2025/02/27
参加者:安藤正雄、平野吉信、西野加奈子、志手一哉、田澤周平、金岩哲郎、橋本真一、岩松準、片岡誠、曽根巨充、大越潤、勝田尚哉、唐詩、小峰紡花、神谷友里恵、高山空
書記:小島瑚子
日時:2月27日(土)15時00分〜
開催場所:芝浦工業大学 ゼミ室
対面開催
2015年、イギリス政府より“Digital Built Britain”、通称DBBが発行された。その内容は BIM Level 3 のストラテジーに関するものである。
特に5章 “The Vision” では DBB のビジョンについて、6章 “Action” ではそのためのアクションプログラム、7章 “Convergence of the Industrial Strategy ” では他産業や他スコープとの連携に関して記載されている。特に7章の “Construction 25” は刊行された年からおよそ15年後にあたる2025年のビジョンを示している。これまでのイギリスのレポートにはレイサムレポートやイーガンレポートがあり、それらはイギリスは多くの課題を抱えているという内容であった。しかし、2025年には特に建築デザインやエンジニアリングの分野において最先端におり、BIM Level 2は終わり世界を牽引していくというビジョンが示されている。
6章 “ a. Delivery Mechanisms ” 行動計画では事業の実現に関する普及メカニズムの内容である。“ b. Commercial ” は産業レベルでどのように事業化をどうするかという行動計画、“c. Technical ” はそのための技術開発をどのようにするか、“ d. Cultural ” では働き手のマインドや経営者の情報に対するマインド、あるいは教育の問題が存在しており変えていく必要があるということが記載されている。“ f. Domestic & International Growth ” と “ g. Sustaining the U.K. Leadership Position ”についてはそれぞれ、英国が国際市場において抜群の地位を占めるようになろうといったこと、すでに今トップに位置しているのでこのままトップを保つということが記載されている。
BIM Level 3 では in operation 建物施設が使用されているとき、in service サービス状態の建物のビッグデータの活用、次の発注にどう活かすかについて記載されている。加えて、建築のスコープだけでなく他分野と連携し共通のデータを活用するデータエコノミー、新しいビジネスを作ることが目標であるため、プロジェクトの調達に関連するプラットフォームの充実はあまり行われていないことに注意が必要である。
条文の “ We need concerted joint action from Government, Industry and Academia working in partnership” では政府と産業と学術の共同作業であることを示している。“ 3. Executive Summary” ではDBBが作られた理由、BIM Level 2 について、DBBのストラテジーにおいてテクノロジーを世界に売っていくことを掲げている。また、これから時代には“Open Data” がキーになり、政府の支援に利用される。プロジェクトに関する新しい契約枠組みについて、キーワードはパフォーマンスコントラクトである。e-briefingでは、性能発注で要求条件を作る必要があるが、電子化を行う過程で整合したモデルないしはそのモデルの一部を用いたビューの一貫性を目指していくことになっている。
4章は概要の説明や背景、展望について記載がある。4章においてもコンストラクション25を起点したDBBの成り立ち、続いてデジタルエコノミーという他の政策文書が提言され、21世紀のインフラストラクションに関するものが次の重大なチャレンジ項目であるとされている。ここでは少ないリソースでもっと大きな価値を実現するのはどうするべきか、マクシマイズアベラビリティ、リジューシングコスト&カーボンカーボンはホールライフコストなども対象となっている。インオペレーションやインサービス、インユースといった、運用に関する方向に重点がシフトしている。
次はこれを実現するニュースキルズ。これは蟹澤先生の研究分野にも関連してくるが、労働人口の技能者が少なくなるので、BIM Level 3はその大きな課題の解決として機能するこということで、既に既存の技能知識は必要なく、新しいスキルが必要であることが強調されている。残りの2つは、コンストラクション2025をそのまま踏襲して、英国の世界的な進捗とイギリスが先陣に立っているといったことが記載されている。
