2024.09.19|Thu.
【活動報告】パリオリンピックにおけるサポート活動(江田 香織准教授)
2024パリオリンピック、パラリンピックが開催されたことは記憶に新しいかと思いますが、皆さんもご覧になられたでしょうか?私はこの大会で「ウェルフェアオフィサー」としてパリオリンピックに行ってきましたので、ご紹介させていただきたいと思います。
2021年11月に国際オリンピック委員会 (IOC)は、北京2022冬季オリンピック以降全てのオリンピック、ユースオリンピックにおいて、このウェルフェアオフィサー(WO)を各国から派遣することを決めました。これを受け、日本オリンピック委員会(JOC)はウェルフェアオフィサーを「選手団全員のメンタルヘルスを守る心の専門家(メンタルヘルスケア)と選手団全員に対して、スポーツの場面でのあらゆるハラスメント(嫌がらせなど)や暴力から保護する専門家(セーフガーディング)」と定義し、2022年北京冬季オリンピックから4大会にわたり、WOを派遣してきました。私自身は最初の2大会は裏方として準備に関わり、後半の2大会でWOとして現地でサポートを行いました。
諸外国は、すでに心理学の専門家が選手村の中に入り、心理サポートを提供してきた一方で、日本は、WOが設置されるまで、そのような専門家が選手村に入ったことはなかったため、日本のスポーツ心理学においては大きな変化となりました。
パリ大会でのアスリートの心理支援はWOだけでなく、環境的な支援もありましたので、最後にこちらもご紹介いたします。選手村内にあるトレーニングルームの隣に瞑想をすることができる部屋が用意されておりました。ここでは、VR(仮想現実)ゴーグルを装着し、心が落ち着く映像を見られるコーナー(写真)や、特製のハガキ(写真)が用意されておりました。このハガキには、すでに切手が貼られているため、その場で親しい人へ手紙を書いて投函することができます。私自身はカウンセリングやメンタルトレーニングを専門としているため、どういったかかわりや技法がアスリートの心理支援に役立つのかという点にばかり注目してしまいますが、瞑想や手紙を書くといった作業は選手自身がご自身の心の内側と向き合うことを促す体験であり、これもまた心理支援の一つのあり方であると学びました。