24回 見えているのに「見えない」不思議

 この絵を見てください。何の絵に見えますか?ある人は「おばあさんの絵」と答え、また、ある人は「若い女の人の横顔」と答えるでしょう。我々は目(視覚)を使って物(外界)を見ていますが、最終的に何が見えているかを判断(認知)するのは「脳」になります。目は、信号を感知するセンサー(感覚器)でしかないということです。

ここで考えなければならないのは、「同じ物」であるにもかかわらず、「人によって見えるものが全く異なる」、「見かたによって見えているものが全く異なる」といった現象が起きることです。まさに人は「その人なりの色メガネ」をかけて外界を見ている(認知している)と表現することもできます。言い換えれば、物事の本当の姿を見極めることの難しさ、本当の価値を見極められるようになるためには、「脳」すなわち「ものの見方や考え方」を鍛えなければならないということなのかもしれません。

新年を迎え、心機一転、新たな飛躍のときです。創立者の井上円了先生は、哲学による日本人の新たな「ものの見方や考え方」が必要と考え、東洋大学の前身となる私立哲学館を創立しました。色々なことが見えるようになるために、物事の本質に迫ることができるように、東洋大学での学びや学生生活を充実したものにしてください。

\この記事を書いた人/

副学長 東海林克彦

公開日:202411