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分野は「見出し」
本の名前は「小見出し」
はじめから最小作用の原理やラグランジアンの話が書いてあり、解析力学の本だと思われるかもしれないが読んでみるとしっかりと力学の本である。
解析力学の助けを借りて保存則や運動方程式を組み立てた後にケプラー問題や微小振動、剛体、断熱不変量などについて取り扱う。最終章ではハミルトン形式も扱う。
自分で計算をしていかなければ式変形が追えないという点や少々言葉足らず、日本語がおかしい点は難しいと言える。しかし、必要最小限の言葉で最大限の内容を伝えようとしており論理の流れが追いやすく、取り扱っている内容も豊富である点はこの本のメリットだと考えられる。
この本を読むことで本を読むための体力を養うことが出来るので是非読んでみてください。そして君も理論物理学教程の虜になろう!
(C0工藤幹)
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量子論パートはそんなに読んでないので,解析力学の本として紹介します.
難易度としては標準的で,Lagrange方程式の導出を2つの方法(最小作用から導く方法と運動方程式から導く方法)で行ったのち,対称性と保存則,正準変換を扱っています.著者が宇宙物理系ということで,最後に天体力学への応用が述べられています.
全体として「須藤節」が炸裂しており,脚注や本文中の表現に筆者のユーモアが垣間見える.というかSection3.4は筆者なりの「『最小作用』的世界観」について述べられているし,なんなら第1章丸々を「科学を学ぶ意義」について割いています.解析力学の本として最初読み始めたら色んな意味で面を食らうと思います.
ゼミ本としても悪くないし,純粋に解析力学の勉強をしつつ適度に「脱線」を楽しみたい人には特におすすめ.
本のタイトルは「古典力学」だが、ランダウの『力学』と同様、解析力学についても詳しく書いてある教科書です。私はランダウの『力学』を読む時に辞書のように使ったけれども、ゴールドスタインさんは(ランダウさんと違って)本当に優しい。詳しい計算を知りたいときはこの本をあたると良いです。
私は上巻の2, 3章と下巻の8章を主に読んだ。泥臭い計算が多いけれども、理路整然と書かれているので読みやすいと思う。是非手を動かしながら読んでほしい。
版によって付録が変わっているので、図書館で古い版も手に取ってほしい。おすすめは第2版にあるベルトランの定理を証明する計算について解説した付録。今もあまりしっくり来てないが、気になってめちゃくちゃ計算した思い出がある。
(C0 千葉)
電磁気学の基本的な事柄についてコンパクトにまとまっている本。静電場、静磁場の話を実験事実から作り上げマクスウェル方程式にたどり着くタイプの進め方で描かれている。基本的な事柄をとにかく丁寧にまとめてあるため、大学に入って初めて専門書を読む人でも問題なく読めると思う。
(C0工藤幹)
電磁気学を知らなくても勉強できる相対性理論の本。著者は特殊相対論と一般相対論を統一的に扱おうとしてこの本を書いたらしい。そのため、通常そこまで強調されない特殊相対論の幾何学的な側面が詳しく書かれている。簡単な微積分と行列の計算が出来れば特殊相対論のパートにあたる1~3章は読めるので、特殊相対論の枠組みを知りたい初学者におすすめの本です。4章以降は難易度が上がっていき、5章からは微分幾何の話になるので難しい(私も全然読めていない)。
著者が数学者ということもあり、特殊相対論の物理的な話はあまり詳しくない。でも、電磁気学を相対論的な視点で眺めたり場の量子論を勉強したりする上で、特殊相対論の数理(ローレンツ変換等)はしっかり分かっていないといけないので、そういう点でもこの本は良いです。
(C0 千葉)
力学に続くランダウ=リフシッツ理論物理学教程の2巻である。
前半では、特殊相対性理論から始まり、不変性を軸に電磁気学の一般論を組み立て、その後に様々な応用を述べている。後半では、一般相対性理論について書かれている。
力学同様、式変形を追うために計算が必要であったり、言葉が足りない、おかしい部分はある。しかし、そのデメリットを打ち消しうる論理の簡潔さ、応用の多さが特徴である。
この本の前半では点電荷と電磁場からなるまっすぐな真空中の世界が主な考察対称であり、物質中、重力場中、電荷分布については前半には詳しくは書かれていない。物質中の電磁気学は理論物理学教程の8巻である連続媒質中の電磁気学にかなり詳しく書かれている。
後半の一般相対性理論パートは初学でなく、様々な具体例を見たいなら良いと思う。一般相対性理論初学の人が読むにしては接続や共変微分などの考え方やテンソル解析の説明が足りないと思われるので他の本などで補うと良いと思われる。
(C0工藤幹)
随時更新
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熱力学をいくつかの公理をもとに構成していくタイプの本.エントロピーを系にあらかじめ与えられた量として導入し,そこにいくつかの解析的性質を与えることで種々の法則を導くことが最大の特徴.田崎とは異なり,必要なら力学の知識も導入する.
さらに熱力学のみならず,統計力学や場の理論,非平衡系との関連についても触れられており,知見に富む.
熱力学といえば「理想気体」がよく題材にされるが,熱力学が理想気体のみならず,マクロな系全てに適用できる強力な理論であることが分かる.また,少数の公理から構成される綺麗な理論であることも分かる.
最近第2版が刊行され,なんと2分冊になったが,分量が増えたのは主に化学熱力学のパートなので,物理の人は読み飛ばしてもいいかも.
熱力学で躓きがち(だと勝手に思っている)のは「温度」の導入.従来の教科書や講義では経験的に導入されるが,この本の定義が僕は好き.
