第9回WS@web
日程:2021年11月10日
場所:オンライン(ZOOM)
内容:参加者自己紹介、研究紹介、日本醸造学会若手の会の活動紹介、企業・研究所紹介
日程:2021年11月10日
場所:オンライン(ZOOM)
内容:参加者自己紹介、研究紹介、日本醸造学会若手の会の活動紹介、企業・研究所紹介
2021年11月10日にZOOMによるオンラインで、第9回ワークショップを開催しました。
昨年に続いてオンラインでの開催となりました。47名の方に参加いただき、まず参加者全員の自己紹介がありました。続いて3名の先生から、幅広い分野の糸状菌研究についてご講演いただきました。また、今回初めての試みである日本醸造学会若手の会とのジョイント企画として、2名の先生から、日本醸造学会若手の会の取り組みや糸状菌とは少し離れた分野の研究内容についてお話しいただきました。講演の部の最後に、企業・研究所紹介があり、3社、1公的機関の4名の方々にご紹介いただきました。
全体を通して活発な議論が展開され、講演の部の後に行われた情報交換会にも30名以上の方に参加いただき、参加者間で交流することができました。
皆様のご協力により、盛会に終えることができましたこと、参加者の皆様に御礼申し上げます。
来年も第10回ワークショップを開催する予定です。今後の新型コロナの状況がどうなるか分かりませんが、来年こそは現地で皆様にお会いできることを願っています。
(世話人一同)
アンケートで頂戴した質問・コメントに対して、講師の先生方に御回答いただきました。
「ビールの香りを構成する香 気成分群」 (酒類総合研究所 岸本徹先生)
Q: 匂い嗅ぎGCは人力によるものですが、担当する個人ごとの感じ方の違いなどによる結果のズレはあるのでしょうか。
A: 個人ごとの感じ方の違いはかなりあります。個人の慣れや、主観が入る分析方法です。例えば同じビール香気の匂い嗅ぎGCをやれば、50成分検出できる者、30成分しか検出できない者がいます。また1人の担当者でも、1つの同じサンプルの匂い嗅ぎを何度も繰り返し、そのサンプルに慣れて来ると、そのサンプルからより多くの成分を検出できるようになってきます。
このように個人の慣れや主観が入ってくる分析方法ですので「客観的に強度を定量する分析法」というよりはあくまで「スクリーニング」の位置付けとして利用されます。この「匂い嗅ぎGC」という「スクリーニング手段」によってスクリーニングされた成分の濃度を正確に定量し、そして「閾値以上/以下の濃度で含まれているのか?」を議論するのが正しいプロセスです。
Q: グループBとCの成分がどういった製造過程に依存して生成してくるかはわかっているのでしょうか。
A: 実は、このグループBとCの成分は、成分"数"は多いものの、決して珍しい成分ではなく、ほぼ全ての成分の生成過程が様々な研究報告から、明らかにされています。ゆえに依存する製造過程も推察できます。
オフフレーバーはグループBやCに閾値以下の濃度で含まれる成分が、突如、製造工程の以上で閾値以上の濃度になり、結果、「オフフレーバー」として感じられます。そのような場合には、製造工程をコントロールしてそのオフフレーバーを抑制いたします。
「醸造学会若手の会紹介および官能面からの大麦焼酎特性へのアプローチ」 (三和酒類株式会社 井元勇介先生)
Q: 今回のWSでは比較的学生さんの参加が少なかったのですが、やはりたくさんの学生さんに参加してもらいたいと思っております。もちろん今回オンラインであったなどの要因はあると思います。日本醸造学会若手の会では、多くの学生さんに参加してもらえるように特に取り組んでいることや気をつけられていること はありますでしょうか。
A: 先生方への直接のお声がけのほか、発表自体は再報を許可していることや、企 業側も学術研究のみでなく企業の取り組みを紹介する発表をしており、比較的気 軽に参加することが出来ます。また、企業の委員に協力していただきライブディ スカッション参加者に抽選で商品がもらえる取り組みなどもしています。
Q: 焼酎のフレーバーホイルはそもそもなかったのだなと意外でした
A: これに関しては、スピリッツと対比して比較したものがなかったということです。焼酎自体は当社含めいくつか作成例があります。わかりづらく申し訳ないです。
