主要論文の概要

Circadian-period variation underlies the local adaptation of photoperiodism in the short-day plant Lemna aequinoctialis.
Muranaka T, Ito S, Kudoh H, Oyama T.
iScience. 2022 Jun 17;25(7):104634.
https://doi.org/10.1016/j.isci.2022.104634

短日植物のアオウキクサは日本において一年生の水田雑草であるが、限界日長に緯度クラインを示すため、花成時期の多様化のモデルとして有用である。日本各地の水田からアオウキクサ72系統を集めた結果、限界日長は各生息地の気候条件に加え、水田で栽培されるイネ品種に応じて異なる湛水時期にも適応的であった。RNA-seq解析によりFT遺伝子の発現タイミングが限界日長決定に重要であることが示唆された。また、概日リズム周期と限界日長に負の相関が見られ、概日時計の周期変化がFT遺伝子の発現タイミングに影響することが示唆された。様々な生物種で概日リズム周期の種内多様性が報告されているが、アオウキクサにおいて開花期を決定する限界日長と相関を示したことは、周期多様性の適応的意義を考える上で重要である。

Heterogeneity of cellular circadian clocks in intact plants and its correction under light-dark cycles.
Muranaka T, Oyama T.
Science Advances. 2016 Jul 15;2(7):e1600500.
https://doi.org/10.1016/j.isci.2022.104634

AtCCA1:LUCをレポーターとし、イボウキクサ個体内の細胞が示す概日リズムを解析した。定常条件では個々の細胞の概日リズムは脱同期し、細胞間で時間情報が共有されなかった。脱同期の要因として、細胞時計の周期不均一性と周期不安定性が示唆された。脱同期状態において近傍細胞での位相差が有意に小さいことから、細胞間相互作用による同期現象が示唆されたが、その強度は個体全体を統合できるほどは大きくないと考えられた。脱同期状態から明暗条件への同期過程から、個体内の細胞時計は細胞自律的に環境刺激に応答することが示された。さらに、明暗条件においては細胞時計の位相は連続的な空間パターンを示した。以上の解析から、個々の細胞時計は、定常条件においては固有の周期で振動し外部刺激に細胞自律的に応答する独立した概日時計として振る舞うが、明暗条件においては連結した時計として機能し得ることが示唆された。

Characterisation of circadian rhythms of various duckweeds.
Muranaka T, Okada M, Yomo J, Kubota S, Oyama T.
Plant Biology. 2015 Jan;17 Suppl 1:66-74.
https://doi.org/10.1111/plb.12202

ジーンガンによる一過的な発光レポーター導入では、導入の1日後から測定に十分な発光強度が得られる。そこでウキクサ植物の4属5種に対し、個体レベルの概日リズムの多様性について、シロイヌナズナの時計遺伝子CCA1のプロモーター領域を用いた発光レポーター(AtCCA1:LUC+)を用いた解析を行った。その結果、ウキクサ植物の概日時計において、昼夜サイクル下で時間情報を保持する機構は保存されているが、その分子機構はある程度多様化していることが示唆された。本研究では、比較解析のために、発光リズムの持続する培地条件を見出した。本条件では、恒常発現レポーターにおいても概日リズムが見出された。このリズムは転写レベルのリズムではなく、ルシフェラーゼタンパクの発光活性のリズムと推定した。

A single-cell bioluminescence imaging system for monitoring cellular gene expression in a plant body.
Muranaka T, Kubota S, Oyama T.
Plant Cell & Physiology. 2013 Dec;54(12):2085-93.
https://doi.org/10.1093/pcp/pct131

ジーンガンによる"まばら"な形質転換を利用し、イボウキクサ個体内の一細胞由来の発光を個別に測定する技術を開発した。発光強度の分布が対数正規分布を示すことや、発光レポーターの導入細胞のうち、約2割が表皮細胞で、約8割が表層近くの葉肉細胞であることを明らかとし、一細胞発光イメージング技術の基礎的な特性を報告した。本研究は、ルシフェラーゼレポーターを用いた一細胞測定として、植物で初めての例となった。