1冊なんかしら熱力学の本を読んで,モヤモヤした人が読むとスッキリする本.
(B9鈴木)
熱力学の数学的に厳密な定式化を物理学科二年生程度の人でも理解できるように書かれた本。
この本を読むために必要な数学的準備は不要ではないかと感じるほど丁寧にこの本で使う数学を前半で説明してくれている。しかし、接ベクトルのところのみはあまり良い導入では無いと感じる。他書を参照されたし。
全体的に説明が丁寧すぎて少々くどい。
熱力学の本ではあるが、この本を用いて熱力学についての新たな知見を得ることは難しいと感じる。平衡状態の同値関係として温度を導入したり、仕事と圧力の関係の類推からエントロピーを導入したりと他の本とは違う考え方をしている部分もあり、その意味では面白いと感じる。
(C0 工藤幹)
流体力学の基礎的内容がとてもコンパクトにまとまっている本。
完全流体の話から入り、非圧縮完全渦なし流体、渦運動、水の波、粘性流体の順で進む。
コンパクトな分説明不足と感じる部分もある。また、テンソルの説明はあまり上手くないのでは無いかと思う。
(C0工藤幹)
他の本とは異なった定式化をしているところに特徴のある本
量子力学は確率論に基づいていること、物理量を演算子として考えるとはどういうことか、なぜ複素数を用いた定式化を行うかなど、直感的でない部分に対して物理的に妥当である説明を与えてくれると思います。
また、最簡単な2準位系から話を始め、N準位に拡張する流れや合成系についてしっかりとした記述がある点、測定の話をする点なども評価できると思う。
力学をするのは後半だが、生成消滅演算子からの定式化が本当にいいのかどうか、私は分からない。この部分に関しては正準交換関係からで良いのではないかと思う。
EMANの物理学の広江さんがこの本の解説を出してくれている(有料だが)のでそこも助けになるのでは無いかと思う。
色んな意見があると思うが、私は初学者向けであると思う。特に力学をする前の部分が。
(C0工藤榦)
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量子力学の枠組みを「公理」として要請したのち,基本的なテーマ(無限/有限井戸,調和振動子)を取り扱う.この本も最初にブラケットを使う.その後に波動関数を導入する点ではJ.J.Sakuraiと似ている.
量子系における測定の基本的な事項が載っているのも特徴.多くの本で書かれていない固有値が連続的に分布する場合についても記載があるなど,数学的なことが気になる人にとっては痒いところに手が届くいい本(ただし数学の人から見ればこれでも十分ガバガバらしい).
ゼミで使うというよりは,他の本を読んで詰まった時にハンドブックとして使うのがよさそう.
先生早く『量子論の発展』を書いてください
(B9鈴木)
B1終わりの春休みに読みました。線型代数学Bを履修した後であればある程度読めると思います。この本で一番特徴的なのは2章と3章で、必要な数学的道具を導入した後(主に線型代数)、量子論に課す公理を数学書風に明示的に要請します。このやり方はNielsen-Chuangの2章(の前半)と似ています。ただこの本は複合系や密度演算子、射影測定以外の測定に触れない代わりに、文章で量子論の本質的なところ?を伝えようとしているところに面白さがあると思います。量子論初学の人にも敷居が低い割に、量子力学を学んだ人が後に読んでも意味のある不思議な本です。ただ量子力学の勉強のための1冊目として適切かと言われると首を捻りたくなります。この本のテーマと量子力学Iでやりたい内容との間にはそれなりのギャップがあることを認識して適宜基本的な量子力学の入門書も読むと良い気がします。
(C2森)
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敷居をなるべく低く設定するというなら谷村はいいかもしれない.
代表的な題材はやや不足気味(調和振動子のみ)だけど,量子力学(量子「論」といった方がいいかもしれない)の気持ちは理解しやすいはず.
著者の谷村さんは大の補足資料作成屋さんなので,その辺りもかいつまみつつやってみるのが一つ.
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谷村よりも程度の高いものとして僕の時の量子1の先生がおすすめしてた.
全部読み通すのは初学には厳しいので,第2章を第3章をちゃちゃっとやっちゃうのはアリかなって.(B9鈴木)
この本で量子力学の定式化を学ぼうとするのはあまりお勧めしない。
しかし、それぞれの内容についての記述や問題解説についてはかなり参考になると思う。(C0 工藤幹)
「固体物理の易しめの入門書1冊教えてください」と言われたら間違いなく進めるのがこいつ.B5サイズとやや大判ながら平易な記述と多くの図表でかなり読みやすい.5セメの物性物理学Ⅰや6セメの物性物理学Ⅱの傍用に特におすすめ.
(B9鈴木)
KittelやAshcroftと同系統の固体物理の教科書的なやつ.Labのセミナーで読んだ.結晶格子,X線回折,逆格子,バンド理論,磁性,輸送現象,超伝導など.本編は別に特筆して優れたところは感じないが,章と章の間に挟まっている「パネル」で実際の実験装置や手法についての解説が載っていてこれが結構興味深い.さすが実験家が書いた本といったところ.
ただし数学的な議論は微妙なところが多く,記述を間に受けない方がいい箇所も多々見受けられる(4.5終盤の議論や6.3のFD分布の導出など).その際は他の固体物理の書籍を参考にしながら読み進めるとよいと思う.
