新型コロナウイルス感染拡大下の

大学教育を考える(1)

問題意識と情報の共有に向けて


新型コロナウイルス感染拡大を受けて2月の終わりから各方面で様々な対策がとられてきたが、3月下旬からさらに感染が広がり、4月7日(火)には新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が7都府県に出された(その後、4月16日(木)に全都道府県に拡大)。早々と舵を切った大学から対応を検討している大学まで様々だった4月上旬、西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループで以前活動していたメンバーに、現下の状況について—特に非常勤講師問題に関して—話し合う機会を設ける提案がなされた。以下に掲載するのは、4月中旬に Google Hangouts を用いて有志で行われた話し合いでの発言を「匿名座談会」(司会のみ実名)の形式に構成したものである。西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループは非常勤講師など様々なメンバーによって構成されていたが、今回の「座談会」参加者は常勤教員であった。

西洋史研究者・大学教員有志


問題意識と情報の共有に向けて


藤田 大学を初めとする高等教育は、以前から予算削減など、様々な問題を抱えていましたが、今回の新型コロナウイルス感染拡大によって新たな問題にも直面しています。皆さん、いかがでしょうか。

A 元々困難な課題を抱えていた非常勤講師が、新型コロナウイルス感染拡大に伴う遠隔授業の準備で、さらに苦境に陥っています。そもそも決して高くない給料から授業資料等への支出を行わなければなりません。さらに、遠隔授業の準備で追加の支出が強いられています。 

B 各地で公共図書館が休館しているのに加えて、キャンパス封鎖で多くの大学図書館も休館しています。そこで、図書館で借りられたはずの書籍の購入を迫られている非常勤講師の方もいます。 

C 遠隔授業を行う上で必要となる機材を購入したり、自宅の通信環境を改善したりするのに、追加で支出を強いられていそうです。 

I 加えて、遠隔授業導入に伴うシラバスの書き換えや学生対応もあります。そもそも常勤に比べて待遇が悪い非常勤講師に追加で負担を強いるのは問題です。 

C (専業)非常勤講師は複数の大学で授業を担当している人が多いでしょうから、各大学の方針に従って別々の方法で遠隔授業の準備をしなければならないとすると大変です。また、授業回数の短縮に伴って収入が減るのではないかという不安も抱えているかもしれません。あるいは、遠隔授業への対応できないという理由で、担当予定授業がなくなり、大きな収入減につながる可能性もあります。 

F 問題をより多く抱えていると思われる非常勤講師に焦点を合わせ、彼ら・彼女らが必要としている情報を共有していくのはいかがでしょうか。この座談会メンバーは全員が常勤の大学教員なので、特に非常勤講師からは見えにくい情報を伝えていく必要がある気がします。

B 具体的に非常勤講師に対して行われている取り組みを情報共有し、他の大学に参考にしてもらうのはいかがでしょうか。例えば、B大学の所属部局では、非常勤の先生方に対して教材購入費を援助することを決定しました。また、講義の遠隔化に伴って支払われなくなる交通費などをサポート費用に回すことを、大学全体で検討中です。

I キャンパス封鎖で浮いた固定費を、非常勤講師や学生に対する支援に充てることはできませんかね。

B 学生サポートについては、いくつかの大学で、すでに「オンライン手当」として学生1人につき一定額の補助が決定されています。遠隔授業に対応できない学生に対して教員がサポートする必要はありますが、どこまで学生対応について教員が責任を負えるのかという問題があります。 

H 教員に丸投げするのは最悪です。全学や部局で方針を示すべきです。 

C 必要なものを教員が自腹で全部揃えて仕事をしろと言うのは、立場の弱い日雇い労働者の世界で横行しがちな、ペンチその他の道具を自腹で揃えないといけない工事現場よりまずい!! 大型機材その他まで自分で買ってこいと言うようなことなので、声を上げられない非常勤講師に対するサポートを目的にすべきです。 

D 専任教員の間でも、特定の教員に負担が集中していて業務負担が不公平になる問題が生じています。 

A この4月に採用された若手教員がいきなり遠隔授業への対応を迫られているのも気の毒です。また、オンライン対応が困難な年配の教員という問題もあります。それぞれ適切なかたちで支援できればいいんですけど。