到着するトラック数が多いと作業者が不足してしまうことがある。

顧客への配送サポート範囲が広い地域センタと拠点センタでは,一部の顧客への配送距離が長くなることがある。

(2) 物流管理システム

 物流管理システムは,物流センタにおける商品の在庫管理と,物流センタにおいて発生する入出庫作業,出荷準備作業及び積込み作業を管理している。また,それぞれの作業に掛かった実績時間の情報を蓄積している。

 顧客への配送の計画は,物流管理システムで作成している。顧客への配送を担当するドライバには,商品を積み込む物流センタへの入場予定時刻を連絡し,物流センタでの積込み待ち時間の短縮を図っている。入場予定時刻は,配送の計画による出発予定時刻と積込み作業時間を考慮して決定している。ここで,積込み作業時間の設定値は,物流管理システムの導入時から変更していない。

(3) 物流センタで扱う商品の区分

 商品は,出荷数量の実績に基づいたABC分析を行い,出荷数量が多い順にA,B,Cの3区分に分類している。エリアセンタと地域センタは,A,B,Cの分類に従って商品を在庫している。具体的には,エリアセンタは全区分の商品を在庫している。顧客から区分Aの商品が大量に注文されることを考慮して,区分Aの在庫量を増やしている。地域センタは区分Aの商品だけを在庫している。

(4) 商品の輸送・配送及びドライバのアンケート分析

 エリアセンタは入出荷伝票に従って区分B,区分Cの商品を取りそろえて,地域センタに輸送している。地域センタはトラックが到着次第,事前に取りそろえている区分Aの在庫商品を出庫し,エリアセンタから輸送された区分B,区分Cの商品を加え,取りそろえた上で,拠点センタへの輸送と顧客への配送を行っている。地域センタへのトラックの到着が遅れたときには,出発予定時刻までに急いで拠点センタや顧客ごとに仕分けして取りそろえたり,出発予定時刻を変更したりしている。

 F社は,ドライバを確保することが困難になっており,ドライバの作業改善のためにアンケートを実施したところ,次の項目の回答が多かった。

・工場からエリアセンタへの輸送では,到着するトラック数に対して作業者が不足している時間帯にトラックがエリアセンタに到着すると,エリアセンタの入場に2時間から4時間程度の入場待ち時間が発生することがある。地域センタと拠点センタでは,ドライバが指定された入場予定時刻に入場しても,前のトラックの積込み作業が終わっておらず,積込み作業までに2時間程度待たされることがある。

・地域センタ及び一部の拠点センタでは,顧客への配送距離が長いので拘束時間が長い。


[物流業務及びシステムの統合]

 G社の在庫管理,輸送・配送の業務は,F社で運用中の物流業務に統合する。G社の商品は,F社と同様に出荷数量の実績に基づいたABC分析を行い,3区分に分類する。その結果によって,F社の物流センタで在庫管理するとともに,F社のトラックでG社の工場からF社の物流センタへの輸送とG社の顧客への配送を行う。これらはF社の物流管理システムに統合して管理する。

 物流センタで使用するG社の商品の入出荷伝票は,G社の販売の業務システムには手を加えずに,ソフトウェアパッケージがもつ伝票作成機能を利用して現在のままの伝票を用いることを検討している。しかし,物流業務の担当者から,伝票の書式が異なることから,入出庫作業,出荷準備作業の混乱の懸念が示されている。今回の統合の担当者は,作業を円滑に行うためには伝票の書式を統一するだけでなく,ある情報をG社の販売の業務システムからF社の物流管理システムに取り込むことが必要であると考えている。

 F社とG社の顧客は,ほとんど同じである。しかし,同じ顧客でも,登録している届け先コードはそれぞれ異なっている。また,配送希望時間の契約は,F社の顧客は時間幅がある時間帯指定で,G社の顧客は時刻指定である。顧客への配送は,F社の配送とG社の配送を同じ便で行う共同配送とする。物流管理システムで作成する

配送の計画において,現在の顧客の登録情報では,同じ届け先でも同一と識別できない。配送ルート上の異なる届け先に同じ時刻指定がある場合には,それぞれ別のトラックを割り当てる必要があり,共同配送による物流コスト削減の効果を十分に得られない。


[物流センタの見直し]

 合併によって商品の種類が増加する。また,販売量の増加によって区分Aの商品の在庫量の増加が見込まれている。エリアセンタは全商品を在庫するスペースが不足するので,次のとおり在庫の見直しを行う。

・全商品を在庫するエリアセンタは全国に3か所とし,残りの5か所のエリアセンタは,区分Aと区分Bの全ての商品を在庫する。また,8か所の全てのエリアセンタは,これ以上の在庫が増えないようにする。

・地域センタの在庫スペースには余裕があるので,在庫する商品の種類を,区分Aの商品と,区分Bの商品から販売状況によって選んだ一部の商品とする。その結果,商品の種類が現在よりも増えるので,出荷準備作業の手順の変更を検討する。

 今回の見直しに合わせて,顧客から区分Aの商品が大量に注文された場合には,顧客を担当する地域センタに対し,工場から商品を直送する。

 地域センタと拠点センタの配送サポート範囲について,従来よりも配送距離が短くなるように見直して,ドライバのアンケート項目に対応する。


[ドライバの作業改善]

 G社の商品の輸送・配送が加わるので,エリアセンタ,地域センタへの輸送が増加する。そのために,エリアセンタ,地域センタでは輸送トラックが同時に入場することが多くなり,入場待ちの回数や時間が増加すると見込まれる。ドライバの入場待ち時間の短縮のために,トラックの入場予約システムを導入する。入場予約システムでは,1時間単位で入場予約枠をあらかじめ設け,事前にトラックの入場割当てを行う。

 一方,顧客への配送を担当する地域センタと拠点センタでは,入場予定時刻の精度の向上を行い,ドライバの積込み待ち時間の短縮を図る。