企業・研究機関紹介に対するコメント・質問
1. 研究機関に対する国からの研究費が少ないことがよく言われていますが、実際のところはどのようなの状態なのでしょうか。
・感染研としては、業務に必要な予算は基盤研究費として各部に割り当てられて使用させていただいています。個別の研究者が使用する研究費は、競争的研究費を獲得することを要求されています。(感染研・宮澤様)
2. キッコーマンさんの研究所のきれいさに驚きました。
3. 皆様へ、どのような経緯で現職に就職されましたでしょうか。
・博士課程の時に糸状菌コンファレンスで現在の上司と知り合い、採用の案内をいただいたことがきっかけでした。11月にコンファレンスに出席、12月に現職場の見学と応募書類の提出、1月に面接審査、2月に採用内定というスケジュールでした。(感染研・宮澤様)
・ポスドク2年目の2008年にノボザイムズ社のglobal graduate programに応募し、採用されました。1年目は日本支社に勤務し、その後(コロナ禍では困難だったであろう)海外赴任(米国カリフォルニア支社→デンマーク本社)を経て、2011年に帰国後現在に至ります。当時の経験、ネットワークが今の仕事に活きてます。海外生活は大変でしたが、得るものも大きいので若いみなさんには是非チャレンジしてほしいです!(ノボザイムス・寺本様)
・大学での微生物(麴菌)の研究を通して、微生物の力を活かした研究や製品開発を行いたいと思い、微生物を扱った研究開発を行っている企業を中心に就活を行いました。キッコーマンは食品企業の中でも扱っている商品カテゴリーが幅広いこと、バイオ事業やアグリ事業などさまざまな事業を行っていることに魅力を感じ、入社を希望しました。(キッコーマン・荒木様)
・学生時代、麹菌由来の酵素を研究していたことから、麹菌や酵素に関連する企業で働きたいと思い、就職活動を行いました。ヤマサへの就職の決め手は、先輩に魅力的な方が多かったことや、仕事とプライベートのメリハリをしっかりとつけられる点などでした。(ヤマサ醤油・市川様)
4. 就活に向けて、企業の研究というのがどのようなものなのか知ることができたので、とても参考になりました。
5. まとまって糸状菌関連企業の話がきけよかったと思います。
6. どの企業・研究機関の紹介もとても有意義な発表だったと感じました。
7. どのようなところでなにをしているか,分かりやすく面白かったです。
8. 企業内でのシステムなどの話は、これから就職活動を行う上でもとても参考になりました。
9. やはりどの企業でも菌株ライブラリーの充実は重要なのだと再確認できました。どのような株をストックしているのかなど、詳しい話もお聞きしたかったです。
・真菌検査業務で、医療機関よりご依頼いただいた、もしくは弊所で単離した菌株(臨床分離株)を多数ストックしています。菌種としては真菌全般です。弊部の真菌検査業務は開始からまだ10年ほどのため、保存菌株数としては千葉大学真菌医学研究センターに比べると劣ります。(感染研・宮澤様)
・詳細は控えさせて頂きますが、細菌・真菌ともに非常に多くのカルチャーコレクションを自社で所有しデータベースで管理しています。近年は微生物群集のメタゲノム解析も進められています。(ノボザイムス・寺本様)
・キッコーマンでは様々な醸造特性を有する麴菌、酵母、乳酸菌のライブラリーを保有しています。(キッコーマン・荒木様)
・醤油醸造には、麹菌、乳酸菌、酵母が関わっています。弊社では、それぞれの微生物を複数株保有しており、作りたい醤油特性に応じて、微生物を組み合わせて使用しています。例えば、麹菌は、酵素産生を強化し原料を効率よく分解する株や、特徴的な香りを産生する株などがあります。乳酸菌は、アスパラギン酸をアラニンに変換しまろやかさを付与する株や、菌体同士が凝集し醤油の透明度向上に貢献する株などがあります。酵母は、アルコールを高生産し防黴性向上に貢献する株や、弊社のアイデンティティーとも言える特徴香の生産に寄与する株などがあります。(ヤマサ醤油・市川様)
「担子菌の研究:オリジナリティとマニアックの狭間で」 (京都大学 大学院農学研究科 中沢威人先生)
