「2025年例会レパートリー」提案理由
2024年5月/神奈川演劇鑑賞団体連絡会議 幹事会
◆神奈川演鑑連の「例会レパートリー」づくり
神奈川演鑑連(ブロック)では、時代や社会状況に考慮しつつ、バラエティー豊かな心に残る珠玉の作品を「例会レパートリー」として各団体のサークルに提案し、その合意と決定をもとにブロック統一例会で劇団・創造団体を迎えています。ブロック幹事会が提案する「2025年例会レパートリー案」は以下の通りです。
「2025年例会レパートリー」提案理由
2024年5月/神奈川演劇鑑賞団体連絡会議 幹事会
◆神奈川演鑑連の「例会レパートリー」づくり
神奈川演鑑連(ブロック)では、時代や社会状況に考慮しつつ、バラエティー豊かな心に残る珠玉の作品を「例会レパートリー」として各団体のサークルに提案し、その合意と決定をもとにブロック統一例会で劇団・創造団体を迎えています。ブロック幹事会が提案する「2025年例会レパートリー案」は以下の通りです。
■2月例会は、東京芸術座の『おんやりょう』です。
とある地方の消防署。兼業農家も多い署内は、向上心に燃える若手をはじめ、黙々と筋トレする中堅、訓練を避け書類作成に励むベテラン、結婚か仕事か悩む救命士の女性など、様々な人が働いています。日々、緊急事態に向き合うことが日常の彼ら。江戸の火消しの時代から続く仕事の誇りや喜びが、木遣り唄「おんやりょう」の響きに込められています。綿密な現場の取材に裏打ちされた、温かな眼差しで描かれた作品です。
■4月例会は、オペラシアターこんにゃく座『オペラ 遠野物語』です。
柳田國男が発表した「遠野物語」は、東北の気候風土、厳しい自然環境のもと飢饉や飢餓に度々見舞われてきた土地の民が必要としてきたものと言えます。遠野に伝わる昔話を柳田に語ったのは、作家を夢見て上京した佐々木喜善。二人の橋渡しをした水野葉舟との三人を軸に「闇」の群れたちが物語を紡ぎます。フルート、チェロ、打楽器、ピアノの4人の楽士と生の歌声で繰り広げる、ちょっと不気味で不思議な物語。
■6月例会は、Pカンパニー『5月35日』です。
1989年。北京の天安門広場で民主化を要求する大規模な運動に、共産党指導部は軍を投入して6月4日に制圧。中国国内でタブーとされている「天安門事件」は、「5月35日」と読み換えられました。30年前に息子を事件で失った老夫婦は、妻の余命宣告を機に大胆な計画を立てます。人間の尊厳を守るために命をかける二人の姿と、終幕の力強いコーラスが心を揺さぶります。初演を飾った香港で上演禁止となった問題作です。
■8月例会は、劇団NLT『マグノリアの花たち』です。
作者ロバート・ハーリングが1型糖尿病で亡くなった実の妹をモデルに書いた感動作。「何も起こらない人生をダラダラ生きるより、30分でもいい、心がワクワクするような時間が欲しい」と、命をかけて出産を決断するシェルビー。その決断に複雑な思いを抱える母と、見守り支える小さな町の小さな美容室に集う女性たちの友情。この舞台をもとにハリウッドで映画化もされ、世界中の人々の共感を呼びました。
■10月例会は、エイコーン『愛の讃歌~ピアフ』です。
自国フランスのみならず世界中で愛されたシャンソン歌手、エディット・ピアフ。その数奇な生い立ちのせいもあってか、愛し愛されることを欲しながら「普通の人の2人分の人生を生きた」という波乱に満ちたものでした。「本当の自分をわかって欲しい」――死の間際に書き残した自伝をもとに、エディットの魂の叫びを、ピアノとドラムの演奏にのせて、栗原小巻さんが全身全霊をかけて歌い、演じます。
■12月例会は、劇団銅鑼『泣くな研修医』です。
外科医・中山祐次郎による原作は『走れ外科医』など4篇に及ぶ人気シリーズ。その第一作を『獅子の見た夢』『星をかすめる風』のシライケイタ氏の脚本で舞台化しました。ついこの前まで学生だった自分が、白衣を着て病院にいるだけで「先生」になる――泣きたい、逃げたい。けれど幼少期に早逝した兄の記憶を胸に、涙をぬぐって命に向き合う。医療現場のみならず、一生懸命に生きる全ての若者を応援したくなる作品です。
「一隅(いちぐう)を照らす」は、たとえ人目を引かない社会の片隅であっても、その場を光らせ周囲の人々を希望で繋ぐような、精一杯の生き方を表す最澄(さいちょう)の言葉です。人は誰しも自分のことばかりでなく、他の人の役に立ちたい、集団で思いを共有したい、そんな願いを持つ存在ではないでしょうか。しかし、懸命に行動しても歴史の大きな渦の中に消え去る者もあり、思いがけず人々の記憶に残る者もあります。2025年に提案する作品は、自らの人生に懸命に立ち向かう登場人物たちによって、奇跡のような瞬間を生み出す姿が描かれています。私たちもまた、築地小劇場開場100年の思いを胸に、「一隅を照らす」演劇の灯を地域に拡げて2025年レパートリーを迎えませんか。