utah

ユタ州の温泉

ユタ州はネバダ州の東北にあり、ラスベガスから I-15 を使って車で数時間走るとまず岩山でごつごつしたアリゾナ州に入りますが、しばらく走ると谷間を抜けて平らなユタ州に入ります。そのまま I-15 を進むと Hurricane （ハリケーン）という町に出られる州道 9号の看板があります。Hurricane にはかつて川沿いに硫黄のかおりを漂わせた Pah Tempe Mineral Hot Springs （パーテンプ温泉）がありました。

ミステック温泉（訪問 2002年 8月）

ブライスキャニオンは温泉と関係ないのでその話は他にゆずりますが、そこからの帰り道にこのお兄さんから紹介された温泉に向かいました。その名も Mystic Hot Springs （ミステック温泉）といいます。そこまでの行き方ですが、I-15 を北上して途中から I-70 に乗り換えます。そのまましばらく行くと Monroe （モンロー）という町につながる州道 118号に降ります。Monroe は人影のない田舎の小さな町で、たまたまその時は日曜日の午前中だったこともあり道を聞こうにもガソリンスタンドまでお休みでしたが、電話帳で調べた住所をたよりに町外れまでいくとミステック温泉はその道のちょうどおしまいにありました。ちなみにマクドナルドすらない町というのはアメリカで初めてでした。

さびれたドライブインのような建物の入り口を入っていくとなぜかネットのない卓球台があり（アメリカでも温泉と卓球台はセットなのかしら）、薄暗くなった奥にはバンドが演奏できるような台も見えました。ここは温泉のほかに夜にはロックカフェも営業しているようです。カウンターの上の呼び鈴を鳴らすと元ヒッピーのようなお兄さんが現れたので、ここの元従業員に聞いてやってきたと説明して温泉に入れるかどうか聞いたところ、プールは空だが外の温泉は営業中だとのこと。内湯はありません。オーナーの彼に値段を聞くとグループ料金でひとり 2ドルとなりました。

そう、このすばらしい露天風呂をもつ温泉は、実に残念なことに現在閉鎖されています。理由など詳しくはそのサイトを見ていただくとして、2002年8月に友人の家族とここを訪れた筆者は、入り口まで来てその閉鎖を知り愕然としました。硫黄臭はするのでせめて源泉に触るだけでもと思いますが、ひとけのない施設の入り口に立ち入り禁止の札が立っています。

「えー、そんな。せっかくカリフォルニアから温泉に入りに来たというのに (^^; 」

硫黄臭が漂う谷間で天を仰いで自分の日ごろの行いの悪さを反省していますと、橋向こうから明石家さんまに似たサングラスのお兄さんがやってきました。彼はなんとこの温泉の従業員だそうです。はるばる日本から温泉に入りに来た（いくぶん誇張あり）というと、この親切なお兄さんはユタ州内にある別の温泉を紹介してくれました。彼はもとその別の温泉で働いていたそうです。その温泉はそこから北に 2時間ほど車を飛ばしたところにあるので、その日は宿泊地である Bryce Canyon （ブライスキャニオン）に向かうことにして、そのお兄さんにはお礼をいって別れました。お互いパーテンプ温泉の早期再開を祈ったのはもちろんです。

「安い。はるばる来てよかったなあ。さんまみたいな元従業員さんありがとう。」

さっそく奥のトイレで水着に着替え、建物の裏に回りました。この温泉、掘削の自噴で摂氏 68度とかなり高温です。分析表によると鉄とカルシウムを含む重曹泉といったところでしょうか。自噴直後は透明ですが、温度を下げるために小川のように山を下るうちに赤くなり、水着を着て入る露天風呂では適温で緑茶褐色不透明になります。硫黄臭はありません。ただし季節は真夏で気温が 40度くらいあるため、残念ながらゆっくり浸かることができません。冬は一面雪の中での露天風呂となるでしょうから、来る季節を間違えた気がしました。

余った湯は大きな池に流れ込み、熱帯淡水魚を育てています。露天風呂から流れ落ちたお湯が流れる溝には小魚が泳いでいました。オーナーの飼い犬が白と茶色の二匹いて、お弁当をそとで食べていると近寄ってきてじっと見つめられて困りました。ユタ州にお住まいの方にぜひオススメしたい温泉です。成分表はこちらです。

かけ流しの露天風呂、一面に広がるユタ州の大地、気分壮大になるお湯でした。

源泉温度華氏168度（摂氏68度）蒸発残留分 2904.8mg pH 6.9 湧出量不明（推定自噴 600リットル/分）