技術革新が教育と社会のあり様を大きく変えつつある今日、教育思想研究はいかにあるべきか。求められるのは、「教育の本質」の剔抉だろうか。AIやICT技術を従属させる万古不易の本質概念を見定めることができるならば、なるほど教育思想研究の意義は疑いえないだろう。だが、ユク・ホイに言わせれば、技術を単なる手段とみなすのは誤っている。西洋近代の宇宙論の下にあるゲシュテルとしての現代テクノロジーは、技術の主(使用者)であろうとするわたしたちを、むしろ根本的に規定する。重要なのは、技術的実践を前提とした別様の宇宙論の再発明であり、そのことを通じた「技術の複数化」である。
本コロキウムでは、ユク・ホイの「宇宙技芸」をアンブレラ・ワードとしつつ、〈技術としての教育の思想〉というアイデアを深めることを目的とする。教育とテクノロジーを対置するのではなく、むしろ教育をいったんは現代テクノロジーを含めた技術という存在者の次元においてとらえ直すこと、そして教育思想をそうした技術(的実践)に関する宇宙論の複数性においてとらえることは、 遠回りのようでいて、実のところ、技術革新の時代に相応しい教育とその思想の再発明に繋がるのではないか――この直観を確かめることが、本コロキウムの目指すところである。