Q: 個人的にキノコ類の研究はメジャーな分野であるというイメージを持っていたため、担子菌類の研究がまだまだ未開拓であるという話は意外でした。
Q: 研究の進め方、どこをきっちりやるか、考え方がとても参考になりました。
Q: とても勉強になりました。これまではvitroの実験ばかりで、腐朽菌が作用するメカニズムはわかっていないと言われていたと思いますが、担子菌は木材の細胞に入っていくのでしょうか。それとも表面で酵素を分泌して分解していくのでしょうか。いずれにしろ、そうしたところをイメージングできないものかなーと思った次第です。
A: 樹木は死んだ細胞がほとんどなので、構成成分の大部分は細胞壁(多糖とリグニン)となります。腐朽菌は分解者として、この細胞壁を分解する役目を担っていますが、外(表面)からだけでは分解できる範囲に限界があることは容易に想像できるかと思います。そもそもですが、樹木の表面(形成層帯)は、樹木としては数少ない“普通に生きてる細胞”であり、細胞壁も薄く、腐朽菌にとっては不都合です。樹木の内部にいくほど、細胞壁は厚くなります。腐朽菌としては、効率的に樹木(細胞壁)を分解するために、内部に菌糸が侵入する必要があります。研究室内で木材分解試験などを行う場合は、適当なサイズにカットした木片(or木粉)が用いられるため、道管を伝って樹木内部に菌糸が内部にもはびこっていきます。ただし、樹木のどの部分(辺材or芯材)を使うかにもよります。自然界でも、それは同様なのですが、風化やシロアリなどによって生じた隙間から菌糸が樹木内に侵入します。ただ、樹木もだまって腐朽菌の侵入を許しているわけではなく、いわゆる抗菌成分(抽出物の一部)で対抗しています。このあたりの話は、北大・堀先生のご研究の一部になってきますので、また今度じっくりと話をきける機会があると思います。
分解方法については、菌糸表面・付近を分解していくパターンが多いです。虫歯みたいな感じといったら良いのでしょうか? その他にも、樹木内部で細胞壁間をドリル的に分解(菌糸が侵食)していった跡の穴(SEM画像)を見た記憶がありますが、すぐに手元の資料で見つけられませんでした。しかし、先ほどの話と同じですが、これらの結果は、樹木中のどの部分(芯材or辺材)を用いるか(観察するか)によっても違ってくるかもしれません。
Q: リグニン学会に続きお疲れ様でした。
Q: 研究のあり方も含め、先生の素晴らしい研究の構築が勉強になりました。
Q: 遺伝学的な解析で上手くいくかいかないか,アイデアや実験の組み方が非常に重要で,それが運命の分かれ道となることを改めて感じました。
Q: 木材腐朽菌は普段目にすることもあるとは思いましたが、担子菌ごとの分解能の違いやそれらの応用する技術等に関しては知識がなかったので非常に面白く感じました。また、子実体形成に関するメカニズムや変異株との話も勉強になりました。環境条件、栄養条件なども影響するのか知りたいと思いました。
A: 今回は時間の都合でお話しできませんでしたが、このあたりは種によって様々で一概には言えません。基本的には、何らかのストレスや刺激によって誘導されます。培養条件(栄養飢餓も含む)、青色光、低温刺激などが大きなファクターとなる場合が多いです。食用キノコの場合は、菌糸を蔓延させた“おがくず”培地や丸太を、水責め(水にしばらくの間漬ける)後に低温移行(18℃が多い?)して発生開始させる場合が多いと思います。私が扱ったシイタケとヒラタケでは、低温刺激が支配的だと感じています。このあたり、秋がキノコのシーズンとされていることと関係があるかもしれません。
このように書くと、研究室で子実体を発生させるのは面倒だと感じると思いますが、実際とても面倒です。時間も数ヶ月単位でかかります。ヒトヨタケとスエヒロタケは、珍しく合成培地上で容易に子実体を短期間(1 or 2週間)で形成するので、古くから研究モデルとして用いられてきました。
Q: 私も白色腐朽菌の研究をしていたので、とても勉強になる話で、私の更新されてない担子菌研究に対する知識の大幅なアップデートにつながりました。ちなみに担子菌ではゲノム編集技術を使ってどのようなことが可能になっているのでしょうか?
