遊び中心保育の意義2 鬼ごっこ
平成28年6月24日号
平成28年6月24日号
保育園で最も人気のある遊び。それは、何といっても鬼ごっこです。毎日のようにいたるところで行われています。ところが、あまりにありふれているので、そこに隠れた学びの要素が見落とされがちです。今回は以下の二点に絞ってお話ししましょう。
【総合的な運動能力】
鬼ごっこをしていると、様々な体の動かし方をします。まっすぐ走る、ジグザグに走る、障害物をよけながら走る…などなど。走るという動作だけでも、これだけたくさんあります。
他にも、急に止まる、方向転換をする、すべり台を逆向きに上る、秘密基地の下の迷路を這って進む…まさに全身運動であり、同時に瞬発力や持久力も身に付きます。
それに対して跳び箱や鉄棒のような単一の運動はどうでしょう。「できた」という成果が一目で分かります。また、跳び箱だったら3段、4段、5段というように、上達の過程も目に見えます。鬼ごっこよりも高度なことをやっているように見えますね。でも実は逆なのです。
単一の運動では、限定された運動能力しか身につきません。鉄棒だけをやっていても、鉄棒ができるようにはなりません。鬼ごっこのような外遊びをして十分に全身を動かすことで、体が総合的に発達し、その結果鉄棒もできるようになるのです。
【創造性、主体性、協調性】
年長児くらいになると、「タッチ返しはなし」というような独自のルールを作ることもあります。鬼ごっこのルールというのは、行動の規制という後ろ向きのものではなく、楽しさの源泉であり、創造性や主体性を必要とするものなのです。
また鬼ごっこでは、たびたびトラブルが起きます。「タッチされたのに止まらない」「ぼくばっかり狙ってずるい」年齢が上がるにつれて、次第に先生に頼らずに子供だけで解決することを覚えていきます。こうした経験を積み重ねることで、子供は他者との関わりかたを学んでいきます。
最近小学校では、アクティブラーニングという学習形態が徐々に取り入られつつあります。一方的に先生が教え込む形式の授業に対する反省から、子供のグループ活動等を通じて主体的で対話的な深い学びを発動させようとする試みです。
「仲間と協働して遊びの場を形成し維持していく力」というのは、まさにアクティブラーニングを効果的に進めるうえでの基盤となる力だと思われます。つまり、「ただ遊んでいるだけ」に見える鬼ごっこを通じて、実は知らず知らずのうちに、小学校で学習を始めるための基礎力が身に付いているのだと言えるでしょう。