「2026年例会レパートリー」提案理由
2025年4月/神奈川演劇鑑賞団体連絡会議 幹事会
◆神奈川演鑑連の「例会レパートリー」づくり
神奈川演鑑連(ブロック)では、時代や社会状況を考慮しつつ、バラエティー豊かな心に残る珠玉の作品を「例会レパートリー」として各団体のサークルに提案。その合意に基づく民主的な手続きをもって決定し、ブロック統一例会として劇団・創造団体を迎えています。神奈川演鑑連幹事会として提案する「2026年例会レパートリー案」は以下の通りです。
「2026年例会レパートリー」提案理由
2025年4月/神奈川演劇鑑賞団体連絡会議 幹事会
◆神奈川演鑑連の「例会レパートリー」づくり
神奈川演鑑連(ブロック)では、時代や社会状況を考慮しつつ、バラエティー豊かな心に残る珠玉の作品を「例会レパートリー」として各団体のサークルに提案。その合意に基づく民主的な手続きをもって決定し、ブロック統一例会として劇団・創造団体を迎えています。神奈川演鑑連幹事会として提案する「2026年例会レパートリー案」は以下の通りです。
■2月例会は、劇団民藝『グレイクリスマス』です。
敗戦後、進駐軍に母屋を接収され、離れに追いやられた五條伯爵家の激動の5年間を主軸に、民主主義、人間の尊厳、そして日本国憲法の精神を問う。「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない…」と憲法が暗唱されるラストシーン。格差と分断が進む社会の中で、自由も権利もそして平和も決して当たり前ではないということを改めて感じさせる作品です。
■4月例会は、劇団俳優座『猫、獅子になる』です。
中学時代の演劇部での諍いが原因で不登校となり、50歳になってなお実家の自室にひきこもる長女・美夜子の世話をしてきた高齢の母。自身の体調不良から、次女の家族が実家に引っ越してくる話が浮上する。かつて美夜子が中学時代に舞台化しようとした宮沢賢治の「猫の事務所」を下敷きに、現代の8050問題を取り上げた、『雉はじめて鳴く』に続く家族と社会を描いた俳優座のヒューマンドラマです。
■6月例会は、秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場『老いらくの恋』です。
物語の舞台は佐賀県唐津市郊外。退院したての老農夫はやけに楽しそう。その様子に、久々に帰省した孫は「まさかじいちゃんに恋人?」。『遺産らぷそでぃ』『菜の花らぷそでぃ』等、農民作家・山下惣一氏と脚本家・高橋正圀氏のコンビによる、農家の苦悩を涙と笑いで描く農業シリーズの最新作です。低い食糧自給率や後継者不足など、日本の農が抱える課題に向き合いながら、私たちの未来と希望を探る作品です。
■8月例会は、俳優座劇場プロデュース『音楽劇 母さん』です。
「リンゴの唄」「ちいさい秋みつけた」など、誰もが一度は口ずさんだ歌を数多く遺したサトウハチロー。彼は、心に沁みる詩からは想像もつかないほど奔放に生きた。そして彼の詩に大きな影響を与えた母・春。母への愛情と確執はハチローの人生を翻弄する。珠玉の愛唱歌にオリジナルの曲を加え、ピアノとバイオリンの生演奏で贈る感動の舞台です。かつて例会に迎え好評を得た作品が、創造団体・俳優陣を一新して蘇ります。
■10月例会は、劇団東演『人民の敵』です。
ノルウェーの田舎町で発見された温泉。町長は成長の目玉として売り出すが、弟ストックマン博士は工場の廃液で温泉が汚染されていることを発見、兄に使用中止を進言する。しかし、経費のかかる温泉の引き直しは却下される。正義を信じて町民集会で事実を訴えるが、税負担の脅しに町民たちは「あやふやな噂を流す奴は、人民の敵だ!」と手のひらを返し…。損得で右往左往する町民の姿が、現代社会の矛盾に重なる作品です。
■12月例会は、無名塾『等伯』です。
戦国時代後半の1539年、石川県の七尾に生まれた絵師、長谷川等伯。強い者だけが生き残る下剋上の世の中に等伯も飲み込まれ、やがて自ら飛び込んでいく。当時の画壇を牛耳っていた狩野派との闘いに、人生の全てを注いだものの、息子の死によって、手放してしまったもの、見失ってしまった大切な何かに気付かされ…。私たちの人生にも、もうひとつ違った幸福の「ものさし」があることを考えさせる作品です。
2026年の例会レパートリー案として提案する作品には、どの作品にも様々な形で「家族」や、その関わりが描かれています。家族は、もっとも身近な小さなコミュニティーであり、同時に社会の縮図とも言えるのかも知れません。人間やその生き様をあたたかな眼差しで見つめつつ、「家族」というフィルターを通して見える現代社会の歪みや問題点を、ときに鮮烈に、ときに軽やかに描き出す作品が並びました。
昨年「築地小劇場開場100年」を迎え、次の100年を見据えて歩み始めた劇団・創造団体と共に、明るい未来を紡ぎ出し、例会作品を通して「共に考える」という文化を引き続き豊かに育んでいきたいとの思いを込めて、2026年の例会レパートリーを提案します。