SYMPOSIUM 2012
メディア・コミュニケーション研究所・大学図書館共催
連続講演会「活字の世界を楽しむ」
第1回 「書籍は情報ではない」 (2012年10月18日)
作家・法政大学日本文学科教授 中沢けい氏
書籍、特に文学作品は、まず雑誌に掲載され、単行本になり、文庫本となって形成されていくのが一般的なプロセスである。そのプロセスにおいて、装丁、挿画、活字にもそれぞれの製作者がこだわりを持ち、それらが総合されて書籍という作品を作り上げていく。書籍はそのプロセスにおいて、内容も、装丁も変化していくことがあるが、作家という立場からみると、単行本になった時点で完成したと考えることができる。
情報とは、刻々と変わるものであり、わかりやすさは問われるが、美醜は問われない。それに対し、文芸作品は美醜が重要な要素であり、作品全体のフォルムによって伝わるものがある。作品はただの文字列としてのテキストではなく、独立した世界を持ったものとして、作品の受容を豊かなものとしている。
第2回 「電子書籍」 (2012年11月12日)
岩波書店 渡辺勝之氏
2011 年ごろから、マスコミで「電子書籍元年」と騒ぎ始めた。日本の出版業界では一種の脅威として受け止めた印象がある。岩波書店でこの新規部門を担当してきた渡辺氏によれば、「電子書籍元年」はすでに3 度にわたり取り沙汰されてきた。
ウィンドウズ98が販売された98年以降、富士通が広辞苑のCD-ROMの入ったパソコンを大量に売り出した。ケータイ系なども含めて辞書機能がネットの世界にも広がる。「ここで出版業界は見誤った」と渡辺氏は指摘する。「新聞社がただで記事情報をネットに流していたので、出版社もただで辞書を載せた。辞書をネットに載せたら、その余波で本(書籍)もネットで売れる、と出版社は誤解した」。
今回の「電子書籍ブーム」は多分にマスコミ先行のはやし方が目立った。無論、海外からキンドルなどの日本市場参入の外圧を受けて、波風が立ち始めたのは事実である。それでは、ネット書店の世界が確実に広がっていくのだろうか。
第3回 「漢字を感じる」 (2012年11月24日)
名古屋市立大学特任教授 守誠氏
ベスト・セラーが売れるためには「作家」の力はたったの5%だと言い切る。ご自身が書かれたベスト・セラーの本を数冊教室の前に並べ、「これが売れるために作家の力はたったの5%、それ以外の部分はそれを売ろうとする会社の宣伝にかけられる財務力や、編集者の力量なんですよ」という。「俳優もタレントも作家も、有名になるためには、彼らを見出し裏で育てた人たちの力が9割です。俳優も作家も、当人たちは掌の上で踊らされている存在なんですよ」。
先生によれば、OECDの予測では西暦2060 年の世界では、インドと中国が世界のGDPの48%を占めるようになっているだろうという。先生は、我々は歴史的背景を自分の頭で考え、時代の行き先を見据えて自分の知識や行動を決定していくべきであるというお考えを何度も示された。
→詳しくは「News letter vol.3」をご覧ください。