(B9鈴木)
本書の特長は、固体物理学の基礎的な内容が一冊にまとまっている点にあります。Kittel固体物理の易しい方の本やAshcroftは豊富な内容を含んでいるものの、複数冊に分かれている分、そろえるのにそれなりにお金がかかってしまいます。もう一つの特長は、後半部分に記された半導体の章です。半導体と聞くと、応用面が強調されるように感じるのが多くの理学部の人間の感想だと思います。しかし、半導体は二次元電子系の舞台として非常に活用されており、現代物理学にとって欠かせない役割を担っています。また、就職を考えている人にとっても半導体の知識を持っていることは有益なのではないでしょうか。
一方で、本書の懸念点は数学的に不十分な点にあります。Kittel (易しい方) やAshcroft, 斯波弘行先生の易しい方の本いずれにも言えることですが、磁性や超伝導のパートなどにおいて、場の量子論を使わない説明な分、これらの本のみでは全てを理解することは難しいです。しかし、定性的な説明は一見する価値があると思いますし、参考文献となる論文が示されているので理解に必要な数学的な道具をある程度知ることは出来ます。
総じて見て、この本は買うに値する本であると思います。随所に見られる実験かならではの物理的考察はとても面白いです。 個人的におすすめな読み方は、もう少しコンパクトにまとまった固体物理の教科書 (斯波先生の基礎の固体物理など) を隅から隅までみっちりやりながら、適宜詳細を本書に求めるという読み方です。そうすると自ずと本書全般に目を通すことになるかと思います。実験志望で本書を持っているなら、KittelやAshcroftを無理して買う必要はないです。 ( C0新井 )
ARPES(角度分解光電子分光)に関する入門書.ARPESの原理や実際の物質への適用例,そして近年の研究の進展について簡潔にまとめられている.というか弊研の事実上のバイブル.
(B9鈴木)
トポロジカル絶縁体に関する入門書.ながらも角運動量や第2量子化といった必要最低限の知識についてもよくまとまっている.トポロジカル絶縁体の基礎理論や実際のトポロジカル物質,そしてその他応用に触れられている.なかなか取っ付きづらいトポ絶縁体の概要をそこそこの密度でカバーしている良書.ただし数学的には若干ガバいところがあるので,より詳細な議論は野村さんの『トポロジカル絶縁体・超伝導体』を参照した方が良さげ(読んだとは言っていない).
(B9鈴木)
読んだら書く.
(B9鈴木)
読んだら書く.
(B9鈴木)
5章までざっと読んだ感想です。
量子論を使って固体中の電子が物性に与える影響を書いてます。なので結晶格子、逆格子の話だったりフォノンの話は扱われません。
ただ、他の本では注意されないような計算上のことだったり割と細かい話も載っているかなと思います。誤魔化されるような記述が少ないのが良いです。
途中計算を省いている分見通しもよくて読みやすいです。ただ、その代わり稀に計算が追いずらいです。まぁ、計算は他の本とかにも載ってるでしょうしどうにかなります。たぶん。
量子力学、統計物理学、第二量子化の準備もされるので一通り量力、統計を学んだ人なら読めるかなと思います。(実、逆格子やフォノンは他の本を見てください。)
(C0 工藤幹)
この本は、2010年頃に数年間、東北大学で開催されていた量子情報科学の勉強会での講義をもとに作成されたものです(謎の親近感がありませんか?)。量子情報科学の理論的な話について、専門の先生方が分担して書かれています。
この本は量子情報を勉強したい人にはもちろん、量子力学初学者にもおすすめしたい。量子情報科学という学問の性質上、従来の波動関数を使った量子力学とは異なる地点から理論を展開していく。それは解析学の知識がほとんど必要ないというメリットと同時に、線形代数の応用が波のように襲ってくるというデメリットがある。でも、この本では詳細な付録とともに、線形代数の応用としての量子力学が丁寧に解説されているので、ぜひ読んでみてほしい。
モチベーションアップのために言っておくと、近年は「量子エンタングルメント」という概念が素粒子でも物性でも大事になってくるようなので、量子情報は全物理学徒が身に付けておくべきキーワードになりつつある(はずです)。
(C0 千葉)
量子情報黎明期に第一線で活躍されていた先生方の書かれた量子情報の世界的名著。現在量子情報分野で活躍されている研究者は全員この本を読んでいると思う。2000年に初版が出たっぽい。調べたら英語版Wikiまであった。
そのため内容は量子情報について調べたらネットでヒットすることについては大概載っている。物理学科の人だったら3章のコンピュータ科学の話以外は問題なく読めると思う。ただ線型代数の線型空間論みたいな話に馴染みがないと初めは辛いかも。ランダウ・リフシッツみたいな難しさはゼロと言っていい。僕は1, 2, 4, 8, 9, 11, 12章をざっくり読んだ。本の感じは、量子情報がそれなりに数学に寄ってるのもあって、物理の本と数学の本の間のような語り口になっている(例えば主要な主張は命題、証明の形式で述べられるが、必ずしも定義、定理、補題、系が繰り返されるわけでもない)。著者が序文かなんかで強調していたが、わかりやすいモチベと具体例から必ず論を展開してくれていて心地よく読める。文中にある演習問題は結構気軽に解けるものが多いと思うので解くのをお勧めする。面白いので。
特に物理学科の人が読んだらためになりそうなのは2, 8, 9章。2章は量子論の公理みたいな話に触れたことなければ読むといいかも。8章はCPTP写像を扱っていて, 開放系とかに興味があると面白いかも。シュレディンガー方程式<->ユニタリ変換みたいな話があって、後者は連続時間記述ではなく量子ゲート的なイメージで状態変化を捉えているが、それの一般バージョンがCPTP写像、みたいな話(なはず)。9章はエントロピーについてで、フォン・ノイマン・エントロピーとかの基本性質をシャノンエントロピーと比べながら知れる。個人的に好きなのは8章で、量子状態が似ている、とはどういうことか、どう表現するか、については、量子状態について「距離」的なものを入れればいいと教えてくれる。シュレディンガー方程式をイジイジしているだけじゃ出てこない発想だと思う。
もちろん邦訳もある。ただ最近は上で紹介のあった量子情報科学入門だったり中田先生の書かれた量子情報理論だったり最新の邦書があるのでこれは第一候補にならないかもしれない。個人的には量子情報科学入門よりも数学数学していない気がしてとっつきやすかったのでこちらを主に読んでいる。あとこの本をみんな読んでいるおかげで量子情報してる大学教員に一発で話が通じるのはいいことかもしれない。
