劇団民藝
『泰山木の木の下で』
劇団民藝
『泰山木の木の下で』
第223回例会
2024年10月14日(月・祝)4時開演
藤沢市民会館大ホール
観劇後に寄せられた感想
作品の感想
★時代に翻弄されても生きてゆくという事はくじけてなんかいられない、したたかさに生きるハナ婆さんに憎めない可愛らしさ、でも私達も国の政策に流されて後の祭りにならない様に逃げの生き方でなく平和な世の中になる様に、しっかりと自分の考えを持って生きなければと思う「泰山木の木の下で」でした。(鬼だるま)
★さすが劇団民藝の公演でした。60年以上前から上演が重ねられてきた「泰山木の木の下で」でした。脚本も演出も出演者もその積み重ねの完成度を控えめに奥深く上演されて素晴らしかったです。この演劇を観ることが出来て本当に良かったと思いました。
日色ともゑさんのハナ婆さん、明るく前向きで、力強く、可愛らしくみんなに愛されていて、人々とのやり取りは明るく活気があるのに、ずっと哀しくて仕方なかった舞台でした。それは次々と出会う場面で、人の心の奥底まで“ピカ”の及ぼした悲惨さが突き付けられたからでした。そしてさらに健気に生きる姿がやりきれない思いにさせられました。
きしくも、今年の10月、ノーベル平和賞が日本被団協に送られました。世界に核兵器の悲惨さ、核兵器廃絶の必要性を長年にわたって訴え続けてきたことに対しての受賞です。まさにこの「泰山木の木の下で」もその一翼を担っていると思います。今、核兵器に対して危機的な状況になっていますが、街頭で核兵器廃絶の署名を訴えても、最近は署名に足をとめる人が少なくなりました。でも「泰山木の木の下で」を観た人はそうならと・・・。(サンシャイン)
私の好きな劇団民芸。日色ともゑさん主演の長年のファンです。日色さんが40代で娘役を演じていたスタインベック作「怒りのブドウ」のラストシーンは強く印象に残っています。
今回は、広島の原爆被爆者がテーマ。この演劇を見ていて、大学時代お世話になった方の家族を思い出しました。この方は、長崎で被爆。爆心地の近くの山崎小学校に通っていたそうです。「如己堂随筆」「この子を残して」の永井隆さんとは同じ町内であったと聞きました。本人からは、何かいつも必死な感じを受けていました。60代前半で自ら命を絶たれました。病院遺体安置室で、兄弟姉妹が声を併せ讃美歌を歌っておられたのが痛ましかった。被爆2世にあたる娘さんは生き辛いのか単身でアメリカに渡られた事などを思い出しました。
被爆者は、何げない日常的な事に悩み苦しんでいるという訴えを再度思い知りました。泰山木の花言葉は、「前途洋々」。大きく凛としたたたずまいが、生きる力強さを感じさせてくれています。感動と言うよりも、深く考えさせられた重いテーマの劇でした。
月並みですが、私にできる事は二度と悲劇を起こさないで欲しいので、核の下の防衛戦略や防衛力強化・増税を訴える党並びに個人には投票をしない事でしょうか。(サンライズ)
★劇は数多くのテーマが有り見た人がそれぞれの思いを感じ取ったのではないでしょうか。
私が強く感じたのは、人と人との繋がりや分断も言葉でどの様に相手に話し伝えるのかで真意が違ってしまったりする。正しく伝わったりするのではないかと思います。相手の人に良かれと思っても結果が違って来たり、人に伝えることの難しさや自分の基準にしている事の正しさを考えさせられました。
その時代の背景や自分の置かれている状況で良い選択や対応をするように考えて行動する事が重要だと思いました。今後の活動に取り込んで行きたいです。 (バンビ)
★久しぶりに本当に久しぶりに日色ともゑさんの演技(お姿)を観られたことが何より嬉しかった。ハナ婆さんの幼女のような心、したたかさ、悲しみ、苦悩、演技するのは大変難しいものだと推察されます。北林谷栄さんのハナ婆さんも一度観たかったなぁと思いました。
この演目題の「泰山木」を美術的にもう少し舞台上に強調されても良かったかなぁと感じました(その木が見続けてきた人間、戦争、他…)。 (まほろば)
★前回の「さんしょう大夫」がセリフもばっちり聞こえて素晴らしかったので「ああ、プロの芝居ってこういうのを言うんだ」と感激して帰路につきましたので、今回の「泰山木の木の下で」も ものすごく楽しみにしておりました。
しかし 前から4列目という特別席を準備して頂きましたのに初めから終わりまで殆どセリフが聞こえなくてがっかりしてしまいました。大体の筋書きはパンフレットを読んでおりましたが、刑事さんの抱える悩み等、最後まで分からずじまいでした。
でも周りでは時々笑い声が聞こえていましたので聞こえないのは私の耳のせいだと思いました。(一応補聴器は付けていたのですが)
私の大好きな日色ともゑさんはセリフが聞き取りづらくてもそのしぐさや雰囲気(演技)から色んな事を感じ取ることが出来さすがだなぁと感心致しました。
でもちょっと2時間余りのお芝居をセリフなしで観続けるのは期待が大きかっただけに苦痛でした。 (エール湘南)
★現役時代、職場の敷地内に泰山木がありました。私にとっての泰山木の花は『白くて大きい』以上に『よい香りを強く周囲に放つ』花でした。
『泰山木の木の下で』は、重苦しい、しかしとても大切なテーマを含んでいた作品だと思います。奇しくも鑑賞会の約一週間ほど前に、被爆者の立場から核兵器廃絶を訴える日本被団協が、今年度のノーベル平和賞に選ばれました。