A: Sugano et al. (2017) Sci. Rep.で、ヒトヨタケにおけるCRISPR/Cas9が報告されて以降、中国では霊芝・エリンギで、我々もヒラタケや白色腐朽菌Ceriporiopsis subvermispora(日本語なし)で成功しています。最近では、フィンランドからも、白色腐朽菌Dichomitus squalensでCRISPR/Cas9の報告が出ました。これまでは、ほとんどが「CRISPR/Cas9使って、変異が導入できました」という報告だったのですが、実際の機能解析に利用した論文・学会報告も、我々をはじめ出始めています。ただ、やはり課題が残っています。基礎研究目的で単独or二重破壊株を作成するのであれば、従来の相同組換えの方が良いでしょう。
Q: あまり知らなかった担子菌研究の歴史を知ることができ、研究の立ち位置を再確認できました。大変有意義でした。
Q: REMI法で遺伝子破壊をもくろみながら、実際はマーカーが挿入された配列とは関係のない部位に変異が導入されて表現型が現れることが多いという点について、実際に現場で手を動かしていないと気が付かないことだと感じました。オリジナリティとマニアックは実際問題避けては通れませんが、そのマニアックさを説得して理解してもらうこともまた研究者の役割と言えばそうなのかもしれない、と思いました。
A: はい。おっしゃる通り、自分の研究の面白さと重要性を相手にわかってもらうための努力は大事だと考えております。このあたり、研究者個人だけでなく組織(学会や学部など)からみても、何が面白い・重要だと思う内容が異なってくるため、相手を踏まえて、その都度、ネタなどを工夫しなければならないと思っています。
「糸状菌は何のためにRNAウイルスを育むのか?」 (筑波大学 生命環境系 浦山俊一先生)
Q: 病原性を有さないウイルスがいるということ自体が初耳でした。今後、医薬品などの分野での有効活用は期待できるのでしょうか。
A: 明確な病原性を示さないウイルスの利用については、ベクターとしての利用が植物とそのウイルスの系で検討されています。例えば、開花促進遺伝子を無病徴RNAウイルスベクターに載せてリンゴに感染させ、育種の短期間化を可能とした事例があります(育種完了後は使用したウイルスは除去される)。一方、真菌ウイルスについては、宿主菌の種内系統分類の指標として、あるウイルスを保持している集団としていない集団という形で利用できるという事例が報告されています。医薬品という観点ではこれという事例を知りませんが、糸状菌とウイルスの系ではウイルス感染が宿主菌の休眠二次代謝遺伝子を活性化する例も知られているので、ケミカルスペースの拡充に寄与する可能性があります(これについてはいろいろなところで研究が進んでいると思いますが、表に出ている情報としては東京大学の二宮章洋助教が関連する研究に取り組んでいられるようです)。また、食品にも明確な病原性を示さないウイルスが含まれていることが多いので、何らかの育種シーズや、ヒト免疫賦活化因子としての利用が想定可能です。
Q: 糸状菌には害のあるウイルスと害のない(役立つ)ウイルスを見分けることができるシステムがあるのか?気になりました。
A: 糸状菌側のシステムの話として答えると、知る限り関連しそうなシステムが思いつきません。というのも、細胞システムとして“害”をどう定義するのかという問題と、それが定義できたとしても、“害”という結果を識別できてもその原因を検知できているわけではないので、アクションにはつながり得ないからです。個人的には、“害”の定義は無理なので、その結果が反映される適応度の変化が、どのようなウイルスが存続するかを決めているのかと思います。
Q: 大変興味深かったです。真菌のウイルス感染のメカニズムはどこまでわかっているのでしょうか。
A: ありがとうございます。真菌ウイルスの感染(伝播)機構としては、細胞分裂や細胞融合を介した垂直伝播が広く観察されている機構です。これに加え、報告例は少ないですがダニをベクターとした水平伝播や、植物体内において植物ウイルスを糸状菌が受け取ったという報告はあります。これらについては現象の報告のみで、機構に関する情報はなかったように思います。ここまではRNAウイルスの話で、DNAウイルスについてはウイルス粒子を真菌にかけると感染するという報告も1グループから出ています。こちらも、広く再現されているわけではなく、機構に関する情報もありません。