(C2 森)
かの有名な沙川貴大先生の書かれた本です。沙川・布能研究室のページに紹介があったので以下に引用します。
「情報理論におけるエントロピーの性質やその熱力学への応用を、古典と量子の両方について詳しく解説しています。エントロピーとダイバージェンス(相対エントロピー)の数学的な性質や、それと関連したフィッシャー情報量、マジョライゼーション(majorization)という概念をはじめとした行列解析(matrix analysis)の理論、確立の漸近論とくに情報スペクトル(information spectrum)や、それと密接に関連した量子仮説検定などについて、数学的な理論とその物理的側面の両面から解説しています。相互作用する量子多体系において非平衡熱力学ポテンシャルが創発するという定理(量子Steinの補題の一般化)の紹介をひとつのゴールにしています。」
Appendix Aの諸定理の証明以外は読みました。合計150ページもなく、比較的薄い本になっています。中身は数学書ライクで、基本的に定義、定理(証明)、補題(証明)、系(証明)がずっと連なっていて、標準的な物理学の本とは異なっています。多くの命題にはself-containedな証明が与えられていて、本当にすごいと思います。一方で中身をまともに分かろうとするには引用されている文献にもアクセスする必要があります。例えば5章では後の章で使う基本的な量子情報の枠組みについての解説がありますが、初学でこの本だけで理解するのは多分無理です。この本は優しくてどれもちゃんと引用があるので引用先まで見ると良いと思います。特に3章のBlackwellの定理の別証明として白石さんの論文が引用されているのですが、めちゃいい証明なのでこれは是非見てみて欲しいです。
全体的なテーマとしては、縛りのある操作のもとで、ある物理状態を別の状態に変化させることはできるか、またその必要条件/十分条件はどのようにして与えられるか、があると思います。縛りのある操作というのは熱力学で言うところの断熱変化だったり、等積変化だったりに相当します。例えば、田崎熱力学にあるように、熱力学において断熱変化可能性はエントロピーによって完全に特徴づけられます。つまり、エントロピーが大きくなる方向にしか状態は断熱操作では状態を移せないし、またエントロピーが大きくなる状態にはある断熱操作が存在して移すことができます。以上のような枠組みを古典確率分布だったり量子状態だったりに応用してみると、その必要条件/十分条件として面白い量(Renyi-α divergence)だったり綺麗な数理的な構造(majorization)が出てきます。その数理にもしっかり寄り道して解説してくれています。田崎熱力学のエントロピー原理(操作的な意味)を面白いと思ったり、リソース理論だったりに興味がある人にオススメです。
(C2 森)
東北大学理学部物理系の一年生の物理学Dの授業で使う本。
複素数、線形代数、ベクトル解析について物理で十分使える程度に解説してある。高校生でも難なく読める程度には優しい。この本を読めば古典力学、電磁気学、流体力学の基本的な部分は十分学べるようになる。
(C0 工藤幹)
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一冊で行列・ベクトル解析・常微分方程式・複素解析・フーリエ解析・ラプラス変換をかなりしっかりしたところまで踏み込んで身に着けることができる本。こんな広範な分野を(学部の物理で使うような解析については基本的に網羅されている)まとめるのは本当にすごい。これさえ読めばあとで数学書に入る時に門外漢という感じで入らなくて済む。これを軸にしながら各分野の専門書を一冊持っていればとりあえず授業で困らないような気がする。偏微分方程式についても要所要所で触れられており、読むたびにこの本よく一冊でかけたな……みたいな気持ちになる。より詳しく踏み込みたい人には最後の参考文献から各分野の本を探すのを勧めます。
C0 飯塚
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ベクトル解析についてイメージしやすいところから初めてしっかり学べる良書。最後の3章では学んできたベクトル解析が物理で生きる場面というのも見せてくれる。多様体を知っている人であれば曲線や曲面の定義でにやりとすること間違いなし。多様体を学んでから実際のイメージをつかむためにこちらを読むもよし、先に多様体という言葉をぼかしながらイメージしやすいベクトル解析を学び多様体へのナチュラルな接続をするのもよしです。数学パートが100ページ弱しかないのでスッと読めるのもよいです。夏休みや春休みにサクッと読んでしまいましょう。
C0 飯塚
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上に挙げた本と比較すれば読みづらいし難しいですが楽しいです。物理学の数学的側面に興味がある人にとってはとても刺さるものになると思います。上の本と合わせて多様体に出てくる基本概念、ベクトル場と微分形式の手触りというのを実感できる本だと思います。特に2章だけでも読む価値ありです。形式的に微分形式をとりあえず使えるようになるだけでかなり分かった気になれるはず。力学系やシンプレクティック幾何学へのちょっとした動機付けの話もあったりして幾何学楽しそう!となること間違いなし。ただ誤植が結構多いので気を付けて読みましょう、注意深く読む訓練にはなるはずです。
C0 飯塚
おそらく最もとっつきやすいリー群の具体例であるSO(3)について調べることを通してリー群、リー環にまつわる諸概念と基本的な解析方法について学べる本。ユークリッド運動群としての性質を持つSO(3)を調べることはすなわち軸の定まった剛体運動を調べることと同じであり物理学との接続も意識されていると感じる(後半にはローレンツ群も扱う)。基本的に大事なことは与えられたリー群を解析するときに重要なことは普遍被覆群を調べること、そしてリー代数の準同型を調べて表現を全て列挙することになる。そういったことを具体例を通して丁寧に追えるこの本は貴重と感じる。さらにリー群、リー代数についての一般論の後には複素表現についても扱っている。リー群やその表現論に興味のある大学二年生、三年生などが読む入門書としてこれ以上のものはないように感じる。(他に読みやすい本としては佐武先生のリー群・リー環の話、あるいは初めて学ぶリー群・リー環あたりだろうか?)
