第21回 大学と地域連携

 本学の地域連携は多様で、学部、学科、研究科ごとに様々な活動が行われています。今回は国際学部国際地域学科がコアになり全学に声をかけて行われている地域連携の一例を紹介します。

それは石川県能登で展開している「能登ゼミ」です。2012年から始まり、途中新型コロナウイルス感染症の流行により中断がありましたが、足かけ12年間交流が続いています。夏季休暇を利用して能登の各地で学生が民泊をしながらの生活体験を通し、過疎が進む地域の現状を知り、地域の皆さんと一緒に将来を考えて、都市生活者である学生の観点から地域の皆さんへ将来に向けた提案をするというものです。自然環境をはじめとして、人と人とのつながり、紐帯の強さ、都市では失われているコミュニティの存在など、地域では当たり前と捉えているものが、学生からみれば豊かな地域資源として捉えられ、能登がその宝庫であることを伝えています。

「能登ゼミ」の一例として、羽咋郡志賀町鵜野屋および地保で2015年から続いている秋の例大祭の支援活動を報告しましょう。今年の9月2日に開催された例大祭では、東洋大学の他に地域づくり研究の仲間が勤務する金沢大学、北海学園大学、そして本学の協定校であるオーストラリアのカーティン大学の学生、関係教員、過去に「能登ゼミ」に参加した卒業生とその家族、総勢66名以上が集合しました。その時の様子は北陸中日新聞(「学生ら担ぎ手におかえり」)、北國新聞(「能登ゼミ学生 担ぎ手に」)に取材され、記事(9月3日掲載)になりました。ふだん家にこもりがちなお年寄りが、この日ばかりはまつり広場に出てきて、神輿を担ぐ学生たちに大きな声援を送ってくれます。その時の笑顔がすばらしく、それに勝るものはありません。参加して良かったと思う瞬間です。

これまでの交流を振り返ると、短期間の交流かも知れませんが多くの学生はリピーターとなって能登を訪れています。限界集落で中断していた伝統行事が、学生が参加することによって復活し、地域に活気が戻るこうした経験がきっかけとなって「能登ゼミ」生の7人が石川県にIターン就職をしています。地域資源を見直すことでIターンのみならず故郷へのUターンも期待できるのではないかと考えています。

学生は卒業していきます。しかし地域の期待は続きます。大学と地域連携の条件は、一過性に終わることなく「継続」することだと思います。それが大学の役割だと考えます。


\この記事を書いた人/

学長 髙橋一男

公開日:2023年10月1日