新技術開発

麹菌 Aspergillus oryzae における CRISPR/Cas9 システムを用いたゲノム編集技術の確立

Development of a genome editing technique using the CRISPR/Cas9 system in the industrial filamentous fungus Aspergillus oryzae.

Katayama T, Tanaka Y, Okabe T, Nakamura H, Fujii W, Kitamoto K, Maruyama J.

Biotechnol Lett. (2016) 38:637-642. doi: 10.1007/s10529-015-2015-x.

PubMed

【要約】 糸状菌の遺伝子改変は、Ku70やLig4に代表される非相同末端結合に関わる因子の欠損株の使用により、効率よく行われるようになった。しかし、産業上用いられる株や自然界から新たに単離された株では、遺伝子改変に多大な労力を要する。我々は、近年様々な生物で注目されているゲノム編集技術のなかでも簡便で安価なCRISPR/Cas9システムを、麹菌Aspergillus oryzaeで確立することを試みた。まず、Cas9ヌクレアーゼおよび標的配列を含むガイドRNAを発現するプラスミドを作製し、A. oryzae株に導入した。分生子の色素生合成に関与する遺伝子(wA, yA)、ウリジン/ウラシル生合成遺伝子(pyrG)を標的としてそれぞれ変異導入を試みた結果、塩基の欠失や挿入をもつ形質転換体が10~20%の割合で得られ、それらは期待された表現型を示した。以上のことから、A. oryzaeにおいて初めてCRISPR/Cas9システムによるゲノム編集技術を確立したとともに、本技術が産業実用株での遺伝子改変の効率化に貢献することが期待される。

(作文:片山、丸山)