C0 飯塚
物理学科の人でも読めるくらいのレベルで数学をしてくれる本。
線形リー群、リー代数とその表現について数学的な知識が欲しい人は読んでもいいと思う。
C0 工藤幹
群論、表現論について物理への応用をメインに書いた本。
始めに準備として群、ベクトル空間、表現論の話をしてくれていて助かる。物理への応用としては回転群、点群、空間群、LCAO、分子振動、磁性空間群、相転移など様々な話題が載っている。
わりとフォーマルに書かれているのでフォーマルな書き方が好きな人は好きかもしれない。
ただ、数学としては記述が雑な気がするのと行間埋めがきつい所がある(私が愚かなだけ?)ので誰かと読むのもいいかもしれない。ゼミ向きではあると思う。
C0 工藤幹
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2×2行列から始めており、線型代数の諸概念について手触りを含めて理解することができる。第二部からは通常の授業で行われるような流れで展開されている。第三部では抽象的なベクトル空間の定義、双対空間や商空間といったのちの数学で呼吸をするように使うことになる概念について丁寧に解説している。リー群(線型)やホモロジーにも言及していたり、章終わりで近接概念への道しるべとなる本の紹介がなされるのも知的好奇心がくすぐられ飽きない構成となっている。最後の20章では量子力学についても触れられており、物理学徒にとっても楽しく読める良い本だと思う。難点は分厚いことだが抱きしめてやるにはちょうど良い。
C0 飯塚
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1章(実数論)の部分は少し読みづらいがここはまあ何を読んでも最初はしっくりこないものなので問題ない。それよりも1章最後にある一様連続関数の閉包への一意な拡張の証明について評価したい。εδ論法による証明で散見される本質的でない見栄えのためのδの器用な取り方への言及であったり、微分は別に微小量ではないですといった話だったりとかなり学習者への配慮を感じる。積分の取り扱いがこういった厳密な本の中では早いのも息切れしづらくて良い。あとめちゃくちゃ安い(2000円)のでとりあえず買っておいて損はない。こいつは抱きしめて寝ると表紙がすぐぼろぼろになるので気を付けるんだ。優しく抱いてやれ。
C0 飯塚
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松坂先生特有のやさしさ(あるいはくどさ)が存分に発揮されている。初学者、特に数学自体を初めて学ぶような人にとっても読めるようにはなっていると感じる(読みやすいとは思えないけど)。特に集合パートについては後にあげる内田がかなりコンパクトに書かれているのでこちらの方が読みやすいと思う。ただ、丁寧な分扱っているものが少なく、商位相なども書かれていた記憶がないので真面目に数学やるならこれだけでは足りない。まあ読み切っているなら必要になる概念はググればある程度分かるようになっていると思われるので問題ない気もする。ツォルンの補題と同値な命題について割と詳しく書いているのはとても楽しかった。新版の装丁は舐めているのでできれば古本で探そう。なんだあの海外のペーパーバックみてえな表紙はふざけてるのか。
C0 飯塚
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松坂の半分くらいしかない厚さがやる気を削がないですむよね。集合パートはかなりコンパクトで位相にかなり詳しい。こちらを読む場合は集合パートはそんなに気合い入れて読む必要はなくて、位相に入ってから真剣に読みましょう。演習問題もできるだけ触った方が良いです。新版になってから全部の演習問題に解答やヒントがつくようになっているのでとくに独習するような人でもちゃんと読めていいです。薄いってやる気に対しては重要だよね、特にこれ自体にモチベ持ちづらくない?みたいな本については。
C0 飯塚
読み終わった書きます C0 飯塚
1章は物理的なシチュエーションをもとに(つまりフーリエの経験に基づいて!)フーリエ級数展開の萌芽を見る。2章から本格的なフーリエ級数展開、フーリエ変換の理論に入るのだが、何よりも素晴らしいのはモチベーションをいつだって書いてくれることだ。なんのためにこれを考えているのか、証明はどのような流れに沿っているのかを明示してくれるおかげで数学書特有の暗闇をよくわからないまま歩かされて気づいたら山の頂上にいて非自明な結果を見せられる、といったことはない。優しい先導者は常に後ろを振り返りながら僕らがついてきていることを確認してくれる。行間のようなものも明示的にexerciseとして与えられている部分が多く(解答はないが)ただ優しいだけでなく身に着けられるような構成になっているように感じる。久々にLOVEかもしれない。