DfMAについて、ビジョンとしてはプロダクトのライブラリで全てが構成されるよう社会を目指しており、それは今の建設業を全く変えた新しいビジネスモデルの上に成立しているはずという見方である。加えて、特に使用段階においてはIoTが繰り返し出てきている。要するに設計段階ではなくパフォーマンスマネジメントというできた後に本当にちゃんとパフォームしているかどうかということ。様々な計測データや手段によって送られてくる大量のデータをIoTで分析、フィードバックによって施設のオペレーションや次の計画に生かしていくというところを随分重視している。
DfMAのプラットフォームのアプローチもストラテジーの一つであるが、もっとより広大なプラットフォームのことが書かれている。テクニカルソリューションとリジューシングコストのような、産業がことなってくるので、新しいビジネスモデルを作ることにつながる。これは既存の建設関係の組み合わせを変えることだけではなく、データやインフォメーションそのものに基づいたところから新しいビジネスが生まれてくることを強調している。レイサムレポートから何かと考えられてきてはいたが、それは実行を強制する力がなかったため難しかったが、DBBではテクノロジーを通じて透明でフィードバック可能な実行させるような変革をもたらすことが可能であることを主張している。
DBBというのは、拡大するとスマートシティでもあり、もっと大きなレベルの広がりを持っており、プラットフォームはその一部にすぎない。そのため、ヘルスケアやスマートエナジーグリッド、交通、その他水廃棄物等も関連している。BIM Level 3が可能にする新しいビジネスモデルは、共用中のパフォーマンスを計測するアビリティである。オープンデータデザインからオペレーション、マーケットセクターを横断的なオープンデータの標準が全体としてもたらす能力を実現していくとされている。フィードバックループは、建物を作ってから共用してからまた発注に戻ってくるようなループを閉じさせるようなことである。
図の一番下の三角が建設に当たる。一番上から順にストラテジー、スマートシティ、ポートフォリオマネジメント、デザインコンストラクションとなっている。デザインコンストラクションとはBIMを用いてプロジェクトを設計、生産することである。左上はオペレーショナルアクティビティ(運用段階)であり三角形の内訳は同じである。右上はパフォーマンスメジャメントであり建物より上のシティレベル、国レベルのパフォーマンスのマネジメントにあたる。この3つがLevel 2にもあったような絵柄で繋がれている。ビジネスドライバー、データ、エクスチェンジのノードが記載されている。
しかし、この3つのオペレーションとパフォーマンスマネジメントと建設が同じデータで結ばれ、さらにビルディングやトランスポーテーション、ウォーターパワーといった異なったセクターが同じデータでつながれる。加えてそこにはピープルがいるといような絵柄になっている。これの実現がBIM Level 2 である。このオペレーショナルアナリティクスっていうのは、これはビッグデータをどう解析するかみたいなようなふうに受け取っていただきたい。それからこのソフトランディング*というものは、スムーズな竣工引き渡しようなことである。
*11. Glossaryに略語等の記載あり
ここで私はニュービジネスに注目した。これからは今までの企業のビジネスの形態ではなく、ビジネス全体が変わってくる。このニュービジネスにはリモートモニタリングやテレメトリー&コントロールシステム、IoTが含まれる。
左図は、ビジネスチェンジの発生の誰かが主張した一般的な絵だと考えられる。New ways of doing things ではどういうふうに新しいやり方に世の中が変わっていくと、左下はデジタルエコノミー、右はニュービジネスモデル。これが相互にどう関係してるかというと新しい制度、新しい考え方、それから新しいビジネスの関係であり、新しいパフォーマンスの変数にあたる。右の図はBIM Level 3 を、この関係の上にどういう具体的に概念を示そうとしている。スマートコンストラクションがNew ways of doing things であり、Design / delivery / operateが存在している。この段階でスマートコンストラクションに変わり、デジタルエコノミーのようなBIMとIoT Cloud Serviceが関連してくる。そこに新しいビジネスが出てくる。Totexはトータルエキスペンディチャー、要するにライフサイクルコストようなものである。アウトカム、セマンティック、トランザクションについては要するに性能発注のことである。そのため、それが受注者にどう翻訳されるのかが肝になる。セマンティクスは意味論であり、意味論的転換が物にどう移っていくのかここを確保しないとそもそも成立しないということ。我々学問をやる者にとってはここが非常に大きな障壁、チャレンジになっていることは間違いない。
