皆さんは、「日本語訛りの英語」や、逆に「英語訛りの日本語」というものを聞いたことがあるでしょう。前者は、日本語話者が日本語を話す時の発音の癖で英語を話してしまうこと、後者は英語話者が英語の発音の癖を引きずったまま日本語を話してしまうことです。どちらも完全にコミュニケーションが成り立たない訳ではないかも知れませんが、不自然な発音ですし、(時には深刻な)誤解を招くこともあります。
そこで必要になるのが、音声学の知識です。
音声学は、人間の話すことばの音声はどのように作られているのかを教えてくれる学問です。音声を作る仕組みとして肺、喉、そして舌、唇などの器官があり、それらをどのように動かすとどのような音が出るのかを教えてくれます。音声学を学ぶと、自分の口の中の舌や唇などをより敏感に意識できるようになり、外国語の発音を学ぶ際に、「この音は日本語の○○の発音と同じ」という感じで発音するのではなく、(例えば)「この音は、上の歯を舌先に軽く乗せて出す音」とか「カールさせた舌先を口の天井に付けて出す音」という感じで理解して、発音練習ができるようになります。
「音声学」というキーワードを含む授業を履修するとか、「音声学」をタイトルに含む分かりやすそうな本を探して読むなどして、ぜひ音声学の知識を使って外国語の発音練習に取り組んでみましょう。
【おススメの語学学習法】
1.音読のススメ
授業で使用する教科書や、自分が学んでいる外国語で文学作品(小説の一節、劇中のセリフ、詩、歌の歌詞でもなんでも)を、内容を理解した上で、大きな声で音読してみましょう。音読は、スピーキングとリスニング(自分自身の発音を聞いているため)を同時に鍛える効果的な練習です。また、発音は筋肉運動ですから、大きな声で発音することで、口内筋肉がその外国語の発音に馴れていきます。もちろん、ただ声を出すのではなく、読んでいるテキストの内容を頭に思い浮かべながら音読するのです。みなさんの思考の歯車がその外国語で回るようになるかも知れません!
起床時、最初に外国語で音読する習慣をつけると効果的です。
2.辞書のススメ
辞書を手に入れましょう。単語が持つ意味は、文脈に応じて広がります。英語を例に挙げると、 ‘study’一つ取っても (1)研究、学問、学業、(2)勉強、勉学、学習、(3)科目、学科(4)書斎、等々(『ジーニアス英和辞典』(6版))と多様です。分からない単語の意味を調べる際に、読んでいるテキストの文脈に応じた意味を選択しなければなりません。各単語が持っている意味の一覧とそれぞれの用例を示してくれるのが辞書。電子辞書でも、インターネット辞書(インターネット上の翻訳機能ではないので注意)でも良いですが、紙の辞書は、意味がずらりと一目で分かる形で並んでいるので、重いけれどお勧めです。
3. 辞書不使用のススメ
外国語のテキストを読んでいて、意味の分からない単語があってそれがテキストの理解を妨げることがあります。その都度辞書を引いて意味を調べることは大切ですが、分からない単語があってもそのことを気にせず、とにかく大まかな流れを掴むことに集中し、終わりまで読み進めるという読み方も大切です。最初は脳が疲労して苦痛を感じるのですが、だんだんその苦痛に慣れて、詳細は分からずとも大まかな流れを掴んで読み進めることが楽しくなります。分からない単語も、大まかな流れを掴むと、「大体こんな意味かな」とあたりをつけることができるようになるものです(一通り読んで一息ついた後で、その単語を辞書で引いてみることをお勧めします)。
4.文法のススメ
文法というものは、単語の並べ方や形に関するルールです。車の運転で言うと、車の運転の仕方・交通ルールなどで、その知識が無ければ運転してはいけないように、文法の知識がなければ外国語の文を正しく作ることはできません。とても大切なものです。
とは言え、英語に関して言えば、大学で読む英語テキストは、中高で学ぶ文法で十分読めます。大学で読むテキストでレベルがグンと上がるのは、語彙くらいです。英文法は苦手という方は、中学生用でもいいので、市販の薄目の英文法書を手に入れる。書も手に入れて、それを最初から最後まで一通り、ノートを取りながら、一つ一つの文法項目をかみ砕くように理解しながら、読む。そして、英語という言葉の仕組みをある程度把握する。英文法書は、中には厚さ5cmくらいの英文法もありますがが、そういったものは、参考書として机にあるのは良いですが、上記の目的にはNGです。必ず自分が最初から最初までノートを取って読める分量であることがポイントです。
同じことは、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、どの言語にも当てはまります。自分がマスターしたいと思っている外国語について、教習所に通うつもりで、文法書を手に入れて、ノートを取りつつ読み込み、「取り敢えず一通りやった」という感覚を持って見ましょう。その感覚が、自信につながります。
5.文化的背景の理解のススメ
外国語の文学作品は、そのテキストとの書かれた文化的背景を共有する読者―同じ国の読者、同じ時代に生きている読者、その時代に起きていたことを経験的に知っている読者、など―を想定して書かれていることが多く、その文化的背景の知識や経験がないと理解できないようなことがあります。外国語として作品を読んでいる以上、その国や地域の人間にはなれませんし、ましてや昔の時代にタイムスリップすることもできません。それでも、少しでもその文化的背景を知ろうと努力することはできますね。
例えば、テキストの中に、地名や人名などの固有名詞が出てきたり、何か特定の出来事に触れていたら、それらを辞書や事典で引いて調べてみるのです。場所の歴史や、人物の生涯、出来事の概要を知った上で改めてテキストを読むと、単なる外国語のテキストからより具体的な人々の生活、社会状況、喜びや悲しみなど様々な感情を、より鮮明にイメージすることができ、テキストの理解がぐんと広がり深みを増します。
6.聞き流しのススメ
外国語でテレビや映画を観たりラジオを聴いたりし、とにかく聞き流すことも効果があります。これらのメディアで話される外国語はとても早く、時には砕けた言葉遣いで話されることも多く、詳細は理解できないかも知れません。しかし、聞いている中でいくつかのキーワードは聞き取れるかも知れません。そうすれば少なくとも何について話しているのかは分かります。また、その外国語の響き(その外国語に特有な発音や抑揚、会話の進み方、笑い方、冗談に言い方など)に耳を慣らすためにも、聞き流しは有効です。
通学中の時間を聞き流しの時間に費やしてはいかがでしょう?