C0 飯塚
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群論について具体例や演習にたくさん触れながら学べるいい本。結構たんぱくなところもあるけれど例とじっくり格闘すれば分かるはず(ただ本当にたんぱくなので合わないと感じるなら有名な本だから自分が悪いのだと思わず別の本を探した方が良い。別に有名な本としては東京大学出版会の桂先生の本や、群環体入門などがある)。1章にあるよくある間違った証明の例やwell-defined性についてのお話も大変いい。準同型定理までがおそらく一つの目標になるが、もう少しだけ頑張って群の作用まで読んでおくと後の勉強するうえでは大変役に立つと思う(群を使う場面では基本的に群を作用させるので)。
C0 飯塚
とりあえず1章まで読みました。
やっぱりたんぱくだなという印象。赤雪江よりずっと読みづらい気もするけどそれは雪江先生の問題というか環論自体がストーリーがわりかし見えにくいことにありそうな気がする。要するに整数環Zとにらめっこしていろいろ抽象化をしようとしているわけなんだが。発展的な話題を時々挟んでくれるのはモチベーションにつながるしやはり演習問題が多いのは自学する上ではめちゃくちゃ有益です。
C0 飯塚
2章の環上の加群まで読みました。定義、定理、補題、系、例がずっと並んでいて、いかにも数学書っぽい本だと思います。随所随所にどうしてこういう定義にしたのかが初めて読むとわからないものがあって(群環、k代数など)、一人で読んでいたら自分は確実に挫折していました。赤雪江で触った写像のwell-definednessを気にしたり、準同型定理を使いこなしたりする機会が多くあって、腰を据えて読むといい訓練になります。個人的には環をイデアルで割ったものの同型の性質を見ることでそのイデアルの性質を眺めたり、全射準同型について準同型定理を使って環の同型が作れたりするところがすごいと思った。テンソル積をテンソル積の普遍性を使って定義しているのも、普段主として物理を勉強している僕にとっては印象的でした。
C2 森
物理学徒にとっては「入門だよ~.怖くないよ~」みたいなタイトルしておきながら実際は初心者狩り、みたいなのが蔓延っている数学書の世界で、まさかの入門への入門書が出てしまうという数学界の罪を感じさせる一冊です。(個人的恨み)
内容は準同型定理までで若干少ないですが、
・半群から話を進める
・演算表を多用する
点で特徴的です。個人的には演算表を使った説明がめちゃくちゃわかりやすく、特に準同型定理の部分は感動しました。パケ写詐欺ばかりの数学書の中ではキチンと入門です。ところで、物理をやらず群論の魅力にとりつかれた者を「群論病」というらしいです。深入りせずに群についてサラッと学べるので、入院したての群論病患者にはオススメです。
C2 石井
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集合位相に始まり、基本群と被覆空間、単体的複体(なぜかホモロジーにはつなげない)、多様体、ホモロジーとドラームコホモロジー、リーマン幾何学と学部でやるような幾何学を全部網羅している。全体的なつながりというのを感じることはなかなかないのでこういった本は稀有。まとまっている分、モチベーション的な部分は書かれていないので各分野の本の序章とかを読むと気分もいいと思う。ゼミ向けかな。ただ物理屋さんの幾何学の本といえば中トポがあるのでこちらを読むのはもっと数学したいという人になると思う。ホモロジー、曲線曲面論はあまり扱っていないのでそれはほかの本で補う必要がある。集合位相のパートが大変まとまっているのでこういう本でサクッと学ぶのはめちゃくちゃおすすめ(松坂とか内田とか読むのだるいじゃないですか)
C0 飯塚
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読んでいてかなり楽しい微分幾何の本。いきいきと書かれているしとてもコンパクトで良い。いわゆるブルバギ式でないので定義や命題をじぶんでしっかり確認しながら読んでいくといいと思います。微積と線形をそれなりに知っていれば読める難易度で楽しい幾何学の話ができるので大変おすすめです。特にガウスボンネの定理は感動します、絶対。序盤に結び目に関する微分幾何的なアプローチが書かれていたり、Fenchelの定理の証明が書いていたりと最初だけ読んでも幾何学に興味が持てるようになるはず!