章の終わりにはトランスパレンシーや情報の交換について記載されており、それらの情報が透明であるというのは当然であるが、それと合わせて繰り返されるのはセキュリティの話とデータソースが確かなものであるかということである。これら3つのことを繰り返し、それをセキュアする必要があるということが示されてる。
ここはまずデリバリーメカニズムをどのように実現していくか、Level 3 A、3 B、3 C、3 Dが基本的な区別。
Level 3 A:まずレベル3に移行するときの初期の過程で、レベル2のモデルをもうちょっと良くする、改良する、あるいは付け加える程度でできるもの。
Level 3 B:新しい技術やシステムシステムもいろんなもののシステムを実現すること。
Level 3 C:ニュービジネスモデルを作る段階。
Level 3 D:イギリスに関する内容で、Capitalizing World Leadership、イギリスがトップにいることが保証できるかどうかということ。
デリバリーモデル、要するに普及 / 実現過程に関することである。特に主要なテクニカルとコマーシャルが重要になってくる。テクニカルについては下図が一番DBBのBIM Level 3内で一番重要になってくる。Level 3 AはLevel 2 Plus、Level 2を改善することである。
テクニカルについて具体的なこと記載されている。Level 2 PlusはIFCデータエクスチェンジ、つまり我々が想像しがちなプラットフォームの実現といったことで、モデルビュー、デフィニッションに関係している。それからdPoWはデジタルプランオフワークのことで、加えてe-briefingといったものがある。建築に限られた話になっていて、デリバリーにレベル3aのテクニカルはインフラストラクチャーIFCに関しては、ブレイクダウンストラクチャーとかも含めて建築のほうが先行してる。それからGeotechnicsIFC、Dictionaries and Ontologies。オントロジーは先ほどのセマンティックと似ている存在論であるが、私の理解では実体論といったようなのがいい。その名前が何を表してるかという話で、インスタンスだけでなくラベルにも影響する話である。Level 3CではIoTが登場する。そのためにニュービジネスに繋がってくることは多い。テレメトリとマルチプルM3Dモデル、ビューリングで、ハイセキュリティについて。(Level 3Dはどうすればイギリスが偉いままでいるかという話なので、インターナショナリズムではないですね。)
コマーシャルについてはA段階はE-briefingの段階のため、建築の実現の次のレベルがDBO(デザインビルドオペレーション)、C段階はパフォーマンスリポーティング、ペーパーレスコントラストになってくる。(こうしたのはあまりイメージができないけどね。)要するにここはインサービスパフォーマンスのメジャメントレポートとそのフィードバックに関すること。(イギリスが偉くなるためには、コマーシャルはインターナショナライゼーション、セマンティック、コントラクトが重要になってきて、ここは勝てると思っているのかな。)
ここにアクションズというのが本文と評価されているところがある(気になる方は読んでください)。オープンスタンダードの要点は、テクニカルな開発の観点は、日本は状況が違うけれども多少は参考になる部分という気もしている。しかしあんまり大したことは書いてないという気がしないでもない。
次のカルチュラルはニュースキルズは産業が変わって建設産業が変わってくるとQSは少ししか必要がないということ。そこの人材に変わって必要になるのが生産マネジメント、プロダクションマネジメント、ロジスティックス、サプライチェーンマネジメント、コラボラティブシステム、それからデータアナリシス、といった専門家である。極論を言うと在来のスキルというのはいらなくなるので、これをどうするかということがアクションプログラムの一つ重要なところになるカルチュラルである。