Q: ウィルスに関する話は聞く機会が少ないので勉強になりました。
Q: RNAウイルスという観点で事象を考えたことがなかったため、非常に面白い、魅力的な研究だと感じました。
Q: 興味深かったです。ちょっと自分の使っている菌が感染(持続?)していないか不安になりました。
A: ありがとうございます。重要な菌であれば我々の方でRNAウイルスの存在についてはそれなりの確度で検出が可能です。ただ、DNAウイルスについては検出できないですし、可能性としてはプリオンやウイロイドなど核外遺伝因子はたくさんありますので、現状、そういった因子が存在しないことを担保することは難しいです。
Q: ウイルスに関してあまり知識がありませんでしたが、病原性以外でのウイルスがカビと共存していることはとても興味深く感じました。また、ストレス耐性に対して影響があることも非常に面白く感じ、ウイルスの種類やメカニズムに関しても詳しく知りたいと思いました。
A: ありがとうございます。ウイルスの病原性以外の面に着目した研究は、植物や真菌で先行しましたが、新学術領域「ネオウイルス学」などではヒトや動物に関しても研究が行われました。Marilyn J. Roossinck博士がパイオニアですので、検索していただくと面白い事例がいくつも出てくると思います。
Q: まったく知らない話でとても興味深かったです。一般的な糸状菌にもあるとするとどういう役割を担うのか気になります。今後RNAウイルスの持続性、伝播性を用いた新規テクノロジーとしての応用への展開をお考えであれば聞かせてください。
A: ありがとうございます。とてもマイナーな研究領域ではありますが、RNAウイルスの一般則が糸状菌とそのウイルスの研究から見えてくることを期待しております。新規テクノロジーという観点に合致するかちょっと怪しいですが、食品に含まれるRNAウイルスについては免疫賦活化因子としての機能が期待できると考えております。これを考慮した育種や、食品由来サプリメントのようなものも可能だと思います。既に十分な食経験がある天然素材というのがウリでしょうか。
Q: 全く知らなかった知見に触れることができました。とても興味深かったです。
Q: RNAウィルスが宿主の環境適応に寄与していることがよくわかりました。抗ウィルス薬でウィルスフリーの糸状菌を得る戦略が、当該ウィルスの宿主への寄与度の解析に有効であることも大変興味深かったです。
ところで、これらRNAウィルスのカビへの感染はどのように起こるのでしょうか?カビの外にいる時も、例えばバクテリオファージのようにカプシドと核酸からなる構造体を取るなど、宿主に感染を成立させるための何らかの手段を持っているのでしょうか?また、宿主側が環境ストレスにより弱っているなどの状態の時に、より感染が成立しやすいなどという情報はあるのでしょうか?
A: ありがとうございます。例示いただいたバクテリオファージ(バクテリアウイルス)のように、細胞外環境中のウイルス(またはその一部)が細胞内に侵入(いわゆる感染)するということは、真菌とそのRNAウイルスの組合せにおいてはほとんどないと言われています。ですが、これは正確に言えば、上記のような現象が報告されていないということであり、何らかのバイアスの結果である可能性は否定できません。少し話はそれますが、真菌のRNAウイルスには、“カプシドと核酸からなる構造体”の状態で細胞内に存在しているものと、ヌクレオカプシドや裸?のゲノム核酸の状態で細胞内に存在していると言われているものが含まれています。いわゆる粒子を形成しないであろうRNAウイルスの存在は、細胞外感染経路があまりなさそうだという雰囲気をサポートしているかもしれません。
【宿主側が環境ストレスにより弱っているなどの状態の時に、より感染が成立しやすいなど】
ありがとうございます。とても興味深い観点だと思いますが、残念ながらそのようなデータを聞いたことがありません。我々の実験系では菌糸融合によるウイルスの水平伝播を見ていると考えていますので、菌糸融合によってウイルスが伝播する頻度が、ストレス等で変化することは十分考えられます。ただ、実験的に見極められるかどうかは検討が必要だと思います。