たき火
平成29年1月25日号
平成29年1月25日号
天気予報が当たりました。朝の園庭に白いものが舞い降りてきます。あっという間にメルヘンハウス(一階建ての小屋)の屋根が真っ白になりました。
「寒いから、たき火でもしたいねえ」というA先生の提案に、「いいね、いいね!」と子供たちが応えます。縁側の下から簡易かまどを出してきて火をおこします。こんな時のためにと集めておいた小枝や材木の切れ端が役に立ちました。
たき火の周りを囲むように、小さなベンチを並べます。ベンチに座りきれなかった子は、バケツやカゴを持ってきて椅子代わりにします。
かじかんだ手を火にあてると指先が温かくなってきました。体もポカポカして、なんだか心までウキウキしてきました。ぞう組(年長児)の女の子たちが音頭を取って、歌が始まります。「雪やこんこ、あられやこんこ♪」「垣根の垣根の、曲がり角~♪」歌詞がおぼつかないうさぎ組(年少児)のY君やSちゃんもうれしそうに歌っています。
歌が終わるころ、両手を後ろに隠したMちゃんが近づいてきました。小さな雪玉をたき火に投げ入れます。「あっ!」周りにいた子供たち息をのみます。恐る恐るたき火をのぞきこみます。雪玉はすぐに溶けてしまいました。
「もっとたくさん入れてみよう」RくんやSちゃんも手伝って、スチール製のボウルに雪をつめて火にかけてみます。今度はなかなか溶けません。みなで見守っていると次第に水になり、しゅうしゅうと湯気を上げ始めました。
気が付くと、帽子の上にも雪が積もっています。「そろそろ部屋に入ろうか」と先生が促しても、子供たちは一向に腰を上げる気配がありません。たき火から離れたくないのは、暖かいからだけではなさそうです。
にぎやかだった会話がふっと止まりました。一瞬の静寂が訪れます。子供たちは火を見つめたまま動きません。思索にふける小さな哲学者みたいです。
最後の薪を火にくべると、誰かがため息をつきました。ため息は白い結晶になって空に吸い込まれていきました。