次に独立してリサーチリクエイメントが登場する。Level 3でどういう研究をすればいいかといったアカデミアの部分はUCL(ユニバーシティカレッジロンドン)である。ブロイド、マーモットワトソン、これが大学側の中心で、ランゴール学がサポートしていたケンブリッジのレベル2の時代の大学も、今度はUCLに移っている。必要なリサーチの分野の記載があります。こういうのが以前として研究所は重要になる。UCLのバートレットスクール、レディングも声をかけていて、ランゴーローラのところ、キングスコレッジ、デイビッド・モージのところのコンストラクションロー、それからクランフィールド、サルフォード、ユニバーシティブ・ノーサンブリア、アメリカはスタンフォードに声をかえている。さらにペンステートとオーストラリアはクイーンズランドに声をかけている。それからシンガポールは南洋とNUSと両方入っている。我が国(日本)は当然入っていない。中国はコメントを出している。
それからのコンストラクション2025的な話では、UKリーダーシップ、コンストラクション2025インフォメーションエコノミー、それからスマートシティーズという政府が主導している別のプロジェクトとDBBは一緒であることを確認している。これらはゲームチェンジャーで既存の産業を破壊するものである。だからLevel 3はディスラクティブテクノロジーでであると記載されている。
一番下の階層はスマートプロダクツ、スマートグリッド、スマートアセッツで、プロダクトあるいは人工物レベルのもの。スマートグリッドはサービスよりのもの。その上の階層はインターネットサービスを用いたコンストラクション、スマートマニファクチャーはDfMAのMのところ、スマートコンストラクション、スマートロジスティックス&トランスポート等になる。さらにその上にサービスがあり、ヘルストランスポート、エデュケーションが該当する。その上がスマートシティ、コンストラクション25、デジタルエコニミとなっており、これまでのものを統合している。Level 3のDBBはこれらの上にいるということ。そしてさらにその上に対等に結ばれたシティズンとスマートなガバメントがいる。DBBの裏方にヘルスケアとか金融サービス、ニュービジネスモデルがあり、他のセクターの情報もどんどん一緒になっていくということがIoTスマートコンストラクション、インターネットオブスマートコンストラクションである。そこに新しいやり方、ビジネスが生まれていくので、クロスセクターが重要になってくる。クロスセクターもキーワードの一つ。
そしてConstruction25とかSmartCityとか他の提言との共通性みたいなものが比較参照されているという表もある。レファレンスは私はそれほど新しく気を引かれるものはなかったが、用語の解説は何かの役には立つかもしれません。以上で、要点は説明ができたと思っている。ずいぶんイメージ違うでしょう。BIMレベル3って。
平野からの指摘: BIMが単なる技術ではなく、コラボレーションのためのツールである。レイサムレポートやイーガンレポートで指摘された課題が未解決であり、BIM Level 3を実現するためにはコラボレーションが鍵である。
安藤からのコメント: BIM Level 2においてコラボレーションは形式的には達成しているが、その質は向上しておらず、BIM導入の真価が発揮されていない。
平野からのコメント: パフォーマンスコントラクトの意義を、信頼関係を重視した長期的な取り組みとして理解している。パフォーマンスが高い施工者を優先するフレームワーク型契約が望ましい。
安藤からのコメント:実現の難しさが課題である。特にデータ透明性と公平な評価が重要になってくる。
平野からのコメント: 建物の維持管理において施工段階のデータが活用されていない点を問題視している。これが安全管理の欠如につながっていると考えている。
安藤からのコメント:データを有効活用できていない現状に同意する。その上でデジタルツインやIoTを活用するべきであると考えている。
4. イギリスの取り組みと日本の課題
安藤からのコメント: イギリスの政策ではBIM Level 2がISO化され、デジタルエクスチェンジが可能になったが、実質的なコラボレーションが進んでいない。
志手からのコメント: デジタルツインやAI技術の導入が今後の鍵である。日本では枠組みが不十分であり、異業種間のコラボレーションが進んでいない。
5. 今後の方向性
安藤と平野の見解: BIMをコラボレーションツールとして実践的に活用するには、オープンデータやデータ透明性を確保する必要がある。特に、プロジェクト全体でデータを一貫して活用できる仕組みづくりが急務である。