C0 飯塚
1年生くらいから読めそうな代数トポロジーへの入門書。主に単体ホモロジーについて書いてあってこれより詳しい本はおそらくほとんどない(単体ホモロジーだけでホモロジーの公理を示すのは非常に面倒で大体は特異ホモロジーとの同型を用いて示されるがこの本では単体ホモロジーだけ使って頑張ってホモトピー公理とかをゴリゴリ示してる。かなり珍しい)。メインは2章から5章までの単体ホモロジー話だけど、2章頭の群論・加群の一般論や基本群パートも分かりやすい。かなり計算も丁寧にしてくれているので行間で困るということもそれほど多くはないと思う。ただ、記法が少し独特なような気もするのでいろいろ見ながら書き直してみてもいいかもしれない。前提知識はほとんど必要ないといってもいい
C0 飯塚
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本当に前提知識なしで読める多様体の基礎。補助輪つけて自転車乗るようなもの(優しいけれど決して易しいわけではない!)。とても丁寧に基本的な概念が紹介されていて読めるけれども実際物理で使おうってなった時にぶん回せるようになるかといえば結構疑問ではあるし、丁寧な分流れが見づらいという側面があったりする。使えるしわかりやすい多様体の本としては後で紹介するTuの多様体を勧めます。あと1の分割の章は僕は嫌いです。σコンパクトを使わないでほしい。あとこれに書いている商位相の定義は一般的なそれとは違います(まあ同じですが)。数学書を読むのに慣れていない人でも数学書を読むことができるくらいに優しく書かれているので多様体を知りたくて背伸びした1年生などには勧めたい本ではある。
C0 飯塚
集合位相や群論から丁寧に書いている基本群の本。基本群の導入あたりまでは非常にわかりやすくマジで前提知識ゼロで読めると思います。ファンカンペンからはかなり厳しいんですがこの本がどうこうというよりは群の表示や融合積というちょっととっつきづらい概念を通る必要があるがゆえの厳しさなのでとりあえず見るだけ見てみるといいかもしれません。基本群の雰囲気自体はガロアの夢などの本を読んでみるとかなり気分が分かっていいと思います。またファンカンペンはアーベル化すればただのMayer-Vietoris系列でこっちの方が多少とっつきやすい感じがあるのでこっちを先に見てから戻ってきてもいいかもしれません。
C0 飯塚
Morse理論の非常に入りやすい入門書。1章とかかなりお気持ちで書かれているので雰囲気を掴む分にはいいと思います。わりと難しい定理を感覚的に説明して使いつつ基本的なモース理論の話を分かりやすく書かれていて導入としては満点です。丁寧にちゃんとした議論を追いたい場合はミルナーのモース理論や横田先生の多様体とモース理論を参照した方が良いです。ただこれらの本と違うのはハンドルの話だったりKirby計算の話だったりというモース理論の低次元トポロジー方面への応用が書かれているのでモース理論だけでなく低次元トポロジーに触れるという点でもとっても素敵な本だと思います。ポアンカレ双対はハンドルをひっくり返しているという説明はかなりグッときました。
C0 飯塚
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1~3章は多様体の定義へのモチベーションについて。初めて多様体の定義を見たときに変換の微分可能性がそんなに腑に落ちない人は多いと思いますが、この本ではその部分がどのように生えるかすごく丁寧に追っています。全体的に一般的な多様体の本とは違う話題を採用していることが多いので知識を増やす意味でも読んでみてもいいかも。坪井先生の本あるあるですが、演習が豊富なのと授業動画(こちら) の存在が独学数学徒の強い味方になっています(結構ハードで心折れますが……)。あと授業動画は古のものなので画質はまあ御察しです。心の目で見ましょう(教科書見ながらなら追えます)
かなりマニアックな話題まで取り扱っていて(モース関数の存在や道空間の位相、ホップリノウにも言及があるし、サードの定理の証明の概要まで書いてる。書きすぎ)かなり独特な雰囲気がある。多様体をより詳しく理解したいのであれば二冊目以降に勧めたい本。
C0 飯塚
ホモロジーを公理的に導入する初学者をいじめる本。第2章にホモロジーが公理的に導入され6章までは公理から言えることが基本的に続く。初学者に向いている本とは思わないがかなり論理的に詰まった本なので代数トポロジーを真面目にやりたいならお勧めできる本。演習もたくさんあるので訓練にはなる。より初学者向けの本だと上に挙げたトポロジーや舛田先生の代数的トポロジーとかだろうか。あとはHatcher先生のAlgebraic Topologyも初学者でも読めそうだとは思うけどさすがに重すぎる気がする。
C0 飯塚
かなり読みやすい印象(1/3しか読んでない)があって多様体だけやっても全然楽しいことができないけどこれくらいまで見るとなるほど面白いとなってきそうな印象。1、2章は多様体と微分形式の導入。3章はドラーム(例にもれず三角形分割の存在について言及はなし)、4章はホッジ理論(重要な分解定理についてはFactになっている)、5章と6章は特性類。面白い話がたくさん載っているので多様体を勉強した後に他にどういう発展があるのかを見るのには非常に良い本のように思える。ドラームとホッジ理論をきっちり追いたくなったらWarnerのFoundations of Differentiable Manifolds and Lie Groupsを、特性類についてはDifferential Forms in Algebraic TopologyかDifferential Geometry、あとは同じく森田先生の特性類の幾何学やミルナーの特性類講義あたりが有名かな?(挙げた本はまだ読み終わってないあるいは読んでないのでおすすめというのはできないですが)
特性類のところとか読んでて思ったけど証明がかなり微妙だったり、接続形式を導入したのにこれを軸にしないで接続から接続形式が決まるのを毎回確認させてくるのでちょっとわかりづらい感じがする。チャーンヴェイユ理論という曲率形式と不変多項式から特性類を導入する微分幾何学的アプローチをしているのだが、それでいえばTuのDifferential Geometryの方がとっつきやすいような印象を受けた。たくさんの話題を入りやすい話からしてくれているので幾何学面白話導入編としてはよさそうだが真面目に読まなくていいかなという感じ。
C0 飯塚
