中学生によるローバー開発の事例

2023/011/18  担当:小松


D-fabにはローバーの開発をしている同志社国際中学生の利用者がいます。

ローバーとは宇宙開発において「探査車」を意味する用語として使用されていて、月面探査車など、地球外の天体の表面を移動し、周辺の環境を観察することを目的として開発される車両です。

ローバーは未開の天体の地表を移動するため、不整地走行能力や、周囲の物質を観察、回収するために必要なロボットアーム、また、人間が現地に降り立つことが困難な状況であることから、遠隔での操縦、もしくは自律的に作動できる能力を有していることが多く、単なる車両を超えた移動ロボットとしての性能が要求されます。

ローバーの開発には機構設計や電子回路設計、プログラミングなど、多岐にわたる技術力が必要となるため、中学生がこのような開発を全て一人で行っていることに非常に驚かされます。

このローバーの開発者である上田理仁君は主に独学で技術を身に着けたそうです。現在、Web上には膨大な技術情報があり、それらを丹念に読み込めば例え中学生でも自ら学び、技術を身に着けることができます。もちろん誰にでも可能なことではなく、多大な労力とそれをいとわない情熱が必要です。また、上田くんは英語が得意なことから、海外サイトの技術情報にも直接触れることができ、それも彼の高い技術力を支える要因ではないかと感じています。

若い子供たちの活動を注意深く観察すると、社会情勢の変化を読み取ることができます。上田君だけでなく、D-fabで活動する大学生も、私が学生だった時代とは異なる学び方で学び、異なるツールを使っています。D-fab管理人になるまでここまで学生を取り巻く環境が変化しているとは想像できませんでした。

そして、ビジネス的な観点から気づいた事としては、技術系の学生が皆、宇宙産業を向いてモノづくりをしている、という点です。

上田君が開発するローバー(天体表面探査機)だけでなく、D-fabで活動しているDERCロケットサークルの開発するロケットもそうですし、その他の同志社大学内の技術系サークルも、小型人工衛星の開発やローバーの開発のためにD-fabを訪れることが多いです。

意識的か無意識的かは分からないのですが、若い世代は航空宇宙に関する技術に強い関心を向けているようです。

私はD-fab管理人になるまで宇宙産業にはほとんど関心がありませんでした。D-fabを訪れる学生たちが皆、ロケットやローバー、人工衛星の開発をしているのを見て、同志社大学には航空宇宙工学を専門とする学科か何かがあるのかと勘違いしていたほどです。

しかし、現在宇宙産業というのは将来を支える新たな産業として注目され、世界的に成長の勢いが増しているということを知りました。中でも日本は宇宙産業に関して地理的条件や部品の供給、インフラ、技術的な面での優位性が有り、より一層の投資が期待されているとのことでした。学生たちはそれら宇宙産業に向けられた期待を感じ取り、自然と航空宇宙に関するテーマを選択しているのかもしれません。

私も学生たちの活動に触発されてロケット開発に参加させてもらっています。学生と一緒に活動することによって新たな視点が得られ、本業にもその視点を取り入れて商品開発やコンテンツ制作に活かしていきたいと考えています。

D-fabには未来の産業に向けて活動する学生たちがいます。私がそうであったように、普段企業で活動する社会人の皆さまや、創業を目指す起業家の皆さまも、D-fabで活動する学生との交流を通して、新たな発想が得られるのではないかと考えています。

D-fabではモノづくりでの創業を目指す人を支援しています。個人作家、手作り品販売などの小規模事業者も対象ですので興味のある方は一度D-fabまでお越しいただければと思います。