核兵器署名運動と合わせて『泰山木の木の下で』上演は、文化、芸術面からノーベル平和賞に繋がる運動の一役を担ってきたと言っても過言ではないと思います。運営サークル会関係者の皆様に改めて感謝申し上げます。
当日は、泰山木の花の香りに囲まれて鑑賞させて頂きました。 (バンビ)
★戦中、戦後の生き方がよく描かれていて当時にいるような感覚でした。核兵器がもたらした様々な問題もすごくリアルに感じました。
今回、日本が、ノーベル平和賞を受賞したこともこのような劇が、日常公演されていることも大きく貢献していると思いました。
とても感動した内容でした。(パピー)
★ハナ婆さん役の日色ともゑさんを始め、民藝の方々の各々人間模様を熱演されて、鑑賞している時間を短く感じました。
社会背景が、70年以上前の事で、若い方には理解出来ない処があるのではと思いましたが、それ以上に一発の原子爆弾で市内が焼野原となり、放射能で人間がどんなに苦しんだか、核爆弾の恐ろしさを多くの人に知って欲しいです。 (こはまぎく)
★透明感のある楽器演奏がハナ婆さんの時代へと誘ってくれました。 楽器の音色や響きが日色ともゑさんの声の質とピッタリだと思いました。小柄な体にもかかわらず、舞台の上では大きく見えました。
張のある声や軽やかな動きにはびっくりです。
この舞台を見なかったら、被爆者に対し、こんなに真剣に思いを馳せる事はなかっただろうと思います。
健康な体で生まれたことに感謝しつつ、一つ一つの命を大切にしていきたいと思いながら鑑賞しました。
戦争のない平和な世界でありますように。 (サンシャイン)
★ハナ婆さんの強さ、やさしさ、厳しさ、信念の強さ等々、圧倒される思いだった。そして、あれだけ多くのセリフを使いこなし、表現する日色さんの力もすばらしい、とてもかわいいおばあさんになり切っていた。
戦争、原爆、その後のあらゆる理不尽な事がらに屈せず生きる。人間は強いと改めて思う。
現状の生活の中で、小さくても幸せと思える何かをそれぞれが見つけられることを心から願う。
退場するハナ婆さんと刑事さんを見ていたらこみ上げるものがあった。 (かわずの会4)
★日色さんのハナ婆さんにやられた!って感じです。 とにかくかわいい、時折、自身の哀しみに裏打ちされたドスの効いた抗議はあったけれど、愛らしかったです。取調室に向かう時の歩き方がとてもユーモラスで
動作だけで、内面の感情を表現できることに、感動しました。
「法」にしばられながらも優しい木下刑事、木下刑事の苦悩にぎりぎりと食い込んでいくマリさんも印象に残りました。 片や物語が進んでいく隣室での小使いさんの演技も心安らぎました。
最終場面、ハナ婆さんの頑張りを家族がいたわって、臨終を迎える訳ですが、何と表現して良いか分かりませんが、悲しくなりました。 (かわずの会4)
★ハナ婆さんのひたむきに、あるいは、したたかに生きている。かわいらしいハナ婆さんでした。 瀬戸内海の方言で独特の響き、よく長い台詞を覚えてすごいなあと感心しました。
日本しかわからない原爆の悲惨さ、心の深さと悲しみ、木下刑事の子供やたくさんの犠牲者達、本当に可哀想、しかし、懸命に生きて人々に語りついでいかなければならない つらくても仲間たちと笑い喜び会い懸命に生きている 仲間に支えられ木下刑事も奥さんのもとに帰り一緒に子育てもしていくのでしょう。 ポルトガルギターとマンドリンの音色も歌も”哀愁“ 作品にあっていました。 歌詞が私たちの明日はーーと。ムームー、ウムー。(エール湘南)
★日本原水爆被害者団体の方々がノーベル賞を受賞したばかりのこの時期に、この作品を観させていただいて、感無量でした。日本が一番世界に訴えて行かねばならない大切な事柄を舞台が教えてくれています。戦争は確かにこのように悲惨ですが、日本の人間の中にも原爆を受けた方々への差別やいじめがあったことを覚えていなければいけないと、深く思わされました。この思いは現代でも続いていると思います。
明るくふるまっているハナ婆さんの姿に、彼女のたくさんの哀しみと過去の理不尽な社会から弱い人たちを守り抜こうとする強い意志を、可愛い日色ともゑさんの演技から、伝えていただきました。
二度とこのようなことは起こってはいけないとハナ婆さんが体中で語っていらしたと思います。 (豆だるま)
★この上演に先立って、いくつかの裁判の結果が報じられました。一つは「長崎の被爆者の被爆者認定が申請通りではなく、被爆体験者としてのみしか扱われなかったこと」。もう一つは「優生保護法のもと、妊娠しないよう手術を強制したこと、また中絶を本人の意思に反して国が強行したことは憲法違反、と断じたこと」です。このことは、日本国憲法が制定されたにもかかわらず、戦後79年も経った現在もまだ、このような現実があることを知らされました。
ハナさんは、あの大らかな気持ちで、あくまでもやむを得ず中絶したいという本人の意思に沿って、そのお手伝いをした。それが罪に問われるのは百も承知で。国は本人の意思など眼中になく、中絶させた。どうして国は罪に問われないの? 今生きていたら、きっとハナさんは刑事さんの背中をビシビシと叩いて追っかけまわしただろうなと思いました。 (ふたご)