集客はSNSで?集客コストと顧客生涯価値(LTV)の話

2025/7/10 担当:小松


モノやサービスを販売するにあたって必ず必要となってくるのが集客です。つい先日もこの集客の問題についてD-fab利用者さんと話す機会がありましたので、そこでの内容をここで共有してみたいと思います。なお、以下の話は私の個人的な見解であり、決してこれが一般的な正解であるというわけではありません。あくまで一つの考え方として捉えていただければと思います。

皆さん集客をどうするかという話になるとまずはSNSやブログで、と提案されます。これはもっともな話で、と言いますか、お金を掛けずにできる集客となるとこれぐらいしかないので自然とそうなるわけです。

過去の私も集客を自分の運営するWebサイトを通じて行っていました。SEOのためのコンテンツ制作をひたすら頑張っていた時期があり、最盛期には一月当たり6万PV(ページビュー:大まかにサイトが見られた回数と思っていただければと思います。)ほどのアクセス数を実現することができました。

私はこのサイトで3,500円程の作品を販売していました。この作品が1つ売れると利益が2,000円程度残ります。

このサイトの見えやすい場所に作品のバナー広告を設置し、そのバナー広告のクリック率が0.5%であったと仮定しましょう。(実際のバナー広告のクリック率はもっと低いです。0.1%以下等)

そしてバナー広告をクリックしてくれた訪問客が実際に作品を買ってくれる確率(成約率)が1%であったとします。(成約率1%というのもかなり甘い見積もりです。)

この場合、バナー広告を見た人の200人に1人が広告をクリックして作品販売ページを訪れ、作品販売ページを訪れた人の中からさらに100人に1人が作品を実際に購入してくれることになります。

つまり、200×100=2万人に1人が作品を購入してくれることになり、6万PVのサイトからは一月あたり3個の作品が売れることが期待できます。

この時6万PVのサイトから得られる利益は2,000円×3個で6,000円となります。

一方で、このサイトにGoogleアドセンスの広告を導入した場合の収益を計算してみましょう。アドセンス広告の収益はコンテンツの種類にもよりますが、だいたい1PVあたり0.2円~0.3円と言われていますので、ここでは仮に1PVあたり0.2円として計算します。(私の先月の広告収益は1PVあたり0.23円でした)

6万PVのサイトで1PVあたり0.2円の広告収益が発生するとなると、6万PV×0.2円で、1月あたりの収益は12,000円となります。

6万PVのサイトで自分の作品を販売したときの収益が6,000円であるのに対し、広告収益は12,000円と、作品販売に比べてほぼ倍の収益が上がる計算になりました。

作品販売の場合はまず作品のアイデアを考案、開発し、量産して、梱包して、発送して、顧客対応をやって、その上サイト運営とコンテンツ制作をやり、それでやっと6,000円の利益が出るのに対して、広告収益の場合はサイト運営とコンテンツ制作さえできればあとは広告を貼るだけで12,000円の収益が出ます。これなら最初からサイト運営とコンテンツ制作に集中した方が良いと判断するのが自然でしょう。

私はどこで間違ったのでしょうか。上記の経験を経たうえで、現在の私の考えを以下に述べていきたいと思います。

まず、過去の私は広告枠の価値を安く見積もり過ぎていたように思います。広告枠はあらゆる商品、サービスを売るのに必要なものであり、ほぼすべての企業が無条件で欲しがるほど貴重なものです。多くのユーチューバー、ブロガー、インスタグラマーといった人たちがこの広告枠を得るために日々熾烈な競争を繰り広げています。

そんな貴重な広告枠獲得競争というものを、作品制作と販売を行いながらその片手間でやろうというのはあまりに無謀です。やるにしてもどちらかに専念する必要があると思いました。

さらに、過去の私が作品販売に集中する選択を取ったとしましょう。この場合、広告枠は購入することになるのですが、この広告枠にいくら支払う必要が出てくるでしょうか。

広告を使って商品を販売する際に、一人のお客さんを得るのにかかる広告費のことを顧客獲得単価(CPA)と言います。このCPAというのは年々上がっていて、今では1万円程度と言われています。もちろん内容にもよりますが、CPAが3,000円というのはすごく安いといった感覚です。

上の事例で3,500円の作品を2,000円の利益を乗せて販売していた話をしましたが、CPAが1万円として考えるとこの作品を売った場合は8,000円の赤字となります。

つまり、3,500円の作品は安過ぎて広告を使って売ることができません。それでは他の事業者さんはどのようにしているかというと、CPAが1万円でも利益が残る高額商品を売っているか、もしくはリピートが発生するような商品を売ることで顧客生涯価値(LTV)を上げています。

顧客生涯価値(LTV)とは一人のお客さんが生涯のうちどれだけの利益をもたらしてくれるかを表した指標のことで、リピート購入が期待できる場合はこのLTVが大きくなります。

CPAが1万円で利益が2,000円の商品であったとしても、そのお客さんがその後同じ商品を6回リピート購入してくれた場合はLTVが2,000円×6回の12,000円となり、CPAが1万円だったとしても2,000円の利益が残ることになります。

今のインターネットビジネスではこのリピート購入が前提となっており、初回の取引のみで黒字にするのは至難の業である、と言われています。このことは「私が自営業を始める前に知っておきたかった」と思う事実のトップ3に入るほど致命的な誤解でした。私の作品は作品数も少なく、一度買ったら終わりの買い切り商品です。 物販に限らず、そもそもリピートが期待できないビジネスというのは採算を取るのが難しい、ということを知ったのは開業して数年たった後のことでした。

どんなに小さなビジネスでも利益を残すというのはとても難しいものだと感じています。身近に経験者がいるならばその方に教えを乞うのが一番でしょう。私は創業時に周りにだれも聞ける人がいなかったので苦労しました。

ですので、何かモノづくりでビジネスを始めてみたいという方は、情報収集の意味でもD-fabを活用していただくのが良いと思います。利用者さん同士で経験を共有することができれば、教科書などでは得られない知見を得る良い機会になると思います。

D-fab ではモノづくりでの創業を目指す人を支援しています。個人作家、手作り品販売 などの小規模事業者も対象ですので興味のある方は一度D-fabまでお越しいただけれ ばと思います。