7.集中聞き取りのススメ
書き取り(ディクテーション)という作業です。「聞き流し」とは真逆の聴き方になります。外国語の短い音源や動画を聴いて、一語も漏らすことなく書き取ってみるのです。書き取ったものを見て、意味が通るものになっていたら、その書き取りは(ほぼほぼ)正解となり、よく意味が分からなければ、何かを聞き逃しているか、間違って聞き取っているかのいずれかです。市販の外国語学習の教材を使うと、正解が分かるのでお勧めですが、普通の(その外国語のネイティブスピーカーが視聴するような)音源や動画のディクテーションを、意味が通るまで書き取り作業を続けると、もちろん挫折することもありますが、意味が分かった時の感動は何ものにも代えがたく、皆さんの外国語理解を驚くほどアップさせます。
8.留学のススメ
究極の外国語学習は、留学かも知れません。皆さんが学ぶ外国語は、(古典ラテン語やギリシャ語のような死語を除き)現在活きた言葉として人々の生活の中で用いられており、実際にその生活を自分自身が経験しなければ分からないものがあります。
本学では、国際交流センター主催の協定校留学や各学科で選考を行う奨学金留学など、様々な留学のサポートが行われています。まずは国際交流センターに足を運び、どんな風に留学を実現できるかスタッフの方と相談してみてください。
ただし、留学する前に、その国で話される外国語の力はある程度身に付けておくべきです。留学をしてからその外国語の基礎を身に付けるようでは、留学の醍醐味―授業を受けたり友達を作ったり―を味わうことなく帰国することになります。大東でのその外国語の授業をしっかり受け、高い成績を修めることができるように努めましょう。
9.コンテスト参加のススメ
学習している外国語の力を競う様々なコンテストがあります。例えば本学では、英語や中国語のスピーチコンテストがあり、その以外の外国語でも、学外に目を向けると様々なコンテストが開催されています。ある程度外国語に自信がついたら、そういったコンテストに参加してみましょう。スピーチコンテストでは、原稿はすべて暗記が原則ですので、簡単なことでありません。集中力を結集して原稿を何度も何度も読むことになります。そうやって練習を重ねて人前にスピーチを行った人が得られる自信や度胸は、他の学習法では中々得られないものです。
他にも、暗唱コンテスト、エッセイコンテストなど、様々なコンテストがあります。ぜひそういった機会に積極的に参加してみましょう。
10.失敗のススメ
生身の人間との外国語でのコミュニケーションは、通じないこと、相手の言っていることが分からないこと、誤解される恐れもあり、怖いです。しかし、失敗を恐れず、皆さんの先生とその外国語でぜひ会話をしてみてください。皆さんの先生がとても自信を持って外国語が話せるのはなぜか・・・?それは、その外国語で何度も失敗をして何度も恥をかき、それらを乗り越えて現場感覚を身に付けてきたからです。失敗の数が多いほど、その言葉に愛着が湧き、余裕と自信と節度を持って話せるようになります。
もちろん、失敗が危険につながることもあります(例えば・・・六本木で不適切な英語を言い放って大きなトラブルになることも)が、大学の教室内での会話や教員との会話ではそのような心配はいりません。失敗を恐れず、話しかけてみましょう!
11.継続のススメ
外国語学習は、一日に一気に何時間もやるより、例え一日10分でも毎日コツコツ行う方が効果的だと言われています。上記に書いたものやその他の外国語学習—毎朝、外国語のテキストを音読する、毎日決まって時間に外国語の音源や動画を観る、外国語の歌を毎日必ず歌う、テキストを一日1ページずつ読む等—を、皆さんの生活の一部にしてください。毎日の積み重ねが、自信と愛着につながり、その外国語に対する直感を育ててくれます。
中国語の諺に、水滴石穿があります。石の上に滴る水滴が、何年もかけてその石に穴を穿つのです。同じことが外国語学習にも言えます。外国語という高い「壁」も、毎日少しずつの努力で、穴をあけて崩すことができるかも知れません!継続は力なりです。ぜひ今日から何かを始めてみましょう。