新型コロナウイルス感染拡大下の

大学教育を考える(2)

問題意識と情報の共有に向けて


遠隔授業開始後に生じたトラブルや混乱1


藤田 その他に何かありますか。

M M大学では、遠隔授業で行うのが困難な場合、非常勤講師の先生に前期科目を後期に開講する選択肢も認めたので、前期の開講科目が減って1科目あたりの履修者数が増えています。このまま後期も原則として遠隔授業になったら、自宅で遠隔授業を行うのが難しい非常勤講師の先生方に、学内からオンライン配信できるような仕組みを提供すべきでしょう。

O O大学では、対面授業再開を視野に入れていたので、感染防止対策として教室内の学生を適切な数に絞るために今まで以上に厳しい履修制限をかけました。その結果、卒業の必須科目が履修できなかったりするなど、学生の履修をめぐって混乱が生じました。

R オンライン授業対策の担当をしていますが、先ほど申し上げたように、非常勤講師との連絡を各教員に任せているので、学生からオンライン授業の対策チームに非常勤講師の先生が担当している授業に関する問い合わせが来ても、非常勤講師の先生方に直接連絡をとる手段がありません。今までは採用についても連絡についても各教員に任せることで柔軟な対応ができましたが、専任教員と同じように学内の連絡ネットワークや講習会などに非常勤講師の先生方を巻き込んでいくべきかもしれません。ただ、信頼関係に基づいて非常勤講師の先生方に任せることで授業や学生対応も柔軟にできていた部分もあるので、採用も含めて全学で一元管理するシステムをつくると、今までの良かった点が失われて非常勤講師の先生方の負担が増えてしまいかねないと危惧しています。

  重要なのは、非常勤の先生方への負担をこれ以上増やさず、今回のような非常時でも運用可能な情報伝達ネットワークをどう構築するかだと思いますね。コロナ後に人事面での管理や介入が強まったり、非常勤の先生が部局から不当な糾弾を受けるような構造が強まりはしないかと危惧しています。

M M大学では、遠隔授業に関する情報を集約したサイトをつくり、専任教員も、非常勤講師も、学生も、サイトにアクセスすれば、それぞれ必要とする情報を得られるようになっています。それでも、きちんと必要なところに情報が伝わっていないようで、一部で混乱は起こっているようです。

P P大学では、従来から使われていたLMSが遠隔授業の負担に耐えられないと授業開始前からわかっていたので、他のいろいろなツールを使うように促していたのですが、授業が始まってから調べてみると、年配の先生を中心に従来のLMSを使っている教員が多くて案の定ダウンしました。学部ごとにアクセス可能時間を分けて対応しようとしたのですが、うまくいっていません。

L 遠隔授業をめぐってパワハラの話が聞こえてきています。L大学では、パワハラ防止の注意喚起をする通知が出たくらいです。遠隔授業の方法を検討したり情報をまとめている部署の教職員に対して、自分のやりたいように遠隔授業を行いたい教員がパワハラになるような圧力をかける事例が報告されています。また、大学で認められていない方法で遠隔授業を行っている教員がいるようで困ったものです。その上、ついてこられない学生を叱責するような教員がいるという噂も聞きました。原則立入禁止になった学内で、大学院生に実験を強要している教員がいるという話もあります。

P 学生を識別して出席を取るために写真を提出させようとしている教員がいると聞いたんですけど、これはいいんですかね。

一同 アウトでしょう。

M 出席点は認められていないんだから、課題を提出させるだけで十分です。

L 学生の出席に異常にこだわる教員はいますよね。でも、緊急事態なんだから柔軟に対応してもらわないと困ります。

M 学生に単位と引き換えに罰ゲームを与えるのがいいと思っている教員いますよね。それって教育じゃないですよね。

 ただ、教員に出席確認を求める大学はありますよね。

M 大学によりけりです。でも、重要なのは、出席ではなく学習効果なので、LMSなどを効果的に用いて学生の学習をコントロールするのが重要です。どのような手段が学習効果の向上という結果につながるのか議論すべきです。この機会に多くの教員に考えていただけるといいんですけど。