遊び中心保育の意義1 読み聞かせ
平成28年5月25日号
平成28年5月25日号
当園では子供が「遊び」を通して学ぶことを大切にしています。「文字の練習」のような単一の内容に特化した学習活動に比べ、「遊び」の中には学びの要素が複合的につまっています。
しかしながら、それら学びの要素は隠れているため、一見すると「ただ遊んでいる」ように誤解されがちです。そこにどんな教育的効果があるのか理解されていないことが多いように思います。
そこで、子供が保育園で行っている「遊び」を取り上げ、その中にある教育的意義について具体的に説き明かしていこうと思います。
まずは「読み聞かせ」です。当園では図書室にある約3500冊の絵本の蔵書を活用し、毎日必ず絵本の読み聞かせを行っています。子供に絵本を読んであげるなんて、取り立てて語るべきことではないと思っている方もいるかもしれませんね。ところがそうではないのです。
読書力の形成
たっぷりと読み聞かせをしてもらった子は、本を読む子に育ちます。読み聞かせによって、読書力の基盤が身につくのです。本を読む子に育てるための最も近道は、毎日の読み聞かせです。
「いつまでも読んであげていては自主性が育たない」という説もあるようですが、完全な間違いです。少し字が読めるようになったからといって、自分で読むことを強制してはいけません。そんなことをすれば、せっかく芽生え始めた読書への意欲を摘み取ってしまいかねません。
読み聞かせを続けていれば、「自分で読んでみたい」という意欲が風船のように膨らみ、ある日はじけるように自分から進んで読むようになります。焦りは禁物です。
ところで、なぜ本を読むことがそんなに大事なのでしょう。それは、読書が学習のためのエンジンになるからです。今後技術革新がどれだけ進んだとしても、本を読む(=まとまった量の文章を読解する)ことが知識を得るための最も有効な手段であり続けることは間違いありません。
非認知能力の育成
読み聞かせという営みは、読み聞かせをする大人と子供との相互作用です。決して受け身の行為ではありません。主体的・能動的に読み聞かせに参加することで、実は小学校に上がってから学習を進めていく上で大切な能力が身についていきます。
「先生の話を集中して聞く」「根気よく机に向かって勉強をする」「興味・関心を持って学習に取り組む」などといった数字では測りがたい力です。最近ではこうした力を非認知能力と呼んでいます。
小学校の学習を先取りして、幼児のうちから学力(認知能力)を高めようとする考え方は、もはや完全に時代遅れとなりました。欧米先進国で研究が進み、近年特にその重要性が叫ばれているのが非認知能力(集中力、根気など)の開発です。実はこれは、「遊び」を通して学ぶ日本の伝統的な保育が大切にしてきたことに他なりません。
紙幅が尽きました。これら以外にも「言語能力の発達」「自己肯定感の醸成」「豊かな情緒の涵養」といった教育的意義もあるのですが、詳しい話は別の機会にゆずることにしましょう。来月は別の遊びを取り上げてお話しします。
お楽しみに。