面白い話題がちょいちょい書いてある。正則値の議論使って代数学の基本定理を倒したり(こいつは任意の分野で倒されている、かわいそうな試金石。ちなみに倒し方はリーマン球面をS^2と同一視して多項式写像の正則値のファイバーが定数であることを使って殴ります)、サードの定理の証明が載っていたり、1次元多様体の分類が載っていたり。ブラウアーの不動点定理の証明もかなり面白いですね(途中で1次元多様体の分類を使います、強い主張使いすぎじゃないですか?)。滑らかな関数で基本的には話をしますがブラウアーは連続写像に関するものでここではワイエルシュトラスの近似定理を使います、こういうのは身に着けたい議論ですね。コボルディズムも最後には扱っているのですが、これは5次元以上のポアンカレ予想をいっぺんに倒した理論の種なので触っておくと面白いことが聞けてよさそうです(この理論自体をやりたい場合は田村一郎の微分位相幾何学やミルナーのLectures on the H-cobordism Theoremが有名です)。
C0 飯塚
多様体をやったらぜひモース理論をしてほしい。高校生の時に関数のグラフを微分が0の点を調べることでおおまかな形が理解できることを勉強したと思いますが、それの多様体バージョンです。つまり多様体から実数へのある種の良さを持つ関数の微分が0になる点を調べることで多様体の位相的構造が確定するという感じのお話です。第二部ではリーマン幾何学の速成、第三部からはループ空間や対称空間への応用が書かれています(これによりBott周期性というホモトピー群の周期性についての結論が得られます。これはトポロジカル物性でも出てくるみたいです)。簡潔に書かれているのでちゃんと読むのはかなりつらいですが面白い幾何学への入り口なのでぜひ。第一部のモース理論パートは横田先生の多様体とモース理論、松本先生のMorse理論の基礎、第二部と第三部は西川先生の幾何学的変分問題が副読書として有用だと思います。第四部は何もわからない……
C0 飯塚
和訳もあります、誤訳も聞いたことがないし本文中の誤りを訂正していたりするなどかなり評判もいいため無理して原著で読む必要はおそらくない。多様体の基礎よりも少し難易度は高いような気もするけどとはいえ初学者向け、こちらは数学書を読むのに多少心得のある人向けかな。あとにつながる話題も豊富なので読めば多様体での遊び方が身につくような気がする。基本的な事項に加えてリー群やリー代数、ドラームコホモロジーも詳しく書いている(Mayer-Vietoris系列も非常に丁寧に書かれていて露骨にBott Tuを意識している感じ)。Tu先生の後に続く本にもよく接続(微分幾何ではない)するような感じ(Bott TuもそうだけどDifferential Geometryの方も)。
本当に丁寧で多様体上の関数、写像の滑らかさの定義のあと、アトラスや任意のチャートで定義してもオーケーという確認を丁寧にしています(正直そんな過保護にする必要ある?という感触はありますが)。あとは商空間の部分とか結構丁寧で感心しましたね。有限変換群による商についてであれば坪井多様体、また良い群作用による商についてなら微分形式の幾何学にも書いていますがTuは商空間全般についてかなり丁寧な記述があっていいです。あと正則部分多様体はめ込まれた部分多様体の区別、階数一定定理とかもしっかりまとまって書かれていて非常に好です
C0 飯塚
多様体についてめちゃくちゃまとまっている。多様体・微分形式・リー群・多様体における積分・層とコホモロジー・ホッジ理論と発展的話題につなげるための多様体の話がしっかり全部書かれている印象。めちゃめちゃまだ序盤だけどめっちゃ読みやすいので多様体の基礎とかTuとか読んだ人が次に読むならこういう本かなあという印象。多様体パートはまとまっているがかなり丁寧に書かれている印象なのでこういった形できっちり頭に入れることができればかなり力になるといった印象、微分形式はかなり純代数的にテンソル積が導入されて結構びっくりしましたね。こちらは部分多様体ははめ込まれたものとして導入されていてはめこまれた部分多様体も局所的にはスライスが取れる(つまりは局所的には正則部分多様体)ことが書かれています。これを根拠に閉部分多様体上の関数を大域的な関数として拡張できることが言えてこれは結構重要です(滑らかさを要求しなければ閉集合上の連続関数を大域関数にするティーツェの拡張定理があります。この場合は位相空間が正規である必要があります。多様体(第二可算を課して)は正規なので問題ないです。多様体が正規になることの証明もこの本の演習で出てきますね)
とはいえ、かなりハードな本で一人で読んでると辛いです。de Rhamの定理というのがあってこれは基本的には三角形分割を根拠に証明されがちなのですがこれ自体かなり非自明で(坪井微分形式の末に10ページくらいの証明の概要(!)が載っています)これによらない層係数コホモロジーを通じた証明が書かれていて非常に稀有な本です(層係数コホモロジーとかを通じてde Rhamの話をする本だとBott Tuとかもそうですね。二章のチェックドラームの章がそれです)。
6章のホッジ理論については早稲田大学の本間先生が講義ノートをネットに挙げているのでこちらを参照しながらだともう少し分かりやすいかもしれません。
C0 飯塚
1章はわりかし基本概念の復習って感じで耐えている。代数トポロジーどこ?という感じではある。楽しい本で気負わずに読んだ方が良いんだが、知識ない状態なので軽やかに読むだけでもカロリーの消費を感じる。1、2章はドラームコホモロジー、チェックコホモロジーで遊ぶ方法がたくさん書いている。ポアンカレ双対について閉部分多様体とのつながりも詳しく書かれていて(この本以外にあまり見ないような気がする)、あとあと交叉形式とかやるときに役に立つらしいけど何も知らない。3章はスペクトル系列、4章は特性類と続く。特性類理解したい。
3章のスペクトル系列なんですがかなり雑に定義がされていて収束性のところもそのあとの定理の証明の意味する収束とは異なっています(inclusion mapが各filtrationでは止まりますが全体として有限で止まるとは限らないのでその直前の定義とは意味が異なります)。ほかの本とかを参照して定義とかは確認した方が良いと思います。全体的に定義がかなりお気持ちっぽくてそこはかなり困りますね……
C0 飯塚
抽象的な議論と古典的な微分幾何学をいい感じに行ったり来たりしてくれていそうな本。Bott Tuは結構難しさがあるんですがあれは多分Bottのせいです。Tu多様体もそうですがTu先生は本を書くのがうまい。徐々に接続が進化していくので分かりやすい気がします(普通の接続が導入され、ベクトルバンドルとかになっていくにつれ接続形式としての接続の話をしていきます)。最後はチャーンヴェイユ理論による特性類の導入ですね。
C0 飯塚