夜の園庭で

暗くなった園庭で、アリとダンゴムシが何やら話をしています。

ダ 「アリ君、どうしたの、浮かない顔で?」


ア 「このところ残業続きなんです。」


ダ「 巣作りも大変だね。」


ア「 うちの社長、いや女王、アリ使いが荒くて。先週なんか休日出勤ですよ。」


ダ「 大変だねえ。私たちの場合、嫌になればすぐに丸まって、ストライキ!」


ア「 昨日はK君に巣が見つかってしまい、砂で埋められたり、水を入れられたりで。」


ダ「 ところで、先週保育園に来たザリガニさんたちはどうしてるかな?」

二匹は、ザリガニが住処にしている大きなプラスチック容器によじ登ります

ダ「 あんなにたくさんいたのに、姿が見えないぞ。」


ザ「 こ、ここにいるよ。とうとう僕だけになっちゃったよ。」


ア 「ずいぶん痩せ細って。いったい何があったんだい?」


ザ 「きりん組のN君やことり組のMちゃんが、僕たちとたくさん遊んでくれたんだ。だけど、はさみを引っ張っぱられたり、砂をかけられたりして…。」


三匹 「(ため息をつきながら)もう、こんなひどい所に住むのはやめようか…。」

その時、三匹の後ろに黒い影が現れました。

ザ 「あっ!ゴキブリ仙人さま!」


仙「 オッホン。若者よ、子どもと遊ぶのがそんなに嫌なのかい?」


ア「 子どもは大好きです。ただ、もっと優しくしてくれればいいんだけど。」


仙 「子どもが君たちに興味を持つのは、とてもいいことなんじゃぞ。生き物と遊んでいれば、間違って死なせてしまうことだってあるんじゃ。本当の「命の大切さ」は、知識として教えられ るもんじゃない、失敗を重ねながらでも、直接触れ合うことでしか得られないんじゃ。」


ザ「 分かりました、仙人さま。ゴキブリに比べたら僕たちの方がましなんですね。」


仙 「いや、そういうことじゃなくて…」


ア 「そうそう、ゴキブリに比べたら、子どもとたくさん遊べる僕たちは幸せだ!」


仙 「だから、そういうことじゃなーい。」

翌日の昼ごろ、K君が最後のザリガニが死んでいるのを見つけました。RちゃんやNちゃんたちが、N先生と一緒にザリガニのお墓を作りました。「今度はもっとうまく飼えるといいな」。

ちなみに保護者の皆さま、保育園にゴキブリはいません…いないことになってます…たぶん。